アメリカという国は、考えれば考えるほど不思議な国である。とにかく世界中のあらゆる民族が、なんとなく寄り集まって出来上がった国なのだ。本来は、「合州国」であるのを、いつのまにか日本人が「合衆国」というふうに書き換えてしまったのも①大いにもっともなことなのである。
もちろん、建国以来、すでに二百年の歴史を経過した。だから、それはすでに単なる寄り集めではなく、一応がっちりとまとまった文化、あるいは国家を形成している。だが、雑多な人類の寄せ集りであるという伝統は、今日もなお残っている。いやその伝統こそが②アメリカ文化なるものの本質でさえある。したがって、日本やヨーロッパのように千年以上の古い歴史を持つがゆえに、それぞれの地域の特殊事情や血のつながり(民族)によって結びついた社会に比べて、人間同士の信頼感が恐ろしく薄い。すべての人間は全く③赤の他人として、まず存在している。
④こういう社会で生きていくために、人間はいったいどのようなことが必要となってくるか。それは、おそらく、知らないもの同士が知り合い、わかり合おうとする努力であろう。なぜなら、お互い、とにかく話してみなければわからないからである。ばらばらの人間はお互いの意志を通じ合うことが要求されるからである。
そして、話すことはいいことだ。こうした一連の考え方は、上のようなアメリカの⑤社会的な条件を背景にして展開した。アメリカ人が、非常に気楽に人とおしゃべりを始め、大いにずけずけと物を言うのは、おそらくこのこととかかわりがあろう。
【問1】①「大いにもっともなことなのである」とあるが、それはなぜか。
1、考えれば考えるほど不思議な国だから
2、世界中のあらゆる民族が集中してできた国だから
3、建国以来、二百年の歴史を持っている国だから
4、アメリカの独特な伝統がある国だから
【問2】②「アメリカ文化なるものの本質」とあるが、その本質は何か。
1、雑多な人類の寄り集まりであるという伝統
2、二百年の歴史を経過した歳月
3、人間同士の信頼感が薄いという特徴
4、気楽に人とおしゃべりをする性質
【問3】③「赤の他人」とあるが、ここではどういう意味か。
1、知り合い 2、仲のいい人 3、仲の悪い人 4、見知らぬ人
【問4】④「こういう社会」とあるが、どんな社会なのか。
1、土地が広く、民族もたくさん同じ所に集中している社会
2、たった二百年の歴史ながら、世界で一躍経済大国になって人々に注目されている社会
3、地域の特殊事情や血のつながりで結び付いた日本やヨーロッパとは異なったアメリカ社会
4、非常に気楽に人とコミュニケーションをし、そしてずけずけと物を言う社会
【問5】⑤「社会的な条件」とあるが、どんなものがあるか。
1、千年以上の古い歴史を持っている
2、人間同士の信頼感が恐ろしく薄い
3、地域の特殊事情や血のつながりによって結びついた社会
4、人間はお互いの意志を通じ合うことが要求される
【問6】個の文章の題として、最も適当なものは何か。
1、話せば分からなくはない
2、話さなければわからない
3、話さなくてもわかる
4、話してもわからない |