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发表于 2014-4-28 00:55:57
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本帖最后由 nomimi 于 2014-4-28 17:45 编辑
窓の外にちっちっと鳥の声がした。横山新左衛門は内職の手をとめて顔を上げた。ほんの二声、三声だったが、澄んだ鳴き声は鷦鷯に違いなかった。
父親が手を休めて聞き耳を立っているのに気づいたらしく、うしろから娘の品の声がかけて来た。
「鷦鷯でしょう」
少し間を置いてから、そろそろ季節ですからと品はつけ加えた。
窗外啾啾鸟声起,横山新左卫门,手工暂停台头望。虽仅短短两三声,清澈啼声必鹪鹩。察父暂停手边工,立耳倾听窗外鸣,其女名品身后曰
「该是鹪鹩吧!」
稍待片刻品又言,季节亦该是来临。
今日は一日中薄ぐもりで、昼過ぎからほんの少し日射しがちらついたりしているが、昨日、一昨日の二日間は、時雨(しぐれ)が降ってはやみ降ってはやみする陰鬱(いんうつ)な空模様で、ことに昨日、日暮れになるとそれまで降っていた雨がとうとう霰(あられ)から霙(みぞれ)に変わった。背中のあたりがいやに冷えると思いながら板戸(いたど)を閉めに立つと、薄暗い地面を打ち叩いているのは霰まじりの雨だったのである。
今日终日天气阴,午过太阳稍露脸。然,昨天前天连降雨,季雨停停又下下,天空是个阴霾样。时至昨暮雨变样,雪珠转成雪夹雨。身脊背感凉飕飕,起身意欲关窗门,昏暗地面敲击响,来自雪珠夹带雨。
二日つづいたつめたい雨は、領国(りょうごく)の境の山山ではおそらく雪になっていて、頂を白い冬の姿に変えたに違いなかった。雲が晴れればそれがわかるだろう。しかし雨こそやんだものの、空はまだ灰色の雲に覆われ、庭には昨日までの底冷えする空気が残ったまま。その片隅で、鷦鷯が鳴いた。
冰雨连续下两日,想必边境群山头,霭霭白雪冬模样。云开天晴知其样,雨停天却灰云盖。时至昨日冷空气,尚留庭院未散去,鹪鹩在此角落鸣。
鷦鷯の鳴き声は、新左衛門にある特別の感慨をはこんで来るものだった。新左衛門は五年前に妻が失ったが、秋口(あきぐち)に倒れた妻の病いが、回復不能の死病であることを医師に告げられたのがこの季節だったのである。
鹪鹩鸣啼声牵动,新左卫门感慨情。新左卫门,五年前丧妻。入秋之际妻病倒,医生告知无可医,正是此一季节时。
門の外まで送って出た新左衛門にそう告げて去る医師を、しばらく見送ってから庭にもどると、夕やみがせまる庭のどこかで鷦鷯が鳴いていたのを、新左衛門はいまもこの季節になると思い出す。鳥の声は、医師の言葉を聞いて無限のわびしさに鷲づかみにされた思いでいる新左衛門の胸に、釘を打つ痛みをはこんで来た。
送医送至门外边,医告此事便折返,目送良久返回庭,日暮低垂庭院内,何处引来鹪鹩啼。听闻医生言之事,新左卫门悲无限,鸟鸣如钉敲心肺。每逢此一季节时,新左卫门仍想起。
澄んだ、つぶやくような鳴き声は、もはやこの世から飛び去った妻の魂が、彼方の世から何ごとかささやきかけているかのような、一瞬の幻覚をもたらしたようだった。新左衛門はそのあと、すぐには家に入りかねて、しばらく夕やみにつつまれて立っていたものである。
清澈如絮鸟啼声,带来瞬间一幻觉。宛如已故妻子魂,彼岸呢喃声声絮。新左卫门闻声后,无法立即入屋内,呆伫暮色时良久。
--死なれたときよりも......
あのときの方が胸にこたえたな、と新左衛門は思い返している。死なれたときには、ある程度の覚悟が出来ていた。
うしろから、また品が声をかけてきた。
--临终别离时相比......
那时更是伤心怀.....新左卫门如是回想。妻子临终到来时,心里多少有准备。
身后,品之话声再响起。 |
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