|

楼主 |
发表于 2015-10-10 12:52:34
|
显示全部楼层
二年間、ひたすら彼女のご機嫌をとって、その見返りがこの一発かと思うと、それなりに感慨深いものがあった。やたらと興奮したが、なぜか悲しい心持ちもあった。
两年里,全心全意地讨好她,换来的便是那一次温存。回忆起来,确是思潮起伏,感慨万千。
尽管很是尽了兴,但在内心深处,始终埋藏着一缕哀伤。
しかし結局、うまい具合にヤれたのは、その一回だけである。
但从结果上来看,所谓的温存,仅有那一次而已。
もっと何回もヤッておくべきだったような気もした。いやいや、むしろ一回もヤらない方が良かったような気もした。
虽也曾想过再多干个三回五回。不过,现在的我倒是希望那一切都没有发生过。
実際、どうなんだろう?
到头来,又能怎么样呢?
あぁ──
啊啊——
渋谷の、コジャレた喫茶店で「どうなんですか?」と俺は訊いた。
涩谷,一家人满为患的咖啡店内,“最近怎么样?”我问道。
数年ぶりに出会った先輩に、俺は訊いた。
问的对象是,是多年未见的学姐。
この前の日曜日に、いきなり何の前触れもなく電話がかかってきたのだ。『会おうよ』と先輩は言った。俺はのこのこ出かけていった。
上个星期天,毫无征兆地来了一个电话。“见个面吧”学姐如是说。于是我便屁颠屁颠地赶来赴会了。
待ち合わせ場所はモヤイ像前だった。ちょっと地方出身者っぽい行動だったが、事実俺たちは地方出身者なので、特に問題ない。
约好的地方是在莫艾像前。那是外乡人在涩谷常约的碰头地点,因为我们确实均为外乡人,所以也没什么好奇怪的。
※摩亚像:本是复活节岛上的神秘石像,相传为波利尼西亚人所建。后传到日本,伊豆新岛村模仿此石像作为当地的特产(当然修改了造型),称为“莫艾”像(日语中moyai近似moai,含有同心协力,互帮互助之意)其中以东京涩谷地铁站前的摩亚像最为著名,为1880年新岛赠予涩谷区。1975年后,新岛大量制造摩亚像赠送到日本各个城市
出会い頭に、先輩は言った。
刚一照面,学姐便迎了过来。
「佐藤君の実家に電話をかけて、佐藤君の今の連絡先を教えてもらおうと思ったら、君のお母さんにセールスマンと間違われて、だいぶ胡散《うさん》くさがられたよ」
“当时往佐藤君你家里打电话,正要问你现在的联系方式,没成想你妈妈硬是把我当成了某公司的推销员,结果不知费了多少口舌,才解释清楚呢”
「あぁ、よくあるんですよ。学校の同級生を名乗って、名簿を集めようとする業者──」
“哦,很常见的。干推销的人,经常会借口自己是对方家人的老同学什么的,骗取电话号码——”
数年ぶりに再会して、一番最初の会話がこれかと思うと、ちょっとげんなりした。
作为几年没见的开场白,这确实略显突兀了些。
が──が、記憶に違《たが》わず先輩は、やはりばっちり可愛かったので、俺はだいぶドキドキした。ついでに、ひきこもり特有の視線恐怖と広所不安がやってきた。
可——可是,学姐那张天使般的面孔,和我记忆中的她如出一辙。我满面潮红,心如鹿撞。但又因周围的视线而惊恐万伏。
喫茶店に入っても、冷や汗が止まらなかった。
进了咖啡店,浑身仍是汗洽股栗。
窓際の席に座った先輩は、アイスコーヒーなどをストローでかき回しながら訊いた。
坐在靠窗席位学姐,一边用吸管搅冰咖啡,一边问我。
「あのさぁ佐藤君、君、今、なにやってるの?」
“噢,佐藤君,你眼下在哪儿高就哪?”
俺は包み隠さずに本当のことを答えた。笑顔で。
我毫无保留地将自己的一切和盘托出。脸上含笑。
すると、先輩も笑った。
听完后,学姐亦为之莞尔。
「もしかしたら、そんな感じになってたりとか、ちょっとは予想済みだったけどね」
“虽然吓了一跳,但也有点预料之中的感觉呢”
俺は自慢してやった。
一股豪情油然升起。
「いやもう、籠もり籠もってもう四年ですよ! プロフェッショナルのひきこもりです!」
“嗐,都蹲了四年啦!堪称宗师级家里蹲!”
「やっぱり今も、外に出るのは大変なの?」
“那现在,也还是害怕出门吗?”
俺はうなずいた。
我点了点头。
「なら、良いものがあるよ」
“正好,我这儿有好东西哦”
先輩は、小さなバッグからピルケースなどを取り出して、何やら小粒の錠剤を俺に手渡した。
学姐说着,已从手提包中摸出来一个外观别致的药丸盒,并从中拿出了几粒药片,递到我手中。
「これ、リタリン」
“给,利他林”
※利他林:盐酸哌醋甲酯,中枢兴奋药
「なんすかそれ?」
“这是干啥用的?”
「抗鬱《こううつ》剤。覚醒《かくせい》剤の親戚《しんせき》みたいなクスリだから、すっごい効くよ。これでいつでも元気でバリバリ!」
“聪明药。效能上跟兴奋剂有异曲同工之妙,总之只要吃下这个,立刻就能精神倍长,反朴归真啦!”
先輩は、今もやっばりおかしい人だった。精神科を三つはど掛け持ちしているそうだ。
这些年过去了,学姐她果真还是老样子。保守估计,此人少说也要有三种精神病史。
それでも彼女の心遣いは、なかなかに嬉しかったので、俺はありがたく、そのあやしげな抗鬱剤をいただいた。
但这毕竟是她的一番心意,我心中不由地雀跃起来,遂感激涕零地收下了那尤为可疑的利他林。
そしたら元気になった。
吃下后,果是精神大振。
俺たちは無駄に陽気に会話を交わした。
于是我们兴致勃勃地畅谈起来。
「高校時代は、佐藤君、普通だったのにね。……いや、そうでもないか」
“高中那会儿,佐藤君,挺普通的吧。......不,也算不上太普通吧”
「先輩は、今、何やってるんです?」
“学姐,您现在在哪儿高就呀?”
「無職」
“还没工作”
「大学は卒業したんでしょう?」
“不是已经大学毕业了吗?”
「そうだけど、だけど今は無職。……もうすぐ主婦になるけど」
“是毕业了,但现在还没找工作。......只是就快要成家庭主妇了”
「へぇ、結婚するんですか」
“哟,这是要结婚了么”
二十四歳の若奥様か。萌え萌えだ。
二十四岁的人妻么。啧啧啧。
「ビックリした?」
“吓到了?”
「それなりに」
“多少有点”
「悲しい?」
“伤心吗?”
「まさか」
“怎么会”
「どうしてさ?」
“为什么呢?”
「どうなんですか?」
“什么为什么?”
喫茶店を出た。先輩は俺の周りをくるくるとふらつきながら、にこやかに笑っていた。
步出咖啡店。学姐在我面前滴溜溜地打了个转,笑靥如花。
そして「あたし、今、幸せだよ」と言った。堅実な国家公務員、金持ち、それでいて格好いい、つまりは最高な人との結婚だ! と自慢してくれた。
然后和颜悦色地说:“我呀,现在,很幸福的”。接着又炫耀对方是踏实能干的国家公务员,家世不错,而且玉树临风,儒雅风流;总之自己就是和如此如此优秀的人结了婚。
「難しく考えちゃダメだよ。複雑なことを考えたらダメだよ。ハッピーだよ」
“别想得那么复杂嘛。开心不就好了嘛。开心就好”
そのセリフはひたすらに陽気で、どうやら彼女も例のクスリを囓《かじ》っているらしい。
她满面春风地说着不着边际的话,看上去似是那“利他林”的药力使然。
人混みをすいすいとすり抜けながら、先輩は言う。
只见学姐精神焕发地穿过人群,接着说道。
「あの頃、ちゃんと付き合っておけば良かったかもね。佐藤君、凄くあたしが好きだったんでしょ?」
“那时候,如果我们在一起了没准会更好吧。佐藤君,当时其实很喜欢我的是吧?”
「凄くヤらせてもらいたかったです」
“迷得我简直神魂颠倒”
「ごめんねホントに。毎日トランプなんかしてる場合じゃなかったよね」
“对不起呀真的。明明不该每天都打牌的”
「別れ際の一発ってのは、だいぶキツイものがありました」
“临别时的那一炮,真是百感交集,感极而悲呀”
「もしかして、君がひきこもっちゃったのも、あたしのせいかもね」
“难道说,你变成家里蹲,也是因为我的缘故吗”
「……それはぜんぜん関係ないですよ。もっとこう、別の大きな──」
“......那倒是没啥关系吧。真要说的话,就要怨那种——”
「巨大組織とか?」
“幕后黑手什么的?”
「ええそうです。巨大な悪い組織に、俺はすっかりやられちゃったんです」
“啊,就是那个。你看我现在的样子,就知道他们下手多么狠毒了”
「あたしも、ねえ。悪い組織にたぶらかされたよ。もうダメかもしれないよ──」
“我也差不多啦。被幕后黑手骗得惨不忍睹。都快活不下去了——”
そして先輩は唐突に、子供が出来たと教えてくれた。
接着,学姐突然告诉我,自己已怀上孩子一事。
「スゲー! マジスゲー! 母親じゃん!」
“好耶!好耶!母亲万岁!”
俺はビックリした。
我叫绝不已。
「だから結婚するの。これであたしは人生合格! もう、バッチリ軌道に乗ったよ。あとはもう、このまま一直線に行けると思うよ」
“所以我要结婚。这样一来我的人生就合格啦!我已经回归正常。再也不用看别人的脸色做人啦”
先輩は、俺の前方一メートルを、てくてく早足で歩いていた。だから表情は窺《うかが》えない。しかしその声色から察するに、事実正しく浮かれている。ハッピーなのだ。そうに違いない。
学姐走在我前方一米处,步伐矫健利落,故窥不见正脸。但仅从她的脚步和声色中,可以感觉得到她的亢奋情绪。那是装不出来的。
「良かったですね。良かったですね。良かったですね」
“可喜可贺。可喜可贺。可喜可贺”
俺は同じセリフを三回連呼して、彼女の新たな門出を盛大に祝った。
我连着欢呼了三遍,以表对她迈向新生活的衷心祝贺。
「佐藤君、辛くない?」
“佐藤君,你不难受吗?”
先輩は足を止めた。
学姐停步道。 |
|