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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2008-2-3 15:47:01 | 显示全部楼层

2008年02月02日(土曜日)付

水墨の抽象画で知られる篠田桃紅さんの作品を拝見して、黒という色について考えたことがある。本当の「黒」は真っ黒の一歩手前、明るさのある黒で、沈静であって死ではない。そんな篠田さんの文章が記憶にあったからだ▼〈あと一歩に無限のはたらきを残し、それはわが手のなすところではなく、天地自然、神、宇宙、とにかく人間のはかり知れない大きな手にゆだねる〉。そういう考え方が好もしいと、随筆集『墨いろ』につづっている。黒白(こくびゃく)の世界の凄(すご)みに感じ入ったものだ▼篠田さんの言う「あと一歩」は、科学でも神の領域に近いようだ。大学の研究班が「世界で最も暗い物質」を作った、というニュースが米国から届いた。色は光が反射して生じる。だが、その物質は当たった光の99.955%を吸収してしまうそうだ▼一般的な黒い塗料だと5%から10%も反射する。新物質は0.045%で、これまでの最高記録より約3倍暗い。だが真っ黒ではない。どんな物質も、光を完全に吸収することはないのだという。「あと一歩」の深淵(しんえん)は、墨の芸術にも、科学にも底がない▼神の領域から目を転じれば、身の回りには「黒」が目立っている。今やファッションにとどまらない。和洋菓子に始まり、綿棒、まな板からトイレットペーパーまで。白が当たり前だった日用品にも広がっている▼不吉を連想させもするが、黒に非日常の粋を重ねる人も多いようだ。自然の中に色の乏しい季節である。深遠な黒の世界を! D3 D: ]% H: M& W5 [3 V$ G
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发表于 2008-2-3 15:47:18 | 显示全部楼层

2008年02月03日(日曜日)付

フランスのサルコジ大統領は「本音の人」である。昨秋に離婚し、14歳下の人気歌手カーラ・ブルーニさん(39)と結婚したらしい。在職中に配偶者を代えた仏元首は、本当かどうかナポレオン以来とも聞く。要職だからと、私生活を犠牲にする気はないようだ▼パリで4年前、公演後の楽屋にカーラさんを訪ねたことがある。缶ビールを片手に、来日への思いを気さくに語ってくれた。その応対ぶりから、仕事にも恋にも正直な人とお見受けした。大統領とは生き方も一致したのだろう▼自分に正直に、本音で生きてゆくのは楽じゃない。周囲との摩擦、好奇の目。「結婚は忍耐」と言う通り、夫婦がそれぞれ我を通せば破局に至ることもある▼されど人生は一度きり。二人をうらやましく思うかどうかは別にして、つまらぬ遠慮や辛抱で消耗したくはない。そうはいかないのが普通だろうが、辛抱しすぎると命が縮むというからご用心だ▼夫婦げんかを我慢すると早死にしやすいという説を、通信社が報じた。米ミシガン大学の研究者が、192組を17年追跡した結果だという。相手の言動を不当と感じた時、感情を押し殺して我慢し合う夫婦は、言い争って解決しようとする夫婦の倍の死亡率だった▼江戸川柳に〈喧嘩(けんか)には勝ったが亭主飯を炊き〉とある。言うだけ言われたおかみさんが「職場放棄」で反撃に出る。これならそろって長生きだろう。夫婦げんかや離別を長寿の秘訣(ひけつ)としてお勧めするのではない。愚痴も我慢もほどほどに、仲むつまじいのが一番です。
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发表于 2008-2-4 11:04:28 | 显示全部楼层

2008年02月04日(月曜日)付

きのう、近所の桜並木は雪に包まれた。枝にまで積もり、予定されていた花芽の観察会が流れた。地元の樹木医、石井誠治さんによると、昨夏の日射のお陰で芽はよくついているようだ。見上げれば確かに、春の卵がいくつも冬空に震えていた▼週末の散歩で通った梅林では、もう何本か咲いていた。薄紅の花に寄り、ほのかな和の香りに深呼吸する。根元の土を霜柱たちが持ち上げていた。冬の大地から、春が伸びる▼きょうは立春。今年も名ばかりの節目になりそうだが、ここからの冷え込みは字面も音も弱々しい余寒(よかん)となる。寒寒寒(カンカンカン)という乾いた一本調子に、遠からず暖(ダン)の音が混じり始めるのだろう▼〈立春の光ついばむ雀(すずめ)かな〉中島伊智子。陽光も新たに昼の勢いが増せば、暮らしの随所に色が戻ってくる。それが近年、春の接近に紛れて不穏な色がちらつくようになった。スギ花粉である▼強風にうねるスギ林は、薄黄の煙幕を街へと送る。雄々しき生命の営みも、花粉に泣く身には敵の出撃風景でしかない。ただ、物言わぬ樹木の代理人として石井さんいわく。「きれいな環境に慣らされた体が、取るに足らない異物にも反応するようになったのです。都市化や排ガスも怪しい。木だけの責任ではありません」▼前年夏の天候が大切なのはスギの雄花も同じで、東京の花粉は去年の倍と聞く。「カン」と「ダン」の間の不協和音。音源ばかりを責めてもせんないが、後れをとれば梅も桜も台無しとなる。寒寒寒のリズムが続くうちに、目鼻の防備を固めたい。
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发表于 2008-2-5 12:26:27 | 显示全部楼层

2008年02月05日(火曜日)付

中国、唐代の詩といえば酒や雪月花を思いがちだが、社会の不条理を憤る作品も多い。たとえば白居易(白楽天)が、役人につらくされる貧しい炭焼きを詠んだ「売炭翁(ばいたんおう)」を知る人もいるだろう▼その白居易に、「新豊の折臂翁(せっぴおう)」という物語風の詩がある。臂とは腕のことだ。新豊という地で、詩人は腕の曲がった老人に出会う。わけを聞くと、「若いときに兵役を逃れるために、自ら石で腕をたたき折った」と打ち明ける。その昔語りに、詩人は、戦争に駆り出される民衆の苦悩を重ね合わせた▼悩みは古今変わらないと、韓国からの報道にあらためて思った。プロサッカーの選手ら92人が兵役法違反の罪で起訴された。わざと肩を脱臼するなどして兵役逃れを企てたという。石ではなく、バーベルを使ったりしていたそうだ▼韓国の男子は高卒後に徴兵検査を受け、2年ほど兵役につく。その間サッカーはできない。選手生命が危うくなるのを案じて、ことに及んだらしい。運動選手の旬は短い。義務感との板ばさみに悩んだ末だろうと想像する▼反骨の詩人、金子光晴を思い出す。先の戦争中、長男を兵に取られまいと、部屋に閉じこめて松葉をいぶし、煙を吸わせた。ぜんそくの診断書をもらうためだ。その企ては成功する▼金子は当時の心情を、〈戸籍簿よ。早く焼けてしまへ/誰も。俺(おれ)の息子をおぼえてるな〉と詩の一節に残した。しかし長男は、仮病工作に不正義を感じて悩んだという。個人と国家という答えのない間柄が、韓国の件からも透けて見える。
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发表于 2008-2-7 08:53:15 | 显示全部楼层
2008年02月06日(水曜日)付
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 きのうの本紙川柳欄の〈雪国にごめん都の三センチ〉に、思わずにやりとした。わずかな雪で交通機関は乱れ、転倒者が続出する。作者は埼玉の人らしい。雪深い地のたくましさを思い、いささかの自嘲(じちょう)を込めて詠んだとお見受けした▼思えば、雨や風に対する受け止め方は、日本中、そう違いはない。10ミリの雨は、どこに降っても「10ミリ」だろう。5メートルの風もしかりである。しかし雪は、暖地なら数センチでニュースになる。片や豪雪地なら、この程度はチリが舞ったほどでしかあるまい▼江戸時代の越後人、鈴木牧之(ぼくし)の『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』には、雪の激しさと暮らしの労苦のさまが詳しい。〈されば暖国の人のごとく初雪を観(み)て吟詠遊興のたのしみは夢にも知らず〉。雪を恐れ、そして畏(おそ)れる心情を、言葉を尽くして説いている▼その雪を甘く見たのだろうか、冬の山から報道が相次いだ。長野のスキー場では、大学生2人が雪崩で亡くなった。広島ではスノーボーダー7人が吹雪の中で行方不明になった。こちらは幸い、全員無事に見つかった▼吹雪と雪崩は難儀の双璧(そうへき)だと、『北越雪譜』は言う。現代の管理されたゲレンデも変わりはない。まして一歩踏み出せば、豪雪に慣れ育った人々をも葬ってきた、ごまかしのない純白の世界である▼雪氷学の草分けだった中谷宇吉郎は、状況次第で様々に姿を変える雪を「天から送られる手紙」と呼んだ。それを悲しい手紙にしてしまってはなるまい。うっすら3センチの都会でも、白銀の招くスキー場でも、甘く見るのは禁物である。
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发表于 2008-2-7 08:53:42 | 显示全部楼层
2008年02月07日(木曜日)付2 s3 e( x5 J3 C
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 敵の多いことを恥じる必要はない。だが敵の名に恥じない者を敵にせよ、と言ったのは明治の文人国木田独歩だ。「卑しき敵は持ちたるだけにて此方(こちら)の敗北なり」と言葉をつないでいる▼アメリカ民主党のヒラリー・クリントン、オバマ両上院議員は、互いをどう思っているのだろう。相手にとって不足なしか。それとも不倶戴天(ふぐたいてん)の憎い敵か。大統領選挙の候補者レースは、山場のスーパーチューズデーを終えた。ともに譲らず、笑顔も涙も今後に持ち越された▼党内で勝たなければ、秋の本選挙には進めない。いまの一騎打ちは、いわば準決勝にあたる。片や共和党はどうやら、マケイン上院議員に流れが定まってきた。ベトナム戦争で捕虜になったが5年後に生還した国民的な英雄である▼大統領選挙の候補者たちは、箸(はし)の上げ下ろしまでを有権者に吟味される。なかでも今回、ヒラリー氏への視線は執拗(しつよう)だ。集会で涙ぐんだときは、「同情狙いのうそ泣き」とも言われた。ハンバーガーを食べてチップを渡さなかった、と報じられたりした▼有名税でもあろう。だが、もとは無名に近かったオバマ氏に追い上げられ、知名度に安住してはいられなくなった。お決まりの激しい批判の応酬をへて、双方が土俵中央で、がっぷりの四つに組む▼むろん互いに「敵の名に恥じない敵」に違いない。その敵同士が、本選挙で共和党と政権を争うとき、今度は味方になる。戦い終えて、美しくノーサイドといくものかどうか。まれに見る接戦は、人間観察の興味も連れてくる。
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发表于 2008-2-8 11:41:34 | 显示全部楼层

2008年02月08日(金曜日)付

写真家の土門拳に、路上でチャンバラごっこに興じる子らを写した一枚がある。半世紀ほど前の光景だ。長い棒きれを握りしめて、結構真剣に立ち回っている▼振り回した棒が当たれば痛そうだ。やられた子は、コブをつくって泣き出すかもしれない。だが、そんな泣きっ面で、お互い相手の痛みを知ったものだ。力の加減も覚えた。友達の泣き顔は、自省心や思いやりを養う身近な先生でもあった▼相手の表情と向き合わないから、酷な言葉が書けるのか。中高生が情報交換のためにインターネット上につくる「学校裏サイト」が、問題になっている。学校別に生徒らが立ち上げる掲示板だ。匿名で書き込めるため、しばしば誹謗(ひぼう)中傷の場と化してしまう▼実名をあげて、「シんでください。デブの豚」「援助交際している」……。実例を聞くと、まさに書きたい放題である。友達の泣きっ面など思いもしないのか、誰が書いたかバレないからか。悪意ばかりか鈍麻と卑怯(ひきょう)が、寒々とした言葉から透けて見える▼日教組の教研集会でも先ごろ、取り上げられた。「書き込むごとに自分の心がカサカサになる」と、ある中学の先生は、学年集会で諭したそうだ。英国の作家ワイルドの名作『ドリアン・グレイの肖像』を思い出す▼すさんだ生活を続ける男の肖像画が、その心を写し取るように、醜く姿を変えていく。肖像画は実は男の「魂の姿」だった――そんな筋立てである。サイトのゆがんだ言葉が、心の肖像でないことを祈りつつ、暴走を防ぐ手だての必要を思う。
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发表于 2008-2-9 10:16:48 | 显示全部楼层

2008年02月09日(土曜日)付

「似て非なるものを憎む」は中国の孔子の言葉とされる。畑に生えて穀物を害する雑草は、穀物の苗によく似ている。うわべだけの似非(えせ)君子がはびこっては道徳を損なう――と弟子に憤りを語ったそうだ▼相撲部屋という「畑」にも、けいこにまじって、暴力という「似て非なる雑草」がはびこっていた。時津風部屋の若手力士、斉藤俊さんが急死した事件で、当時の親方と兄弟子3人が逮捕された。だが、「この部屋だけか」という疑念がぬぐえない▼兄弟子らは斉藤さんを鉄砲柱に縛りつけた。平手で何十発もはたき、木の棒で激しく打ち据えたという。さらに30分におよぶ「ぶつかりげいこ」で土俵に倒しては、金属バットで殴ったりした。斉藤さんはぐったりとなった▼土俵はむろん、鉄砲柱も修練を積むための設備である。神聖をうたう場での集団暴行は、穀物の畑に、雑草が堂々と茂っているさまを思わせる。「かわいがり」という隠語は、旧弊を大目に見る、あうんの了解にも聞こえる▼戦前に玉錦という名横綱がいた。小兵ながら猛げいこではい上がった。生傷が絶えず、絆創膏(ばんそうこう)だらけの姿は「ボロ錦」と呼ばれた。当時のけいこは荒く、厳しさもひとしおだったらしい▼そのさまは文壇きっての角界通だった舟橋聖一の『相撲記』に詳しい。要領をおぼえて体を楽にさせる者は大成しない、と作家は言っている。だが耐えるのは「けいこ」であって「暴力」ではあるまい。角界をあげて似て非なるものを絶つ決意こそ、無念の死へのつぐないである。
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发表于 2008-2-10 10:45:18 | 显示全部楼层

2008年02月10日(日曜日)付

食品のパッケージで青色は珍しい。例外的に売れたのはスポーツ飲料だったと、何かで読んだ。確かに、食欲をそそる赤や緑に比べ、青は無機的で冷たい印象だ。生命から一番遠くにある色かもしれない▼遺伝子組み換えで生まれた青いバラが来年から花屋に並ぶという。生態系を守る法律に基づいて、開発者のサントリーが政府の許可を得た。「天然」の高級バラ以上の値がつくらしい▼バラには青の色素がなく、いくらかけ合わせても「青く見える花」しかできない。そこで、青色を作る遺伝子をパンジーから取り入れ、赤みを抑える工夫を重ねた。04年、花びらにほぼ青の色素だけを持つ、世界初のバラが誕生する▼愛好家が挑み続けたブルーローズは「あり得ない物」の代名詞として、不可能の意味を持つという。最相葉月さんは、01年の『青いバラ』(小学館)で自問した。「不可能であったはずの青いバラが現れたら、二十一世紀の辞典はこの訳語をどう書き換えるのだろうか。夢の実現、それとも、夢の喪失」▼人類が何世紀も追ってきた夢が、科学のひと押しで現実へと姿を変える。飛行機やインターネットほどの実利はなくても、あり得ぬ花の流通も進歩には違いない。細工した異色の生命が人の目を楽しませるのだから▼遺伝子操作には、神の領域を侵すといった批判がある。店先の青い命に戸惑う人もいよう。要は他の科学技術と同様、人は全能という慢心を戒め、使い道を誤らないことだ。変哲もない茎の先に、希望と不安が仲良く咲いている。
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发表于 2008-2-11 09:55:52 | 显示全部楼层

2008年02月11日(月曜日)付

17世紀のフランス国王、ルイ13世は心労ゆえに薄毛となり、22歳でカツラをつけた。廷臣たちがそれに倣い、カツラはやがて上流階級の正装として各国に広まったという▼時は移れど、世に「自分を変えたい」願望は尽きない。光頭の書き手による『ハゲの哲学』(金子勝昭、朝日文庫)はこうクギを刺す。「ハゲを隠しているという意識につきまとわれているかぎり、変貌(へんぼう)できない」。ましてや、隠せぬままに変わり損ねた落胆は大きかろう▼育毛ケアで効果が薄かった大阪の男性(58)が大手業者を訴え、430万円を返してもらう和解が成立したそうだ。業者は「必ず生えるとは言っていない」と反論したが、原告の強い不満に折れた▼「前後」の写真を見る限り、憤りは当然だ。毎週の頭皮ケアや補助食品に、男性は約680万円と4年の時を費やした。生える保証のない育毛にこれほどお金がかかり、その出費と手間をいとわぬ客層があることに驚く▼あるべき物が無いのを恥じる心に、業者は手を差し伸べる。毛が戻って前向きに変われるのならいいが、見てくれや世間体に追われる人生はもったいない。頭髪の気になり具合は「自分の人生をどの程度自分のものにできたかを測るものさし」(金子氏)でもある▼脱毛への備えを説いた『ハゲてたまるか』(下川裕治、朝日新聞社)で、精神科医が語る。「人は交通事故を笑えないが、バナナの皮で転べば笑う。大したことではないからだ。精神的にハゲを克服するポイントです」。そう、大したことはない。
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发表于 2008-2-13 22:17:46 | 显示全部楼层

2008年02月12日(火曜日)付

前日が新聞休刊日でしたので、この日の「天声人語」はありません。ご了承ください。
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发表于 2008-2-13 22:18:04 | 显示全部楼层

2008年02月13日(水曜日)付

「小さなかごに、あまりに多くの卵を入れている」。何年か前に沖縄を訪れた米国防総省の元高官は言い表した。「かご」は沖縄の本島、「卵」とは米軍基地のことだ▼国土の1%にも満たない土地に、国内の米軍専用施設の75%を抱え込む。「基地の中に沖縄がある」と言われるさまは、米国高官にも異様に映ったらしい。実際に、那覇市から車で北へ走ると、フェンス囲いの「卵」が次から次へと姿を現す▼小さなかごの中で、幾度となく繰り返されてきた米兵による性犯罪が、また起きた。38歳の海兵隊員が女子中学生に暴行した疑いで逮捕された。家まで送ると言って誘い、車内で乱暴したという。少女は泣きながら携帯で助けを求めた▼島の怒りの源流は、1955年にさかのぼる。海岸で女の子の遺体が見つかった。雨に打たれ、手を固く握りしめていた。沖縄を怒りで震わせた「由美子ちゃん事件」である。6歳の子は米兵に暴行され、殺された▼あまりのむごさに、島ではしばらく、生まれた子に「由美子」と名づける親はなかったと聞く。以来、米軍は事件のたびに「良き隣人になる」と誓いをたてた。だが、そのつど裏切る。沖縄には怒りのマグマが蓄えられていった▼そのマグマは、95年の少女暴行事件で爆発する。米軍は綱紀粛正を約束した。だが、嵐の日の約束は晴れれば忘れられるのか、その後も犯罪はいっこうに絶えない。そして「またか」の涙である。五十年一日のように事件を繰り返されては、「汝(なんじ)の隣人を愛」せるわけがない。
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发表于 2008-2-14 00:58:38 | 显示全部楼层

2008年02月14日(木曜日)付

「少年よ大志を抱け」のクラーク博士が札幌農学校の開校にあたって着任すると、細かい校則ができていた。博士は「規則で人は育てられない」と言い、「ビー・ジェントルマン(紳士たれ)だけで十分だ」と校則を廃したという▼元気ざかりの生徒である。不始末もあったようだ。だが、博士は「何をしていいか、だめか、自分で考えて判断する」よう求めた。10代後半の少年らを「大人」として遇したということだろう▼いまなら何歳をもって大人とすべきか。民法では明治半ばから「20歳」とされている。一世紀ぶりに年齢を引き下げる是非を、鳩山法相が法制審議会に諮問した。憲法改正を問う国民投票法が、18歳で投票できると定めたのがきっかけである▼「大人とは」の定義は多彩だ。「20歳」は明治の平均寿命や、精神的成熟度からはじいたそうだ。いまや寿命は大きく延びた。つられてか、物心ともに親がかりの歳月も延びている。30歳までは未成年、という声も聞こえてくる▼「大人とは」に続けて、「裏切られた青年の姿」と言ったのは太宰治である(『津軽』)。人はあてにならない。太宰によれば、その発見こそが、青年が大人になるための必修科目らしい。賛否は置き、人は人にもまれて大人になるのに違いない▼とはいえ「紳士たれ」だけで己を律する自信はなく、裏切られての溜(た)め息も御免こうむりたい。年を重ねても、「大人」たることは容易ではない。その大人が若い世代の「大人年齢」を審議する。思えばなかなかの難役である。
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发表于 2008-2-15 10:29:49 | 显示全部楼层

2008年02月15日(金曜日)付

映画の市川崑監督が92歳で亡くなった。生前の姿は、くわえたばこと切り離せない。毎日ほぼ100本を煙にしていた。テレビ局のスタジオでも、片手に台本、片手に水を入れたバケツを灰皿がわりにぶら下げて、演技をつけていたそうだ▼その煙好きが、ここ数年はたばこを断っていた。「もう少し長生きをして、もう1、2本撮りたい」と願ったからだ。「最後にしたい作品になかなか巡り合えない。いさぎよくなれない」と語っていたのは、映像への尽きない追究心ゆえだろう▼人間の内面を、説明に頼らず映像に語らせる。その巧みさは“魔術師”とも呼ばれ、記録映画「東京オリンピック」で一つの頂点をきわめた。陸上男子100メートルで、決勝に臨む選手の唇が祈るように震える。大柄な投てき選手が神経質に何度も手の汗をぬぐう▼斬新に過ぎたのか、映画は「芸術か、記録か」と一騒動を起こした。だが空前のヒットになる。日本の勝ち負けに一喜一憂した五輪が、異なる視線と色彩で立ち現れる。その驚きは、わが少年時代の思い出でもある▼〈乾ききった砂の匂(にお)う褐色のからだ/熟れたぶどうの匂う白いからだ/熱い鉄と油の匂う黒いからだ……〉と、映画作りに加わった詩人の谷川俊太郎さんは五輪をうたった。そうした世界の多様な匂いを、美しい映像は運んできてくれた▼生涯作品は70余。「原動力は、キザですが、映画好きという一点。食事より映画を撮りたい」と晩年語っていた。次なるロケ地を、雲の上から品定めしておられるだろうか。
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发表于 2008-2-16 12:45:03 | 显示全部楼层

2008年02月16日(土曜日)付

早ばやと、わびしげに暮れていたころに比べると、2月も半ば、日脚がずいぶん伸びてきた。冬至を折り返し点として逆算すれば、10月の終わりごろの日差しを、いま浴びていることになる▼2月を「光の春」とも呼ぶそうだ。目や肌に、光の強まりが感じられる。とはいえ地表はまだ寒さの底である。光は乱舞して誘うのだが、裸体の木々は用心深い。雑木林のクヌギやエノキは、堅い冬芽をしっかりと閉じたままだ▼八ケ岳をのぞむ山梨県北杜市の「オオムラサキセンター」を、先日訪ねた。羽が鮮やかな紫に染まる、日本の国蝶(こくちょう)が育っている。観察用の雑木林には、朽ち葉が散り敷いていた。オオムラサキの越冬幼虫は、葉にもぐって、静かな眠りについている▼散り重なった葉の層の、真ん中あたりに居場所を定めるそうだ。風雪をしのぎつつ、地面の湿気も遠ざける知恵である。芽吹きのころに起き出してきて、若葉をはんで滋養をもらう。羽化して夏に舞う夢を、落ち葉の寝床で見ていることだろう▼「太陽暦の作者は雪国に親切だった」と新潟県育ちの仏文学者、堀口大学は言った。果てしなく思える2月が、短い日数で終わるから。そして「待ちに待たれた3月が来る」。思えば2月は不思議な月だ。「春」ながら冬がきわまる。だが寒さの底で、何かが兆している▼列島への寒気の南下は、なお厳しい。日本海側は週明けまで雪の空という。されど、〈雪 イトド深シ/花 イヨヨ近シ〉柳宗悦(やなぎ・むねよし)。遠い兆しに心を澄ませば、春が半歩、近づく気もする。
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