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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2008-3-3 09:13:06 | 显示全部楼层

2008年03月01日(土曜日)付

春が定まる月が明けた。国土の隅々にまで舗装が広がる以前は、ぬかるみの候でもあった。〈春泥(しゅんでい)にとられし靴を草で拭(ふ)く〉稲畑汀子。雪解けや春雨の泥にまみれながらも、輝く季節の到来に心は軽い▼ぬかるみの多くは、しかし、そうした高揚とは無縁だろう。防衛省がはまった泥沼も深い。省に昇格させた大臣は失言で去り、事務次官は汚職に追われた。新体制で出直したところにイージス艦の事故である。両足の泥は、草でぬぐえる程をとうに超えている▼きのうの衆院集中審議で、福田首相は声を詰まらせて「国民の皆さんに心配かけない自衛隊、防衛省になってもらいたい」。せっかくの人間味も、ひとごとのような「要望」では台無しだ▼制服幹部と石破防衛相は事故当日、海の警察である海上保安庁より先に、海保の了解もなく乗員から事情を聴いていた。口裏合わせの疑念を、石破氏は「何が起きたか把握するのは組織として当然」と突っぱねた▼自衛隊は輸送や通信に自前の手段を持つ。それを駆使した「速攻」に、非常時には好きにさせてもらうという思い違いはないか。そのくせ、事故の第一報は遅れ、説明も二転三転、組織の体をなしていない▼一報の遅れや判断ミスを、軍事アナリストの小川和久さんは「ひな鳥症候群」と呼ぶ。第一線は上からの指示を口を開けて待ち、上層部は現場の情報を口を開けて待つ。そこに生じる空白の時間は、国民を危険にさらすかもしれない。ぬかるむ巣にひなばかりでは、日本の守りは泥にまみれるだけだ。
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发表于 2008-3-3 09:13:25 | 显示全部楼层

2008年03月02日(日曜日)付

春の声を聞くと、ゆるむ夜気に星も潤む。夜空を仰いで、無限と悠久にわが身の卑小を思えば、逆におおらかな気分がわいてくる。〈好きなもの イチゴ珈琲(コーヒー)花美人 懐手(ふところで)して宇宙見物〉と言ったのは物理学の寺田寅彦。俗世と天空のはざまに自らを置き、悠々たる構えである▼天文をめぐる話題も想像をかきたててくれる。先ごろは、太陽系のさいはてに未知の「惑星X」が存在する可能性が報じられた。地球とほぼ同じ大きさで、約1000年をかけて公転しているという▼太陽系の惑星は、一昨年までは「9人きょうだい」だった。だが冥王星が降格になって一つ減っていた。これで元通りと喜ぶのは、しかし気が早いらしい。いまのところは神戸大学の向井正教授らによる理論上の予測で、星の姿が確認されたわけではない▼土星までの六つは古くから知られていた。18世紀、土星の外側に天王星が発見される。その軌道観測をするうち、さらに外を回る惑星の存在が理論的に浮かび上がった。夜空を探して見つかったのが、目下のさいはての海王星である▼その海王星のはるか彼方(かなた)に惑星Xの軌道はあるらしい。一周に要する1000年をさかのぼれば、紫式部が源氏物語を書いたころになる。だがその時間さえ、宇宙では刷毛(はけ)の一払いにも足りない▼わが銀河系だけで、太陽のような恒星が2000億はある。そうした銀河が宇宙に約1000億という。無限感の行きつく果てにたたずめば、「イチゴ珈琲花美人」に幸せを覚える我らが営みは、小ささゆえに限りなくいとおしい。
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发表于 2008-3-3 09:13:41 | 显示全部楼层

2008年03月03日(月曜日)付

中国の砂漠地帯で起きる「黒い嵐」について先ごろ小欄に書いたら、読んだ人から、「砂進人退」という言葉が現地にあると教えられた。砂が広がって人を退ける意味だという。中国内陸の砂漠化は深刻らしい▼その一帯から舞い上がった砂が、昨夜あたりから日本に飛来している。招かれざる春先の使者、黄砂の今季第一陣である。きょうは西日本を覆って広がるそうだ。雨の降らない地方では、空がぼんやり霞(かす)むかもしれない▼厄介者ながら、かつては春の風物詩でもあった。「霾(つちふる)」と言って、春の季題にもなっている。〈霾や太古の如く人ゆきゝ〉杜門。近ごろは「風情」とはいかない。洗濯物を汚し、体にまとわり、ときに飛行機の発着を妨げる。生活そのものを、砂がざらりと不快にする▼本場の北京あたりも、前は今ほどひどくなかったらしい。30年ほど前に訪れた文芸評論家の山本健吉は「ものみな黄色い薄膜を張ったようで、柔らかみを帯びている」と、のどかに記している。いまや北東アジア一帯で、風物詩は気象災害へと姿を変えている▼健康被害への心配もある。日本の環境省は先週から、日韓とモンゴルで観測した飛来情報をネットで提供し始めた。ところが肝心の中国が気象情報を「国家機密」として封印している。そのぶん予報の精度は霞むそうだ▼「砂進人退」とは逆の、「人進砂退」という言葉も中国にある。砂漠緑化のスローガンだという。黄砂を退ける知恵を出し合うためにも、関係国への情報提供を渋っている時ではないだろう。
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发表于 2008-3-5 09:27:50 | 显示全部楼层

2008年03月04日(火曜日)付

「アダムとイブの国籍は我が国である」という小話が、かつてのソ連にあった。「裸で暮らし、一つのリンゴを分け合い、それでいて天国の住人と信じている」(『世界のジョーク・警句集』自由国民社)▼ソ連が消えて17年、ロシアの衣食住は自虐話を懐かしめる程度には向上した。「米国製の車は世界最速だが、ソ連では世界で最も速く動く時計が生産されている」(同)の一編も今は昔。行きつ戻りつ、「まともな大国」への歩みは続くと思いたい▼5月にロシア大統領になるメドベージェフ氏はまだ42歳だ。米国大統領の座に迫るオバマ氏より、さらに4歳若い。自分より下の世代が世界を動かすのかと、流れ去った時をかみしめた▼もっとも、55歳のプーチン氏も首相として政権にとどまるらしい。これを、2人こぎ自転車に例えて「タンデム体制」と呼ぶそうだ。危なげな一輪車を8年乗りこなした後部座席の先輩が、ハンドルにも手を伸ばすのだろう▼強権で築いた安定と、原油高がもたらす繁栄。その陰で、万事に国家が介入し始め、大統領選も退屈な官製ショーの趣だった。安定と繁栄の両輪は、自由の風なしには心地よく回らない。自由の音、ロックが好きという新大統領にかじ取りも任せてみたい▼友人にタンデムを愛する夫婦がいる。普段は夫を尻に敷く妻が、ひとたび緑の愛車にまたがれば後席でペダルを踏むことに徹する。重くて小回りが利かず、速度が出るタンデムは倒れた時こそ怖い。前が見えない後席で、余計なことはしないに限る。
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发表于 2008-3-5 09:28:06 | 显示全部楼层

2008年03月05日(水曜日)付

ぽつねんと電柱あたりに止まっていても、何か良からぬことを考えている風情がカラスにはある。下を通る時は身構える。頭がよく、まれに人を襲うという話を聞いているせいだろう▼東京のカラスが6年ぶりに増えたそうだ。このほど都が発表した昨年12月の生息数は、前年より1割多い1万8200羽。最多だった01年の半分だが、捕獲作戦による減少傾向が途切れた▼都は、85年水準の7000羽を目標に駆除を続けている。だが、生ゴミの袋を網で覆うなどの対策が、特に繁華街で手薄だという。栄養たっぷりの東京育ちは、一度に産む卵が4~5個と多めで、捕獲だけでは限界がある▼『カラスはなぜ東京が好きなのか』(平凡社)を書いた松田道生氏は、都市の複雑なつくりが故郷の森に似ると見る。バブル期に残飯が増え、分別徹底のためにゴミ袋が黒から半透明になった。森の樹上から小動物を狙うように、カラスは電柱から生ゴミを容易に見つける▼「一羽ずつ見るとかわいいのですが」と駆除担当者。確かに、ただ生きているだけなのに、これほど嫌われやすい鳥もいない。「タヌキは間抜けでキツネはずる賢いという、本来の習性とは全く異なる見方をしていないか」(松田氏)との問いに、はっとする。カラスは実は遊び好き、街の掃除係でもある▼都市のカラスは、えさの過半を人間の活動に依存するらしい。数の増減は私たちの食生活のムダをも映す。ならば残飯を減らすことから始めたい。悪意も善意もなく、カラスは今年も繁殖期を迎える。
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发表于 2008-3-8 09:38:03 | 显示全部楼层

2008年03月06日(木曜日)付

江戸中ごろに始まる金魚売りは涼しげな商売で、夏の季語でもある。とはいえ、品物が泳ぐ水桶(みずおけ)を運んで売り歩くのは重労働だ。炎天下、よろけることもあった。〈金魚売り己(おの)れの影へ水零(こぼ)す〉中村苑子▼明治までの金魚売りには天秤棒(てんびんぼう)が欠かせない。両端に桶を下げ、真ん中を肩に担ぐ。昔の旅姿にある振り分け荷物のように、前後に等しく荷を下げ安定させた。同じことをすると、がぜん不安定になるのが自転車だ▼転ぶと命にかかわるから、前後に幼児を乗せれば交通違反となる。黙認してきた警察が「禁止」を強く打ち出すと、母親らから「送り迎えができない」「買い物に困る」と悲鳴が上がった▼警察庁は、安定して走れる自転車なら3人乗りを認める方針に転じ、メーカー団体に試作を要請したという。安定の工夫とは、低い重心や三輪化だろうか。ともあれ、母の声が行政と産業界を動かし、交通ルールを変えようとしている▼細腕に力を込め、よろよろと進む3人乗りは「子育て奮戦中」の見えない旗を掲げている。老いる日本が子を欲する時に、国が四角四面に育児の足を奪っては時代感覚を問われよう。かといって、危険な習慣を放ってはおけない。3人用の開発とともに、数年しか使わない「特殊車」の負担を軽くする道も皆で考えたい▼幼子を事故から守り、子育ての現実にも気を配る。どちらも譲れぬ安全と利便とを、社会の天秤棒にどうぶら下げるか。「金魚え~金魚~」の声に群がった人々のように、関係者総出でワイワイやれないか。
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发表于 2008-3-8 09:38:23 | 显示全部楼层

2008年03月07日(金曜日)付

作家の山口瞳が飲み助について書き連ねている。「純粋である。だから酒にむかってゆく。傷つきやすい。だから酒を飲む」(『酒食生活』ハルキ文庫)。大日本酒乱党を宣言した人らしい心意気だが、凡人の当方、その境地には遠い▼「悪い酒」は翌朝がいけない。失恋にせよ人事にせよ、やけ酒に走らせた現実は微動だにしていない。二日酔いが加わり、飲み代が消えているだけだ。さらには、酒が「嫌な記憶」を深めるとの説が本日の科学面で紹介されている。東大の松木則夫教授らによる動物実験だ▼箱のネズミに弱い電気刺激を与えると、次からは箱に入れただけで身をすくめるようになる。こうして恐怖を学習したネズミを、アルコールを注射する群としない群に分け、その後の反応を追った▼2週間後、「しらふ」の群は箱ですくむ時間が半減したが、「酔った」群はほぼ同じだった。どうやらアルコールには、一度思い出した記憶を強める働きがあるらしい。松木教授が語る。「嫌なことを思い出しながら飲むと、友の激励は忘れても、元の記憶はかえって強く刻まれかねない」▼ありもしないやけ酒の効用に、科学がとどめを刺したかに見える。ネズミが示す通り、つらい出来事も悔しい体験も、時が薄めていくものだ。明日を全力で生きるための本能かもしれない▼悲喜こもごもの異動の季節。職場という小さな箱で、身をすくめている人もいよう。気分転換の早道は、心だけでも箱から出すことだ。外は「楽しい記憶」の手がかりであふれている。
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发表于 2008-3-8 09:38:41 | 显示全部楼层

2008年03月08日(土曜日)付

10年ほど前、下町のステーキ屋での話だ。1000円の定食を出す小さなチェーン店。べろんとした肉は安いなりの味ながら、生野菜のドレッシングが妙にうまい。店主に言うと、種明かしがあった▼バブルの頃、都心の高級店で10倍の値の肉を焼いていたという。今は材料も作り方も本部の指示に従う身だが、サラダの味つけはこっそり自己流を通しているとのこと。「おいしい内規違反」に、料理人の意地を見た▼家庭の食卓でも、ひと手間、ひと工夫が「ウチの味」を膨らませることがある。それでは、手作りの基準とは何か。本紙の会員サービス、アスパラクラブの「おかずアンケート」(約1万4000人)が面白い▼例えば、缶入りミートソースを使ったスパゲティ。「手作り」と思う人は25%にとどまった。袋入りの素(もと)で作るマーボー豆腐は41%、市販のつゆ・たれを用いた肉じゃがは62%が手作りと認めた。女性はお年を召すほど判定が辛くなるようだ▼冷凍ギョーザの件で手料理が見直されている。素性確かな食材は安心だが、「さあ一から手で作るぞ」と力んでは続くまい。されば手作りの基準を緩め、ひと手間から始めるのもよかろう。缶ソースのスパゲティも、バジルの葉をちぎれば手作り感が出る▼アンケート結果を見た料理研究家、高城順子さんは「失敗しないと上手にならないから、恐れずに作ってほしい。食べてしまえば証拠隠滅」と励ます。失敗作を笑って囲めるのも家族である。同じ台所からいずれ、来客が由来を聞くほどの一品が生まれる。
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发表于 2008-3-8 16:30:43 | 显示全部楼层

お疲れ様でした

本当に勉強になしました。ありがとう。
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发表于 2008-3-11 11:29:06 | 显示全部楼层
天声人語" c, O6 b1 F! Y! o
2008年03月09日(日曜日)付$ O1 f; g1 e9 r1 k

7 [- D- y. z6 c! F. o桃の節句を過ぎてなお、弥生の空は、春の誘いと、冬の名残に揺れているようだ。人の思いも、どこか似ている。たとえばこの季節の旅。春を迎えに南へ行くか、冬を追って北へ向かうか。楽しくも心迷うものがある▼とはいえ遠出はかなわず、せんだって手軽な「春」を迎えに隣の山梨県を訪ねた。桃の産地である。早生を育てる大きなビニールハウスで、早咲きを楽しませてもらった。山々は雪で白いが、20度あまりに保たれた中は花盛りである▼かすかに聞こえる羽音は、授粉のために放たれたミツバチの乱舞だ。下草も青々と伸びている。萌(も)える青草を踏んで野山を散策する楽しみは、「踏青」といって晩春の季語でもある。ひと月早い「春の野」に寝ころべば、体はほどけて眠気を催す▼2月の異名を「梅つ月」という。3月は「桜月」である。凜(りん)と咲く梅、艶(えん)と散る桜。2人の姉に挟まれて、桃はおとなしい末っ子のようにつつしみ深い。その桃が、古くは厄よけの霊力を持つ木として信仰を集めていた▼歌人の生方たつゑさんは幼いころ体が弱かった。母親は、桃が咲くと湯船に花枝を浮かべて湯浴(ゆ・あ)みをさせた。体の中の鬼を追い出すからと言い、「手のひらを丸めてすくったお湯を、肩にも、背にもかけてくれた」。そんな回想を残している▼男には立ち入りがたい、母と娘の世界だろう。たおやかなひとときには、桜や梅より桃の花がよく似合う。〈子も猫も母の近くに桃の花〉永田英子。凜でなく、艶でもなく。さて、どんな一字を桃に献じようか。
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发表于 2008-3-11 11:29:30 | 显示全部楼层
天声人語
+ B3 J5 Y* d; h" D; r2008年03月10日(月曜日)付
- n+ _( W& q# G" i* `  {3 W4 F
% O/ M4 z$ ]* j8 H, e2 O* x9 ?5 n2 Bスポーツと観衆について、一つの「法則」があるそうだ。勝者が得るものと敗者の失うものの差が大きいほど興奮は増す、のだという。人気チームの戦いも、親善試合では盛り上がらない▼激しい一騎打ちが続く米民主党の大統領候補者選びで、勝ちと負けの落差は「雲と泥」である。米国民は盛り上がらずにはいられまい。渾身(こんしん)の腕相撲を伝えるような報道は、太平洋のこちら側でさえ、連日引きも切らない▼オバマ氏の勢いに、一時、ヒラリー・クリントン氏の手はつきかけた。しかし先週、「残り1センチ」から五分に戻した。理由が様々に分析された中、「もっと勝負を楽しみたい」という有権者の気分を誰かが指摘していた。まだどちらも負かしたくないのだろう、と▼盛り返したものの、彼女の泣きどころは、やはり「ヒラリー嫌い」の多さだろう。嫌われる理由を、「女だからか。それとも、ああいう女だからか」とあげつらわれる。大統領になれば「好き」と「嫌い」で社会が分裂しかねない、などと負のイメージが足を引っ張る▼米国人は過去の大統領の品定めが好きだ。多くが最高と認めるのが南北戦争時のリンカーンである。伝説的な雄弁に加え、国家分裂の危機を救ったからだ。多民族の国ゆえに、「一つのアメリカ」という言葉は日本人の想像をこえて重い▼勝負の分かれ目は「心の準備」だとも言われる。女性と黒人。どちらを大統領に迎える心の準備が、米社会に早く整うか。民主主義の守護者を自任する国での、思えば歴史的な戦いである。
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发表于 2008-3-11 11:29:49 | 显示全部楼层
天声人語
/ Z. E5 Y9 R  i: a, ?3 B2008年03月11日(火曜日)付, r, i% \' m0 v! L' M5 a7 G

* G+ T) M5 k- [* `# E9 Q# _蛇の頭と尻尾(しっぽ)が争う、古い寓話(ぐうわ)がある。いつも頭の行く所へ付いて行かなくてはならない尻尾は、不満たらたら。天に向かって「私は頭のお付きじゃない」と訴え、たまには先を歩かせてほしいと頼む▼天は訴えを聞き入れるが、そのため蛇はあっちにぶつかり、こっちにつまずいて、地獄の川へと向かっていく。頭と尻尾が張り合って蛇が迷走するさまが、衆参両院の「ねじれ」に、つい重なってしまう▼いまは日本銀行の総裁人事が迷走している。日銀は通貨の元締だ。「物価の番人」とも呼ばれ、金利を調整して暮らしの安定に大役を担う。総裁は政治から独立した司令塔であり、外に向けては日本の金融政策の「顔」となる▼政府は、副総裁の武藤敏郎氏を提案した。参院で多数の民主党は、かたくなに反対の構えだ。この人事が流れれば、総裁不在という異例の事態になるという。そうなれば市場が動揺する。株価急落も案じられると聞けば、わが経済オンチの頭でも職の重みの見当はつく▼「不在は許されない」と言いつつ、自民は自民で、予算案などの採決を衆院で強行した。そうして民主が燃やす反対の炎に、わざわざ油を注いだ。「蛇の胴体」ともいえる国民に分かりづらい、頭と尻尾の政争が、このところ多すぎはしないか▼蛇の頭と尾の話は、ラ・フォンテーヌの『寓話』(岩波文庫)に登場する。短い話は、〈こういうあやまちに陥った国家こそ不幸〉と結ばれている。国民を冷たい川に落とすことのない、実のある「ねじれ」であってほしい。
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发表于 2008-3-12 12:11:59 | 显示全部楼层
天声人語
( }( w2 H. W& f0 s% V* x; L0 f2008年03月12日(水曜日)付) F1 a5 c" u& Z

3 _: r1 w  \2 P1 f" L7 A  Z かなしい恋の物語、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』は、名せりふ満載である。若い2人が、敵同士である互いの家名を捨てたいと嘆く場面は、特に名高い▼〈名前ってなに? 薔薇(ばら)と呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま〉(小田島雄志訳)。共感を誘うのは真理を突いているからだろう。だが半面、名前そのものにも消しがたい「香り」は宿る。呼び換えることで、名前の纏(まと)うもろもろが、失(う)せてしまうこともある▼「聾(ろう)学校」という名前を、「聴覚特別支援学校」に変える動きがある。学校教育法の改正を受けての措置だという。それに待ったをかける静岡市の山本直樹さん(35)の話が、先ごろ本紙に載った。自身も聾学校で学び、「聾」という言葉に誇りがある▼全日本聾唖(ろうあ)連盟も改名に反対している。学校は長い歴史を持ち、手話などの聾文化を育んできた。さまざまな香りが、その名にこもる。そして「特別支援学校」では、聾者が、支援される低い側に位置づけられると、山本さんは心配する▼お役所表現はしばしば、冷ややかな香を放つ。最近の筆頭は「後期高齢者」だろう。75歳以上につけられた名称だ。「ついに年齢の断崖(だんがい)に追い詰められた感」などの不評が、本紙声欄に寄せられている▼別の名前にしてみても現実はそのまま、かもしれない。しかし、たとえば枝豆を、以前の役所統計のように「未成熟大豆」とつづれば、居酒屋の品書きは味気ない。老いの日々を温めるような呼び名はなかったのだろうか。
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发表于 2008-3-13 09:32:24 | 显示全部楼层
天声人語5 f$ y& O8 u: @0 X, J! Y- z; F6 Z
2008年03月13日(木曜日)付
. o! t$ \  S, \, y2 }& c, h7 q* l5 d4 \
古書の世界は奥が深い。値段もピンからキリにわたる。二束三文の投げ売りもあれば、値の張る稀覯本(きこうぼん)もある。漱石の『吾輩(わがはい)は猫である』の初版など、上中下そろった美本だと300万円ばかりするらしい▼名高い『猫』もたまげるような、とびきりの「稀覯本」を、国土交通省が秘蔵していると聞いた。1冊あたりの製作費は約3000万円。海外の道路事情の報告書だが、内容は猫もまたぐお粗末さらしい。カネの出どころは、あの道路特定財源である▼民主党の細野豪志衆院議員が調べ上げ、国会で質問した。国土交通省が「国際建設技術協会」なる団体に、9000万円余で発注した。むろんOBの天下り先である。3カ月ほどでまとめ上げ、3部しか製本しなかった。そもそも誰も読まない前提としか思えない▼中身の多くは、世界銀行の資料やインターネット事典などからの拝借という。独自の分析や考察は見あたらない。「天下り先を養うためだけの報告書。税金が自分の金であるかのような錯覚がしみついている」と細野氏は憤る▼税の蜜壺(みつつぼ)に無数のストローが、巧妙に突っ込まれている。これは、その1本にすぎないと誰しも想像がつく。かくて公金は「かけ流し」の湯のように、暗い溝に落ちていく▼〈役人は人民の召使である〉と漱石の猫は作中で言う。続けて、権力を笠に着るうちに勘違いして、人民など何ほどでもなくなってくる、と公僕精神の退廃を嘆いている。それから1世紀。猫の嘆きに細野氏の怒りが重なる百年一日ぶりが、やりきれない。
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发表于 2008-3-14 15:09:51 | 显示全部楼层
天声人語5 Y$ g% c4 T) J$ m9 G8 a, i
2008年03月14日(金曜日)付5 F: t- w* ?# f  q* Q8 N0 A8 |
) K, d5 `8 v  A, ~+ }
魚偏(うおへん)に雪と書けばタラ、冬だとコノシロ、では神は? 漢字にならって日本で作られた国字には、魚偏の文字が一番多いという。判じ物さながらの難読ぞろいだが、日本人と魚の深い縁を示す証しでもある▼大正の頃は「一大国民が食糧の主要なものを海にあおいでいる例は他にない」と、欧州の地理学者を驚かせた。ところが近年、かつてない「魚ばなれ」が食卓に起きている。さばくどころか、さわれない若い人もいるらしい。歯止めをかける取り組みが、各地で芽生えている▼東京の築地市場の一角では「おさかなマイスター講座」が昨秋から始まった。目利きや料理の仕方などを初心者も学べる。11回で12万円余と受講料は高めだが人気は高い。卒業生には、知識を周りに広める「語り部」の期待もかかる▼秋田での講座は、魚介を生物学的に学んだあと、料理をする。先月は秋田大の石井照久准教授がハマグリの心臓やエラの講義をし、酒蒸しにして参加者と食べた。「いただくものの命のさまを知ることは、人生の滋味になる」と、料理好きの石井氏は言う▼親が子に伝える「料理」をつづった、石垣りんさんの詩を思い出す。〈鰹(かつお)でも/鯛(たい)でも/鰈(かれい)でも/よい。丸ごと一匹の姿をのせ/よく研いだ庖丁(ほうちょう)をしっかり握りしめて…頭をブスリと落すことから/教えなければならない〉▼様々な魚偏が、人の命につながる。乱獲を戒めつつ舌鼓を打ちたい。ところで冒頭の「鰰」は秋田の特産ハタハタ。獲(と)りすぎによる激減の教訓を残した美味(うま)くて苦い魚である。
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