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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2008-7-31 10:35:45 | 显示全部楼层
2008年7月31日(木)付
9 e: T0 K  s9 ]3 q& w7 H% w8 T3 x7 h9 c
 北京の街を、夏の熱気と靄(もや)が包む。高揚と期待、不穏やナショナリズムが、大気汚染の靄に溶けるように入りまじる。五輪の開催が秒読みに入った7月の言葉から▼実力通りの記録がなかなか出せなかった走り幅跳びの池田久美子さん(27)は、最後の競技会で代表に滑り込んだ。初の五輪だ。「久々に味わう浮遊感でした。逃げなかった自分をほめてあげたい」と目を赤くした▼お母さん選手、クレー射撃の中山由起枝さん(29)は、シドニー五輪では予選落ちした。一度は引退したが、「将来、娘に五輪の話をしても、負けたことしか話せない」と復帰した。娘に捧(ささ)げるメダルをめざす▼祖国ブラジルの選手として男子400メートル障害に出る杉町マハウさん(23)は、日本で暮らす。「心は日本人、向こうの監督に握手でなくお辞儀をしそうになってしまう」。移民100周年の節目に、「両国の懸け橋になりたい」とさわやかだ▼片や、北京からは厳重警備の報道が続く。大枚をはたいて観戦券を買った女性の大学教授(46)は、「どこで爆発が起きるか分からない」と不安がりつつ、「自分の国で五輪なんて一生に一度見られるかどうか。もう少し悩んで決めます」▼反日的な行動への心配もある。昨秋、女子サッカー日本代表は中国観衆の罵声(ばせい)を浴びた。だが試合後、「謝謝」の横断幕を観衆に掲げた。大学生の汪翠霞さん(22)は回想して言う。「日本は試合に負けたけど観客の尊敬を集めた。精神的には勝ったんだと思う。日本に学びたい」。開幕まで、あと8日となった。
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发表于 2008-8-4 12:32:31 | 显示全部楼层
2008年8月1日(金)付1 k: |! L. P) m( Y" j

  {3 ?. s2 A" @ 鶴彬(つる・あきら)という川柳作家を、どれほどの方がご存じだろう。昭和の初め、軍部などを批判する川柳を次々に作った人だ。特高に捕まって勾留(こうりゅう)されたまま、1938(昭和13)年に29歳で死んだ。今年が没後70年になる▼軍国色に染まる時代に立ち向かうように、その句はきっぱりと強い。〈屍(しかばね)のいないニュース映画で勇ましい〉〈銃剣で奪った美田の移民村〉〈手と足をもいだ丸太にしてかえし〉。2句目は旧満州への入植を、3句目は、手や足を失った帰還兵を詠んだものだ▼資本家にも痛烈な目を向けた。〈みな肺で死ぬる女工の募集札〉。紡績工場では、過酷な労働で胸を病む者が絶えなかった。〈初恋を残して村を売り出され〉は、貧困ゆえの娘の身売りである▼石川県で生まれ、本名は喜多一二(かつじ)といった。同じプロレタリア文芸家で、『蟹工船』を書いた小林多喜二に、字づらが似ているのは不思議である。大阪の町工場で働きながら、世にはびこる「非人間性」への怒りを燃やしていった▼その生涯をたどる映画作りが、70周年を機に始まっている。映画監督の神山征二郎さんは去年、人づてに鶴の話を聞いた。こんな人がいたのかと驚き、「もっと世に知られるべきだ」という思いに背中を押された▼「日本の破滅が見えていて、『この道を行くべからず』と叫び続けた人」だと、神山さんは、その人間像を胸に描く。そして鶴の死後、日米開戦から敗戦へと、日本が破滅への道を突き進むのは周知の通りである。内外の苦難への思いを深める8月が、今年もめぐってきた。
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发表于 2008-8-4 12:33:16 | 显示全部楼层
2008年8月2日(土)付
$ h1 E6 y( G. P0 t4 F+ X- K0 s
/ y4 E2 b8 ^9 c8 l 思索的な随筆で知られた故・串田孫一さんが、幼時に買ってもらった12色の色鉛筆について書いている。物の豊かでない大正時代のこと、使えば短くなる色鉛筆を惜しみながら、力を入れず、そっと淡く色を塗ったそうだ▼今の子のように、ぐいぐい塗り込んでは描けなかったと回想している。さて、自前のカラーを出すべく内閣を改造した福田首相はどうだろう。思い通りにぐいぐい色づけしたのか。それとも党内のしがらみに縛られて、ろくに色づけ出来ずに終わったのか▼改造に先立つ自民党人事では、「きのうの敵」だった麻生氏を味方につけて幹事長に置いた。解散総選挙に向けての「顔」である。けられる心配もあったようだが、まずは挙党一致の色を濃く塗ったといえる▼意外と言っては失礼だろうか。新内閣の顔ぶれは「しがらみ色」をさほど感じさせない。党三役をそろって閣僚に横滑りさせた。派閥間のバランスも、例によってなかなかのものだ。とはいえ、何とか「適材適所」と折り合っている印象は残す▼だが、わだかまるものもある。結局は選挙のための改造で、政策のためではないのでは、という不信だ。口をそろえて「難局」を叫んでも、それが党の難局であって、国民の難儀でないようでは困る▼冒頭の串田さんには後日談があって、還暦を過ぎて60色の色鉛筆を贈られたそうだ。鉛筆は申し分ないのに絵が下手で、と悔しがっている。ぐいぐい上手な絵を描いて、それを絵に描いた餅に終わらせない。国民が期待するのは、そんな首相に違いない。
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发表于 2008-8-4 12:39:54 | 显示全部楼层
2008年8月3日(日)付6 v+ R- x7 t. X  f+ M1 j  M( {

9 D( m0 i  l: H1 x. {; t キャッチボールが見直されているという。危ないからと閉め出された公園に、フェンスを設けて「呼び戻す」動きがある。素手で受けられるゴム製の専用球もある。相手が捕りやすいよう胸に投げ、それたら「ごめん」と笑顔を送る。快い汗を流しながら、意思疎通のイロハや思いやりが身につくのがいい▼「夏の甲子園」の開会式に先立ち、元球児の親子100組がキャッチボールを楽しんだ。かつてスタンドを沸かせた名選手11人も、懐かしい母校のユニホームで加わった▼中に、PL学園出身の桑田真澄さんがいた。甲子園で通算20勝。読売ジャイアンツを経て大リーグに挑み、この春引退を表明した。週刊朝日の増刊号で、1年生として優勝した83年夏を語っている▼控え野手だった桑田さんは、大阪大会の途中から先発投手に起用される。代表はつかんだが、カーブは全く曲がらず、直球しか投げられなかった。弱音をもらす桑田さんに、臨時コーチが言う。「大丈夫。甲子園に行ったらカーブは曲がる」。報徳学園などを率いて甲子園に8回出た故清水一夫さんだ▼初戦の初回、背番号11が投じたカーブは大きく落ちた。桑田さんは「努力していれば、必ず神様が降りてくる」と話す。そこでは、いつもと違う何かが起こる▼キャッチボールから始めた少年たちの頂点が、この夏も聖地に集まった。神様もいれば魔物もすむ甲子園。どちらに出会うのも出場のご褒美である。神様がどのチームにも優しく、魔物が昼寝していることを祈りながら、白球のゆくえを追いたい。
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发表于 2008-8-4 12:43:12 | 显示全部楼层
2008年8月4日(月)付1 q" |  t+ a) x3 a
; a1 n: W, |& N8 v
 その悲報に、「シェー」が小さく出た。ギャグ漫画の神様、赤塚不二夫さんが72歳で亡くなった。ひょっとして、ご本人は「これでいいのだ!」であろうか。ここ10年、大病が重なり覚悟はしていたが、赤塚ギャグで育った世代としては万感の「シェー!」で送るしかない▼最初の衝撃は「おそ松くん」だった。おフランス好きのイヤミ、おでんのチビ太、デカパンやハタ坊。ところ構わず出てくるおかしな脇役と、めちゃくちゃな展開に笑い転げた▼読み切りで売れ始めた赤塚さんに、「少年サンデー」が4週連載を注文したのは1962(昭和37)年。「どうせ4回じゃないか、思いっきり暴れて終わってやろうじゃないか」(自伝『これでいいのだ』)。この勢いに悪ガキたちは打ちのめされ、「おそ松くん」は連載5年を超す出世作となる▼それまでの漫画がのんびりした落語調なら、急テンポのドタバタ映画。ページを繰るたび、理屈抜きの笑いが飛び出した。そんな赤塚さんの世界は、論理や常識で動く世の中が一方にどんと構えていてこそ、輝いたように思う▼スピード感あふれるナンセンスは、60~70年代の日本の元気にも共鳴した。いま匹敵する才能がいても、漫画以上に不条理な現実に埋もれるか、よどんだ空気に浮いてしまうのではないか▼映画監督の伊丹十三さんが赤塚さんのすごいところとして、「世の中の方が彼のマンガに似てくるもんネ」と核心に触れたのは33年前だ。壊れっぷりに拍車がかかる社会を残し、昭和を「線」で笑わせた鬼才が旅立った。
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发表于 2008-8-5 02:34:52 | 显示全部楼层
天声人语啊 % y- J( }2 G' q' d
要支持一下啊~~
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发表于 2008-8-5 12:59:41 | 显示全部楼层
2008年8月5日(火)付4 ~, z5 Q; [5 f+ ~' T3 d' Q9 [

( V: L- [  w& y* x2 g 輝く鉱石を思わせる白い袖口から、両手が紙に伸びている。女が視線を落とすペン先からはどんな思いが流れ出ているのだろう。17世紀オランダの画家、フェルメールの〈手紙を書く婦人と召使い〉だ▼東京都美術館で「フェルメール展」が始まった。わずか三十数点の真筆から、日本初公開の5点を含む7点が集まった。同時代の画家の作品も楽しめる(12月14日まで)▼晩年、といっても40歳を前に描いた〈手紙を――〉は、画家が最後まで手元に残していた一枚だ。死後、借金の形(かた)にパン屋に渡り、欧州を転々とした。74年と86年、ダブリン近郊の同じ豪邸から盗まれたことでも知られる▼朽木(くちき)ゆり子氏の『盗まれたフェルメール』(新潮選書)によると、再度の盗難を受けた修復で、婦人の左まぶたに針穴が見つかった。カンバスの一点から放射状に糸を張り、遠近を正確に描いたとの仮説がここから生まれた。手紙の中身、画法ともに定説はない。答えを知るはずの召使いは、思わせぶりに外を見やるのみだ▼多くは左から陽(ひ)が差す室内に、画家は楽器や地図を配して日常を描いた。どの絵も、抑制の利いた画面に安らぎの光が満ちる。晩年はそこに寓意(ぐうい)を忍ばせもした。静謐(せいひつ)と冗舌▼米ボストンの美術館から消えたままの〈合奏〉を含め、世界に散ったフェルメールはどれも波瀾(はらん)万丈だ。希少価値をわが目で確かめようと、一生かけて全作を訪ねるファンも多い。作品の2割がいま、縁あって酷暑の東京にある。「巡礼」を思い立った人には、この上ない始発駅となろう。
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发表于 2008-8-7 09:54:28 | 显示全部楼层
2008年8月6日(水)付
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 先ごろ長崎市であった国際平和シンポジウムに、少し勇気がわいた。米メリーランド大、ナンシー・ギャラハーさんの発言だ。「米議会は核兵器は無意味だと考え始めている。次期大統領が核廃絶を唱えれば、国民は支持するだろう」▼炎天下で平和への思いを新たにする時節だが、冷戦終結で期待を持たせておきながら、人類は進歩を止めたかに見える。腹立たしいのは、国際社会で核兵器がいまだに大きな顔をしていることだ▼大量破壊の道具を後生大事に抱えているのは、本来、恥ずかしいことだろう。枕元に銃がないと寝つけない親分にも似て、実は弱さの証明なのだ。その恥ずかしい核が、国際関係の場では「格」になる▼核保有を宣言したとたん、北朝鮮は米国と交渉できる立場になった。独裁者は「もっと支援を」と図に乗るばかりだ。ほどなく「平和の祭典」を開くのはアジアの核軍事大国。思えばその次の五輪を争ったのも、英仏海峡を望む核保有国同士だった▼この現実、広島と長崎の犠牲者は許すまい。報いるために、反核を叫び続けよう。個々の叫びが国際世論をつくり、為政者を動かし、歴史を変える。米国の指導者が交代する好機に、「熱意の連鎖」をうねらせたい▼「英語を話せるようになって、世界中の人におばちゃんの言葉やヒロシマの心を伝えたい」。大伯母(82)に被爆体験を聞いた広島市の小学6年生、今井穂花(ほのか)さんの思いだ。今井さんは本日の記念式典で、同学年の本堂壮太君と「平和への誓い」を読む。また一つ、明日への連鎖が始まる。
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发表于 2008-8-11 12:27:33 | 显示全部楼层
2008年8月7日(木)付& g3 z8 D- {5 o  ~  O( Y" z/ _* L

1 V& B( e& p+ a! z* ~( j/ G 結婚して子どもがいる女性にとって、40代後半から60歳前後は務めも望みも多い充実期だろう。子育ては仕上げに入り、家計と格闘しながらも余暇は増えていく。夫と老後を語り、孫に癒やされる人もいよう。人生は盛りの夏から、実りの秋へと移る▼その輝くべき14年を病床で過ごし、いや闘い、河野澄子さんが亡くなった。94年6月の松本サリン事件で倒れて以来、うらみや怒りの一言もないままにだ。チューブにつながれて還暦を迎えることで、宗教をまとったテロの狂気を告発し続けた▼異変を真っ先に通報した夫の義行さん(58)は、妻の容体を気遣ういとまもなく、警察とマスコミに容疑者扱いされた。報じる側に身を置く者として、こうべを垂れるほかない▼義行さんは報道被害についての講演や著述の傍ら、14年を妻の介護に費やした。ある日、家族で行った鎌倉の話をしながらマッサージをしていたら、澄子さんが涙を流した。気持ちの高ぶりか、ただの生理反応か。「私は、感情だと思うことにした」(『妻よ!』潮出版社)▼事件当時、年子の1男2女は高2から中3だった。何年かで訪れる、夫婦だけの熟した時に備えてだろう。澄子さんは木彫りや書を習い始めていた。海外旅行をするならベネチアがいい、とも▼改めて、人を危(あや)めることの罪深さを思う。あったはずの歳月が、幾多の喜怒哀楽もろとも失われる。「好きな音楽を流し、3日間は家族だけで送りたい」と夫。きょう立秋の蝉(せみ)時雨も加わり、人生の夏から先を奪われた女性が安らぎの地に赴く。
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发表于 2008-8-11 12:34:51 | 显示全部楼层
2008年8月8日(金)付
9 Y: K& J; }9 O. M7 ^) f
+ c! l, F" v9 _5 x& S6 S5 r ブウタとけんかした子豚のブブコが、怒りを火力にする不思議なフライパンを拾う。ギョーザを焼いたらおいしくて、まだプリプリしているブウタにも焼かせて仲直り。いろんなことで怒っている友だちにも次々と焼いてもらい、みんなニコニコになったとさ。絵本『いかりのギョーザ』(苅田澄子作、大島妙子絵)だ▼ギョーザは動物たちに笑顔を、日中には相互不信をもたらした。その中国製冷凍ギョーザの中毒事件で、新たな展開である。現地で回収された製品を食べた人たちに、同じ中毒が起きていた▼「国内での毒物混入はない」という先方の主張はほぼ崩れた。ああ、やっぱり。回収品が出回るのも論外だが、そもそもの調査がおざなりだったのだろう▼意外にも、中国側はこの「不都合な真実」をひと月前に日本に伝えていた。表に出たら捜査に差し障ると言われたらしく、政府は公表しなかった。せめて五輪が終わるまでと頼まれたのか。慶事を控えた国への配慮がのぞく▼だが命にかかわる国民の関心事を伏せては、強権国家を非難できない。日本に非がないならなおのこと、訪中する福田首相に、言うべきことを言う覚悟はあろうか。妙な遠慮は捨てないと、ブブコとブウタの関係にはなれまい▼絵本では、最後に怒ったフライパンが「あんたら、いくらなんでもこきつかいすぎやで」と自ら熱くなり、全員集合のギョーザ祭りとなる。食の安全、貧富の差、大気汚染、人権、チベット。あらゆる怒りの火種をフライパンから遠ざけて、いよいよ祝宴の幕が開く。
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发表于 2008-8-11 12:49:48 | 显示全部楼层
2008年8月9日(土)付
% _4 ~6 y+ _3 H5 K9 y# G5 ]9 s5 b3 T1 f& w6 ^* ^. f4 Q4 u
 開会式の演出が「極秘」となったのはどの五輪からだろう。東京では無名の青年が淡々と階段を駆け上がり、青空にトーチをかざした。素朴な時代を思いながら、天女が舞い飛び、ハイテクと「人力」で中国文明を誇示する式典を間近に見た▼空前の厳戒の下で「平和の祭典」の幕開けである。警察と軍で約140万人。市民有志も加わって、歓迎ムードの後ろから数百万の目が光る。地下鉄に乗る前、長い列に並んで持ち物のチェックを受けた。高揚と緊迫が混じる街を、もやとサウナのような湿気が覆う。夕日は下敷きを通して見たように黄色い▼その空をミサイルがにらむ図は、9・11テロ後の世界そのものだ。少数民族、人権、貧富の差。宴(うたげ)を前に、国内の矛盾や摩擦に重しを載せた。そこから、いつ、何が飛び出すか分からない▼開会式会場の愛称「鳥の巣」から、つい「累卵」の故事を連想してしまう。卵を積み重ねたように危うい状況のたとえだ。開幕直前にも、テロとおぼしき事件が国内で相次いでいる▼ユートピアという言葉を思う。理想郷などと訳されるが、もとはギリシャ語からの造語で「どこにもない場所」の意味だという。思えばオリンピックも、4年ごとに地球上に出現する人工の祝祭空間にほかならない▼無理と危うさが目立つ中国製の「理想郷」。だがそこに集い、ひたむきに戦う選手の姿は変わらない。なんとかたどり着いた聖火は「天翔(あまかけ)る最終走者」が北京の夜空に灯(とも)し、幕は開いた。最高級の心技体が、万全の安全の下で躍動せんことを祈る。
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发表于 2008-8-11 12:50:36 | 显示全部楼层
2008年8月10日(日)付
$ U7 q/ d5 b. F% ?0 r$ y* \" C1 _. O% o* M/ F( @8 b* _
 古い時代の中国の詩人、陶淵明に「桃花(とうか)源記(げんき)」という散文がある。ある男が山深い渓谷をさかのぼるうち、世の塵芥(じんかい)を隔てた桃源郷に迷い込む話だ。桃源郷から帰った男は再び訪ねようとするが、その道は二度と見つからない▼昨日の小欄でも触れたが、北京五輪の開会式は桃源郷さながらだった。一夜明けても北京っ子は興奮さめやらない。壮観な出し物は中国のナショナリズムを大いに刺激し、ナルシシズム(自己愛)をくすぐったようだ▼だが、威信をかけたスペクタクルも、主役である選手の行進にはかなわなかったように思う。砂漠の熱、スコールの白雨、草原の風。様々な風土があり、文化があり。雰囲気をまとう各国選手の姿が、世界の多様さへの想像を膨らませてくれた▼その祭りに水をさすように、黒海のほとりから戦火の煙が上がった。137番目に入場したロシアと、153番目のグルジアとの武力衝突だ。空爆や地上戦で市民の死者が多数出ているという▼この日の北京には各国首脳が集っていた。ロシアのプーチン首相から「戦争が始まった」と聞いたブッシュ米大統領は、自制を促したと伝えられる。だが戦火は広がりつつある。「一つの世界、一つの夢」を演出した「鳥の巣」を一歩出れば、現実の世界は生々しく、きな臭い▼「桃花源記」を陶淵明が書いたのは1600年ほど前。その心中には、戦乱の続く世への幻滅もあったらしい。グルジア大統領は「戦時状態」を宣言した。遠い時空を隔てて、戦う性(さが)を克服できない我々の姿が浮かび上がる。
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发表于 2008-8-11 12:55:07 | 显示全部楼层
2008年8月11日(月)付
3 ]3 n" X  P6 q- R) ]: _; j  n) I3 g
! J$ C! r: \" ^1 p8 s) d0 _ 世界の白地図を前に、黒海とカスピ海を指せる人がどれほどいるだろう。ましてや、二つの海に挟まれた地がいかなる国々に属するのか、即答できる博識はそういまい。喜ぶ話ではないが、そのカフカス地域の詳しい地図が紙面に連日出ている▼黒海に面したグルジアと、ソ連時代まで一帯を支配していたロシアの武力衝突である。火種はグルジア北部の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国。ともにロシア軍が常駐し、事実上の独立状態にある。そこにグルジアが進攻、ロシアが反撃し、多くの死傷者や避難民が出たと伝わる▼一つの国の中に独立をめざす自治州や共和国があること自体、島国育ちは面食らう。南と名がつく自治州は、実は国土の北辺に位置し、埼玉県ほどの領地に大統領までいる▼「ややこしい地域」の基礎知識は、硝煙に乗って広まるらしい。90年代のユーゴスラビア紛争は、バルカン半島が民族や宗教のモザイクだと知らしめた。私たちは再び、地理と歴史と国際政治を生の教材で学ぶのか。望まぬ夏季補講だ▼カフカス、英語のコーカサスには5千メートル級の雄峰が連なる。ギリシャ神話のプロメテウスは、天上の火を人間に与えて最高神ゼウスの怒りを買い、この地に鎖でつながれた。「火薬庫」の戦火も封じ込めるほかない▼ほぼ同緯度の中国・新疆ウイグル自治区では、五輪便乗の暴力が続く。こちらもシルクロードの時代から民族と宗教がせめぎ合い、ややこしさでは負けない。「あとで引いた国境」の危うさを思いつつ、当事者の自制を求める。
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发表于 2008-8-12 09:06:06 | 显示全部楼层
2008年8月12日(火)付
3 _$ @% ]; T1 @) n  X+ F( n9 x5 P/ |" I( e, V, p- A. s
 この季節、クラゲになりたい時がある。ふらふらと夜風に誘われ、満天の星を仰いで波まかせ。次はクラゲに生まれたい、とまでは思わぬが、管理社会から遠いその姿は逃避の虫をくすぐる▼「漂う生き方」を見習いに、都内の水族館を訪ねた。漂うのではなく、半透明の傘を開閉して水中を泳いでいた。タコクラゲは元気よく、ミズクラゲは優雅に。「水母」とも書く通り、水の惑星の先住民を思わせる。これを癒やしと見るのは、しかし片思いだ▼今年はクラゲ被害の出足が早いという。神奈川県の江の島では、海水浴客300人近くが刺された日もある。7月からの高温と日照が成長を促し、アンドンクラゲなどが大量発生したらしい▼殻も甲羅も、逃げ足もないから、毒で身を守るしかない。みだりにさわるものには、触手が一撃を見舞う。クラゲに放言させれば、サルの仲間が海で遊ぶのが間違い、となろうか▼ミジンコ好きで知られるジャズミュージシャンの坂田明さんは、著書『クラゲの正体』でクラゲ博士の故柿沼好子さんと対談した。柿沼さんいわく。「人間がかまわず海を汚すと、クラゲはその身を削り命をかけてクリーニングしなければならないから、どんどんやせてしまう」。クラゲには海水の浄化作用があるとされる▼〈命透け海月(くらげ)に秘するものはなし〉江口かずよ。水と戯れる姿は、なるほど、どこか悲しい。浜辺の嫌われ者も、生態系の小さな歯車として何かの役に立っているはずだ。クラゲが生きやすい海は、人が住みやすい陸と一対のものである。
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发表于 2008-8-13 10:05:27 | 显示全部楼层
2008年8月13日(水)付
- X% M4 A) T: N9 ^  J/ c
4 D& \! g- d# d5 b 朝の街路樹にセミの抜け殻がしがみついていた。歩道に目をやるとアブラゼミが裏返しになっている。まさか殻の主ではなかろうが、生と死がせわしなく行き交う夏半ばである▼地中で何年も過ごすセミは、むしろ長寿の虫といえる。しかし地上にいる期間が短いために、生まれる端から死んでいく印象が強い。虫かごに入らなければ、その短い日々は子孫を残すのに費やされる。人間の場合、そこからが長い▼日本人の07年の平均寿命が過去最長を更新した。女性は23年続けて世界一の85.99歳、男性も3位の79.19歳。これは0歳児が何歳まで生きるかという数字で、病気や事故を乗り越えてゆけば、例えば70歳の男性は85に迫り、女性は89を超す人生が見込まれる▼三大死因のがん、心臓、脳の病で亡くなる人が減っているそうだ。医療や年金制度のほころびで「長生き地獄」とまで言われるが、長寿そのものは古今東西を問わぬ喜びであろう▼女優の桃井かおりさん(57)が、過日の毎日新聞で「こじゃれた長生き」について語っていた。「わたし、死んだら死体の役で使ってほしいの。そこまで俳優やりたいのね……120歳ぐらいまで生きたら性別もなくなって、おじいさんもできるかもしれないし」▼医療技術の発達で、生物としての存続はそこそこ期待できる。ビールと枝豆に生き返るような、ささやかな喜びを重ねる幸せ。その上で、誰もが望むのは最後まで張りのある人生だ。「平均」を大きく超えた人たちが、誕生祝いのたびに「もう1年」と願う世でありたい。
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