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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2008-9-25 10:00:54 | 显示全部楼层
2008年9月25日(木)付
1 V4 O" i' V8 W& n- A
) ?. D! Y( M0 X4 g. i 今季限りで勇退するプロ野球の王貞治監督は、選手時代にホームランの「世界記録」を打ち立てて国民栄誉賞の第1号に輝いた。その賞をつくって贈ったのは当時の福田赳夫首相である▼「支持率最低内閣の人気取り」と皮肉も聞かれたが、ふさわしい人が第1号になったと思ったものだ。だが支持率の大勢は動かなかった。赳夫氏は翌年、「天の声にも変な声がある」と言い残して辞任する▼月日は流れて、同じく不人気にあえいだ息子の康夫氏が昨日、「あなたと違うんです」を置きみやげに首相を辞めた。捨てぜりふのうまい役者が良い役者、と言ったのは歌舞伎の名優六代目菊五郎だった。康夫氏はむしろ役者の素質に恵まれていたのかもしれない▼そして発足した麻生新政権には、失礼ながら落語の「桜鯛(さくらだい)」が思い浮かぶ。鯛の塩焼きに一箸(はし)つけた殿様が、「かわりの鯛を持て」と所望する。困った家来は殿様の目を満開の桜に向けさせ、そのすきに鯛を裏返し、箸の跡を隠して新しい鯛に見せかける▼新閣僚の顔ぶれは、昨日までの鯛が、ただ裏返しにされて膳(ぜん)にのった印象だ。3年前の選挙で選ばれた与党だから古さも隠せない。もう一度民意の海を泳いで釣られなくては、少なくとも新鮮な鯛には変われまい▼麻生氏は昨日、いまを「平時じゃなくて乱世みたい」と表現した。与党の手にも野党の手にも、夢の即効薬などないことぐらい、いまや誰もが感じている。飾り立てた巧言ではなく、どちらがより率直な言葉を投げてくるか。民意の海はそれを注視している。
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发表于 2008-9-26 08:31:27 | 显示全部楼层
2008年9月26日(金)付
& v: U4 E1 J. P0 j; A, C1 b+ ]- |! d9 j4 l7 ^- A/ F  [
 トキについて見聞きするたびに、朱鷺(とき)とつづる字の美しさと、ニッポニア・ニッポンと呼ぶ学名のおおらかさを思う。最後の生息地で知られた佐渡の風物も相まって、その立ち姿、飛ぶ姿の残像は、そこはかとない郷愁を胸に誘う▼古くは日本書紀に「桃花鳥」の名で登場する。だが、その薄桃色の美しい羽が災いした。乱獲されて明治以降みるみる減った。開発にも追われた。保護の声が高まったときはすでに遅く、日本のトキは5年前に絶滅した▼その佐渡の空へ、きのうトキが放たれた。中国生まれの親から人工繁殖で増やされたうちの10羽である。日本のトキは81年、保護のためにすべて捕獲されたから、飛翔(ひしょう)する姿は27年ぶりになる▼〈今日からは日本の雁(かり)ぞ楽に寝よ〉。一茶の句の雁をトキに置き換えてやりたいが、生きる環境は前より厳しいと聞く。田は減り、山間部にも道路が延びた。雪深い冬も来る。無事に生き延びられるかどうか専門家にも分からないそうだ▼日本のトキは1960年、世界で13種目の国際保護鳥に指定された。尽力した一人が、「日本野鳥の会」をつくった僧侶で作家の中西悟堂だった。鳥を守ることは日本の山河を守ることだと説き、「野の鳥は野に」の自然観を唱えた人だ▼だが悲運にも国産は死に絶え、放たれた籠(かご)育ちは「野の鳥」に戻れるかどうか案じられている。人間が山河を守ってこなかったツケなのかもしれない。唯一の武器は「臆病(おくびょう)なこと」という優しい鳥だという。佐渡の四季の風物に再びなる日が、いつか来ればいい。
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发表于 2008-9-27 13:20:08 | 显示全部楼层
2008年9月27日(土)付& y% d/ C& g/ c& e' s! \
' A& {* S; _1 ~
 中国の宋代の大詩人、蘇軾(そしょく)は政治家でもあった。直言の癖が災いしてか、たびたび遠方へ流されたりした。詩の一節に「自ら笑う、平生(へいぜい)、口の為(ため)に忙(ぼう)なるを」と記している。「口がもとで数々の面倒を起こしたのが自分でもおかしい」という意味だと、中国文学の井波律子さんの著書に教わった▼わが政界にも「口のために忙」な面々が目立っている。直言ならまだしも、失言だから情けない。一昨日は、就任したばかりの中山国交相が記者会見で「3連発」を放った▼成田空港の整備の遅れには「ごね得というか戦後教育が悪かった」。観光について「日本は内向きな単一民族」。さらには「日教組の子どもは成績が悪くても先生になる。だから大分県の学力は低い」。言いたい放題の感がある▼人生いろいろだが、失言にもいろいろある。リップサービスが過ぎた程度から、不適切な例え、軽率、勉強不足。だが今回のは日ごろの考えが噴き出してきたものだろう。根は深い▼それにしてもと思う。国会論戦などの肝心なメッセージはさっぱり胸に届かず、失言や放言、漫談まがいばかり記憶に残る。これは政治家の劣化か。それとも政治に娯楽を見いだした我々が、まじめな言葉には打てども響かなくなっているのか▼おりしも、その「政治劇場」の支配人だった小泉元首相が政界引退を表明した。こちらも「自民党をぶっ壊す」に始まり、良くも悪くも「口のために忙」な人だった。小泉流には毀誉褒貶(きよほうへん)が入り交じるが、資質さえ疑われる中山流は「誉」と「褒」から程遠い。
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发表于 2008-9-28 08:01:51 | 显示全部楼层
2008年9月28日(日)付
- q5 ?, b: j: w# g% k! W% o
/ s6 ]5 U/ J9 u+ c: F6 N. K$ I 脚本家の山田太一さんに「車中のバナナ」という短い随筆がある。列車に乗り合わせた気のいい中年男が、カバンからバナナを取り出し、近くの乗客に配る話だ。断る山田さんに、男は「食べなさいって」としつこい▼やがて一本を食べ終えた老人が「せっかくなごやかに話していたのに、あんたいけないよ」と責めてきた。山田さんは胸中を振り返りつつ、こう結ぶ。「貰(もら)って食べた人を非難する気はないが、忽(たちま)ち『なごやかになれる』人々がなんだか怖いのである」▼輸入が始まって1世紀。バナナは「あいさつ代わり」に差し出せる食べ物になった。60年代から、原産地を変えながら日本の食生活にとけ込み、リンゴやミカンをさしおいて「よく食べる果物」の首位にある▼その黄色い房が品薄だと報じられた。朝食をバナナだけにすると楽にやせられるという「朝バナナ」ダイエットが、本やテレビで紹介されたためだ。飛ぶ売れ行きのスーパーでは入荷が追いつかぬという▼バナナに限らず異国の果物は、豊かになるにつれ、舶来のぜいたく品から日常食に変わる。日本では間食や「あいさつ代わり」を通り過ぎ、減量の具になったらしい。やせるために先を争って食べる姿は、途上国の理解を超えよう▼メタボ体形から「ちょい太(ふと)」に脱した立場で言わせてもらえば、やせるなら「食べ過ぎず、動く」に尽きる。およそブームと呼ばれるもの、新聞のコラムが取り上げたら終わりが近いとか。果物売り場はきょうあたり、品薄どころか黄一色に染まっているかもしれない。
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发表于 2008-10-1 08:34:21 | 显示全部楼层
2008年9月29日(月)付
: f! h# @  `4 J$ F! g+ R% F% q- y/ s& Y# |
 「○○で愛を叫ぶ」といったイベントがある。キャベツ畑だったり、日比谷公園だったり。その一言を大声で発するためだけに、遠路はるばる同好の士がやって来る。心で温め、何度も唱えてきた思いは、観衆を得て腹の底から響き渡る▼「それ」を言わんとして、大臣に就いたとしか思えない。「日教組をぶっ壊すために火の玉になる」。中山成彬氏は熱く叫び、目にもとまらぬ早さで国土交通相を辞任した。この内閣のあすを暗示するかのような、在任約90時間の幻影だった▼日教組が余程お嫌いとみえる。「日本の教育のがん」だという。だが、憲法21条は結社や集会の自由を保障している。気にくわない組織でも、合法なら認めるのが民主主義のイロハ。東大法学部を出て知らないはずはない▼どんな日教組観を持とうが結構だが、外から「解体」できると考えるのは危ない思想だ。それも畑で愛を叫ぶがごとく、思いの丈をぶちまけた。浅慮とか、正論だが立場をわきまえずのたぐいではない。暴論ところ構わずである▼中山氏は勢い余り「小沢民主党も解体しなければ」と言い放った。一連の発言はしかし、どう見ても与党の足を引っ張り、民主党を利するだけだろう。国会議員の見識ばかりか政治家としての大局観を欠いている。任せた首相の眼力を問いたい▼地位に似合わぬ面々が色んなお粗末をやらかし、失笑に送られ退場していく。面白うてやがて悲しき自民劇場。こんなものを長々と見るために納税してるんじゃないぞ。永田町の中心で、そう叫びたくなった。
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发表于 2008-10-1 08:35:11 | 显示全部楼层
2008年9月30日(火)付
( ^, Z  s8 a  @& _. C8 N! m3 ~) S" a% W  u" T
 突然の政権投げ出しが、あたかも政治の季節を開いたかのようだった。解散風が強まり、政界も目まぐるしく動いた9月の言葉から▼「やめた」ですむなら楽なものと、多くの人が首相のご身分をうらやんだ。青森県のリンゴ農家、三浦通さん(60)は「6月の雹(ひょう)害でほぼ100%の実に穴やへこみができた。それでも作業をやめられないし、畑を投げ出せない」。傷ものは安くたたかれる。肥料などの借金を返せるかどうかを心配する▼後任の自民党総裁選には5人が立った。ところが、党の思惑と裏腹に国民は冷めていた。芸能リポーターの梨元勝さんは「役者不足。論争してみせて盛り上げようとしているけど、結論の見えているレコード大賞」▼はたして麻生氏が大勝して新総裁に。党員による都道府県の予備選挙では、「小沢一郎」や「オバマ」のほか、「自民党はもうダメだ」(栃木)、「どうせすぐやめるんだろう」(東京)などと書かれた投票用紙もあった▼その麻生内閣は3分の2を世襲の面々が占め、「坊ちゃん内閣」とも揶揄(やゆ)される。長野県の山里で妻と暮らす吉沢健さん(75)は「頑張って生きてきたんだもん。国の政治を担う人にも優しさを感じたい」。素朴な願いは2世3世に通じるだろうか▼愛知県の加藤淳さん(68)は本紙声欄に、政治家になってほしい人と、なりたい人の差が目に余ると寄せた。「もっと正直な人、もっと誠実な人。重厚な人、聡明(そうめい)な人……思索する人、もっと私利に疎い人」。無いものねだりでしょうか。麻生さん、小沢さん。
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发表于 2008-10-1 08:35:44 | 显示全部楼层
2008年10月1日(水)付
! E  N  |  R; ^/ ?* H; f% J
! n' z6 @9 w+ p; o, V5 I( S 一説によると、きのうはある野球用語が米国で生まれた日とされる。1885年9月30日、シカゴ・ホワイトストッキングス(現カブス)の優勝を左右する試合。7回に打ち上げた平凡なフライが風に乗り、決勝ホームランになった。「ラッキーセブン」の始まりだ▼昨日の東京株式市場は前日のニューヨークでの暴落を受け、ラッキーどころか3年ぶりの安値に沈んだ。史上最大というNYの下げ幅は777ドル。スロットマシンなら「トリプルセブン」の大当たりだ。お金の神様も皮肉がきつい▼火元は金融安定化法案を否決した米下院。政府と議会幹部の合意もむなしく、有権者の怒りを恐れた議員が造反した。特に共和党は「7」割近くが反対に回り、ブッシュ大統領の面目はない。逆転ホームランになるはずの一打が、世論の風に戻されて凡飛球である▼危ないもうけ話の果てに米金融機関が抱えた巨万の不良資産。それを最大「7」千億ドルの公的資金で買い取る策に、国民の反発は強い。あとは自伝を書くだけの大統領と違い、選挙を控えた議員は風が気になる▼「下院議長は女性。ちょっと男性とはひと味違うような気がする、リードが。それで破裂した」(笹川尭・自民党総務会長)の言はいただけない。危機は世界に飛び火しており、男とか女とか気楽に論評している時ではない▼米国の対策が動くまでは神頼み。それもこれも、楽してもうけようとしたツケだろう。元来「7」は神々しい数とみえ、戒めにも使われる。例えば「七つの大罪」に強欲というのがある。
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发表于 2008-10-2 14:07:55 | 显示全部楼层
2008年10月2日(木)付6 ^3 d* I* O& @4 F6 ]5 u
# J3 ]9 U( a8 t- o% J
 〈路上で寝るときは段ボールから顔を出しておくべし〉。本紙生活面に、男性ホームレスの「助言」が載った。その箱の中に生身の人間がいると知らせないと、通行人に蹴(け)られるのだという。いつの世も野宿はつらい▼夜更けから明け方の大都市は、ささやかな屋根と寝床を求める人であふれる。終電を逃した勤め人、歓楽街にたむろする少年少女、帰るべき場所のない日雇い労働者もいよう。きのう煙に包まれたのも、そんな「宿」の一つだった▼大阪の個室ビデオ店の火事で、男性客15人が亡くなり、放火や殺人の疑いで客の男が捕まった。1畳余りの個室が32。8割ほどが埋まっていたという。共用のシャワーがあり、1500円で一夜を明かせるとなれば、ホテル代わりの利用も多くなる▼漂泊の俳人、種田山頭火は〈泊(とま)るところがないどかりと暮れた〉と詠じた。こうした境地に、誰もがたどり着くわけではない。かくして「雨露をしのぐ+α」のサービスが繁盛する。より安く、より気持ちよく朝を迎えたいという需要が、眠らないネットカフェやマンガ喫茶を新手の宿に変えてきた▼惨事のたびに防火や避難の規制は厳しくなるが、都市は生き物。色んな「屋根と寝床」が料金や快適さを競い、新しい夜を提案し続ける。「悪意」まで封じる防火策を店に求めるのは酷だろうか▼「段ボールから顔を出す」ような用心が要るのでは、お金を払う意味がない。とはいえ、利用者もせめて、逃げ道を確かめるなどの自衛策を講じたい。すでに「どかりと暮れる」季節である。
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发表于 2008-10-6 18:18:21 | 显示全部楼层
2008年10月3日(金)付& F% X; f6 Z; x+ p2 c
* o  o. m+ W! k. V7 a3 q
& ?6 Z! e5 @* S/ c1 A* U
 長渕剛さんの名曲「とんぼ」は都会への憧(あこが)れと挫折を歌う。〈死にたいくらいに憧れた東京のバカヤローが/知らん顔して黙ったまま突っ立ってる〉。花の都に寄せる片思いは多くが裏切られ、意のままにならぬことばかり。でも無様に、武骨に生きてゆく▼長渕さんと、スタンドを埋めた3万人の大合唱に送られ、オリックスの清原和博選手が引退した。華あり、涙あり。23年の現役生活を、「東京のバカヤロー」ではなく故郷大阪で終えた▼最終戦の相手、ソフトバンクの王監督がかけた言葉は「生まれ変わったら、同じチームでホームラン競争をしよう」。85年のドラフト。王さんが指揮する巨人軍の指名を信じて裏切られた男を、言葉で抱きしめた。同じシーズンにユニホームを脱ぐのも何かの縁だろう▼525本の本塁打を重ねながら「無冠」に終わった。最後の打席は、自身の歴代最多を更新する1955個目の三振。直球を投げ続けた杉内投手に頭を下げた。タイトルより大切なものがあると教える、美しい空振りだった▼「憧れの球団」に移ってからは故障に泣いた。投手がしつこく内角をえぐると、仁王立ちでにらみ返した。だが、そうした人間味や男気にひかれるファンもまた多かった。インタビューの受け答えにも、飾らない人柄がにじんでいた▼日本のプロ野球は、大リーグへの人材流出で危機にある。清原選手のヒーロー伝説、あるいは反骨の物語を、ここで終わらせるのは惜しい気がする。どうにもならない不運を力にする生き方の、続きを見てみたい。
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发表于 2008-10-6 18:19:30 | 显示全部楼层
2008年10月4日(土)付
) d, g0 f5 \. @" u
& n9 p1 D, x0 u
3 L4 R9 n/ T4 M, h: F% G 西部開拓の末期。列車強盗を重ね、鉄道会社の刺客に追われる二人組が、逃走先の南米で軍隊に囲まれた。敵が数百人とも知らず、弾を込め直す。「次はオーストラリアに行くぞ。英語が通じる」。二丁拳銃で飛び出す姿が静止し、一斉射撃の音。画面はセピア色に転じる▼「明日に向って撃て!」が公開されたのは中学生の時だった。映画史に残るラストにぐっときて、「作りごと」で初めて泣いた。83歳で亡くなったポール・ニューマンさんの作品に、若き日を重ねた方も多かろう▼「明日に――」は売れる前のロバート・レッドフォードさんとの共演だった。後に、監督と脚本をたたえて語った。「別の俳優たちが演じても、やはり素晴らしい作品になっただろう」▼お定まりの西部劇には不満があったようだ。白人が善玉で、先住民が悪玉、正義のヒーローは無敵といった陳腐さである。だから、無法者の主人公が逃げ回る異色の脚本に飛びついた。銀幕外でもリベラルな立場を貫き、ベトナム反戦や反核の運動に参加した▼ハリウッド流の華美な生活とは一線を画した。私生活を大切にし、サインにはめったに応じなかったという。後半生は趣味の自動車レースや家庭を優先しながら、会社経営と慈善活動に力を注いだ▼エレナ・ウーマノ氏による評伝(近代映画社刊)は、「私は実に普通の男です」の言葉で始まる。公私で優に二人分を生きた「偉大なる普通人」(同)。舞台デビューの地、ブロードウェーの劇場は日本時間のきょう、電飾の看板を一斉に消灯して悼む。
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发表于 2008-10-6 18:20:39 | 显示全部楼层
2008年10月5日(日)付
) R, H& W% d; ~# U6 y+ V9 U4 l9 h7 Z& E- T3 V
 駅までの道すがら、キンモクセイの甘い香りがどこからともなく漂ってきた。わが鼻には今年の「初もの」である。野菜や果物は時期を問わずに口に入る昨今だが、あの芳香は季節の記憶をよびさます。残暑は去って、空は高く、秋が定まったのを実感する▼花そのものは見ばえがしない。金紙を細かく刻んで枝につけたような様を、詩人の薄田(すすきだ)泣菫(きゅうきん)は〈ぢぢむさく、古めかしい〉と哀れんだ。一方で〈高い香気をくゆらせるための、質素な香炉〉と見立てているのは、ロマン派文人の感性だろう▼江戸時代の俳人、服部嵐雪(らんせつ)は〈木犀(もくせい)の昼は醒(さ)めたる香炉かな〉と詠んでいる。昼間と夜とでは、さて、どちらがかぐわしいだろう。いずれにせよ、街の行きずりにふと鼻先を流れるのが、この花の香にふさわしい▼香の代表がモクセイなら、見た目は菊だろうか。モクセイと同じく中国が原産で、奈良時代に不老長寿の薬草として渡来したという。その咲き姿が宮廷で愛され、もっぱら観賞用に育てられるようになった▼旧暦9月9日の重陽の節句には「着せ綿」という行事もあった。前の日に、菊の花に真綿をかぶせて一晩置く。朝になって、夜露に濡(ぬ)れて香りをふくんだ綿で顔や体をなでた。老いをぬぐい去り、若返ると信じられていたらしい▼〈綿きせて十程若し菊の花〉一茶。今年は、あさってが旧暦の9月9日にあたる。菊があれば、王朝時代の美顔術をまねてみるのも一興だろう。そしてその翌日は、はや二十四節気の寒露。澄みわたる静けさの中で、秋が姿を整えていく。
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发表于 2008-10-6 18:21:40 | 显示全部楼层
2008年10月6日(月)付
( H) L% o2 Y$ b) I" O; S& ]2 w5 F% k4 Q$ _  j* o" L+ W

9 \$ ?4 s# Z  `9 e% q& T4 p2 ? 本紙の声欄を読んで、ときおり切り抜いている。先ごろの東京本社版に「虫たちの最期 気をもむ晩夏」という投書があった。横浜の高校生石井杏奈さんは、アスファルトの上で動かない昆虫などを見つけると、拾って土の上に移すのだという▼「せめて彼らが最期に横たわる場所が自然物の上であってほしい」と書いていた。命を終えるものを土に戻してやる。そうすれば死骸(しがい)は他の命を育む。やさしい人柄とともに、「命の循環」が分かる人なのだろうと推察した▼秋が深まれば、今度は枯れ葉がアスファルトに散る。集められ、焼却されるものも多い。野山なら散り敷いて生物のすみかになり、分解されて土に溶けていくのに、都会の落ち葉はそれもかなわない▼『葉っぱのフレディ』という絵本を覚えておられるだろうか。生と死や転生が、木の葉の一生を通して語られる。枯れて散っても、土に還(かえ)って木を育てる力になる。大人の共感を呼び、これまでに110万冊も売れた▼刊行から10年になるのを機に、版元の童話屋(東京)がささやかな試みを始めるそうだ。22日からの絵本の売り上げから、1冊につき200円を、南米アマゾンの森の再生に寄付する。1冊あたり5本の苗木が、危機に瀕(ひん)した森に植えられるという▼命は姿を変えて生き続ける。それを大自然の設計図が寸分の狂いもなく司(つかさど)っている――と絵本は説く。ひょっとして石井さんも読んだのかな、と想像してみた。虫も葉っぱも侮るなかれ、である。それぞれの命をつないで地球の生態系を担っている。
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发表于 2008-10-8 12:24:37 | 显示全部楼层
2008年10月7日(火)付
6 [% E( O9 y3 u3 e: }& J! Y* x$ ?0 Q; W% [" q! A5 E
 「まだるっこい」という言葉は「間怠(まだる)い」から生まれたという。広辞苑は「手間どっておそい。手ぬるい。のろくさい」と散々だ。じれったい話は、金もうけでは時に命取りになる▼振り込め詐欺を100件ほど試み、ことごとく失敗したグループが摘発された。ニセ息子が電話で、株を買うのに会社の金を使い込んだのがバレた、と助けを請う手口。押収された手書きの台本を見て、こりゃだめだと思った▼〈で、先週のコトなんだけど、新規上々株の抽選に当って、どーしてもその株がほしくなっちゃって……〉〈最初はすごく怒られたんだけど、全部話したコトもあって、お前もこんな時に処分されても困まるだろって言ってくれて……〉▼上場株の誤字や、妙な送り仮名には目をつむるとして、切迫感がまるでない。大金が必要になった経緯がぐだぐだと続き、用件の「お金貸して」は最後の最後だ。長広舌を聞くうちに、「親」も我に返って通報したのだろう▼捕まった4人の男は20~24歳。振り込ませる裏口座を用意する金もなく、だませたと思って友人役が集金に赴いたところを御用となった。何億円もせしめた集団に比べれば素人だが、このレベルの連中がうごめくほど「だまされ市場」は大きい▼今年の振り込め詐欺被害はもう200億円を超え、去年の4割増しのペースだ。プロは台本などに頼らない。相手の慌てぶりを測りつつ、ああ言えばこう言うで、間が怠くなることもない。親心や、ささやかな欲につけ入るべく、彼らは何枚もある舌の先を研いでいる。
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发表于 2008-10-8 12:25:07 | 显示全部楼层
2008年10月8日(水)付5 z4 |4 y0 u, Y! B

3 l) u# o$ j% O' y' j 相場の格言に「見切り千両」がある。下げの局面では早めに手放すべし、それで大損を避けられるなら目先の損は値千金、といった意味だ。昨日の朝方、東証株価が約5年ぶりに1万円を割った。泣く泣く格言を唱えた向きが多かったとみえる。終値は戻すも、しばらくは見切る勇気を問われよう▼米国発の金融危機が、雇う、作る、売る、買うといった実体経済のサイクルを冷やし始めた。経済の血流が滞り、症状が全身に及びかねない事態に、産業界や投資家、消費者は弱気を持て余す▼国会審議も、株価を横目で見ながらとなった。麻生首相に対する野党は、党首級を立てた。急を告げる経済情勢を受けて、質(ただ)す方、答える側とも「暮らし」を軸に、有権者を意識した物言いだ。ここは危機感ほとばしる論戦を期待したい▼長らく「下げ局面」にある政治とはいえ、日本に住み続ける限り「見切り千両」とはいかない。世界の大乱から暮らしを守れるのは誰なのか、いま少し我慢し、与野党の攻防を見極めよう▼ところが、解散・総選挙の日程は逃げ水のごとし。来るべき選挙を草野球に例えれば、調子の上がらぬホームチームが試合開始に二の足を踏んでいるところに、金融不安の雨粒が落ち始めた図である。いつまで待たされるのか、とんと見通しが立たない▼国際経済と、次の総選挙。あすの日本を左右する二つであろう。前者に私たちの意思は届かない。後者については、時期はともかく、結果は国民の手中にある。経済の空模様を気にかけつつ、その日を待つとする。
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发表于 2008-10-10 08:04:23 | 显示全部楼层
2008年10月10日(金)付' L: p! f; ^# x: A: l( h; F% X
5 [0 O" Y2 R" t0 U5 k6 c/ L& E
 歌舞伎役者のように虚空をにらんで、緒形拳さんは静かに息を引き取ったそうだ。臨終に立ち会った津川雅彦さんは、その時を「おれもあんな死に方をしたいと思うほど格好いい最期だった」とまとめた▼危篤と聞いて病院に駆けつけると、71歳の名優は一度ベッドに座り直したという。ひとしきり仕事の話をし、「治ったらウナギ食いに行こうな。白焼きをな」。この誘い、津川さんの激励ではなく、緒形さんの言葉というから驚く。淡いユーモアがにじむ、骨太の幕である▼照れ、愁い、狂気。どれも一流だったが、影をまとうほど輝きは増した。「楢山節考」で背負われ、山に捨てられる老母を演じた坂本スミ子さんは「演技でこなさず、役になりきるすごみを感じた。心では今も親子のままです」と語る▼肝臓がんのことは、家族限りとしていた。遺作のテレビドラマ「風のガーデン」の撮影では、玄米食で半年の長丁場を耐えた。倉本聰さんの脚本は命を正面から描く。訪問医役の緒形さんには死を語る台詞(せりふ)も多い。万感を込めたであろう仕事を結び、制作発表の5日後に逝った▼あったかい味の書をたしなんだ。絵手紙を交わした東京都狛江市の小池邦夫さん(67)のもとには、「でくのぼう」と朱書きした賀状がある。別の一葉には「牛はのろのろとあるく」▼そんな墨跡の通り、武骨に、ゆっくりと大きく、役者道を全うした。坂本さんの感慨に寄り添えば、演じた役のすべてが本物の緒形拳である。最後はあの白髪で、優しげな背中で、秋の夕景の一部になりきった。
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