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发表于 2006-8-9 21:36:25
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バーテンのじいさんはささやくように言った。
「ハリー・ポッター……何たる光栄……」
バーテンは急いでカウンターから出てきてハリーにかけ寄ると、涙を浮かべてハリーの手を握った。
「お帰りなさい。ポッターさん。本当にようこそお帰りで」
ハリーは何と言っていいかわからなかった。みんながこっちを見ている。パイプのおばあさんは火が消えているのにも気づかず、ふかし続けている。ハグリッドは誇らしげにニッコリしている。
やがてあちらこちらで椅子を動かす音がして、パブにいた全員がハリーに握手を求めてきた。
「ドリス・クロックフォードです。ポッターさん。お会いできるなんて、信じられないぐらいです」
「なんて光栄な。ポッターさん。光栄です」
「あなたと握手したいと願い続けてきました……舞い上がっています」
「ポッターさん。どんなに嬉しいか、うまく言えません。ディグルです。ディーダラス・ディグルと言います」
「僕、あなたに会ったことがあるよ。お店で一度僕にお辞儀してくれたよね」
ハリーがそう言うと、ディーダラス・ディグルは興奮のあまりシルクハットを取り落とした。
「覚えていてくださった! みんな聞いたかい? 覚えていてくださったんだ」
ディーダラス・ディグルはみんなを見回して叫んだ。
ハリーは次から次と握手した。ドリス・クロックフォードなど何度も握手を求めてきた。青白い顔の若い男がいかにも神経質そうに進み出た。片方の目がピグピク痙攣している。
「クィレル教授!」
ハグリッドが言った。
「ハリー、クィレル先生はホグワーツの先生だよ」
「ポ、ポ、ポッター君」
クィレル先生はハリーの手を握り、どもりながら言った。
「お会いできて、ど、どんなにう、うれしいか」
「クィレル先生、どんな魔法を教えていらっしゃるんですか?」
「や、や、闇の魔術に対するぼ、ぼ、防衛です」
教授は、まるでそのことは考えたくないとでもいうようにボソボソ言った。
「きみにそれがひ、必要だというわけではな、ないがね。え? ポ、ポ、ポッター君」
教授は神経質そうに笑った。
「学用品をそ、揃えにきたんだね? わ、私も、吸血鬼の新しいほ、本をか、買いにいく、ひ、必要がある」
教授は自分の言ったことにさえ脅えているようだった。
みんなが寄ってくるので、教授がハリーをひとり占めにはできなかった。それから十分ほどかかって、ハリーはやっとみんなから離れることができた。ガヤガヤ大騒ぎの中で、ハグリッドの声がやっとみんなの耳に届いた。
「もう行かんと……買い物がごまんとあるぞ。ハリー、おいで」
ドリス・クロックフォードがまたまた最後の握手を求めてきた。
ハグリッドはパブを通り抜け、壁に囲まれた小さな中庭にハリーを連れ出した。ゴミ箱と雑草が二、三本生えているだけの庭だ。
ハグリッドはハリーに向かって、うれしそうに笑いかけながら言った。
「ほら、言ったとおりだろ? おまえさんは有名だって。クィレル先生まで、おまえに会った時は震えてたじゃないか……もっとも、あの人はいっつも震えてるがな」
「あの人、いつもあんなに神経質なの?」
「ああ、そうだ。哀れなものよ。秀才なんだが。本を読んで研究しとった時はよかったんだが、一年間実地に経験を積むちゅうことで休暇を取ってな……どうやら黒い森で吸血鬼に出会ったらしい。その上鬼婆といやーなことがあったらしい………それ以来じゃ、人が変わってしもた。生徒を怖がるわ、自分の教えてる科目にもビクつくわ……さてと、俺の傘はどこかな?」
吸血鬼? 鬼婆? ハリーは頭がクラクラした。ハグリッドはといえば、ゴミ箱の上の壁のレンガを数えている。
「三つ上がって……横に二つ……」
ブツブツ言っている。
「よしと。ハリー下がってろよ」
ハグリッドは傘の先で壁を三度叩いた。すると叩いたレンガが震え、次にクネクネと揺れた。
そして真ん中に小さな穴が現れたかと思ったらそれほどんどん広がり、次の瞬間、目の前に、ハグリッドでさえ十分に通れるほどのアーチ型の入口ができた。そのむこうには石畳の通りが曲がりくねって先が見えなくなるまで続いていた。
「ダイアゴン横丁にようこそ」
ハリーが驚いているのを見て、ハグリッドがニコーッと笑った。二人はアーチをくぐり抜けた。ハリーが急いで振り返った時には、アーチは見るみる縮んで、固いレンガ壁に戻るところだった。
そばの店の外に積み上げられた大鍋に、陽の光がキラキラと反射している。とには看板がぶら下がっている。
鍋屋―大小いろいろあります―銅、真鍮、錫、銀―自動かき混ぜ鍋―折り畳み式
「一つ買わにゃならんが、まずは金を取ってこんとな」とハグリッドが言った。
目玉があと八つぐらい欲しい、とハリーは思った。いろんな物を一度に見ようと、四方八方キョロキョロしながら横丁を歩いた。お店、その外に並んでいるもの、買い物客も見たい。
薬問屋の前で、小太りのおばさんが首を振りふりつぶやいていた。
「ドラゴンのきも、三十グラムが十七シックルですって。ばかばかしい……」
薄暗い店から、低い、静かなホーホーという鳴き声が聞こえてきた。看板が出ている。
イーロップのふくろう百貨店―森ふくろう、このはずく、めんふくろう、茶ふくろう、白ふくろう
ハリーと同い年ぐらいの男の子が数人、箒のショーウィンドウに鼻をくっつけて眺めている。
誰かが何か言っているのが聞こえる。
「見ろよ。ニンバス2000新型だ……超高速だぜ」
マントの店、望遠鏡の店、ハリーが見たこともない不思議な銀の道具を売っている店もある。
こうもりの脾臓やうなぎの目玉の樽をうずたかく積み上げたショーウィンドウ。今にも崩れてきそうな呪文の本の山。羽根ペンや羊皮紙、薬ビン、月球儀……。
「グリンゴッツだ」ハグリッドの声がした。
小さな店の立ち並ぶ中、ひときわ高くそびえる真っ白な建物だった。磨き上げられたブロンズの観音開きの扉の両脇に、真紅と金色の制服を着て立っているのは……
「さよう、あれが小鬼だ」
そちらに向かって白い石段を登りながら、ハグリッドがヒソヒソ声で言った。小鬼はハリーより頭一つ小さい。浅黒い賢そうな顔つきに、先の尖ったあごひげ、それに、なんと手の指と足の先の長いこと。二人が入口に進むと、小鬼がお辞儀した。中には二番目の扉がある。今度は銀色の扉で、何か言葉が刻まれている。
見知らぬ者よ 入るがよい
欲のむくいを 知るがよい
奪うばかりで 嫁がぬものは
やがてはつけを 払うべし
おのれのものに あらざる宝
わが床下に 求める者よ
盗人よ 気をつけよ
宝のほかに 潜むものあり
「言ったろうが。ここから盗もうなんて、狂気の沙汰だわい」
とハグリッドが言った。
左右の小鬼が、銀色の扉を入る二人にお辞儀をした。中は広々とした大理石のホールだった。
百人を超える小鬼が、細長いカウンターのむこう側で、脚高の丸椅子に座り、大きな帳簿に書き込みをしたり、真鍮の秤でコインの重さを計ったり、片眼鏡で宝石を吟味したりしていた。
ホールに通じる扉は無数にあって、これまた無数の小鬼が、出入りする人々を案内している。
ハグリッドとハリーはカウンターに近づいた。
「おはよう」
ハグリッドが手のすいている小鬼に声をかけた。
「ハリー・ポッターさんの金庫から金を取りに来たんだが」
「鍵はお持ちでいらっしゃいますか?」
「どっかにあるはずだが」
ハグリッドはポケットをひっくり返し、中身をカウンターに出しはじめた。かびの生えたような犬用ビスケットが一つかみ、小鬼の経理帳簿にバラバラと散らばった。小鬼は鼻にしわを寄せた。ハリーは右側の方にいる小鬼が、まるで真っ赤に燃える石炭のような大きいルビーを山と積んで、次々に秤にかけているのを眺めていた。
「あった」
ハグリッドはやっと出てきた小さな黄金の鍵をつまみ上げた。
小鬼は、慎重に鍵を調べてから、「承知いたしました」と言った。
「それと、ダンブルドア教授からの手紙を預ってきとる」
ハグリッドは胸を張って、重々しく言った。
「七一三番金庫にある、例の物についてだが」
小鬼は手紙を丁寧に読むと、「了解しました」とハグリッドに返した。
「誰かに両方の金庫へ案内させましょう。グリップフック!」
グリップフックも小鬼だった。ハグリッドが犬用ビスケットを全部ポケットに詰め込み終えてから、二人はグリップフックについて、ホールから外に続く無数の扉の一つへと向かった。
「七一三番金庫の例の物って、何?」ハリーが開いた。
「それは言えん」
ハグリッドは曰くありげに言った。
「極秘じゃ。ホグワーツの仕事でな。ダンブルドアは俺を信頼してくださる。おまえさんにしゃべったりしたら、俺がクビになるだけではすまんよ」
グリップフックが扉を開けてくれた。ハリーはずっと大理石が続くと思っていたので驚いた。そこは松明に照らされた細い石造りの通路だった。急な傾斜が下の方に続き、床に小さな線路がついている。グリップフックが口笛を吹くと、小さなトロッコがこちらに向かって元気よく線路を上がってきた。三人は乗り込んだ……ハグリッドもなんとか納まった――発車。
クネクネ曲がる迷路をトロッコはビュンビュン走った。ハリーは道を覚えようとした。左、右、右、左、三叉路を直進、右、左、いや、とてもとうてい無理だ。グリップフックが舵取りをしていないのに、トロッコは行き先を知っているかのように勝手にビュンビュン走っていく。
冷たい空気の中を風を切って走るので、ハリーは、目がチクチクしたが、大きく見開いたままでいた。一度は、行く手に火が吹き出したような気がして、もしかしたらドラゴンじゃないかと身をよじって見てみたが、遅かった――トロッコはさらに深く潜っていった。地下湖のそばを通ると、巨大な鍾乳石と石筍が天井と床からせり出していた。
「僕、いつもわからなくなるんだけど」
トロッコの音に負けないよう、ハリーはハグリッドに大声で呼びかけた。
「鍾乳石と石筍って、どうちがうの?」
「三文字と二文字の違いだろ。たのむ、今はなんにも聞いてくれるな。吐きそうだ」
確かに、ハグリッドは真っ青だ。小さな扉の前でトロッコはやっと止まり、ハグリッドは降りたが、膝の震えの止まるまで通路の壁にもたれかかっていた。
グリップフックが扉の鍵を開けた。緑色の煙がモクモクと吹き出してきた。それが消えたとき、ハリーはあっと息をのんだ。中には金貨の山また山。高く積まれた銀貨の山。そして小さなクヌート銅貨までザックザクだ。
「みーんなおまえさんのだ」ハグリッドはほほえんだ。
全部僕のもの……信じられない。ダーズリー一家はこのことを知らなかったに違いない。知っていたら、瞬く間にかっさらっていっただろう。僕を養うのにお金がかかってしょうがないとあんなに愚痴を言っていたんだもの。ロンドンの地下深くに、こんなにたくさんの僕の財産がずーっと埋められていたなんて。
ハグリッドはハリーがバッグにお金を詰め込むのを手伝った。
「金貨はガリオンだ。銀貨がシックルで、十七シックルが一ガリオン、一シックルは二十九クヌートだ。簡単だろうが。よーしと。これで、二、三学期分は大丈夫だろう。残りはここにちゃーんとしまっといてやるからな」
ハグリッドはグリップフックの方に向き直った。
「次は七一三番金庫を頼む。ところでもうちーっとゆっくり行けんか?」
「速度は一定となっております」 |
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