多額の債務保証という方法で完全に支配していることは明らかですし、財政状態に大きな影響を与えるおそれのある会社なのに、議決権の過半数所有を連結対象の条件としている現行の連結財務諸表規則では、親会社の連結財務諸表には原価法で評価される数千万円の投資有価証券としてしか表示されないことになります。したがって、その会社がどの位の規模の事業を行い、利益を上げているのか、損を出しているのか全く投資家の目には触れなくなってしまいます。たとえその会社の借入金の返済が滞りそうになっていたとしても、親会社が保証の履行を要求されるまでは表面には出てきません。
株式の所有形態は、いくつもの実質的な子会社が相互に持ち合うことによって、親会社の持分を表面上僅かなものにするという手段がとられる場合もあります。例えば、A社は実質親会社(P)の持分は18%のみで、残りはB、C、D、E、Fという会社が15~6%ずつ所有しているとします。B、C、D、E、Fも同じような比率で相互に出資をした会社にします。少数株主による網の目のような相互出資関係をB社以下の各社にも作っているのです。
このような場合株主資本は全く名目的ですから経営の支配には意味を持っていません。それなのに連結財務諸表の連結対象を選ぶ基準が株式の過半数所有だけで決められていたために、その会社は連結財務諸表を作成せずに済んだり、作成されていても実質的な企業グループの実体を表さないことになります。
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