「阿Qの罰当りめ。お前の世嗣(よつ)ぎは断(た)えてしまうぞ」
阿Qの耳枺à撙撙郡郑─沃肖摔悉长紊_かに聞えていた。彼はそう想った。
「ちげえねえ。一人の女があればこそだ。子が断(た)え孫が断(た)えてしまったら、死んだあとで一碗の御飯を供える者がない。……一人の女があればこそだ」
一体「不孝には三つの種類があって後嗣(あとつ)ぎが無いのが一番悪い」、そのうえ「若敖之鬼餒而(むえんぼとけのひぼし)」これもまた人生の一大悲哀だ。だから彼もそう考えて、実際どれもこれも聖賢の教(おしえ)に合致していることをやったんだが、ただ惜しいことに、後になってから「心の駒を引き締めることが出来なかった」
「女、女……」と彼は想った。
「……和尚(陽器(ようき))は動く。女、女!……女!」と彼は想った。
われわれはその晩いつ時分になって、阿Qがようやく鼾をかいたかを知ることが出来ないが、とにかくそれからというものは彼の指先に女の脂がこびりついて、どうしても「女!」を思わずにはいられなかった。
たったこれだけでも、女というものは人に害を与える代物(しろもの)だと知ればいい。
支那の男は本来、大抵皆聖賢となる資格があるが、惜しいかな大抵皆女のために壊されてしまう。商(しょう)は妲己(だっき)[#「妲己」は底本では「姐己」]のために騒動がもちあがった。周(しゅう)は褒(ほうじ)のために破壊された? 秦……公然歴史に出ていないが、女のために秦は破壊されたといっても大して間違いはあるまい。そうして董卓(とうたく)は貂蝉(てんぜん)のために確実に殺された。 |