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发表于 2006-8-22 23:28:10
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ハリーは無視した。ドクン、ドクンと血が騒ぐのを感じた。箒にまたがり地面を強く蹴ると、ハリーは急上昇した。高く高く、風を切り、髪がなびく。マントがはためく。強く激しい喜びが押し寄せてくる。
――僕には教えてもらわなくてもできることがあったんだ――簡単だよ。飛ぶってなんて素晴らしいんだ! もっと高いところに行こう。
ハリーは箒を上向きに引っ張った。下で女の子たちが息をのみ、キャーキャ一言う声や、ロンが感心して歓声を上げているのが聞こえた。
ハリーはクルリと箒の向きを変え、空中でマルフォイと向き合った。マルフォイは呆然としている。
「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」
「へえ、そうかい?」
マルフォイはせせら笑おうとしたが、顔がこわばっていた。
不思議なことに、どうすればいいかハリーにはわかっていた。前屈みになる。そして箒を両手でしっかりとつかむ。すると箒は槍のようにマルフォイめがけて飛び出した。マルフォイは危くかわした。ハリーは鋭く一回転して、箒をしっかりつかみなおした。下では何人か拍手をしている。
「クラップもゴイルもここまでは助けにこないぞ。ピンチだな、マルフォイ」
マルフォイもちょうど同じことを考えたらしい。
「取れるものなら取るがいい、ほら!」
と叫んで、マルフォイはガラス玉を空中高く放り投げ、稲妻のように地面に戻っていった。
ハリーには高く上がった玉が次に落下しはじめるのが、まるでスローモーションで見ているようによく見えた。ハリーは前屈みになって箒の柄を下に向けた。次の瞬間、ハリーは一直線に急降下し、見るみるスピードを上げて玉と競走していた。下で見ている人の悲鳴と交じり合って、風が耳元でヒューヒュー鳴った――ハリーは手を伸ばす――地面スレスレのところで玉をつかんだ。間一髪でハリーは箒を引き上げ、水平に立てなおし、草の上に転がるように軟着陸した。「思いだし玉」をしっかりと手のひらに握りしめたまま。
「ハリー・ポッター…!」
マクゴナガル先生が走ってきた。ハリーの気持は、今しがたのダイビングよりなお速いスピードでしぼんでいった。ハリーはブルブル震えながら立ち上った。
「まさか――こんなことはホグワーツで一度も……」マクゴナガル先生はショックで言葉も出なかった。メガネが激しく光っている。
「……よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに――」
「先生、ハリーが悪いんじゃないんです……」
「おだまりなさい。ミス・パチル――」
「でも、マルフォイが……」
「くどいですよ。ミスター・ウィーズリー。ポッター、さあ、一緒にいらっしゃい」
マクゴナガル先生は大股に城に向かって歩き出し、ハリーは麻痺したようにトボトボとついていった。マルフォイ、クラップ、ゴイルの勝ち誇った顔がチラリと目に入った。僕は退学になるんだ。わかってる。弁解したかったが、どういうわけか声が出ない。マクゴナガル先生は、ハリーには目もくれず飛ぶように歩いた。ハリーはほとんどかけ足にならないとついていけなかった。
――とうとうやってしまった。二週間ももたなかった。きっと十分後には荷物をまとめるハメになっている。僕が玄関に姿を現したら、ダーズリー一家はなんて言うだろう?
正面階段を上がり、大理石の階段を上がり、それでもマクゴナガル先生はハリーに一言も口をきかない。先生はドアをグイッとひねるように開け、廊下を突き進む。ハリーは惨めな姿で早足でついていく……たぶん、ダンブルドアのところに連れていくんだろうな。ハリーはハグリッドのことを考えた。彼も退学にはなったけど、森の番人としてここにいる。もしかしたらハグリッドの助手になれるかもしれない。ロンや他の子が魔法使いになっていくのをそばで見ながら、僕はハグリッドの荷物をかついで、校庭をはいずり回っているんだ……想像するだけで胃がよじれる思いだった。
マクゴナガル先生は教室の前で立ち止まり、ドアを開けて中に首を乗っ込んだ。
「フリットウィック先生。申し訳ありませんが、ちょっとウッドをお借りできませんか」
ウッド? ウッドつて、木のこと? 僕を叩くための棒のことかな。ハリーはわけがわからなかった。
ウッドは人間だった。フリットウィック先生のクラスから出てきたのはたくましい五年生で、何ごとだろうという顔をしていた。
「二人とも私についていらっしゃい」
そう言うなりマクゴナガル先生はどんどん廊下を歩き出した。ウッドは珍しいものでも見るようにハリーを見ている。
「お入りなさい」
マクゴナガル先生は人気のない教室を指し示した。中でピーブズが黒板に下品な言葉を書きなぐつていた。
「出ていきなさい、ピーブズ!」
先生に一喝されてピーブズの投げたチョークがゴミ箱に当たり、大きな音をたてた。ピーブズは捨てぜりふを吐きながらスイーッと出ていった。マクゴナガル先生はその後ろからドアをピシャリと閉めて、二人の方に向きなおった。
「ポッター、こちら、オリバー・ウッドです。ウッド、シーカーを見つけましたよ」
狐につままれたようだったウッドの表情がほころんだ。
「本当ですか?」
「間違いありません」先生はきっぱりと言った。
「この子は生まれつきそうなんです。あんなものを私は初めて見ました。ポッター、初めてなんでしょう? 箒に乗ったのは」
ハリーは黙ってうなずいた。事態がどうなっているのか、さっぱりわからなかったが、退学処分だけは免れそうだ。ようやく足にも感覚が戻ってきた。マクゴナガル先生がウッドに説明している。
「この子は、今手に持っている玉を、十六メートルもダイビングしてつかみました。かすり傷ひとつ負わずに。チャーリー・ウィーズリーだってそんなことできませんでしたよ」
ウッドは夢が一挙に実現したという顔をした。
「ポッター、クィディッチの試合を見たことあるかい?」ウッドの声が興奮している。
「ウッドはグリフィンドール・チームのキャプテンです」先生が説明してくれた。
「体格もシーカーにぴったりだ」
ウッドはハリーの回りを歩きながらしげしげ観察している。
「身軽だし……すばしこいし……ふさわしい箒を持たせないといけませんね、先生――ニンバス2000とか、クリーンスイープの7番なんかがいいですね」
「私からダンブルドア先生に話してみましょう。一年生の規則を曲げられるかどうか。是が非でも去年よりは強いチームにしなければ。あの最終試合でスリザリンにペシャンコにされて、私はそれから何週間もセブルス・スネイプの顔をまともに見られませんでしたよ……」
マクゴナガル先生はメガネごしに厳格な目つきでハリーを見た。
「ポッター、あなたが厳しい練習を積んでいるという報告を聞きたいものです。さもないと処罰について考え直すかもしれませんよ」
それから突然先生はにっこりした。
「あなたのお父さまがどんなにお喜びになったことか。お父さまも素晴らしい選手でした」
「まさか」
夕食時だった。マクゴナガル先生に連れられてグラウンドを離れてから何があったか、ハリ-はロンに話して聞かせた。ロンはステーキ・キドニーパイを口に入れようとしたところだったが、そんなことはすっかり忘れて叫んだ。
「シーカーだって? だけど一年生は絶対ダメだと……なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな……」
「……百年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」
ハリーはパイを掻き込むように食べていた。大興奮の午後だったので、ひどくお腹が空いていた。
あまりに驚いて、感動して、ロンはただボーッとハリーを見つめるばかりだった。
「来週から練習が始まるんだ。でも誰にも言うなよ。ウッドは秘密にしておきたいんだって」
その時、双子のウィーズリーがホールに入ってきて、ハリーを見つけると足早にやってきた。
「すごいな」ジョージが低い声で言った。「ウッドから聞いたよ。僕たちも選手だ――ビーターだ」
「今年のクィディッチ・カップはいただきだぜ」とフレッドが言った。「チャーリーがいなくなってから、一度も取ってないんだよ。だけど今年は抜群のチームになりそうだ。ハリー、君はよっぽどすごいんだね。ウッドときたら小躍りしてたぜ」
「じゃあな、僕たち行かなくちゃ。リー・ジョーダンが学校を出る秘密の抜け道を見つけたって言うんだ」
「それって僕たちが最初の週に見つけちまったやつだと思うけどね。きっと『おべんちゃらのグレゴリー』の銅像の裏にあるヤツさ。じゃ、またな」
フレッドとジョージが消えるやいなや、会いたくもない顔が現れた。クラップとゴイルを従えたマルフォイだ。
「ポッター、最後の食事かい? マグルのところに帰る汽車にいつ乗るんだい?」
「地上ではやけに元気だね。小さなお友達もいるしね」
ハリーは冷ややかに言った。クラップもゴイルもどう見たって小さくはないが、上座のテーブルには先生がズラリと座っているので、二人とも握り拳をボキボキ鳴らし、にらみつけることしかできなかった。
「僕一人でいつだって相手になろうじゃないか。ご所望なら今夜だっていい。魔法使いの決闘だ。杖だけだ――相手には触れない。どうしたんだい? 魔法使いの決闘なんて開いたこともないんじゃないの?」マルフォイが言った。
「もちろんあるさ。僕が介添人をする。お前のは誰だい?」ロンが口をはさんだ。
マルフォイはクラップとゴイルの大きさを比べるように二人を見た。
「クラップだ。真夜中でいいね? トロフィー室にしよう。いつも鍵が開いてるんでね」
マルフォイがいなくなると、二人は顔を見合わせた。
「魔法使いの決闘って何だい? 君が僕の介添人ってどういうこと?」
「介添人っていうのは、君が死んだらかわりに僕が戦うという意味さ」
すっかり冷めてしまった食べかけのパイをようやく口に入れながら、ロンは気軽に言った。
ハリーの顔色が変わったのを見て、ロンはあわててつけ加えた。
「死ぬのは、本当の魔法使い同士の本格的な決闘の場合だけだよ。君とマルフォイだったらせいぜい火花をぶつけ合う程度だよ。二人とも、まだ相手に本当のダメージを与えるような魔法なんて使えない。マルフォイはきっと君が断ると思っていたんだよ」
「もし僕が杖を振っても何も起こらなかったら?」
「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを食らわせろ」ロンの意見だ。
「ちょっと、失礼」 |
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