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楼主: 地獄の天使

おもしろ化合物

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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:29:40 | 显示全部楼层
第31話:「自動発射装置つき」
 イオウはおもしろい原子で、多硫化物という-S-S-S-S-が連なった構造をつくることができます。イオウ分子S8 (1)もSが8個つながった環状構造です。シイタケの香り成分lenthionine (2)は炭素2個を含む7員環ですが、これは有機化合物か否かなどと悩んでしまいそうですね。

 ところでイオウ単体は抗菌性をもっています。含硫化合物を含むアブラナ科植物などには、イオウそのものが成分としてはいっているものがあり、抗菌性を指標に成分検索をやったりしたときに有機溶媒可溶性の低極性成分として単離されることがあります。白色粉末がとれたのでマススペクトルをとってみると分子量256などというもっともらしいイオンが出るので、勇躍NMRを測定してみると、あれれ何にもピークが出ない、と頭を抱えることになります(笑)。
 さて、varacin (3)のような1,2,3,4,5-ベンゾチエピン環もつ海洋天然物がいくつかあり、抗ガン性や抗菌性を示します。

 一見、なんでこんな構造のものが生理活性を示すのだろうと思いますね。イオウ分子の活性発現と何か関係があるのでしょうか。関連化合物の活性を調べてみると、3のメトキシ基を除去した化合物 (4)は高い細胞毒性を保持していますが、側鎖のアミノエチル基を除去した5では、活性が1/20以下に低下することがわかりました。
 つまり、活性発現にアミノエチル側鎖が重要な役割を示していることになります。また、この末端アミノ基を三級アミンにすると活性が大きく低下することから、ここの窒素のローンペアによる求核性が反応の鍵であることが予想されます。
 最近、明らかにされた反応経路は以下のようです。

 まず側鎖アミノ基がちょうど6員環を形成する位置のイオウ原子を求核攻撃して、その位置で環のS-S結合が開裂し、テトラスルフィドアニオンが生成します。そこから次いでS3分子が脱離して安定なフェニルチオラートアニオンになり、これがDNA切断などの生理活性発現の本体となります。側鎖アミノエチル基の欠けている分子ではこのような分子内活性化が起きないため、細胞毒性が低下しているわけですね。うまくできているものです。まさに自動発射装置をそなえた機能分子といっていいでしょう。
 同様にしてイオウ分子S8もアミンなどの求核剤によって開環することが確かめられています。そのあたりにイオウの抗菌性の理由があるのかもしれません。

 ref. E.M.Brzostowska and A.Greer J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 396-404.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:30:40 | 显示全部楼层
第32話:「ダイヤモンド・オブ・ダイヤモンド」
 アダマンタンといえば、別項「
ダイヤモンドの仲間たち
」に出てくるダイヤモンドの構造ユニットになる炭化水素です。このユニットをつなげていくと、メタンに対するエタン、プロパン、ブタンのようにジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンというかご型のつながった一連の同族体分子をつくることができる、という話もそこに出てきます。
 このたび、石油中からこのアダマンタンユニットが環状に6個つながった形に相当するシクロヘキサマンタンが単離、構造決定されました。一見してもどこがシクロでどこがヘキサなんだ?というようなものですが、分子内の6個のメチレン炭素に丸をつけてみると、ちゃんといす形シクロヘキサンの形に並んでいるのがわかるでしょうか。


 う~む、納得できんという人(私もそうでした(笑))は、アダマンタンから順番にユニットを一つずつ増やしていってみるとよくわかります。赤い部分が次々に増えていくアダマンタンユニットです。なるほど、うまいぐあいにできているものです。ぜひchimeプラグインをインストールして6個の同族体をぐりぐり動かしてみてください(構造式をクリックすると立体構造が表示できます、やり方は
第17話
を見てください)。


















 余談ながら、アダマンタン同族体は一般式C4n+6H4n+12であらわされます。nが含まれるアダマンタンユニットの数に相当します。アダマンタン(n=1, C10H16)、ジアマンタン(n=2, C14H20)、トリアマンタン(n=3, C18H24)までは各1種、テトラマンタン(n=4, C22H28)は1対の鏡像異性体を含む4種の異性体が存在します。ここから先はややこしく、ペンタマンタンは10種類あり、そのうち9個は上記一般式を満たすC26H32ですが、残りの1個はC25H30です。増やしていくアダマンタンユニットがすでにある炭素を共有する位置にくるとトータルの炭素数が少なくてすむので、こういうことがありうるわけです。オクタマンタンになると5種の異なる分子式からなる100を越える構造があります。アルカンの場合は同じ炭素数なら必ず同じ分子式になりますから、どんなに構造が違ってもすべて異性体になりますが、アダマンタン同族体はユニット数が同じでもつながり方違うと分子式が異なってくるので“異性体”にはならないことになります。もちろん“シクロ”になると不飽和度(?)が1あがりますから分子式はまた変わり、シクロヘキサマンタンはC26H30です。
 前置きが長くなりましたが、原油中には微量ながらこのようなアダマンタン同族体が含まれており、これまでにテトラマンタン4種、ペンタマンタン9種、ヘキサマンタン1種、ヘプタマンタン2種、オクタマンタン2種、ノナマンタン、デカマンタン、ウンデカマンタン各1種が単離、結晶化されています。
 シクロヘキサマンタンは湾岸原油留分の逆相HPLC画分をアセトン中から結晶化させて得られました。結晶は写真では正八面体様に見えます。透明ですばらしく輝かしいそうです。著者らは10-21カラットのナノメーターサイズダイヤモンドとよんでいます(笑)。融点は314℃以上、マススペクトル(EI)ではほとんど分子イオンm/z 342しかみられません。13C NMRではδ38.6に6個分のメチレン、δ37.8、47.3にそれぞれ12個、6個のメチン炭素のシグナルがみられますが、2個分の四級炭素は分子内部にあって緩和時間が長いせいかシグナルがあらわれませんでした。これに関連して、ラマンスペクトルで1330-1380 cm-1にみられるピークがダイヤモンドで1332 cm-1にみられる内部全置換sp3炭素の振動かもしれないと述べられています。
 さて、アダマンタンユニットでシクロヘキサンがつくれるのなら、アダマンタンでつくったアダマンタンだってつくれる道理です。アダマンタマンタン(C35H36)、これぞダイヤモンド骨格でつくった最小のダイヤモンドというべきでしょう。非常に対称性のよい構造で、分子モデルを動かしてみると次々に移り変わる形はとても美しく、さながら万華鏡をのぞいているようです。残念ながらこのダイヤモンド・オブ・ダイヤモンド分子、まだ単離も合成もされていません。幻の最小ダイヤモンドというわけですね。



 ref. J.E.P.Dahl et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2003, 42, 2040-2044.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:30:57 | 显示全部楼层
第33話:「カバは血の汗をかく」
 カバは血の汗をかくといわれています。2年前のあるシンポジウムで、カバやカンガルーは赤い汗、ゾウやシマウマは青い汗、ガゼルは黒い汗をかく、という話を聴いてびっくりしました。そのカバの赤い汗の成分研究が行われこのほどその正体が明らかにされた、というニュースがwebを駆け巡ったのはこの5月末のことでした。
 カバは汗腺をもってないので、正確には汗ではないそうですが、この粘性の高い分泌物ははじめは無色ですぐに酸化されて赤く変色します。赤と橙と二種類の色素が単離・構造解析されて、カバの汗にちなんでそれぞれ、hipposudoric acid、norhipposudoric acidと命名されました。


 構造をみると、いかにも不安定そうなキノイド構造をしています。事実これらの化合物は非常に不安定で重合しやすく、その単離精製には大変な困難をともないました。まずサンプリングからして大変そうです。カバの汗なんてどうやって集めるのでしょう。上野動物園の2頭のカバ、サツキとジローの体をガーゼで拭いて汗を集め、それを冷凍保存してすばやく大学の研究室へ持ち帰り水で抽出したそうです。さてそれからが尋常ではありません。室温放置、濃縮、有機溶媒添加、pH変化、順相・逆相クロマトなどの操作によってことごとく変質してしまうというのですから、普通に考えるとまさに手も足も出ないというところです。
 しかし、なせばなるとは限らないが、なさねば何事もおこらない、というのも事実です。多くの試行錯誤の結果だと思いますが、ゲルろ過とイオン交換クロマトをうまく組み合わせることによって、なんとか2種類の色素を分離精製することに成功しました。赤色色素の高分解能FAB-MSから分子式はC16H8O8とわかりました。1HNMRにはメチレン水素が2個、芳香族水素が1個分の単一線と2個分の一対の二重線(J=11 Hz)しかありません。濃縮も長時間放置もできないのでは13CNMRの測定は無理です。これだけの手がかりでは構造決定は無理ですね。
 そこで次に化学変換によって安定な誘導体へ導くことを考えます。還元、メチル化、ついでシリル化を行うと無色の安定な化合物へ誘導することができました。そして幸運なことにこの誘導体を結晶化することができて、X線結晶構造解析によって構造の解明に成功したのです。まさにここまでの労苦に神様が微笑んだとしか思えません。


 反応を逆にたどって、元の赤色色素の構造はビスキノン型のジカルボン酸とわかりました。最終的には合成によって構造の確認が行われています。
 ジメトキシトルエンの臭素化物をリチオ化して、ジメトキシベンズアルデヒドのニトロ化物と反応させ、得られた二級アルコールをPCC酸化してベンゾフェノン体とします。ニトロ基を還元後ジアゾ化してアリールカップリングさせてジベンゾシクロペンタノンとし、側鎖を臭素化してからシアノ基に置換、このとき同時にケトンがシアノヒドリンになるので、これを還元してビスニトリルにします。酸水解でジカルボン酸にして脱メチルするとビスヒドロキノン体となります。最後はキノンへ酸化すればいいのですが、生成物は非常に不安定なものなので、ここは細心の注意が必要です。カバの汗は粘液につつまれて安定化されていることにヒントを得て、グリセロールを加えて塩化鉄で酸化することによって、見事に目的物を得ることができました。


 しかし、ここでまた問題があります。この構造をみると多数の互変異性構造を書けることに気がつきます。いったい正しい構造はどれなんでしょうか。


 モデル化合物を合成して検討したところ、対称構造をもつこと、強い分子内水素結合したプロトンのシグナルがみられたこと、酢酸の数百倍強い酸性を示して安定なアニオンとなること、などの事実から、キノンの下側にエノール化した構造が推定されました。


 赤色色素とのスペクトルの比較によって、橙色色素が中央のカルボキシ基が脱炭酸した構造であることもわかりました。これらの化合物は、生合成的には芳香族アミノ酸の代謝産物であるホモゲンチシン酸の二量体に相当します。紫外線吸収効果をもち、抗菌性を示すことから、防御物質としての役割があるのではないかと推定されていますが、実際のカバの分泌腺から分泌されたときの無色の前駆体はどのようなものなのかなど、まだまだ不明な点が残されています。
 それにしても見事な構造解明、本当におめでとうございます。私もポリフェノール化合物の酸化反応機構の研究をしていますから、このような酸化生成物が不安定でその化学的解明がどれほど大変なことかがよくわかります。ニュースでは日焼け止め効果のことばかりが大々的に騒がれていましたが、活性や効能うんぬんよりも、8年がかりだったというこの困難なお仕事の達成に心より敬意を表したいと思います。
 ref. Y. Saikawa, K. Hashimoto, M. Nakata, M. Yoshihara, K. Nagai, M. Ida, and T. Komiya, Nature, 2004, 429, 363.
   同, 第45回天然有機化合物討論会, 京都, 2003.10, 要旨集pp.187-192.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:31:41 | 显示全部楼层
第34話:「しっぽつきの屏風?」
 2005年劈頭を飾るのは風変わりな屏風のお話です。四員環のシクロブタン環を梯子状につないでいった分子をladderaneといいます。いつかここで取り上げようと思っているうちに、なんとそんな構造をもつ脂肪酸が天然に存在することを見つけてしまいました。
 ヒトの体をつくる脂肪酸にはそれほど変てこな構造のものはありませんが、微生物の世界には面妖な脂肪酸がいろいろとあります。これまでも三、五、六、七員環をもつ脂肪酸は知られていましたが、四員環をもつものはこれがはじめての例です。しかも5個連続縮環ladderane構造というのですから驚きです。



 アンモニア酸化細菌という細菌があり、アンモニアと亜硝酸を嫌気的に窒素へ変換することによってエネルギーを得ています。生育は信じられないほど遅く、2-3週間に一度しか分裂しないそうです。そんな細菌の一種Candidatus Brocadia anammoxidansの膜脂質から4-4-4-4-4、4-4-4-6員縮環構造をもつ脂肪酸が見つかり、anammoxic acidsと名づけられました。
 なんでまたこんな変てこな脂肪酸をこれらの細菌はつくっているのでしょうか。アンモニア酸化は膜に結合したアナモキソソームという細胞内器官で行われます。中間体としてヒドラジンやヒドロキシルアミンのような毒性の強い物質が生成しますからそれが細胞内に拡散しては一大事です。そこでこれらの有害物質を漏出させないための特別な膜構造が必要になります。というわけでladderane脂肪酸の出番です。特製二重膜屏風構造でせき止めているわけですね。本当なんです。原報にちゃんと書いてあります(笑)。


 このしっぽつき屏風脂肪酸の合成がつい細菌ではない最近完成しました。まずシクロオクタテトラエンを臭素付加の後アゾジカルボン酸ジベンジルとディールズアルダー付加反応させて既知の三環性ジブロミドとします。二重結合を接触還元してから亜鉛末還元で脱臭素してシクロブテン環を構築し、シクロペンテノンとこんどは2+2の光付加させて二つ目のシクロブタン環をつくります。水添でベンジルオキシカルボニルを落としたあと、酸素酸化で五環性アゾケトンとします。一旦ケトンをアセタールで保護した後に光反応で窒素を脱離させて末端の二個のシクロブタン環を一挙につくり、脱保護します。カルボニルのα位をホルミル化した後、ジアゾケトンに変換します。光縮環反応で最後の四員環をつくってから転位で生成したカルボキシ基を還元、酸化でアルデヒドにします。これにWittig反応で残りの側鎖をつなげて生成するオレフィンをジイミド還元、メチルエステル化で見事に完成です。


 結局、5個の連続するシクロブタン環はシクロオクタテトラエンの閉環で3個、2+2環化付加で1個、5員環ジアゾケトンの縮環で1個というぐあいにつくったわけですね。さて立体化学ですが、シクロブタン環縮環部は構造上シス縮環しかありえず、それが屏風状にジグザグに連なっていることはわかっていましたが、側鎖の結合部分は不斉中心です。残念ながら今回の合成はラセミ体であり、天然物の絶対配置はまだ不明です。
 ref. 単離・構造、J. S. S. Damste, M. Strous, W. I. C. Rijpstra, E. C. Hopmans, J. A. J. Geenevasen, A. C. T. van Duin, L. A. van Niftrik and M. S. M. Jetten, Nature, 2002, 419, 708; 合成、V. Mascitti and E. J. Corey, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 15664.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:33:26 | 显示全部楼层
第35話:「分子の子供たち」
 こどもの日に間に合わせようと思って間に合わなかった分子の子供たち。象形分子とでもいうか、人の形をつくってしまったものです。身長2ナノメートルなので名づけてナノキッド。子供ばかりではなく頭の形や骨格を少し細工したいろいろなナノ人間たちもつくられており、ガリバー旅行記に出てくる小人たちの国リリパットの住人リリプシャンにちなんでナノプシャン(NanoPutian)と総称されています。最初に見たときにぼくはガリバーではなくてシャーロック・ホームズの「踊る人形」を思い出してしまいました。いろいろなポーズの人形(ひとがた)が暗号に使われるあれです。

 どこからこんなものがでてきたのかというと、ライス大学の化学教育プログラムの一環ということのようです。子供たちに化学に興味をもってもらうためのツールのひとつというわけですね。なるほどねー、こうしてみるとベンゼン環だってこわくないかも(笑)。さて、例によって合成法をみてみましょう。

 分子骨格はフェニルアセチレンでできているので、これをパラジウム触媒によるハロベンゼンとアセチレンのSonogashiraカップリングでつくることにして、上半身と下半身を別途合成し、最後につなぎあわせる方法がとられています。母核になる置換ベンゼンをうまくつくるところがおもしろく、腰部分の原料となる3,5-ジブロモヨードベンゼンをp-ニトロアニリンからつくるなんてのは置換ベンゼンの合成戦略の練習問題をみるようですね。頭部がベンズアルデヒドのエチレンアセタールでできているところがミソで、適当なジオールを加えてレンジでチンするとアセタール交換が起きていろいろな帽子をかぶったナノ職業人をつくることができます。
 特に困難な合成というわけではなく、何らかの機能性をもっているわけでもありません。単に、見て楽しい。これぞおもしろ化合物の鑑ではないでしょうか。
 ref. S. H. Chanteau and J. M. Tour, J. Org. Chem., 2003, 68, 8750.
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发表于 2006-10-26 05:47:55 | 显示全部楼层
辛苦了
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发表于 2006-10-26 06:01:09 | 显示全部楼层
谢谢楼主捧场
http://www.coffeejp.com/bbs/redi ... o=lastpost#lastpost
欠楼上一个问题,明天请教其他人
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