詩癖 梅尭臣(北宋)
人間詩癖勝錢癖 人間 詩癖は銭癖に勝る
捜索肝脾過幾春 肝脾を捜索して 幾春か過ぎし
嚢槖無嫌貧似舊 嚢槖 貧しきこと旧に似たるを嫌う無く
風騒有喜句多新 風騒 句に新たなるもの多きを喜ぶ有り
但將苦意摩層宙 但 苦意を将って層宙を摩さんとし
莫計終窮渉暮津 終に窮まりて 暮津を渉るを計ること莫し
試看一生銅臭者 試みに看よ 一生 銅臭の者
羨他登第亦何頻 他の登第を羨むこと 亦 何ぞ頻りなる
[口語訳]
この人間世界で詩に対する執着は、金に対するものよりも強いのだ。
腹の中を奥の奥まで句を探し回って、幾度の春を過ごしたことか。
財布の中が昔のように貧しいのも気にかけず
詩歌の句に新しいものが多いことを喜んでいる。
ただ、大空に届こうとして心を苦しめ
最後は行き詰まって夕暮れの渡し場を渉ることを考えもしない。
でも、試しに見てごらん、一生金の臭いがしみついた者が
他人の出世を羨むことのなんと多いことだろうか。 |