第二章 生産管理と品質
2.1 市場ニーズと生産管理
2.1.1 市場ニーズと工場サービス
製造業とは、単なるハードとしてのモノを作る業ではない.それは既に、サービス業である.
但しサービス業と言っても,流通の小売店で行われるサービスとは内容が異なる.彼らは顧客を目の前にした
接客サービスが中心となるのに対し,製造業では,直接の顧客はいない.あるのは,顧客に渡す製品である.
そうであるなら工場とは,「製品を通して顧客にサービスを提供する拠点」と言える.まさに工場にとって,
製品は顧客そのものなのである.
それでは製造業のサービスとは,どのようなものなのか.
工場で製品に付加するサービスとは,大きく次に示す五つである.
① 多品種化(Products)……顧客の望む製品.
② 高品質化(Quality)……良い品質.
③ 低価格化(Cost)……安く.
④ 短納期化(Delivery)……速く.
⑤ 安全第一(Safety)……安全.
こうしてみると,工場の果たす役割がはっきりと視えてくる.それが,今の時代を生きる工場である.ここで
上に示した五つのサービスを言葉としてつないでみると,次のようになる.
工場とは,「顧客の望む製品を,良い品質で,安く,速く,且つ安全に提供する拠点」である.
これが変化の時代を生きる,今の工場の定義である.それゆえ工場は,市場ニーズとしてのこれらのサービスを,
しっかりと製品に付加しなくてはならない.そこで「サービスは工場で作り込め」という製造企業の言葉が生まれる
のである.
2.1.2 経営ニーズとゼロベース発想
変化の時代を生きる製造企業に対し,市場は「PQCDS」と言う五つのテーマを与えた.これを受けた経営は,
さらに在庫のI(Inventory)と保全のM(Maintenane)の2つの課題を加える,「PICQMDS」の7つを経営のニーズ
として生産に伝えた.
この7つのニーズは,生産におけるテーマである.だがこうした課題について,これまでは在庫1/2,不良1/2等
低減発想法のアプローチが一般的に採られてきた.無論こうした地道な活動は,とても重要である.然し,1/2,1/3
と言う低減発想法では,問題の真因が解決できずに上辺の改善に終わることが多い.
そこでゼロをベースとした発想に切り替えてみる.すると問題の根本を改めようとするイメージが湧いてくる.
これを「ゼロベース発想」といい,7つの課題に対して,すべてをゼロで発想することから,こうしたモノづくりを
「7ゼロ生産」と呼んでいる(図 2.1).
次に,これら7つのゼロベース発想について説明する.
7ゼロ生産
<生産テーマ><ゼロベース発想>
① 多品種化: Pー切り替えゼロー
② 在庫削減: Iー在 庫ゼロー
③ コスト削減: Cーム ダゼロー
④ 品質向上: Qー不 良ゼロー
⑤ 可動率向上: Mー故 障ゼロー
⑥ 短納期化: Dー停 滞ゼロー
⑦ 安全第一: Sー災 害ゼロー
図2.1 7ゼロ生産 |