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发表于 2006-8-22 23:43:08
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「動かないで!」ハーマイオニーが叫んだ。
「私、知ってる……これ、『悪魔の罠』だわ!」
「あぁ。何て名前か知ってるなんて、大いに助かるよ」
ロンが首に巻きつこうとするツルから逃れようと、のけぞりながらうなった。
「黙ってて! どうやってやっつけるか思い出そうとしてるんだから!」とハーマイオニーが言った。
「早くして! もう息ができないよ」
ハリーは胸に巻きついたツルと格閲しながらあえいだ。
「『悪魔の罠』、『悪魔の罠』っと……スプラウト先生は何て言ったっけ? 暗闇と湿気を好み……」
「だったら火をつけて!」
ハリーは息絶え絶えだ。
「そうだわ……それよ……でも薪がないわ!」ハーマイオニーがイライラと両手をよじりながら叫んだ。
「気が変になったのか! 君はそれでも魔女か!」ロンが大声を出した。
「あっ、そうだった!」
ハーマイオニーはサッと杖を取り出し、何かつぶやきながら振った。すると、スネイプにしかけたのと同じリンドウ色の炎が植物めがけて噴射した。草が光と温もりですくみ上がり、二人の体を締めつけていたツルが、見る見るほどけていった。草は身をよじり、へなへなとほぐれ、二人はツルを振り払って自由になった。
「ハーマイオニー、君が薬草学をちゃんと勉強してくれていてよかったよ」
額の汗を拭いながら、ハリーもハーマイオニーのいる壁のところに行った。
「ほんとだ。それにこんな危険な状態で、ハリーが冷静でよかったよ――それにしても、『薪がないわ』なんて、まったく……」とロンが言った。
「こっちだ」
ハリーは奥へ続く石の一本道を指さした。
足音以外に聞こえるのは、壁を伝い落ちる水滴のかすかな音だけだった。通路は下り坂で、ハリーはグリンゴッツを思い出していた。そういえば、あの魔法銀行ではドラゴンが金庫を守っているとか……ハリーの心臓にいやな震えが走った。もしここでドラゴンに出くわしたら、それも大人のドラゴンだったら。赤ん坊のノーバートだって手に負えなかったのに……。
「何か聞こえないか?」とロンが小声で言った。
ハリーも耳をすました。前のほうから、柔らかく擦れ合う音やチリンチリンという音が聞こえてきた。
「ゴーストかな?」
「わからない……羽の音みたいに聞こえるけど」
「前のほうに光が見える……何か動いている」
三人は通路の出口に出た。目の前にまばゆく輝く部屋が広がった。天井は高くアーチ形をしている。宝石のようにキラキラとした無数の小鳥が、部屋いっぱいに飛び回っていた。部屋の向こう側には分厚い木の扉があった。
「僕たちが部屋を横切ったら鳥が襲ってくるんだろうか?」とロンが聞いた。
「たぶんね。そんなに獰猛には見えないけど、もし全部いっぺんに飛びかかってきたら……でも、ほかに手段はない……僕は走るよ」とハリーが言った。
大きく息を吸い込み、腕で顔をおおい、ハリーは部屋をかけ抜けた。いまにも鋭い嘴や爪が襲ってくるかもしれない、と思ったが何事も起こらなかった。ハリーは無傷で扉にたどり着いた。取っ手を引いてみたが、鍵がかかっていた。
ロンとハーマイオニーが続いてやってきた。三人で押せども引けども扉はビクともしない。ハーマイオニーがアロホモラ呪文を試してみたがだめだった。
「どうする?」ロンが言った。
「鳥よ……鳥はただ飾りでここにいるんじゃないはずだわ」とハーマイオニーが言った。
三人は頭上高く舞っている鳥を眺めた。輝いている――輝いている?
「鳥じゃないんだ!」
ハリーが突然言った。
「鍵なんだよ! 羽のついた鍵だ。よく見てごらん。ということは……」
ハリーは部屋を見渡した。他の二人は目を細めて鍵の群れを見つめていた。
「……よし。ほら! 箒だ! ドアを開ける鍵を捕まえなくちゃいけないんだ!」
「でも、何百羽もいるよー」ロンは扉の錠を調べた。
「大きくて昔風の鍵を探すんだ……たぶん取っ手と同じ銀製だ」
三人はそれぞれ箒を取り、地面を蹴り、空中へと鍵の雲のまっただ中へと舞い上がった。三人とも捕もうとしたり、引っかけようとしたりしたが、魔法がかけられた鍵たちはスイスイとすばやく飛び去り、急降下し、とても捕まえることができなかった。
しかし、ハリーはだてに今世紀最年少のシーカーをやっているわけではない。他の人には見えないものを見つける能力がある。一分ほど虹色の羽の渦の中を飛び回っているうちに、大きな銀色の鍵を見つけた。一度捕まって無理やり鍵穴に押し込まれたかのように、片方の羽が折れている。
「あれだ!」ハリーは二人に向かって叫んだ。
「あの大きいやつだ……そこ、違うよ、そこだよ……明るいブルーの羽だ……羽が片方、ひん曲がっている」
口ンはハリーの指さす方向に猛スピードで向かい、天井にぶつかってあやうく箒から落ちそうになった。
「三人で追いこまなくちゃ!」
曲がった羽の鍵から目を離さずに、ハリーが呼びかけた。
「ロン、君は上の方から来て……ハーマイオニー、君は下にいて降下できないようにしておいてくれ。僕が捕まえてみる。それ、今だ!」
ロンが急降下し、ハーマイオニーが急上昇した。鍵は二人をかわしたが、ハリーが一直線に鍵を追った。鍵は壁に向かってスピードを上げた。ハリーは前屈みになった。バリバリッといういやな音がしたかと思うと、ハリーは片手で鍵を石壁に押さえつけていた。ロンとハーマイオニーの歓声が部屋中に響きわたった。
三人は大急ぎで着地し、ハリーは手の中でバタバタもがいている鍵をしっかりつかんで扉に向かって走った。鍵穴に突っ込んで回す――うまくいった。扉がカチャリと開いた。その瞬間、鍵はまた飛び去った。二度も捕まったので、鍵はひどく痛めつけられた飛び方をした。
「いいかい?」ハリーが取っ手に手をかけながら二人に声をかけた。二人がうなずいた。ハリーが引っ張ると扉が開いた。
次の部屋は真っ暗で何も見えなかった。が、一歩中に入ると、突然光が部屋中にあふれ、驚くべき光景が目の前に広がった。
大きなチェス盤がある。三人は黒い駒の側に立っていた。チェスの駒は三人よりも背が高く、黒い石のようなものでできていた。部屋のずっとむこう側に、こちらを向いて白い駒が立っていた。三人は少し身震いした――見上げるような白い駒はみんなのっぺらぼうだった。
「さあ、どうしたらいいんだろう?」ハリーがささやいた。
「見ればわかるよ。だろう? むこうに行くにはチェスをしなくちゃ」とロンが言った。
白い駒の後ろに、もう一つの扉が見えた。
「どうやるの?」ハーマイオニーは不安そうだった。
「たぶん、僕たちがチェスの駒にならなくちゃいけないんだ」とロン。
ロンは黒のナイトに近づき、手を伸ばして馬に触れた。すると石に命が吹き込まれた。馬は蹄で地面を掻き、兜をかぶったナイトがロンを見下ろした。
「僕たち……あの……むこうに行くにはチェスに参加しなくちゃいけませんか?」
黒のナイトがうなずいた。ロンは二人を振り返った。
「ちょっと考えさせて……」とロンが言った。
「僕たち三人がひとつずつ黒い駒の役目をしなくちゃいけないんだ……」
ハリーとハーマイオニーはロンが考えを巡らせているのをおとなしく見ていた。しばらくしてロンが言った。
「気を悪くしないでくれよ。でも二人ともチェスはあまり上手じゃないから……」
「気を悪くなんかするもんか。何をしたらいいのか言ってくれ」ハリーが即座に答えた。
「じゃ、ハリー。君はビショップとかわって。ハーマイオニーはその隣でルークのかわりをするんだ」
「ロンは?」
「僕はナイトになるよ」
チェスの駒はロンの言葉を聞いていたようだ。黒のナイトとビショップとルークがクルリと白に背を向け、チェス盤を降りて、ハリーとロンとハーマイオニーに持ち場を譲った。
「自駒が先手なんだ」とロンがチェス盤のむこう側をのぞきながら言った。「ほら…見て…」
白のポーンが二つ前に進んだ。
ロンが黒駒に動きを指示しはじめた。駒はロンの言うとおり黙々と動いた。ハリーは膝が震えた。負けたらどうなるんだろう?
「ハリー、斜め右に四つ進んで」
ロンと対になっている黒のナイトが取られてしまった時が最初のショックだった。白のクイーンが黒のナイトを床に叩きつけ、チェス盤の外に引きずり出したのだ。ナイトは身動きもせず盤外にうつ伏せに横たわった。
「こうしなくちゃならなかったんだ」
ロンが震えながら言った。
「君があのビショップを取るために、道を空けとかなきゃならなかったんだ。ハーマイオニー、さあ、進んで」
白は、黒駒を取った時に何の情けもかけなかった。しばらくすると負傷した黒駒が壁際に累々と積み上がった。ハリーとハーマイオニーが取られそうになっているのに、ロンが危機一髪のところで気づいたことも二回あった。ロンもチェス盤上を走り回って、取られたと同じくらいの自駒を取った。
「詰めが近い」ロンが急につぶやいた。
「ちょっと待てよ――うーん……」
白のクイーンがのっぺらぼうの顔をロンに向けた。
「やっぱり……」ロンが静かに言った。
「これしか手はない……僕が取られるしか」
「だめ!」
ハリーとハーマイオニーが同時に叫んだ。
「これがチェスなんだ!」ロンはきっぱりと言った。
「犠牲を払わなくちゃ! 僕が一駒前進する。そうするとクイーンが僕を取る。ハリー、それで君が動けるようになるから、キングにチェックメイトをかけるんだ!」
「でも……」
「スネイプを食い止めたいんだろう。違うのかい?」
「ロン……」
「急がないと、スネイプがもう『石』を手に入れてしまったかもしれないぞ!」
そうするしかない。
「いいかい?」
ロンが青ざめた顔で、しかしきっぱりと言った。
「じゃあ、僕は行くよ……いいかい、勝ったらここでグズグズしてたらダメだぞ」
ロンが前に出た。白のクイーンが飛びかかった。ロンの頭を右の腕で殴りつけ、ロンは床に倒れた――ハーマイオニーが悲鳴を上げたが、自分の持ち場に踏み留まった――白のクイーンがロンを片隅に引きずって行った。ロンは気絶しているようだった。
震えながら、ハリーは三つ左に進んだ。
そして、白のキングは王冠を脱ぎ、ハリーの足元に投げ出した――勝った。チェスの駒は左右に分かれ、前方の扉への道を空けてお辞儀をした。もう一度だけロンを振り返り、ハリーとハーマイオニーは扉に突進し、次の通路を進んだ。
「もしロンが……?」
「大丈夫だよ」
ハリーが自分に言い聞かせるように言った。
「次は何だと思う?」
「スプラウトはすんだわ。悪魔の罠だった……鍵に魔法をかけたのはフリットウィックに違いない……チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだし……とすると、残るはクィレルの呪文とスネイプの……」
二人は次の扉にたどり着いた。
「いいかい?」
とハリーがささやいた。
「開けて」
ハリーが扉を押し開けた。
むかつくような匂いが鼻をつき、二人はローブを引っばり上げて鼻をおおった。目をしょぼつかせながら見ると、前にやっつけたのよりもさらに大きなトロールだった。頭のこぶは血だらけで、気絶して横たわっていた。 |
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