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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2006-8-7 16:08:36 | 显示全部楼层
2006年08月07日(月曜日)付- Z4 g2 N) O3 J# P
4 \5 |4 B" Y" g/ C
 21歳の松浦喜一少尉は、大きな爆弾を抱えた戦闘機で、鹿児島から沖縄をめざしていた。アメリカの艦船に体当たりするためだ。1945年6月19日のことだった。
  d* `2 U# y& L- B/ P
8 V; e) w; P/ _" j# B9 x6 d アメリカのレーダーを避けるため、豪雨の中を海面すれすれに飛んだ。何も考えていなかった。大和魂や忠君愛国という言葉は存在しなかった。身内の愛する人々のことは少し考えの中に現れた。突然、「春の小川」の歌が口をついて出てきた。
& y2 Z" [% G# e- B! ~" c$ q, M
4 a& e& a# |' v5 f そうした体験を今年、「戦争と死——生き残った特攻隊員、八十二歳の遺書」という小冊子にまとめた。3機のうち、沖縄の目前で1機が墜落する。隊長は機首を転じ、引き返す。これでは任務を果たせないと判断したのだろう。松浦さんは隊長に従った。
( v8 l& [6 l+ x
: j* O# _  r& i: {& e9 v 死に向かって飛び続けていたのに、何も考えなかったのはなぜか。松浦さんは「怒りをもって帝国軍人であることを拒否したのではないか。そこには、もはや愛する人々を守ることができないかもしれない絶望感」と書いた。
7 V3 H2 U' y. _8 t8 f- N" W) Y
2 T2 R! n0 {5 O6 t. S. k 戦後、松浦さんは東京に戻り、麻布十番で家業のカステラ店を継いだ。特攻隊は志願したのですか。「学生出身で未熟な飛行機乗りとしては、もうこの戦法しか残っていないと思った。しかし、数多くの若者が志願したことと、軍上層部が特攻作戦を採用したことは全く別の話です。戦争を始めるべきではなかったし、絶対に特攻作戦などを計画してはいけなかった」
( g- X* ?! Z( L! r& N' ]% v
/ P6 p" I- F6 k4 n6 A  T' p) B" C 特攻で亡くなった人たちを神格化する風潮がある。その危うさを語り続けることが生き残った者の務めだ、と松浦さんは考えている。
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发表于 2006-8-8 16:22:29 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月08日(火曜日)付
, n& L( O8 B/ q! K4 x
: {7 N$ x0 j6 B8 S( r% W1 _ 神戸市中央区の公園にある「1・17希望の灯(あか)り」は、阪神大震災の犠牲者を追悼するためにつくられたガス灯だ。白木利周(としひろ)さん(64)は、灯りの管理をするNPO法人の理事を務めている。
: `' s& _7 M( L- m9 b# Y& Q
. L7 ^! o( q) Z9 j; u3 e' \* | いろいろな行事の際に、火を分けてほしいと言ってくる人がいる。先月3日の夕方、須磨海岸の水の安全を祈願するため、婦人会の人たちが火を採りに来た。近くに自家用車をとめて分灯に立ち会った白木さんが30分後、車に戻ったところ、助手席の窓ガラスが割られ、置いてあったリュックサックがなくなっていた。長男の健介さんが使っていたものだ。
, \# ^7 F: U8 @* H
, i4 q9 B* _6 e" M) } 「明日、6時に起こして」。それが最後の言葉になった。プレハブの自室がブロック塀に押しつぶされ、下敷きになった。21歳だった。
6 u$ R8 p3 J- `- l; s) f: T9 N# \& d$ U. L" W* m  d' p
 妻は泣き続け、自分も長いトンネルの中にいるようだった。立ち直りの兆しが見えたのは4年後。各地につくられた慰霊碑を回る活動に、夫婦で参加するようになった。
6 i' J) U$ G7 X4 v
) C+ Q' M% |0 N' {, s! N3 j 以来、形見のリュックを背負う白木さんの姿が国内外の被災地で見られるようになった。ボランティア活動をしたり、義援金を届けたり。妻は再び体調を崩し、01年に亡くなったが、白木さんの活動はやむことなく続いた。
3 {' a) L7 Z2 R$ }% d0 |3 x
1 B. _) d0 @: E, [* ] 「息子と一緒にいる安心感があった」という、黒い古ぼけたリュックには、金目のものは入っていなかった。テニスが好きだった健介さんが自分で買った。「WIMBLEDON(ウィンブルドン)」のロゴが入っている。「どこかに捨てられているのでしょう。何としてでも見つけ出したい」。白木さんはそう話した。
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发表于 2006-8-9 16:23:25 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月09日(水曜日)付
" X8 P1 R; E  T! a4 r, q6 o+ c+ S6 O, ?% }; i4 L0 W6 l+ ?# c! }
 「1945年8月8日 長崎」。今年の春に急逝した黒木和雄監督の「TOMORROW 明日」(88年)の冒頭近くに、この字幕が現れる。9日という「明日」に起きることを知るべくもない市井の人たちの営みが描かれてゆく。' |2 X* L  X; w) c8 k3 G" X7 H

$ Z' r& T2 y( O" k0 r 夜が明けて、新しい命が生まれる。朝顔が開き、鳥がさえずる。出かける夫があり、笑顔で見送る妻がある。運転手は電車を動かし、主婦は洗濯物を青空に架ける。坂道で遊ぶお下げ髪の子たちの影が、くっきりと黒い。2 o" y+ M: T- q/ j7 r
5 e. t* s; S9 w2 X
 そして、午前11時2分、原爆が炸裂(さくれつ)する。残酷きわまりない「明日」までの時を、切々と描いた秀作だ。
6 J8 m: V- f4 m% X9 J
/ t2 _6 x1 I7 ~; G2 y+ s この映画の狙いは、長崎の惨禍を伝えるだけではないだろう。原爆に限らず、戦争に絡んだ世界のさまざまな場所に、予想もしない残酷な「明日」はあったし、これからもないとは限らない。だからこそ、それを繰り返してはならないという強い思いが伝わってくる。
6 m2 H7 k0 n2 W0 u  J
8 @. {( F, x8 I3 X8 g0 }& x 「明日」が、人々の営みと命を絶つということでは、激しい地上戦があった沖縄や、米軍の空襲を受けた街や人、さらには、日本に侵略された国の人々の「明日」をも連想させる。ヒロシマとナガサキは、どちらも、人類が人類に与えた惨禍を長く記憶するために欠かせない存在だ。; n$ h' m. h/ C6 \* e0 w
3 U4 n  f6 K$ b
 今日、長崎は61回目の原爆の日を迎える。爆心地に、浦上天主堂に、あの日のような「明日」が二度と来ないようにと祈る多くの人々の姿があるだろう。その祈りが、広島の祈りと大きく一つに結ばれ、日本の各地へ、世界へと広がってゆく。そう念じながら、手を合わせたい。
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发表于 2006-8-10 16:20:38 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月10日(木曜日)付
/ i2 \! ^. n- Q. K& M. P, \. ]0 L5 g
 「夏のあらゆる星座が、われわれにいどみかかるようにして出ている」。司馬遼太郎さんはモンゴルで、満天の星に押しひしがれるような体験をした。「うかつに物を言えば星にとどいて声が星からはね返ってきそうなほどに天が近かった」(街道をゆく・モンゴル紀行)。) O' s6 u, M- }

2 j. b* J8 k1 j! o5 g 大草原を渡る風、空に浮かぶ雲、果てしない大地。詩人ナツァクドルジがうたう。「広く大いなる荒野原/南のかたをさき守る砂丘の海原/これぞわが生れしふるさと/モンゴルの美しきくに」(田中克彦『草原と革命』晶文社)。0 O5 S( h: ^  Y- X8 e

2 a, L) H5 R( x- l1 p2 {  Z チンギス・ハンがモンゴル帝国を創設して今年で800年になる。帝国はアジアから欧州にまで版図を広げた。そのころ西に遠征したと思われる兵士が、白樺(しらかば)の樹皮に書き残した望郷の詩がある。「今やときぞ、我とびたたん/我は呼びかく/我が母に、何にもましていとしき母に……今こそ我、故郷に帰らん」
# E; q% ~! \- s5 O( b
5 Y, u' |( a5 t+ V 同じ13世紀、チンギス・ハンの孫フビライは鎌倉時代の日本に遠征軍を送る。文永・弘安の役で、いずれも失敗した。望郷の念を抱きつつ倒れた兵士もあっただろう。
7 A( h! Q0 E( l4 g% P2 m" l* ~: g/ M& B* ~* V
 この元寇の後、北条時宗は鎌倉に円覚寺を開創した。蒙古襲来による死者を、敵味方の区別なく弔うことが建立の一因だという。2 Q: X; B  \+ [7 e6 i9 a! h* q

. J7 s; K) P, C, K+ a6 P) ~2 i 今日、小泉首相がモンゴルに飛び立つ。星空の下で、元寇の時代にも思いをはせてもらいたい。自、他国を問わない弔い方は、現代の追悼のあり方にも示唆を与える。誰であれ、いやしくも一国を代表する人物なら、他国の戦没者の思いにも目を向けるべきだろう。
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发表于 2006-8-11 15:57:05 | 显示全部楼层
2006年08月11日(金曜日)付
" S6 Z$ Z8 R/ Z
4 I5 H& `; @' O 街角で、店の夏休みを告げる張り紙を見かけた。地下鉄がすいている。旅に出る人がふくらむ時季になった。電車や車で旅をすると、意外なほど多くの川を渡ることに気づく。川の名は地名ともつながっている。旅するとは地名と出会うことでもある。
' @+ M+ U! u  d, v5 U, t2 u& J1 w5 U* d9 ?
 全国の地名や、それと縁の深い名字の研究に取り組んだ丹羽基二さんが86歳で亡くなった。子供のころから名字に関心があり、国学院大では民俗学者の柳田国男に学んだ。「苗字(みょうじ)を課題にしたい」と告げると、柳田は「憐(あわ)れむように見つめ」、「それでは食えないぞ」と言ったと丹羽さんは書いている(『日本人の苗字』光文社)。
# A' I4 S8 ?3 [% g) h% q: U+ g' Q* {1 W8 x( C
 名字の研究は、すぐに暮らしに役立つわけではないから、公的な後ろ盾は期待できない。丹羽さんは高校教師をしながら研究を続け、約29万件の名字を約半世紀かけて集めた「日本苗字大辞典」などを編んだ。
; N; E% |/ N) [9 G0 x/ S' O% A6 R) D' s( H: H6 U  _: k
 81年、東京の植物学の研究者が、私費を投じて10年がかりで地名12万余を集めて分類し「日本地名索引」を刊行した。副産物もあり、例えば地名に使われている漢字は、山が一番多くて1万を超え、次は田で約9千、以下、川、大、野の順と分かった。  }' D  H$ `" D8 J  K

2 |0 z' e( M$ z 当時、丹羽さんは発刊をこう評価した。「小字(こあざ)まで入れると日本の地名は推定1千万にもなる……しかし実際にこのような裏づけのあるデータが得られたのは、初めてのこと。貴重な仕事です」。市井の人の努力への共感もあったのだろう。) ~& u/ A, D) @- Y) y2 G
% D6 H7 |) i  v# U, m
 人生の旅で出会った地名を愛着をもって記し、それが、時の流れでいたずらに消されてゆくのを惜しんだ。
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发表于 2006-8-12 16:20:53 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月12日(土曜日)付
( t% n/ v$ J2 A5 s1 j  u( I% D+ j; y6 H9 d' m7 g& d& b% S( c! ~
「この事件には、前例がある」。英国で摘発された航空機への爆破テロ未遂事件について、米国土安全保障省の長官が述べたという。
* U; z, M- O: G! ]3 \+ N- m7 d7 j2 H2 ?3 n
 95年にフィリピンで発覚した「前例」では、爆発性のある液体を複数の米旅客機内に持ち込み、仕掛ける計画だったとされる。今回の未遂事件でも、液状の爆発物を使って何機もの爆破を狙ったと報じられた。同じような残虐な作戦が生き続けていた。実行まで数日だったともいうが実相はまだ分からない。ともあれ、9・11を思わせる卑劣なテロが防がれてよかった。
; F9 L# @$ [! S1 _) z. I( x  [. E8 {
 「たいへん残念なお知らせですが、ご主人の乗っておられた九十三便がペンシルベニアに墜落しました」。ユナイテッド航空から電話が来たのは、あの9月11日の昼過ぎだったと、乗客のひとりだったトッド・ビーマーさんの妻リサさんが『レッツロール!』(フォレストブックス)に書いている。4 O, `) F( u# ~* H5 Q( O2 C
& V( p- ?; D6 c4 p4 f1 w
 レッツロール(さあ、いくぞ)。これは、93便の乗客たちが犯人に立ち向かう時にトッドさんが発した言葉だという。子供たちを促す時に、トッドさんがよく使っていた。
1 H  p& _4 l  ^" O$ X2 I! o* \- h! S0 K0 s7 V) P
 乗客の勇気をたたえ、英雄視する言葉になったが、リサさんには戸惑いもあった。「この言葉が私たちの手を離れて、広く宣伝され、まるで魔法の言葉のように扱われ、政治に利用され、必要以上に賛美されてきたからです」
' A& w$ }' O+ ^7 }* j
2 W: ]- j: V/ M/ [, P7 a$ H. ^ なくてはならないのは「国の英雄」ではなく、ひとりの夫であり、父親なのだろう。こんな形で人を英雄にするような場面をなくす義務は、米国だけではなく、各国の政府も負っている。
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发表于 2006-8-13 22:05:46 | 显示全部楼层
2006年08月13日(日曜日)付
+ H4 ^! D( j$ \/ Q; l) S0 Y* \, [( r& A$ z* z
 徳渕真利子さんが、東海道新幹線の車内販売のアルバイトを始めたのは、昨年1月だった。制服姿の写真を求人雑誌で見て、やってみたいと思った。父親の転勤で引っ越しが多く、何度も乗った新幹線が好きだった。! ?4 V# K% z) ^

% t: M% w6 v1 t  O 12月には正社員に登用された。平均の3倍近い売り上げを記録したからだ。昨年度の売り上げは、社員とバイトを含め約400人いる東京オフィスで1位だった。ルーキーでMVPといっても過言ではなかろう。経験10年の指導係も驚く活躍だった。
$ i# ?, l: n; m* d& U5 E; u) H5 U" Z' O% x! d
 まだ22歳。童顔で、10代といっても不思議ではない。なぜ、そんなに売れるのか。いろいろ聞いてみると、努力と笑顔らしい。3 `, F. K/ r& F" i$ V
2 V, Z! S, r, z! X! w4 y+ M/ g
 通常の勤務は、1日に東京・新大阪間を1往復か1往復半。のぞみの場合、5人で16両を分担する。天候や時間帯など様々な条件で売れ筋が異なる。コーヒーか、弁当か、ビールか。一度回った時点で売れそうなものを見極め、ワゴンの目立つ所に置く。1人ずつ客の目を見ながら、ゆっくり歩くのがポイントだ。ほほ笑みを欠かさず、丹念に何度も回る。
) P* O0 N$ s, g% i/ q
0 J1 |# `) p/ I1 w/ l" N お盆休みは家族連れで混雑する時期だ。10人以上通路に立っていると、ワゴン販売は中止し、トレーに商品を載せて回る。昨年の経験では、圧倒的に売れたのはアイスクリーム。子どもにもお年寄りにも売れるという。ビールはお父さんが家族にとめられて、あまり売れない。帰省先へのみやげを用意していない人も意外に多く、車内でよく売れるそうだ。* N$ u5 k9 T9 Y+ A, S
$ H3 a. p+ W% o/ H
 「お客様のじゃまにならないよう、役に立てれば」。頭の中は仕事のことばかりだという。
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发表于 2006-8-14 16:27:45 | 显示全部楼层
8月14日は新聞休刊日のため、「今日の朝刊」ページは更新がありません。
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发表于 2006-8-15 16:24:44 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月15日(火曜日)付
$ g2 \2 [% X. V$ n' g' `+ D+ Z+ Y
0 X6 A6 S9 H+ @ ドイツのノーベル賞作家、ギュンター・グラス氏が、第二次世界大戦中にナチスの武装親衛隊に所属していたと報じられた。「ブリキの太鼓」で知られ、「ドイツ人の罪」を問い続けてきた作家は、親衛隊への所属は自発的なものではなく、召喚だったと述べたという。; I/ V# Y3 s, @1 V
) O! y: S0 M) e3 `7 C
 グラス氏と同じく1927年生まれのドイツ人で、昨年ローマ法王に選ばれたベネディクト16世は、ナチスの青少年組織ヒトラー・ユーゲントに入っていた。法王に決まる前、「入りたくなかったが、当時は仕方がなかった」と述べたという。人間をのみ込む時代の奔流と個人の責任を、改めて考えさせられる。
" j, a4 d! M' I7 ]
% ~. _4 q# a% {5 R( u4 u" { 10年前の8月15日に他界した政治思想史学者、丸山真男氏が「戦争責任論の盲点」で述べた。「問題は……それぞれの階層、集団、職業およびその中での個々人が、一九三一年から四五年に至る日本の道程の進行をどのような作為もしくは不作為によって助けたかという観点から各人の誤謬(ごびゅう)・過失・錯誤の性質と程度をえり分けて行くことにある」(『丸山真男集』岩波書店)。
( b+ f% O. V( x% y$ H6 L" H/ d6 l* S( @3 }+ Q
 そのえり分けの作業は、日本が他国にしたことを正面から見ることと切り離せない。日本が何をしているかを知り、それを導いた人たちの責任は、格別に重い。1 D6 a9 E  Q9 t' i- T

& r& i- ]: s  P& o) D2 [& c! F 同時に、戦争への奔流を加速したメディアも大きな責めを負っている。そして国民の多くにも責任はある。
7 X7 v" F6 c. U% W8 B/ S  A( g5 B3 k
/ M* |; S$ y3 T 大戦の傷は、戦後61年たっても、国の内外から消えない。将来、「あの当時は……」という釈明を繰り返さないようにする責任は、今を生きる個々人が負っている。
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发表于 2006-8-16 16:21:50 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月16日(水曜日)付 $ A0 D# B- C# F2 K1 O3 t# ?8 U7 D
8 c% H" S( L! E. o$ h
 1945年の、第二次大戦の終結に至る道のりをたどる。1月・米軍がフィリピンのルソン島に上陸、2月・連合軍が独の古都ドレスデンを空襲、3月・東京大空襲。4月・米軍が沖縄本島へ上陸、ムソリーニが殺されヒトラーが自殺する。
( d) g% T# w# x. n* d3 \5 W$ o% B' i8 t
 5月・ドイツが無条件降伏、6月・天皇臨席の最高戦争指導会議で本土決戦の方針採択。7月・ポツダム宣言発表、鈴木貫太郎首相が宣言の「黙殺」を表明。8月・広島、長崎に原爆投下、ポツダム宣言受諾を決定。15日に天皇の「玉音放送」があり大戦が終わった。
) T7 p& [% s& ?+ L6 A$ y
) F# h! `" D3 X" K ここに記したのは、大戦の後期の動きの、ほんの一部だけだ。他にも日本では多くの人々が空襲で命を奪われた。そしてアジアや世界には、終結に至るまでに犠牲になったおびただしい人たちがいた。: C4 c7 W% E. X6 o7 }' K- @, j  @
4 ^4 y3 k) g+ w2 v( i6 g5 h
 日本の近隣国には、日本の侵略で町や村を戦場にされ、肉親を殺され、家を焼かれた人たちが今も暮らしている。時がたって心がしずまったとしても、忘れることはできないだろう。まして加害国の側が忘れたかのように振る舞うのは許せないはずだ。立場を逆にして考えてみれば分かることだ。- V; W1 }1 Q% z: u, G( S" d
0 b3 z# _/ p2 W- s( N+ ~
 小泉首相が終戦の日に靖国神社を参拝した。相変わらず「心の問題」を持ち出した。自分の心は大事にしても、自国が被害を及ぼした国の人の心には思いが及ばないらしい。日本国民を代表する立場にあるはずなのに、狭量さが目につく。
' r& y( |1 g2 B4 g
5 @5 U& r1 u1 D# v: I' e6 h この世には、100年たっても忘れられないことがある——。そのくらいの度量でことにあたるのを望むのは、無いものねだりなのだろうか。
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发表于 2006-8-17 16:27:44 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月17日(木曜日)付
$ {- \  A6 K5 [3 x4 ~" {2 ^! C" x  N- Q$ m; ?$ P9 C- @
 ふたりの男が岩壁をよじ登っていた。「事件はこの時起ったのだ」。井上靖の小説「氷壁」で、ザイルが切れてしまう場面だ。「魚津は、突然小坂の体が急にずるずると岩の斜面を下降するのを見た。次の瞬間、魚津の耳は、小坂の口から出た短い烈しい叫び声を聞いた……小坂は落ちたのだ」
' s0 Q% d- c, l- \9 ]; P! H) |/ X: i( f  ]: p
 この「氷壁」の題材になったのが、1956年に朝日新聞に小説の連載が始まる前年の正月に前穂高岳で起きた「ナイロンザイル事件」だった。画期的な新製品といわれたナイロン製ザイルを使いながら、それが切れ、大学生が転落死した。
/ e8 ]+ b# c3 m& E1 {$ h* W$ |+ L, }$ C$ y/ P/ m5 ]& l/ J
 この学生の兄で、ナイロンザイルの欠陥を粘り強く追及した石岡繁雄さんが、88歳で亡くなった。ザイルの安全性を強調するメーカーや専門家の大学教授に対して、独自の強度実験などを重ねて、ナイロンザイルが岩角では切れやすいことを証明した。それがきっかけになって、事故から約20年後に、ようやく登山用ザイルを規制する国の安全基準が定められた。' F/ {3 g: e- ]: G

" `* W- t: q3 d+ U+ q+ A3 r* Y2 P1 f 石岡さんは昨年、自身の半生記『ザイルに導かれて』を出版した。弟の遭難を伝える当時の新聞記事や、新聞への寄稿、電気工学を学んで鈴鹿高専の教授を務めた石岡さんの論文などが収められている。
  `% _3 [3 d* q) z+ |! P2 y. U% P" r
 とかく大勢につきがちな人間の弱さに触れた一文がある。「人間社会は人間一人一人が、その弱さを断ち切り、良心に従って、勇気をもって発言しない限り、決して良くはならない」
1 v% @( b0 T, z1 N; K
: \- p- ^& N# I% V3 ^ 氷壁での無念の死を胸に、自らの手で企業や権威という「壁」を乗り越えた人の深い感慨なのだろう。
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发表于 2006-8-18 16:39:16 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月18日(金曜日)付 1 N) c- ^6 L) d6 c0 T

% l" s  \  M+ k* \ 次にあげる人物や地名などを見て、何を思い浮かべるだろうか。二つか三つ目で正解が出れば、はるか遠い世界に通じた人といえるかも知れない。
  A2 ~/ }7 y* F" z9 ^" _
4 g4 `- ~& b5 y* X! `/ O 義経、四国、弥生、竜馬、網走、飛鳥、漱石、鹿児島、万次郎……。いずれも、宇宙に浮かぶ小惑星に付けられた名前だ。国立天文台によると、他に、たこやき、しじみ、きぼう、などもある。
% \6 C6 |6 x5 r; y9 \1 B& [- b$ X! Z: q; c# i( |
 小惑星は、太陽の周りを回っている小天体で、多くは火星と木星の軌道間にある。その小惑星の中で一番大きなセレス(ケレス)が、惑星の仲間入りをする可能性がでてきた。国際天文学連合(IAU)の総会で、惑星の新しい定義が提案されたからだ。0 |- ]6 e) {$ O3 }# H
% @: T. ^: B/ B' i3 I
 提案が通れば、セレスの他にふたつの星が加わる可能性がある。これまで、水、金、地、火、木、土、天、海、冥と呼び習わしてきた太陽系の9人きょうだいが、一気に12人に増える。3人とも、肉眼では見えないが、古来なじんできた惑星も少し違って見えてくるかもしれない。2 v: M3 V/ ]0 D  Y( `7 N: g$ J

# I  X- |. t6 j+ D4 C) F: t' N4 | 「夕星(ゆうずつ)は、/かがやく朝が(八方に)散らしたものを/みな(もとへ)連れかへす。/羊をかへし、/山羊をかへし、/幼(おさ)な子をまた 母の手に/連れかへす」(サッポオ『ギリシア・ローマ抒情詩選』呉茂一訳)。8 z9 m( T$ x* W

: o  g! L5 U7 y+ S この夕星・金星に限らず、悠久の時を生きてきた星には、見る者を太古の時代に連れ返すような力がある。一方、地球上の転変は激しく、国や民族などによる争いや混乱も絶えない。しかし人はみな、この惑星に一時宿り、やがては去ってゆく。同じ「地球人」として、心がつながればいいのだが。
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发表于 2006-8-19 16:30:47 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月19日(土曜日)付
; Z. o2 A6 ?. n; Y7 q6 r
$ \" k' p0 x. {; }8 H/ N$ W  n ひざ下だった水位が数十秒でひざ上まで上がった。腰のあたりだった水位が数分で胸元を過ぎ、首近くまで上がってきた——。あゆ釣りでにぎわう神奈川県の酒匂(さかわ)川で、釣り人らが濁流にのまれ、犠牲者がでた。この痛ましい事故に居合わせた人たちの証言からは、急激に水かさが増すさまが生々しく伝わってくる。- T& |' g  A: x/ M+ Y9 [) Y

0 \! z& g( X$ E% |8 u 事故は幾つかの要因が重なって起きた。中には、事故を繰り返さないための戒めになりそうなものがある。
( g/ o% T2 w' p7 i$ J( g, D6 `+ i
. `; L2 h" U# `7 l5 F6 L, g0 f 目に見えない、県境という壁があった。雨は、隣接する静岡県側でも強く降った。その大量の雨水が酒匂川に流れ込んだ。川の上流にあるダムの管理事務所では、静岡側の大雨を把握せず、ダムからの放水量を増やしていたという。隣同士の連絡は密にとり、境界を設けるのは、地図だけにしたい。% j2 v/ }, p# l8 ~! [7 `
5 {" }: |, O# e+ o
 ダムからの放水量は、一時は毎秒23・5トンに達したという。県が、注意喚起のサイレンを鳴らす目安は25トンだった。目安に従うのはやむを得なかったかも知れないが、どこかに、流域全体を総合的に見る目が欲しかった。
" w  }& |+ E' q7 _: S3 G# Y9 x* Z2 W# H* f8 v% ?: q! ]
 富士山麓(さんろく)と丹沢山地に発し、小田原市で相模湾にそそぐ酒匂川は、古来、よく洪水をもたらした。江戸後期に今の小田原市に生まれた二宮尊徳も、幼いころ洪水で家の田を失ったという。はんらんする川は、小さな胸に自然の恐ろしさと厳しさを刻み込んだことだろう。
3 [* \; Q0 I7 c1 P5 @/ {) O9 I7 N( N: p! ]- |( j! x6 p2 S7 v
 近年は治水が進んだが、自然の力そのものが弱まったわけではない。近代的な装置や仕組みも、かみ合わなければ働かない。川と向き合うような時には、そのことも心しておきたい。
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发表于 2006-8-21 01:35:49 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月20日(日曜日)付
6 G. z4 d; `$ m4 x# ~1 p今年春、たまたま会った中国人のビジネスマンが、リチウムイオン電池の話をしていた。中国製を欧州に売り込むため、ドイツに販売会社をつくったが、品質面などで日本製の壁が厚く、苦戦しているとぼやいていた。8 f5 b1 K6 U, w, g7 L- N" x+ i1 ]6 U

! L9 G0 G% `  Q9 H( e* x 携帯電話やノートパソコンに欠かせないリチウムイオン電池は、91年にソニーが世界で初めて実用化したものだ。中国や韓国製の追い上げを受けているが、今でも日本製が世界のシェアの7割を占めている。
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, c3 ~: w3 X* w& c* p, F, y: b  C その日本製への信頼を大きく損ねかねない事態が起きている。ノートパソコン内のソニー製の電池がまれに過熱・発火する恐れがあるとして、約410万個の電池をリコール(回収・無料交換)すると、米国のパソコンメーカーが発表した。ソニーによると、製造過程で微小な金属片が混入したことが原因のようだ。
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 91年の実用化にあたって、開発者は思いつく限りの安全テストを繰り返したという。電池を高熱のてんぷら油に放り込んだり、コンクリートの塊を上から落としたりした。電子レンジにも入れてみた。様々なテストを乗り越え、安全を確認した上で、携帯電話への内蔵を決めた。
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# U' |; b: c( v2 r* e( W1 i- n0 z 今回の異物混入は、品質管理上ゆゆしい問題だと指摘する専門家もいる。当初の慎重な企業の取り組みが歳月を経て、ゆるんだきらいはなかったのか。
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 機内での発火を恐れる米国の航空当局は、ノートパソコンをどうすべきかなどの検討を始めている。日本の航空会社は現段階では特に何も考えていないというが、これだけ身近な製品なのだから、安全確認は徹底してほしい。
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发表于 2006-8-21 16:34:43 | 显示全部楼层
【天声人語】2006年08月21日(月曜日)付 ( m1 t) m, S9 J; K; i( K# ~

4 o# s) P0 C1 V! @ あと一つアウトを取れば、この日、早稲田実が負けることはなくなる。それと同時に、駒大苫小牧の勝ちはなくなる。全国高校野球選手権大会の決勝戦は、延長の最終回となる15回表2死の場面で、こんな切ない瞬間を生んだ。' w/ {/ Q, j! S8 s4 f( A

' X$ ?7 [7 j! _) D 早稲田実のエース斎藤は、その一つをしっかりと取り、駒大苫小牧は「勝ちがない」という窮地に立った。しかし、こちらのエース田中もまた見事な踏ん張りを見せ、最後の攻撃を退けた。: l0 _* R8 v+ X9 B

; F7 w" [0 ^: V 8回表に本塁打で1点を先取された早稲田実は、すぐ、その裏に追いつく。以後、双方とも追加点を許さない。がっぷりと組み合った攻防は、決勝戦にふさわしい緊迫感と躍動感にあふれるものになった。
; O( h" F0 n- o) d# h3 B' v, D' Z/ a
 長田弘さんは「夏の物語——野球」という詩の中で、「動詞だ、/野球は。/すべて/動詞で書く/物語だ」と書いている(『長田弘詩集』ハルキ文庫)。滑る、飛ぶ、走る、殺す、追いこむ、といった数十の動詞を詩にちりばめながら、野球に特有の躍動感をうたう。& T1 J* Z+ A" E. c0 U

2 k: m% B4 c* n( {, f. e& }: X: B 「ギュッとくちびるを噛(か)む」「どこまでもくいさがる」といった表現もある。そして、詩はこう結ばれる。「あらゆる動詞が息づいてくる。/一コの白いボールを追って/誰もが一人の少年になる/夏。」
7 a0 j& `3 }$ @  v7 p' c0 m5 l0 u- y2 q9 _) X' B
 引き分け再試合と決まった時、この日の両チームには当てはまらなかった動詞が二つあると思った。「乱れる」と「譲る」だ。ヒットを許し、点は与えても、ほとんど乱れなかった。そして、互いに一歩も譲らなかった。きょう再び、甲子園で動詞が熱く飛び交い、最後の「夏の物語」がつづられる。
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