【天声人語】2006年08月19日(土曜日)付 8 j {& b' r, J$ @5 k
( ~- s$ ?" [5 C( m, L. p6 L% W ひざ下だった水位が数十秒でひざ上まで上がった。腰のあたりだった水位が数分で胸元を過ぎ、首近くまで上がってきた——。あゆ釣りでにぎわう神奈川県の酒匂(さかわ)川で、釣り人らが濁流にのまれ、犠牲者がでた。この痛ましい事故に居合わせた人たちの証言からは、急激に水かさが増すさまが生々しく伝わってくる。
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. c9 G& K" k- X: Q' |2 t 事故は幾つかの要因が重なって起きた。中には、事故を繰り返さないための戒めになりそうなものがある。/ P* g( F0 K8 Q& }
% P% L) |, P* U& S9 F, K) Q) L P 目に見えない、県境という壁があった。雨は、隣接する静岡県側でも強く降った。その大量の雨水が酒匂川に流れ込んだ。川の上流にあるダムの管理事務所では、静岡側の大雨を把握せず、ダムからの放水量を増やしていたという。隣同士の連絡は密にとり、境界を設けるのは、地図だけにしたい。
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* |, |( _" _# j. S6 p( n ダムからの放水量は、一時は毎秒23・5トンに達したという。県が、注意喚起のサイレンを鳴らす目安は25トンだった。目安に従うのはやむを得なかったかも知れないが、どこかに、流域全体を総合的に見る目が欲しかった。
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' J: _4 {9 u0 K$ w+ I9 j. O+ z1 L 富士山麓(さんろく)と丹沢山地に発し、小田原市で相模湾にそそぐ酒匂川は、古来、よく洪水をもたらした。江戸後期に今の小田原市に生まれた二宮尊徳も、幼いころ洪水で家の田を失ったという。はんらんする川は、小さな胸に自然の恐ろしさと厳しさを刻み込んだことだろう。
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- r0 T5 }$ ~+ G, `/ t* G 近年は治水が進んだが、自然の力そのものが弱まったわけではない。近代的な装置や仕組みも、かみ合わなければ働かない。川と向き合うような時には、そのことも心しておきたい。 |