【天声人語】2006年09月03日(日曜日)付
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山あいの棚田の真ん中に、一本のくいが立っている。高さ約1・5メートルというが、背丈の伸びた稲に隠れて、上の方しか見えない。04年10月23日に起きた新潟県中越地震の震源を指し示す、くいだ。
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' d: u B7 _$ m! a/ D+ k3 e 震度7を観測した川口町で昨年10月、町内外から約100人が集まり、「体験防災キャンプ」が開かれた。この時、全地球測位システム(GPS)の端末を使って、震源を突き止めてみようという話になった。. ~. I6 b6 ]! a/ w* R- j
! d T8 G1 V1 K, H; |$ Q 気象庁によると、北緯37度17分30秒、東経138度52分が震源だ。小中学生のメッセージが書き込まれたくいをみんなで運び、この田んぼにたどりついた。「ここで取れるコメを震央米と名付けたらどうか」。参加者から、そんな意見が出た。* w2 M( z8 j% L; L
& F: c# A) b, P3 ^ 昨年は、田んぼは使い物にならなかった。あぜにひびが入り、全体が傾いて、山からの地下水も止まった。星野秀雄さん(66)は重機を使って、1年かけて元に戻し、今年5月に田植えをした。
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地震のつめ跡はまだ、あちこちに残っている。小学校のグラウンドに建てられた仮設住宅には、干してある洗濯物から見て、半分近くが依然入居しているようだ。多くの田んぼは今年も作付けができず、雑草が生い茂っている。! b2 D9 S3 S5 m2 E/ ]
5 d' `2 O* c0 g7 L2 Q1 M 星野さんの田んぼは、これまでは順調にきている。穂が垂れ始め、台風さえ来なければ、豊作になる見通しだ。魚沼産コシヒカリだから、震央米の味は間違いないという。今月20日ごろに稲刈りをする予定だ。「くいがあると、作業には邪魔で邪魔で困るんだが、地震の思い出を残すには仕方がない」。星野さんはそう話した。 |