【天声人語】2006年10月17日(火曜日)付6 C. c# e. M5 C5 u, b7 B0 Y) x3 M% S
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それまでの常識を覆し、貧しい人たちに無担保で金を貸す。額は少ないが、それはやがて人々が自らの足で立つ貴重な礎となった。バングラデシュの金融機関「グラミン(農村)銀行」と創始者のムハマド・ユヌス氏が、ノーベル平和賞を受賞する。
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30年前、42世帯に計27ドルを貸したのが始まりだという。それが、約7万の農村で660万人以上に貸し付けるまでになる。このマイクロクレジット(少額融資)は、90年代には世界にも広がっていった。
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/ m$ v; I, H8 v* o; p, k どうやってこの革命的なアイデアを思いついたのかと問われ、答えた。「一般の銀行のやり方をよく見て、あらゆることを逆にしてみたんですよ」(『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房・猪熊弘子訳)。 a0 a* q, u7 n; T
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例えば、借り手を銀行に来させるのではなく、銀行側が借り手の家を訪ねる。バングラデシュのような保守的な国で女性の顧客を増やすには有効だった、という。「昔から、銀行で性差別が行なわれていた。銀行は女性には金を貸そうとはしないのだ」
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一般の銀行は株主に高い配当金を払う。グラミン銀行は、借り手の人がローンで家を手にしたり、生活水準を向上させたりするための活動に励んできたという。
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ユヌス氏は、米国に留学して経済学を修めた。71年にバングラデシュが独立した後に帰国し、大学で経済学を教えていた。しかし大飢饉(ききん)の惨禍に直面する。人々を救おうと教壇を去り、「貧者の銀行」を掲げて実践の道へ踏み出した。その経済の専門家の試みが、長い道のりを経て、平和の賞と新鮮な出会いを果たした。 |