【天声人語】2006年11月28日(火曜日)付
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夫婦で研究を進めるうちに、放射性の新しい元素の発見を公表できるまでにこぎ着けた。夫のピエールが言う。「きみが名前をつけてやりなさい」。祖国のポーランドに思いを致した妻・マリーが遠慮がちに答えた。「〈ポロニウム〉というのはどうかしら?」(エーヴ・キュリー『キュリー夫人伝』河野万里子訳・白水社)。
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発見から約1世紀を経て、思いがけない所でポロニウムが注目されている。亡命先のロンドンで変死したロシアの反プーチン派の元情報将校の体から「ポロニウム210」が検出された。. G& m- G( r1 o% g! f; V+ A. Y- o
/ Z1 q7 ]' A9 ?8 |! i7 R ロシアの情報機関の関与がとりざたされる一方で、大統領への打撃を狙った反プーチン派によるたくらみではないかとの主張もあるという。いずれにせよ、何者かが口封じに出た疑いは濃い。
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/ G( n, z8 U# H& B3 s# C) M- j# i 口封じの疑いが濃厚な事件がもう一つ、先月モスクワで起きた。射殺された女性記者は、チェチェン共和国の警察部隊などによる人権侵害を厳しく追及していた。
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{6 W. {) g# a 以前、その著書に書いている。「二〇〇二年が終わりつつある……私は生きていたい……私たちは二〇〇三年を生き抜けるのだろうか?……私には肯定的な答えはない」(『チェチェンやめられない戦争』三浦みどり訳・日本放送出版協会)。. N6 H! b, k4 H2 l$ V
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英紙によれば、ポロニウムに倒れた元情報将校は、亡くなる2日前に、こんな言葉を残している。「ひとりの人間を沈黙させることには成功するかも知れないが、世界中からの抗議のうなりが、生涯あなたの耳に響き続けるだろう」。暗殺の深い闇に、光をどう当てるかが問われている。 |