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楼主 |
发表于 2008-4-30 10:16:24
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三
|白《しら》|州《す》にうつるような青葉の南町奉行所を、|捲《まき》羽織に|雪《せっ》|駄《た》の八丁堀同心と、|風鳥《ふうちょう》のようにあでやかな姫君が入ってゆく。――
「主水介、ね、父上さまに申しあげてね」
「――何をでござる」
「もう身分ちがいなどと、父上さまはおっしゃらないわ。おまえは、天一坊をつかまえるというたいへんな大手柄をたてたんだもの。あたしのことなど、父上さまは御存じないのだから、だいじょうぶ」
「――それが、こまるのです。……」
主水介は、すくなからず|憂《ゆう》|鬱《うつ》そうだ。姫君はあどけない眼を見張って、
「どうして?」
「どうして――と申して、あなたは拙者よりもお利口で、勇気があって、強すぎる。――」
「いや、いや、いや!」
と、姫君はいきなりとびついて、主水介にしがみついた。
「いやよ、恥ずかしい! あれもこれも、みんなおまえの花嫁になりたいあまり、一生懸命、死物狂いの霞になったからだわ。ああ、思い出すと、恐ろしい。――」
「御冗談はおやめなされ」
「冗談なものですか。ほんとう、主水介、おねがい、ね、あたしをおまえの女房にして――あたし、こうしてたのむから」
と、霞さまは白州のうえにべたりと坐ってしまった。主水介はうろたえて、あたりを見まわし、
「な、なんというもったいない――お|起《た》ち下され、はやく、お起ち下され」
「女房、起て、といってくれたら、起ちます」
「――女房、起て。……」
霞はよわよわしく、主水介によりすがって起った。そのままからみついて、童女のように甘い鼻息で主水介の頬をくすぐりながら、
「主水介、それじゃあ、もう父上さまに申しあげてくれるわね。……」
「――も、申しあげるでござる」
「げんまん」
南町奉行所の美しい青葉のおくへ、|粋《いき》な同心姿とはなやかな姫君姿が、もつれあいながらかくれていった。 |
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