【天声人語】2007年02月06日(火曜日)付
! H1 I; b9 P7 e5 d4 E
5 E7 T$ {1 {5 y3 u2 U3 N ドイツの詩人ハイネは、言葉を、放たれた矢に例えて述べた。「矢は弓弦から飛び去るやいなや、もはや射手のものではない」(「告白」土井義信訳)。世に言葉を放つことの重みと責任が感じられる。! y; O7 \% w9 m* f$ M/ C5 R
7 N3 d- P E- Z. s2 [0 x
日本列島を矢のように飛び巡った「産む機械」という言葉は、注目された二つの選挙にも影響を及ぼしたようだ。柳沢厚生労働相は、すぐに反省という二の矢を放っていたが、第一の矢は射落とせなかった。
# ^$ ?6 P: N0 e/ |9 \9 _, L8 C
愛知県知事選では自民、公明推薦の現職が、北九州市長選では民主など野党3党推薦の新顔が当選した。与党側は「2敗」を免れたとして厚労相の進退問題に幕を引きたいようだ。しかし、この結果を単に1勝1敗とみていいのだろうか。; H: `, T, c) _; i2 D( W( i* o/ U
) f% l; ^* R" c5 `4 k T, Q: c
勝ったとはいえ、優勢を伝えられていた愛知で、最後は薄氷を踏むようだった。北九州では水をあけられた。票が野党側に向かう傾向は二つの選挙だけのものだろうか。今後の攻防次第で、統一地方選や参院選に影響が残るかも知れない。
5 }% X9 t+ B; G- \# i$ s
& @# G+ p1 V. e6 ]1 E2 I 政治とは、情熱と判断力を駆使しながら「堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫(ぬ)いていく作業である」。ハイネと同国の社会学者ウェーバーはこう述べ、続けた。「もしこの世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは、およそ可能なことの達成も覚束(おぼつか)ない」(「職業としての政治」脇圭平訳)。, C" P) X; m& c% I5 `
( ?: _9 w, ]- Q# k2 t9 c
与党から飛び出した敵失という矢に頼ることなく、例えば「政治とカネ」の問題では、野党も身を切るようなことにアタックする。そうでないと、政権交代など、とても覚束ない。 |