2007年04月14日(土曜日)付
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歌舞伎舞踊の「京(きょう)鹿子(がのこ)娘道成寺」。幕あきに騒々しく登場する寺僧が、隠し持っていた「般若湯(はんにゃとう)という妙薬」を、股ぐらから取り出す場面がある。
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般若湯とは漢方薬、ではない。僧の仲間うちの隠語で、酒のことだ。仏教の五戒の一つに、飲酒をいましめる「不(ふ)飲酒戒(おんじゅかい)」がある。これを破る飲んべえな僧たちが、「体の薬に少し飲むだけだから」と、言い訳がましく呼んだのが始まりらしい。' U/ \% P. X4 L7 S6 R
" u& [# ~, m" e) w そんな破戒僧が意を強くするような調査結果を、厚生労働省の研究班が発表した。お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる人でも、適度な飲酒なら急性心筋梗塞(こうそく)を予防する効果がある、という。9年かけて2万余人を調べた結果だというから、道成寺の僧は喜び、あの世で杯をあげているだろう。
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ところが世界保健機関(WHO)から届いたニュースは、喜びに水をさす。酒で顔が赤くなりやすい人は、そうでない人に比べて、酒量に比例して食道がんになる危険が高まるそうだ。最大12倍のリスクと聞けば、赤ら顔の人は心配になる。
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: a# ]! A' ~2 `, I& M4 C; w 「百薬の長とはいへど、万(よろず)の病は酒よりこそ起(おこ)れ」と古くに戒めたのは、「徒然草」の兼好法師である。般若湯の般若は、仏教の言葉で悟りを開く知恵のこと。今も昔も、自らの適量を悟るのが健康の秘訣(ひけつ)に違いない。4 m6 w4 y, d; ]8 N
F; z- [* @! [; S# S; N 兼好法師はまた、「酒を無理強いして喜ぶのは、理解できぬこと」と立腹する。大学や会社で新人の歓迎会が開かれる季節である。先輩諸氏は、愚かなアルハラ(アルコールハラスメント)などゆめゆめなきよう、自戒されたい。 |