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楼主: Jennifer

[经验方法] 連載《天声人語》想看中文版请去看1590楼最新公告

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发表于 2007-4-7 12:10:37 | 显示全部楼层
2007年04月07日(土曜日)付4 L9 s1 o  O0 X0 X  R; V; o

3 Q( c+ m3 }1 t, o 30年近く前にキリマンジャロに登ったとき、友人に「豹(ひょう)はいた?」と聞かれた。ヘミングウェーの小説「キリマンジャロの雪」に、頂上近くに凍った豹の死骸(しがい)がある、という名高い一節があるからだ。$ E& t. y" e$ q" D0 n5 x" d1 q2 @

, t' x( x) m! T5 G1 B いまなら、「氷河はまだあった?」と聞かれるかもしれない。地球温暖化のために、美しかった頂上の氷河は、あわれなほどやせ細ってしまった。遠からず消滅する恐れもあるそうだ。( g( i/ Z; r5 V" n- G& l' C

; ]# f( b# _4 [( i& S きのうまでベルギーで開かれた「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」でも、温暖化が各地にもたらす危機的な状況が示された。まさに「待ったなし」だ。それなのに、温室効果ガスの最大の排出国、米国政府の動きは依然として鈍い。2 b& k3 C- `6 W- B. W
9 N4 @- |7 ^6 S1 G1 T! G! F
 ブッシュ大統領は就任するや、「経済を損ねる」と温暖化防止のための京都議定書から離脱した。その後も経済界の代弁を重ね、「温暖化は人為的」とする根拠はないという持論を、なお捨てていないようだ。
7 x; y5 Z/ g3 y  m" @
4 }, Q# F/ _0 v/ A 米の科学者レイチェル・カーソンの受難を思い出す。60年代初め、「沈黙の春」で農薬のもたらす環境汚染を告発すると、業界は「根拠がない」と猛反発した。「カーソンを信じれば害虫と病気が地球を覆う」などと反撃キャンペーンが渦巻いた。$ I6 V# X6 l1 G) @  F- M! V0 ~
2 H5 e3 Z9 |4 }" \7 r, G
 苦境を救ったのは、ケネディ大統領である。告発の重みを見抜いて、当局に調査を指示した。流れは変わり、カーソンの示した、農薬の使用をできるだけ減らす考え方は広まっていった。先見の明と言うべきか。いまさらに2人の大統領を比べて、妙に合点してしまうのはなぜだろう。
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发表于 2007-4-8 11:47:40 | 显示全部楼层
2007年04月08日(日曜日)付' ]5 ^% ]- n, F# n! Q

1 k% M; J. B' _. Y+ V. u! v8 I' k- S# R 17枚の下書きで構図を固め、ピカソは真四角に近い大カンバスに向かった。1世紀前、1907年初夏のパリ。カーテンに絡んでポーズをとる5人の娼婦(しょうふ)は、後に「アビニョンの娘たち」(ニューヨーク近代美術館蔵)と呼ばれる。写実にこだわらない、絵画革命の記念碑だ。画家はスペインを出て3年、25歳だった。
4 |' b5 c" I! U; H, R4 a' |+ w
8 a) B) g( \. C6 Z/ F* L 当時の、ベルエポック(麗しき時代)のパリは世界の若い才能を招き寄せ、いい仕事をさせた。イタリアのモディリアーニは21歳で来た。ロシアから移住したシャガールは23歳。「一歩ごとに、あらゆるところで、街そのものが私の先生だった」と語っている。モディリアーニの隣部屋にやってきたのは26歳の藤田嗣治だ。
4 d( C# N% }( D  [; ?: s
: h) F5 P- w# B" k; V, h1 x1 u3 } 仏ポンピドー・センターが所蔵する、パリで活躍した外国人芸術家の作品が東京・六本木に集まった。「異邦人(エトランジェ)たちのパリ」展(国立新美術館、5月7日まで)だ。
$ V) ^5 k$ k# L
: o6 `% H2 o  g/ J# _, C6 V 自作が出品された抽象画家、堂本尚郎さんは「絵が売れ、いつものテラスではなく値段の高い奥の席につくと、カフェの給仕が自分のことのように喜んでくれた」と話す。異邦人が身を寄せる場所が、パリにはたくさんあった。
  N0 s% M: c: G
! L% X0 |( R# L% Q  w& _4 ?1 C 文化はしばしば、異質の出会いから生まれる。貧乏絵描き、路上の物売り、旅芸人、移民に異教徒。そうした部外者をつなぎとめ包容するのも、文化の苗床としての都市の力量だろう。
8 Z0 x4 Y/ [+ a0 t8 e" ^9 c( v7 _! h& o5 G+ i% T- Z3 p  V# G
 物陰が追い払われ、すべて丸見えの息苦しい街に、明日のピカソは住みつかない。回顧展が開かれる街もいいが、できれば、それを開かせる街でありたい。
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发表于 2007-4-9 11:51:29 | 显示全部楼层
2007年04月09日(月曜日)付+ Y) o# o. Q7 m4 z+ i; `  K

. a4 E- n7 S+ b+ I, K8 e& `1 J& }2 X 「私はやはり石原を作家にしておきたかったのである……しかし彼はやはり『肉体』で勝負することに賭けた」。石原慎太郎氏が参議院議員になった68年、旧制湘南中学からの盟友、文芸評論家の江藤淳氏は月刊誌に書いた。
( Q. I' T* R% o7 l  X. Q7 t6 @/ m* s3 ~: _2 Z
 同時期の対談で石原氏は江藤氏に語る。「おれが政治という方法を通じて欲しているものと、非常に多くの大衆が欲しているものとは幸せなことに重なり得るんだ」。東京都知事に3選され、大衆を相手にした石原氏の「肉体勝負」は続くことになった。+ u0 C- @$ t9 y* F8 z9 ?/ j

$ Y8 q- }4 Z3 v* y3 j7 L& w 20年近く前、運輸大臣と担当記者の縁で東京・田園調布の石原邸を何度か訪れた。酒屋の御用聞きは銘柄ワインの入荷を知らせに来た。迎えの車には朝食をのせたお盆が積み込まれた。夫人は控えめでも、家に漂う空気は確かな上流だった。3 y. }! Y. }; X
$ g- e' q- ]! i/ V2 l1 C+ ~
 74歳の成功者に、いまさら庶民感覚を求めるのは難しいかもしれないが、東京は日本の格差社会の縮図だ。小さな声をすくい上げる努力は、首都の首長の責務である。: |/ k2 O# T5 t, j% b
2 F6 d) p  J, }- ~5 L+ \+ M
 身内を重用するような慢心は、慎太郎ファンをも失望させたろう。だが当選が決まると、強気一本の石原節が早くも全開となった。いま「非常に多くの大衆」が欲しているのは、頼れるが謙虚な「新太郎」ではないか。批判に耳を傾け、地味で面倒な問題にもぶつかっていく姿勢だ。, ?4 x# _/ d( k% Z" s
0 u# X. R7 g3 K' ^5 E
 「自信作にかぎって、ろくなものがない」。石原氏の小説をそう評したのも江藤氏である。この見立ては、自信なさそうなときはたいてい傑作、と続く。石原さん、3期目は「自信なげ」にいきませんか。
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发表于 2007-4-10 10:19:09 | 显示全部楼层

2007年04月10日(火曜日)付

 〈砂あらし 地(つち)を削りてすさぶ野に 爆死せし子を抱きて立つ母〉。学徒兵として東京空襲を体験した歌人、岡野弘彦さんの新しい歌集「バグダッド燃ゆ」に収められている。  [. v7 N& F7 p5 r: r* t: c
4 [" [) W1 P: o
 フセイン元大統領の銅像が倒され、バグダッドが陥落して、きのうで4年が過ぎた。だがイラクは安定せず、“内戦”のような泥沼の状態が続く。6万ともいわれる市民が死んだが、最大の犠牲者は、岡野さんも詠んだ子どもたちではないかと思う。
3 k4 d$ E3 R7 O, t: _% l- i5 W9 G7 L9 U3 C8 @6 z. i
 空爆で死傷した子どもや家族を追ったビデオジャーナリストの綿井健陽(たけはる)さんは、「破片が命を奪う」と言う。爆弾の金属片や、こなごなに飛び散るコンクリートが頭や体に突き刺さる。それが命を奪い、障害を残して子どもの未来を台無しにしてしまう。+ b& f, J( Q! P. M! `

9 v& m/ y% n2 ^ 戦火はさらに、子どもの柔らかい心を容赦なくえぐる。先ごろ東京で、イラクの子らが描いた絵が展示された。攻撃されたモスクから逃げる人が川に落ちていく。負傷者が運ばれる絵には、「これが私の生活です」と書いてあった。
2 j2 p. }; w4 u7 R: U9 h/ q1 Z8 x
6 v( e3 J# ^5 M, z. h 血なまぐさい日常がもたらす心の傷を思うと暗然となる。平穏な日が戻っても、傷はいつまでも残る。訓練を受けた米兵でさえ、心的外傷のため、帰国後に暴力的になったりする者が後を絶たないのだ。1 U$ b, z/ u8 J  I( x
, Y: f2 X0 J' C7 K: }) A0 _9 N6 r
 岡野さんは、東京空襲のあと、多くの犠牲者を荼毘(だび)に付した。中には子どもの死体もあった。つらい体験にイラクを重ねた。「死んだわが子を抱く母親ほど悲痛な姿はない」。悲しみを繰り返してほしくないという願いは、時と場所を隔てても変わらない。
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发表于 2007-4-11 11:44:13 | 显示全部楼层
2007年04月11日(水曜日)付7 Q/ P0 D7 W3 \! \

* _+ }# J' S) x& ^/ g 日に日に春がたけていく。この季節の「宵の刻」には、そこはかとない風情がある。% O8 E7 L  b+ N+ x4 e

: L6 m- w% ~9 V7 ?7 w8 U# v 「春宵一刻値千金(しゅんしょういっこく・あたいせんきん)」で始まる漢詩が思い浮かぶ。宋の詩人、蘇軾(そしょく)の絶句「春夜(しゅんや)」である。「花有清香月有陰……」(花に清香あり、月に陰あり……)と続く、甘美な詩句を愛唱している人も多いだろう。
! d: l. N" ~+ E/ Q! l7 M, Y. G/ X+ c* _1 L
 「宵のうち」という表現が、気象庁の予報用語から消えることになり、惜しむ声が相次いでいる。午後の6時から9時をさすが、もっと遅い時間だと誤解する人がいるからという。新しい表現は「夜のはじめごろ」になる。機能的だけれど、いまひとつ趣を欠く。5 ~# B+ I! i2 X% p1 s

: j; n9 i5 f" ?8 B1 Q 気象庁は時おり用語を見直していて、10年前には「夜半(やはん)」が消えた。そのとき「宵のうち」も危なかったが、「宵っ張り」や「宵待ち草」など身近な言葉が多かったため、目こぼしされて残ったいきさつがある。
4 L: G, G" v0 K6 N7 l" m6 |, B
" _, J& c1 @- L6 Y/ I) K, I4 U! A 時を表す古い言葉には、それぞれ“表情”がある。「たそがれどき」は寂しげだが、「火(ひ)点(とも)し頃」は盛り場のざわめきを聞く気分がする。夜明けの前後をいう「かわたれ」や「朝まだき」は物静かだ。だが「払暁(ふつぎょう)」とくれば一転、まなじり決した軍事作戦をほうふつとさせる。雰囲気のある言葉が消えていくのは寂しい。, V7 {2 p3 ]' h3 v8 f+ a( b
1 q9 H1 I1 u( Z% t6 K8 [
 戦後すぐに当用漢字を定めたとき、「魅」の字はいったん選にもれたという。国語審議会である有名作家が、「これがないと日本語に魅力がなくなるなあ」と注文をつけ、それで息を吹き返したそうだ。気象庁の会議では、「天気予報に魅力がなくなる」という声は出なかったのかなあ。
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发表于 2007-4-12 14:03:35 | 显示全部楼层
2007年04月12日(木曜日)付
- D: \; e2 n# V8 g3 f1 D
4 H: o8 P' s. Z1 C あの「なんとか還元水」の疑惑はどうなってしまったのだろう。統一地方選や、中国の温家宝首相来日の陰に隠れて、松岡農水相は頬被(ほおかむ)りを決め込むつもりなのか。( T( M  n; D% l* R5 a3 |

0 l' g0 W4 l$ m; U! t$ a  w2 Z3 z 安倍内閣はどうもちぐはぐだ。一方に「貞操義務」を説く法相がいるかと思えば、他方で政治家の徳性にうとい農水相がいる。光熱水費をめぐる疑惑に、法律に則(のっと)った報告はしている、と開き直ったきりだ。; t6 P( V4 j3 l1 R; M
1 X+ g7 |; j0 k
 折しも首相直属の教育再生会議が、道徳の「教科」への格上げを提言するという。賛否はさまざまだろう。だが現職閣僚が「法さえ破らなければいい」という了見では、首相のこだわる徳育も色あせてしまう。法律のすきまも埋めるのが、徳性というものだろう。& w, n3 O" S0 j5 B+ `& R+ r! z
7 D: R9 m3 B3 h# c" s
 道徳教育の強化は、夏の参院選に向けて安倍カラーを際だたせる売り物の一つだという。33年前の参院選でも、徳性が話題になった。田中角栄首相は経済界から巨額のカネを集め、空前の金権選挙を繰り広げていた。そのさなかに、文部大臣が社会教育審議会に「青少年の徳性の涵養(かん・よう)について」の具体策を諮問した。
2 O; S4 U# E$ ^2 w7 P+ l3 P- r7 Q* Y: {7 g7 D) j; I
 「よくまあ、恥ずかし気もなく」。当時、この欄の筆者だった深代惇郎記者は憤った。青少年を憂えるより、政界について心配する方が先ではないか、と大臣を批判した。人間や制度のウソが明々白々となりながら、それに責任を持つ人たちが、自分のことは知らん顔で説教する――。「こうしたことこそ道徳的退廃の最たるもの」と厳しい筆を走らせた。( b9 r9 t6 ?, E# m4 T0 U* D
' R6 N3 `+ K6 `7 z( Z
 同じ憤りをおぼえつつ、政治家のモラルの十年一日ぶりを嘆く。
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发表于 2007-4-13 12:21:19 | 显示全部楼层
2007年04月13日(金曜日)付
* e; G5 w, }! u7 M! K' o  s) Y" t# N& D) O# B0 E( O) p
 中国の温家宝首相の国会演説を聞き、「威ありて猛(たけ)からず」を思った。孔子の弟子が師を表した言葉で、「威厳はあるが威圧感はない」。激しい言葉はなかったが、ゆるぎなく語りかけた印象が残った。
% P6 U2 v2 y* ]9 Q; v0 q4 T: {6 Y2 r9 h8 I' D0 V1 i+ z2 h
 名の通り、温厚な実務派として知られる。中国国内では、気さくな人柄がメディアによって広まり、「平民総理」の愛称がある。共産党内の序列は3番ながら、トップの胡錦濤主席をしのぐ人気があるそうだ。
. O" @4 M2 ]. L$ ?% d% ?( d* A5 H% E* ~9 B- I. V
 だが別の顔もある。89年の天安門事件のとき、趙紫陽総書記の大番頭的なポストにいた。趙氏は事件で失脚するが、温氏は生きのびる。趙氏と立場の違う後任の江沢民総書記に引き立てられ、今に至る地歩を築いたという。したたかな二枚腰に、氏の処世術を見る人もいる。# t6 G4 S! E' v/ e) D6 Y
& }9 ~6 W8 `+ t. R9 j; [2 T2 n
 この訪日で、温氏は「氷」をキーワードにした。小泉前首相の靖国神社参拝などで日中間には分厚い氷が張っていた。昨秋、安倍首相が訪中してその堅氷を砕いた。砕いた氷を、今度は溶かす旅だと位置づけて、日本にやって来た。
# f1 D* J5 v& ^
* i* r( _5 v/ A9 [# Q3 {. e  @ そして氷はゆるんだように思える。しかし日中はまだまだ薄氷を踏む間柄だ。中国外務省の報道官も成果は認めながら、氷を溶かす旅になったかどうかの問いには慎重だ。歴史認識などでひとたび歯車が狂えば、たちまち硬い氷に閉ざされることになる。' M9 |. @+ v8 e: c8 y
' l4 w: U6 F% a
 おとといの歓迎式典で、安倍首相は旧知を迎えるような表情を見せた。北京からの来訪は、「朋(とも)あり遠方より来(きた)る」の思いだっただろう。信頼を損ねず、薄氷を踏み抜かず、慎重な足の運びを望みたい。
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发表于 2007-4-14 09:42:52 | 显示全部楼层
2007年04月14日(土曜日)付
- f; h1 Q* Y6 Q: k" r& X* K, M- w& @0 y4 ~
 歌舞伎舞踊の「京(きょう)鹿子(がのこ)娘道成寺」。幕あきに騒々しく登場する寺僧が、隠し持っていた「般若湯(はんにゃとう)という妙薬」を、股ぐらから取り出す場面がある。8 u% `* m" Y2 Y1 B$ m1 X

) K- P7 a, |/ A8 |7 M 般若湯とは漢方薬、ではない。僧の仲間うちの隠語で、酒のことだ。仏教の五戒の一つに、飲酒をいましめる「不(ふ)飲酒戒(おんじゅかい)」がある。これを破る飲んべえな僧たちが、「体の薬に少し飲むだけだから」と、言い訳がましく呼んだのが始まりらしい。
/ [  h7 r( X  u) F
4 L4 F+ G1 ]. C% K5 f) D2 Y' U9 r そんな破戒僧が意を強くするような調査結果を、厚生労働省の研究班が発表した。お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる人でも、適度な飲酒なら急性心筋梗塞(こうそく)を予防する効果がある、という。9年かけて2万余人を調べた結果だというから、道成寺の僧は喜び、あの世で杯をあげているだろう。
/ H! X: `- S* J* C- e% u6 z0 Z1 \2 t: U! q6 A; F9 u
 ところが世界保健機関(WHO)から届いたニュースは、喜びに水をさす。酒で顔が赤くなりやすい人は、そうでない人に比べて、酒量に比例して食道がんになる危険が高まるそうだ。最大12倍のリスクと聞けば、赤ら顔の人は心配になる。! v6 S% u% q8 l: X4 \
  r- o, ~& J, ]9 t3 L
 「百薬の長とはいへど、万(よろず)の病は酒よりこそ起(おこ)れ」と古くに戒めたのは、「徒然草」の兼好法師である。般若湯の般若は、仏教の言葉で悟りを開く知恵のこと。今も昔も、自らの適量を悟るのが健康の秘訣(ひけつ)に違いない。4 Z7 w2 A% Z6 V
- @7 y4 J: w' v: e
 兼好法師はまた、「酒を無理強いして喜ぶのは、理解できぬこと」と立腹する。大学や会社で新人の歓迎会が開かれる季節である。先輩諸氏は、愚かなアルハラ(アルコールハラスメント)などゆめゆめなきよう、自戒されたい。
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发表于 2007-4-15 09:05:20 | 显示全部楼层
2007年04月15日(日曜日)付% S  S# T* G, s* Z, N! O3 v

1 o% ~% i+ s7 c 松田聖子さんがNHKの番組で語っていた。「くじけそうになることはあるけれど、それでも私はこれが好きだから続けていく」。18で歌手になり、結婚と子育て、離婚を経験し、45の今も前向きに仕事をしている。
+ w. y+ T+ u( I- U" l
% M0 r" C4 ?9 [0 C; u9 C 才能あっての話だが、自立した女性の典型だろう。同性のファンが多いのは、生き方への支持とあこがれの表れとされる。さて、聖子さんが気になる人なら、この雑誌にも思いがあるのではないか。月2回刊の「クロワッサン」が明日で創刊30周年となる。
; y8 G  B2 M4 _- X/ v& _( j* I  s7 C4 p: P$ A% _# S
 発行元のマガジンハウス社史は「女性が自分自身に目覚め始めているという事実はもはや紛れもない。新雑誌はこうした雰囲気の中で準備された」と記す。聖子さんが世に出る3年前だ。
6 w! e) f4 |) z2 k  Z
0 O( @# c0 z7 C* S 「結婚からの解放」「離婚志願」といった特集は、女たちを鼓舞し、動揺させた。女性誌に「挑発」され、家庭もキャリアも逃した30代を、88年の『クロワッサン症候群』(文芸春秋)は批判的に描いた。著者の松原惇子さんは「この雑誌の影響力はそれほど強烈だった。今は美容やおしゃれ中心の生活情報誌だが」と言う。( I' Y7 ?9 g2 F: }8 }

' r0 [8 A8 z3 ]' H  J では、人生の選択肢を増やそうという創刊当初のメッセージは、時代と社会に浸透したのか。働く女性の過半はパートなどの非正社員で、正社員も出産で大量に辞めていく。好きな仕事に結婚、子供も趣味も、というフルコースの人生はまだまれだ。
' z( P' w, [, \6 R+ n! k3 Z. ?( R3 \
 働いても十分稼げない層が広がり、女ばかりか男の自立も怪しくなってきた。聖子さんの衰えぬ輝きは、くすんだ現実の裏返しにも見える。
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发表于 2007-4-16 09:46:22 | 显示全部楼层
2007年04月16日(月曜日)付( d/ B2 {8 j/ C* l
. j+ \1 i  m0 i6 J; s
 「未来」を聴こうと街頭に出た群衆の髪や肩に、過去から追いかけてきたような雪がはりついた。白い景色の中で、閉鎖中の「石炭の歴史村」が立ちすくんでいる。看板には「昭和の暮らし展/貧しくとも幸せだった日々」" w- ~+ U4 ?( Z1 W% R

7 E1 G% |5 [* `9 K6 y1 Z 財政が破綻した北海道夕張市で、市長選挙が告示された。月給26万円、交際費、出張手当なしの職に7人が立候補した。地縁があるのは3人、あとは道外からの名乗りだ。
$ d; `4 M5 T, a) p6 I2 Q# S% X. u7 R9 K( j# K4 s5 f# p
 「夕張へ来てみると、冬は寒いし、仲間はできんし、仕事はつらいし、毎日が面白くなくってなあ」。77年の映画『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』(山田洋次監督)で、高倉健さん演じる元炭鉱マンは九州から出てきた頃をそう回想する。誰が市長になっても、健さんのようにどん底からの再出発である。
9 {: F/ S; O2 D( T) z; ~- h- G2 }3 E% {9 {7 k8 Y+ Q9 i8 w/ b  o
 炭都としては1世紀の命だった。「地上の鉱脈」と期待した観光事業は赤字を膨らませた。人口は往時の1割。市民1人につき新車1台分ほどの借金を抱えている。市職員は半減、粉飾を見破れなかった市議会も定数9に半減された。1 a: X) t0 L/ W) j9 J3 E# U

4 b, F, e3 J, b' P) c: | 一つの産業に頼りきる自治体は、ひとたびそれが衰えれば倒産の危機だ。そうでない都市でも、地方債の償還や団塊世代の退職金が財政を締めつける。地域ぐるみで、人と金を引き留める工夫を凝らすしかない。
8 h1 d3 L& P: P  ^* X1 A
- d9 `! H! j% S# [- d: K+ o2 h 夕張は教えてくれた。役所と議会、住民は、実は同じゲームを闘っている。東京や主要都市の引力に抗して、生活圏を守る闘いだ。統一地方選の後半は、何かを任せる為政者ではなく、チームメートを選び取る覚悟で一票を投じたい。
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发表于 2007-4-18 07:39:51 | 显示全部楼层
2007年04月17日(火曜日)付
) ~' q* A) t- p: d% z3 K+ E# Y- |. K
 保険金などの多額の不払いがわかった生命保険各社へ、問い合わせや苦情が殺到している。不払いは計約25万件、総額284億円にのぼる。これはまだ、氷山の一角にすぎないそうだ。
( s6 ]5 O; m, |; [8 W- q9 d9 Z5 K. }6 a* v5 s. @
 保険会社が売るのは“安心”だ。「大樹」「堂堂人生」「生きるチカラ」……。各社の広告には頼もしげな商品名が並ぶ。だが、売るときだけ熱心で支払いは頬被(ほおかむ)り、では看板に偽りありだ。
4 i2 {! O  G. K  e2 q9 R# @& ]& k. K6 P! f  f/ g
 これを一字で表すなら、「欺」ではないだろうか。漢字研究の白川静さんによると、「欺」の「其」は四角い大きな仮面、「欠」は人が前に向かって声を出している形という。二つを組み合わせて、仮面を付けて人をだます意味に使われるようになった。広告は偽りの仮面かと、疑いたくもなる。6 p/ |- f" p/ I$ A2 N# |
8 B) t+ ?# X2 X
 気骨の経済人を好んだ作家の城山三郎さんは、「もう、きみには頼まない 石坂泰三の世界」で、戦中、戦後に第一生命社長を務めた石坂を描いた。のちに経団連会長となり、歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで高度成長期の財界を率いた。城山さんは人物にひかれ、小説の題に、煮え切らない蔵相に石坂が投げつけた言葉をつけた。
; b. u) D! e0 J* N6 e0 d
1 G2 b4 \" ^3 ?, S' Z) | 経済活動に志がともなっていた時代が終わった――3月に城山さんが亡くなったとき、五木寛之さんは、朝日新聞に寄せた追悼につづった。そんな時代の、顧客を軽んじる企業のトップに、城山さんが心ひかれるとは思えない。3 q/ X# x* y3 s( d) B
4 ^7 u" J; |6 D8 }. u5 R7 d9 |
 各社の幹部は、「もう、きみには頼まない」という石坂の叱責(しっせき)が聞こえているだろうか。不払いの後始末だけは、頼まれてもらわなくてはなるまいが。
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发表于 2007-4-18 07:40:40 | 显示全部楼层
2007年04月18日(水曜日)付8 b7 G0 m/ g4 o, |7 M( q& a. u

1 W% L; s1 C( o8 h& c% A) o; G: y4 y# ]$ q9 Q 米国で「平等をもたらす装置」と呼ばれるものがある。それは銃だと、日本人が想像するのは難しい。相手が屈強でも銃を持てば対等になれるという、開拓時代の自衛思想に根ざしている。
4 V7 t. g* U! r9 k) t* g( ^
! f; a7 z# I: P$ g! X 米国にいた5年前、南部の町で女性を狙った連続殺人が起きた。取材に行くと、ある銃器店で護身用の銃が300丁も売れていた。買った9割は女性だった。「社会に恐怖があるときは、弱い人ほど銃を買う」。そんな店主の言葉が記憶に残る。
6 E! Q; ?2 Q9 l4 q/ L: d2 F+ j+ B: @: l8 ~/ R2 |% {
 銃による凶悪犯罪が起きるたびに、銃とは無縁だった人まで銃で身構える。不毛な繰り返しを重ねたあげく、米国にはいま約2億丁もの銃が出回っている。犯罪も多いが、手近に銃があるばかりに、ささいなトラブルで家族など身近な人を殺傷してしまう悲劇が後を絶たない。
  ~6 W4 E7 I# A9 [, e" X9 [! W# \5 M9 U8 `( z9 j$ U- [" Q
 米国の大学で銃の乱射が起き、30人以上が死亡する米史上最悪の銃撃事件となった。まだ不明な点が多いが、犯行に銃さえ使われなければ、これほどの惨事にはならなかっただろう。
8 O" Z" F% S$ B' p4 N; H
% E- [1 m( s0 g* U 悲痛な声明を出したブッシュ大統領は、「国民が銃を持つ権利」を擁護してきた。「銃が人を殺すのではなく、人が殺すのだ」が擁護派の常套句(じょうとうく)である。だがこうした事件を見ると、やはり「銃が人を殺す」との思いをぬぐえない。
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 「撃たれる前に撃つ権利がある」。これも擁護派の言い分だ。今回も、「他の誰かが銃を持っていたら」と残念がる声があると聞く。それが“平等”ということなのか。日常に2億丁の銃を潜ませる米社会の、闇の深さを見る思いがする。
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发表于 2007-4-19 08:48:55 | 显示全部楼层
2007年04月19日(木曜日)付& }3 `. ^0 _8 c% C, P
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 きのうに続いて、銃のことを書きたい。米国で銃問題を取材したとき、銃器店で、銃口を我が身に向けてくれ、と頼んだことがある。どんな気がするのか試したかったからだ。
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 弾を込めた、冷ややかな銃口が胸の前で止まると、息が詰まった。撃たれないと分かっているのに、怖気(おぞけ)が体を突き抜ける。わずか10秒ほどだったが、人を萎縮(いしゅく)させる「暴力」のおぞましさを、垣間見る思いがした。
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% }9 S  G9 d5 `# i0 q! m+ O その暴力に、民主主義は何度も苦い汁を飲まされてきた。「投票(バロット)は弾丸(ブレット)より強い」と言ったのは、米の16代大統領リンカーンである。民主主義の象徴のように語り継がれる彼もまた、南北戦争のあと凶弾に倒れている。米の政治は弾丸との戦いでもあった。
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 弾丸が投票を脅かす事件が、日本で起きた。長崎市の伊藤一長市長が、選挙戦のさなかに銃で撃たれ、命を落とした。動機が何であれ、選挙の候補者を狙った凶行は、民主主義への卑劣な挑戦にほかならない。( f6 M7 W* W3 l' }8 i. ^  I

& O" L% j' u3 k, _7 v 伊藤氏は被爆地の市長として、核廃絶に奔走してきた。95年には外務省の圧力をはねのけ、国際司法裁判所で「核の使用は国際法違反」と証言した。銃という、やはり人間の作った武器で命を奪われたのは、無念だったに違いない。
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 「次の世代のために毎日の小さな変化を積み重ねていくのが民主主義」。米の作家ノーマン・メイラー氏は昨年、朝日新聞に語った。その民主主義と、暴力で人をねじ伏せるテロとは、何があっても相容(あいい)れないことを、あらためて、つよく確認したい。
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发表于 2007-4-20 08:48:40 | 显示全部楼层
2007年04月20日(金曜日)付
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: M: K- m0 Y: F 萌(も)える青草を踏んで野山を歩く。晩春の季語でもある「踏青(とうせい)」には、心はずむ明るさがある。〈ジーパンに詰め込む肢体青き踏む 登四郎〉。
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9 b8 r3 D3 T  B# V/ \# e: H' h, k2 [ 年配の方なら、往年の流行歌「丘を越えて」を思い出すかもしれない。作曲した古賀政男は大学を卒業する春、桜が満開の東京近郊に仲間と遊んだ。下宿に戻ると学帽に桜の花びらが1枚、はりついていた。その1枚から楽想をふくらませ、青春の歌を書きあげたという。
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. n9 f" m, V' f' _/ v& r 東京ではもう桜は散り、きょうあたり、桜前線は秋田の辺か。いまの季節の日本列島は、淡いピンクを追うように、若葉の緑が野や山を染め上げていく。一盛(ひとさか)りの春を愛(め)でられた桜は、またもとの目立たない木となって、万緑のなかに埋もれてしまう。9 \; F, C0 n( z% X) [% H* l! e
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 「そやから困るんです」と、「京の桜守(さくらもり)」として知られる庭師、佐野藤右衛門さんが嘆くのを聞いたことがある。花の盛りに人はちやほやするが、季節が過ぎれば忘れてしまう。何かで邪魔になると、大樹が安易に切られることも少なくないそうだ。歳々年々、花とて同じでいられる保証はない。6 E: M: T. ~3 G+ s$ ^

, J5 B* H1 j* E# d% @8 W 葉桜がまわりの緑に溶け込むと、春はいよいよ深い。きょうは二十四節気のひとつ、穀雨である。〈まつすぐに草立ち上がる穀雨かな 雪夫〉。暖かい雨が土をうるおし、野山も緑を濃くしていく。そして半月あとの次の節気は、もう立夏だ。
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6 ?6 w. h6 W1 \3 D7 @) z0 b5 f 古賀は自著で、「丘を越えて」は二度と返らぬ若さへの愛惜だった、とつづっている。惜春、という季語がある。だれにも二度とはない今年の春が、過ぎていく。
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发表于 2007-4-21 13:37:35 | 显示全部楼层
2007年04月21日(土曜日)付
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 古い方言辞典をめくっていると、豊かでユーモラスな言い習わしの数々に時を忘れる。たとえば、ある地方では、助産師(産婆)を「へそばーさん」と呼んだそうだ。7 X$ P" v2 n- ]# g- j  ^
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 風呂は「どんぶり」。末っ子は「ひやめし」。外出好きな女性は「でべそ」。氷柱(つらら)を「ちろりん」と可愛く言う地方もある。多くはもう死語になっているかと思うと、残念な思いがする。7 a! f( H+ W# q! p( |: ~
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 宮城県栗原市が市民憲章を制定することになった。方言で文案をつくったが、不評に頭を痛めている。〈眼(まなぐ) 光をにらみ……腹ん中 熱(あ)っつぐ熱(あ)っつぐ……おれらいま風を切って走る〉。これを市民にはかると、「東北の暗さが強調される」「田舎っぽい」といった否定的な意見ばかり目立ったそうだ。
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 「土地の暮らしと歴史がこもった言葉で独自性を」と、5人の制定委員は意気込んだ。方言学者からは「すばらしい」と励まされた。ところが、肝心の市民の胸には、あまり響いていないようだ。1 \2 |3 \% D% o% G

6 z. D) R+ C8 l2 Z& P" V0 y4 E/ l 〈ふるさとの訛(なまり)なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく〉と詠んだのは石川啄木である。寺山修司は〈ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲(コーヒー)はかくまでにがし〉とうたった。ともに東北地方の出身である。歌には故郷の言葉への、懐かしさばかりではない微妙な思いも感じられる。6 C, G8 h# p) D- {7 l: t
9 b; x1 w+ A; P* L4 T) W
 ふるさとの言葉には、よそ者が辞典からは感じ取れない陰影が、張り付いているのかもしれない。栗原市はさらに市民から意見を聴くそうだ。よそ者としては、この憲章は、すてきな言葉の記念碑になると思うのだけれど。
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