2007年05月03日(木曜日)付" A% A. J7 @9 \* |+ B
2 k( ]& B v9 B( B) G 朝日歌壇賞と俳壇賞の二冠を持つオランダ在住の歌人、モーレンカンプふゆこさんの短歌に、〈窓口で法律用語を調べつつ日本国籍破棄を告げけり〉がある。33歳で異国に帰化した際の、凜(りん)とした決意だ。
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9 d, g3 _, J( B! F( p) ?4 |+ E4 i& ~ 作者はしかし、森で拾った木の実にまで望郷の念を募らせもする。〈手の中に団栗(どんぐり)といふ故国あり〉。ふゆこさんが思い続ける日本は、いつまでも、海外の同胞が慕う国でいられるだろうか。
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パリ駐在から帰国し、3年ぶりに住んだこの国は改めて新鮮だった。朝のホームに整然と並ぶ人たち、静かな満員電車。小ぎれいで安全な街、眠らぬコンビニと自販機。このささやかな日常の安定こそ、守り伝えるべきものに見える。2 @6 W2 l, Z1 X) b
& K% s' @6 h+ [7 S5 [" M1 J 国籍を捨てて、なお残る祖国とは何だろう。山河や文化、同じ言葉を話す懐かしい人々。その一切がつつがなくあるために、国家の仕組みと約束事がある。軍事同盟が「傘」なら、平和憲法は「繭」のように、日本社会に寄り添って平安を包んできたのではないか。% R6 D4 a5 M1 p, [) k n
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窮屈な繭を抜け出し、傘の下で舞うチョウになりたいと欲する人もいる。だが、世界の現実に合わせて理想を遠慮すれば、情けない現実が大きくなるだけだ。( ^- j3 [$ `( y7 [% W+ X. `: k7 Q @7 P
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朝日俳壇の選者だった石田波郷(はきょう)に、「焦土諷詠(ふうえい)」と称される作品群がある。〈香水の香(か)を焼跡(やけあと)にのこしけり〉。廃虚から書き起こした香り高い志は、四季の美しさや産業技術と並ぶ財産だ。世界がこの水準に追いつくまで、あるべき姿を輝く繭から発信する。
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ここで悠然と待つのが人類愛にかなうと思うが、どうだろう。 |