2007年05月15日(火曜日)付" l& H8 {/ K# w, | ^1 V
* K* E7 _ m1 j かくれんぼに飽き、おにごっこに疲れた昔の子どもたちは、両者の面白さを併せ持つ「缶けり」を考えついた。ルールは地域や世代によって異なるらしいが、決めたその場でまず一回。これが子ども遊びの楽しさだ。! \4 s3 ^+ G( D, j2 C2 ]
# X7 z& U* h2 m- T6 ` 憲法改正のための国民投票法がきのう成立した。どうしても、一日でも早く国民投票という缶けりをしたくて、安倍くんと仲間が決めたルールである。5 ]' [9 n2 W2 H2 A1 [- p' z
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国民投票それ自体、憲法改正の是非という、より大きな決定を問う決まりごとだ。それも、国会の発議を受けて国民が判断を下す、最後にして最重要のルールである。安倍首相は、これをいま決めることで改憲に弾みをつけたいのだろう。
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それにしては、「参加者」が少ないような気がする。法律となった与党案は、衆参両院とも与党の賛成多数で可決された。一緒にルールを練ってきた民主党は、途中で離れてしまった。国民の間で、差し迫った課題として改憲論議が高まっているとも思えない。
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, Y$ P$ [* P6 g% ]3 i5 a. E8 ` 参加者の数ということでは、別の心配もある。護憲派のボイコット戦術を警戒するあまり、国民投票法には最低投票率の定めがない。改憲論議が高まらないまま手続きが進めば、投票率は上がらず、一部の意見に沿って憲法が改められかねない。' ~2 J1 M- A4 k( s3 `+ q
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「国の姿を決める缶けり」をフェアで白熱したものにするには、多くの参加者と、十二分の議論が欠かせない。言い出しっぺの責任だ。国民はついてきているか。夕焼けの空き地に、安倍くんの影だけがのびていないか。首相はいま一度、周りを見渡してほしい。
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2 g2 O9 C; B* z5 s2007年05月16日(水曜日)付# _8 u7 e( U5 p+ J# E
* s6 x, `" u; l/ X% | 欧州路線の飛行機だったか、安全ベルトが回りきらない肥満男性と乗り合わせたことがある。継ぎ足しベルトのお陰で離陸できたが、今度は座席テーブルが腹につかえて水平にならない。傾いたままの機内食を、彼は手慣れたしぐさで平らげた。
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職場の健康診断にウエストの測定が加わるらしい。生活習慣病を招くメタボリック症候群対策で、厚生労働省が来春からの義務化を決めた。経営側は「従業員の内臓脂肪まで面倒見ない」と抵抗したが、押し切られた。
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$ I y& `7 R8 a; a! n# u 男性は腹囲85センチ、女性は90センチ以上でメタボの疑いという。飛行機に普通に乗れても安心できない。同僚の目もある職場健診で、ここを巻き尺が一周するかと思えば、腹より心がへこむ。
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. v6 i' g. b0 T5 g 堂々たる腹囲はかつて、物心両面の余裕の証しとされた。いわゆる太っ腹だ。食べるのがやっとで、体力を浪費できない貧しい国ではいまも、「栄養の黒字」を示す肥満は財力のシンボルだ。- f) _1 }4 ~" _2 a' t
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訳書『いじわるな遺伝子』(NHK出版)は「食欲とはその昔、食べ物が豊富にあるなど考えられなかった世界で築かれた本能」だと説く。食糧を求めて山野を駆けめぐる必要がなくなり、運動不足が叫ばれる社会になっても、人間の本能は変わらない。スキあらばエネルギーを蓄え、節約する「怠惰の遺伝子」が脈々と受け継がれている。
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) r6 |% a/ B) C) X 腹回りを国が心配してくれるとは豊かさの極みだが、医療費は膨らみ続ける。もはや、国を挙げてヒトの本能に逆らうしかないのだろう。勝つのは国家か、遺伝子か。思えば壮大な実験である。 |