2007年08月25日(土曜日)付9 B* x. E r+ N, ~/ Z; V' P
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初夏に田植えをした房総半島の棚田へ、草取りの作業に行った。しばらく見ぬ間に稲は伸び、もう色づき始めている。草を刈り終えて、汗だくの体を冷ましていると、「それでよろしい」という風情で、稲穂も風に吹かれている。/ n' s7 i6 s- `) t: W
& F& Z0 u# A! B& I" t 〈私の植えたものは黄金色の/なまめかしいものとなった。/風のままにはためいてさざなみをおこし/夕陽(ゆうひ)の中でくだけては又もりあがる〉。農村に暮らして詩を書いた永瀬清子さんが、実りの穂波を描いた一節が思い浮かぶ。
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だが地元農家に聞くと、今年の稲は、恵まれていたわけではないらしい。7月は雨が多かった。田んぼから早めに水を抜くと、8月に入って烈(はげ)しい太陽が照りつけた。実をはらまずに枯れた穂が、所どころにある。
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夕立も少なかったらしく、田はひび割れている。古来、稲は雷の光を浴びて実ると考えられた。雷光を稲妻や稲光(いなびかり)と呼ぶのは、その名残である。カミナリ様にも冷たくされたと聞けば、わが稲も少しばかり不憫(ふびん)である。
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夏の好天は豊作を約束するとされてきた。だが近年は、天気が良いと高温障害が起きる。温暖化ゆえか、「米どころ」が北へ移っているともいう。北海道産はかつて、食味が劣って売れ残り、「やっかいどう米」と揶揄(やゆ)された。いまや、本州米に並ぶ人気らしい。
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% \/ D9 Q6 q: _, d6 ~7 N, s 人が植えて刈るけれど、稲を育てるのは太陽と土と水だろう。秋の日には、感謝をこめて収穫を祝う。だが気候の歯車が狂えば、高らかな祭り囃子(ばやし)は遠ざかってしまう。兆(きざ)しなきにしもあらず、なのが気がかりだ。 |