2007年10月02日(火曜日)付
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/ S6 Z4 k* U" q9 x% s1 K, U, ?. ? 一頭の鹿が自分の姿を水に映して、立派な角(つの)にうっとりしていた。そこへ突然、猟犬が現れた。森へと逃げたが、自慢の角が枝にからまって邪魔をする。命からがら逃げのびた鹿は、「美しいものはしばしば仇(あだ)になる」と悟ったという。
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古い寓話(ぐうわ)の一節である。鹿を自民党に置き換えれば、見栄えばかりの「角」はもう結構、といったところか。きのうの福田首相の所信表明からは、前任者の掲げた大きな政治理念が消えていた。広げた風呂敷は小さめで、「低姿勢」という国民へのおわびが包んであった。
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安倍さんがうっとりした「美しい国」はひっそり看板を下ろし、憲法改正も所信表明から外れた。官邸を飾る書も「凜(りん)」から「和」に変わった。福田さんの「バランスと調整」を象徴する一文字である。
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淡々、飄々(ひょうひょう)が持ち味だろうし、自分の言葉に酔うのは禁物だ。とはいえ首相の演説は、総務部長のそれとは違う。平たい言葉の羅列では、せっかく風呂敷から取り出した「希望と安心」も国民の胸には響かない。
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古川柳に、身上をつぶしながら風流を捨てられない様を揶揄(やゆ)した〈売家と唐様で書く三代目〉がある。総裁選を争った3代目の麻生さんを「粋な唐様文字」に例えるなら、福田さんはさしずめ「楷書(かいしょ)の首相」か。端然としてまじめ。だが人臭さや迫力には乏しい。0 X& T6 j' B2 t6 y7 n
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昨日の演説で、その楷書ぶりを再認識した人も少なくあるまい。手堅さは買うにしても、首相が「そつのない総務部長」では国民は寂しい。そのうち独自の「角」が生えてくるのだろうか。 |