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午前5時すぎ。夜は明けたが、まだ日の光が届かない森の木々は、薄い灰色のとばりの中で眠っている。森閑とした中で、せせらぎの音が時を刻んでいるようにも聞こえる。
清晨5点多。天刚蒙蒙亮,阳光尚未照射到森林,浅灰色天幕下,树木还在沉睡。万籁寂静,潺潺流水声中似乎可以听到时间的脚步。
昨日、長野県佐久市の森を歩いた。市の東部に広がる平尾山の周辺は、「心身を癒やす効果が科学的に確認できた」と林野庁が今月発表した全国10カ所のひとつだ。癒やし効果には、森林浴で血圧や脈拍数が下がることなどがあるという。「みどりの日」を前に、その森の中に身を置いてみようと思った。
昨天,我去长野県佐久市的森林走了走。林野厅于本月公布了全国10处“经科学验证可疗养身心”的地方,绵延于佐久市东部的平尾山一带就是其中一处。据说其疗养效果包括通过森林浴可降低血压和心跳次数等等。我想在“绿之日” 去森林中前亲身体验一下。
明け方には無彩色だった森の色が変わったのは、山かげから日の光が差し込んだ時だった。それまでじっと息をひそめていたような木々の若芽が、一斉に輝き始めた。その無数の緑の粒々は、森の生気を表しているようだった。
微明时分的森林没有色彩,当阳光从山崖照射进来时,一切都发生了变化。嫩綠的樹芽好像敛息屏气太久了,此时一起迸射出耀眼的光芒,无数绿色似颗颗宝石将整个森林装点得生机勃勃。
当然ながら坂道が多く、上りが続くと、脈拍はいっときは増えた。しかし、しばし立ち止まれば、さわやかな風にほっとする。足元は、落ち葉でふかふかだ。人とほとんどすれ違わない「異境」を味わう。
当然,坡道很多,不停地向上走的时候,心跳会暂时加快。不过,只要停下脚步休息片刻,春风轻拂,便会感到很舒坦。落叶踩在脚下,松松软软的。几乎不会有人和您擦肩而过,有一种深处“异乡”的感觉。
そのうちに、木々や鳥や虫などを育む森という一つの世界を成り立たせているなにものかを畏(おそ)れる思いがわいてきた。それが、数字で計れる効果とはまた別の、森の力だろうと思った。
不知不觉,一股敬畏的感觉慢慢从心底升起,那是对滋润了树木、小鸟、百虫,孕育了森林世界的神秘之物的敬畏。我想或许那就是有别于数字测算效果的、森林的力量吧。
梅の花が残り、桜がほぼ満開の佐久を昼すぎにたって、東京に戻った。街路樹の緑は、目覚めの遅い森の木々よりずっと濃くなっている。葉も、日に日に大きくなる。ケヤキ、イチョウ、ヤナギ……。ビルと車と人波に囲まれながら、それぞれの命を燃やす。そんな街の緑の生もまた、切なく貴い。
午后我离开了佐久,那个梅花尚存、樱花满树的地方,回到了东京。比之较晚复苏的森林大树,林荫道上的树木更浓绿。树叶也会一天天长大。榉树、银杏、杨柳……。它们被大楼、人和车包围,却依然各自绽放自己的美丽,燃烧自己的生命。这种街道上的绿色生命,同样珍贵,让人怜惜。 |
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