日本の国土は、地球上の陸地のわずか400分の1にすがない。しかし、その狭い国土になんと世界の火山の10分の1が集まっている。日本の風土を考える上で、これらの火山の存在を無視することはできない。
火山が多くて困るのは、地震が頻繁に起こったり、火山の噴火によって被害を受けたりすることである。例えば、九州の鹿児島市では、桜島という火山が噴き上げる火山灰のために、市民の生活や農作物がしばしば被害を受ける。最近では、1986年11月に、東京の南にある伊豆大島で、三原山という火山が噴火して。溶岩が流れ出し、島の住民が一時本州に避難するという騒ぎがあった。
しかし、困ることがある一方で、逆にありがたいこともある。それは、火山の恵みである温泉が日本のいたる所に湧き出ていることである。
温泉の湯には、硫黄やカルシウムなどさまざまの成分が含まれていて、病気やけがを治す動きがある。だから、日本では昔から「湯治」と言って、病気やけがを治すために、よく温泉を利用して。
温泉のあるところは、美しい山や川など、自然の景観にも恵まれているから、「湯治」は昔の人にとって数少ない娯楽の一つでもあった。山の緑を眺めながら、あるいは川の流れる音を聞きながら、のんびりと温泉につかるのを、日本人はこのうえない楽しみとしてきたのである。
日本人は世界でもとりわけ風呂好きな民族と言われているが、温泉が日本人の風呂好きという性格を作ったと言っても過言ではないだろう。
温泉は、湯に入って疲れをいやしたり病気を治したりできるけではない。温泉の熱を使って、野菜を育てたり、魚を飼ったりすることもできる。さらに、最近は、温泉の熱を利用して地熱発電の研究も行われている。地熱発電は技術的にまだまだ難しい問題があるようだが、温泉の熱をエネルギー源にしようという考えは、火山の多い日本によってたいへん魅力的である。 |