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楼主 |
发表于 2006-10-9 19:19:26
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十一時十五分に僕は赤坂に戻ってきた。
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「さて」と僕は言った。2 {: O4 F2 K# F& C( F8 o
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今度はユキはちゃんと僕にそのアパートの場所を教えてくれた。赤い煉瓦を使ったこぢんまりとしたマンションで、乃木神社の近くの静かな通りにあった。僕はその前に車を停めてエンジンを切った。3 ]4 F; t% `. L- |7 }$ u
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「お金のことなんだけど」と彼女はシートに座ったまま静かに言った。「飛行機代とか、食事代とかそういうの」
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7 ]+ ^/ {" m5 V0 t6 w* D! t9 g9 Q「飛行機代はお母さんが戻ってきてから返してくれればいい。それ以外のものは僕が出す。気にしなくていい。割り勘のデートはしないんだ。飛行機代だけでいい」
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ユキは何も言わず肩をすぼめ、車のドアを開けた。そして噛んでいたチューインガムを植木鉢の中に捨てた。
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「ありがとう・どういたしまして」と僕は一人で声に出して礼儀正しく会話してみた。そして財布から名刺を出して彼女に渡した。「お母さんが帰ったらこれを渡して。それからもし君が一人でいて何か困ったことがあったらここに電話するんだよ。僕に出来ることだったらやってあげるから」
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彼女はしばらく僕の名刺をつまんでじっと睨んでいた。それからコートのポケットに突っ込んだ。
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「変な名前」とユキは言った。1 v6 P% e: b- n$ |! Q* h' _
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! m. D, x- H3 W7 j [* |僕は後部席から重いスーツケースを引っ張り出し、それをエレベーターにのせて四階まで運んだ。ユキはショルダー・バッグから鍵を出してドアを開けた。僕はスーツケースを中に入れた。食堂を兼ねたキッチンとベッドルームと浴室だけの作りだった。建物はまだ新しく、部屋の中はモデルルームみたいにきちんと片付いていた。食器や家具や電気器具はひととおり揃っていたし、どれも洒落た高価そうなものだったが、生活の匂いというものはほとんど感じられなかった。とにかく金を出して全部を三日で買い揃えたといった風だった。趣味は良い。でもどことなく非現実的だ。
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' e0 h0 ]' k! M4 n4 a「ママがたまに使うだけなの」とユキは僕の視線を追ったあとで言った。「ママはこの近くにスタジオを持ってて、東京にいる時はほとんどそこで暮らしているようなものなの。そこで寝てそこで御飯食べて。ここにはたまに帰ってくるだけ」
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「なるほど」と僕は言った。忙しそうな人生だ。; q% C4 x) ?* F
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# x+ y) _7 {, k+ V0 u: V7 a" r彼女は毛皮のコートを脱いでハンガーにかけ、ガス・ストーブをつけた。そしてどこかからバージニア・スリムの箱をもってきて一本口にくわえ、紙マッチをクールに擦って火をつけた。十三の女の子が煙草を吸うというのは良くないことだと僕は思う。健康にもよくないし、肌も荒れる。でも彼女の煙草を吸う姿は文句のつけようがないくらい魅力的だった。だから僕は何も言わなかった。ナイフで切り取ったような薄い鋭角的な唇にフィルターがそっとくわえられ、火をつけるときに長いまつげが合歓の木の葉のようにゆっくりと美しく伏せられた。額に落ちた細い前髪が彼女の小さな動作にあわせて柔らかく揺れた。完璧だった。十五だったら恋におちている、と僕はあらためて思った。それも春の雪崩のような宿命的な恋に。そしてどうしていいかわからなくて、おそろしく不幸になっていただろう。ユキは僕に昔知っていたある女の子を思いださせた。僕が十三か十四の頃に好きになったひとりの女の子のことを。その当時に味わった切ない気持ちがふとよみがえった。/ U: D3 k8 t6 M% z
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「コーヒーか何か飲む?」とユキが尋ねた。
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0 Q9 E( T8 M) O- {3 Z3 j9 r3 s/ b8 O僕は首を振った。「遅いからもう帰る」と僕は言った。5 B" h1 x5 E2 U. E
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ユキは煙草を灰皿に置いて立ち上がり、僕をドアのところまで送ってくれた。
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0 x4 M) c% K' |$ j+ F「煙草の火とストーブに気をつけて」と僕は言った。% P U% x( K3 G( s
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「お父さんみたい」と彼女は言った。正確な指摘だった。
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4 W% r; N" V2 M: u渋谷のアパートまで帰り、ソファに寝転んでビールを飲んだ。そして郵便受けに入っていた四通か五通の手紙をチェックした。どれもたいして大事ではない仕事の関係の手紙だった。読むのは全部後回しにして、封を切っただけでテーブルの上に放り出しておいた。体はぐったり疲れていて、何もしたくない。でもひどく気がたかぶっていて、うまく眠れそうになかった。長い一日だった、と僕は思った。長く長く引き延ばされた一日。一日がかりでジェット・コースターに乗っていたような気がする。まだ体が揺れている。
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結局いったい何日札幌にいたんだろうと僕は考えてみた。でも思い出せなかった。いろんなことが次々に起こった上に、睡眠時間が混乱していた。空は切れ目なく灰色だった。出来事と日付が錯綜していた。まずフロント係の女の子とデートした。昔の相棒に電話して、ドルフィン・ホテルについて調べてもらった。羊男と会って話をした。映画館に入ってキキと五反田君の出る映画を見た。十三歳の綺麗な女の子と二人でビーチ・ボーイズを合唱した。そして東京に戻ってきた。全部で何日だ?# A" v7 K# ]* }. r
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数えられなかった。
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全ては明日だ、と僕は思った。明日考えられることは、明日考える。
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僕は台所に行ってグラスにウィスキーを注いで、何も入れずにそのまま飲んだ。そして半分残っていたクラッカーを何枚か食べた。クラッカーは僕の頭みたいに少し湿気ていた。懐かしきモダネアーズが懐かしきトミー・ドーシーの歌を歌った古いレコードを小さな音でかけた。僕の頭みたいに少し時代遅れだった。そしてノイズも入っていた。でも誰にも迷惑はかけない。それなりに完結している。何処にも行かない。僕の頭みたいに。! k0 s8 c% ~# I6 Q9 e' ~
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どうしたっていうのよ、と僕の頭の中でキキが言った。3 G: z9 t# n5 a ^1 x' B7 O1 X
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* T8 }. h9 z( h' O6 |7 qカメラがぐるりと回転した。五反田君の端正な指が彼女の背中を優しく這っていた。まるでそこに隠された水路を探るかのように。
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どうしたっていうんだろうな、キキ?僕はたしかにかなり混乱している。僕は昔ほど自分に自信が持てない。愛と中古のスバルとは別のものだ。そうだろうか?僕は五反田君の端正な指に嫉妬している。ユキはちゃんと煙草の火を消しただろうか?ちゃんとガス・スーブのスイッチを切っただろうか?お父さんみたい。まったく。自分に自信が持てない。そして僕はこの高度資本主義社会の象の墓場みたいなところでこんな風にぶつぶつ独り言を言いながら朽ち果てていくのだろうか?5 L6 X1 y4 h; [5 q, d7 a
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, ^' j; A( ]6 N i3 }( p- g9 Gでも全ては明日だ。6 ~' h: x9 Z/ ]( g
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僕は歯を磨き、パジャマに着替え、それからグラスに残っていたウィスキーを飲み干した。ベッドに入ろうとしていたときに電話のベルが鳴った。僕はしばらく部屋の真ん中に立って電話機をじっと眺めていたが、結局それを取った。
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「今ストーブ消した」とユキが言った。「煙草の火の始末もした。それでいいでしょう?安心した?」
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5 N, n* `4 D- P3 T: w/ m3 X「それでいい」と僕は言った。
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「おやすみなさい」と彼女が言った。
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「おやすみ」と僕は言った。& x9 k8 R: a M- B1 X
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7 z& y& Y6 s, P3 N6 a" H「ねえ」とユキが言った。そして少し間を置いた。「あなた札幌のあのホテルで羊の毛皮かぶった人を見たでしょう?」/ @2 ?7 G' ]" ~6 e; g8 E
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僕はひびの入ったダチョウの卵を温めるみたいな格好で電話機を胸に抱えてベッドに腰を下ろした。
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- K5 x* W8 U4 I2 w9 ~( _ H「私にはわかるのよ。あなたがあれ見たっていうことが。ずっと黙ってたけど、わかるの。最初からちゃんとわかってたの」
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6 _" g" Y: `- E0 q「君は羊男に会ったの?」と僕は聞いてみた。
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7 g5 z) m5 w8 M' X" l/ Y「んんん」とユキは曖昧に言って、コンと舌を鳴らした。「でもそのことはまた今度ね。今度会った時ゆっくりと話す。今日はもう眠い」
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0 k* r$ W0 V( b( W# }- y: pそして彼女はがちゃんと電話を切った。: V% R Z/ G$ x, F5 y( _+ Z' c
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こめかみが痛んだ。僕は台所に行ってまたウィスキーを飲んだ。僕の体はどうしようもな揺れつづけていた。ジェット・コースターは音を立ててまた動き始めていた。繋がっている、と羊男は言った。$ h, F) p7 x. q& u- C
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ツナガッテイル、と思考がこだました。! C4 K9 \/ U* L! ]' K2 s+ z
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いろんなものが少しずつ繋がり始めている。 |
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