おもしろ有機化学ワールドにでてくる術語を主体にした有機化学用語の簡単な解説集です。記事内容が難しいという声がありましたので、有機化学が苦手な方向けにつくってみました。ただ最小限の説明に留めていますし、なにより作者の知識不足による間違いもあるかもしれません。詳細な説明は他の成書類をお読みください。その際に、有機化学を学ぼうという方には、理化学辞典のような辞典類よりも、索引の完備した有機化学の教科書の方が目的に適うと思います。
アキシャル あきしゃる
いす形配座のシクロヘキサン環から結合が垂直方向にのびていること。
アキラル あきらる
自分とその鏡像が重ね合わせられる(同じものである)性質。
アグリコン あぐりこん
配糖体を加水分解して糖をはずした残りの部分に相当する分子。
アジド基 あじどき
N3-。
アジピン酸 あじぴんさん
炭素6個の直鎖ジカルボン酸。ヘキサン二酸に相当。HO2C(CH2)4CO2H。
アシル化 あしるか
アシル基(RCO-)を導入する反応。
アシル基 あしるき
RCO-の構造をもつ基。カルボン酸からヒドロキシ基をとった形に相当する。
アシロイン縮合 あしろいんしゅくごう
2個のエステルのカルボニル基同士をNaで還元的に結合させて、α-ヒドロキシケトンにする反応。
アズレン あずれん
5員環と7員環が縮合した構造に二重結合を5個もつ、外周10π電子系の代表的な非ベンゼン系芳香族炭化水素。ナフタレンの異性体。美しい藍色を示す。
アセタール あせたーる
ケトンやアルデヒドにアルコールが付加した化合物。一般式R1R2C(OR3)OR4。
アセチル基 あせちるき
酢酸に由来するアシル基。CH3CO-。
アセチレン あせちれん
もっとも簡単なアルキン。CH≡CH。
アゼライン酸 あぜらいんさん
炭素9個の直鎖ジカルボン酸。ノナン二酸に相当。HO2C(CH2)7CO2H。
アセン系 あせんけい
ベンゼン環が3個以上縮環した多核芳香族炭化水素で、直線的な形状の系列。
アダマンタン あだまんたん
sp3炭素10個がかご状に結合した3環性炭化水素(C10H16)。すべての環がいす形配座のシクロヘキサン環をとっており安定。ダイヤモンドの基本骨格。
アニオン あにおん
陰イオン。
アヌレノイド あぬれのいど
アヌレン型。ひとつながりの平面環状共役構造。
アヌレン あぬれん
環状に共役した二重結合をもつ環状炭化水素。(CH)nの一般式であらわされる。
アノマー あのまー
環状ヘミアセタール構造の糖でアセタール炭素の立体配置の違いによる立体異性体(エピマー)。水酸基が環の上を向くβ体と下を向くα体がある。
アノマー炭素 あのまーたんそ
環状ヘミアセタール構造の糖のアセタール炭素。アノメリック炭素。
ab initio計算 あぶいにしおけいさん
ab initioは最初からの意。分子構造計算法の一種。
アミド あみど
1)カルボン酸とアミンの縮合物。R-CONH2の式で表される。2)アンモニアから水素イオンを引き抜いてできるアニオン(NH2-)。強い塩基性をもつ。
アミノ基 あみのき
-NH2。
アミノ酸 あみのさん
分子内にアミノ基とカルボキシ基をもつ化合物。タンパク質の構成単位。
アミン あみん
アンモニア(NH3)の水素をアルキル基で置換した化合物。
アラキジン酸 あらきじん
炭素20個の直鎖カルボン酸。イコサン酸に相当。CH3(CH2)18CO2H。アラキン酸ともいう。
アリル位 ありるい
二重結合に隣接する炭素の位置。
アリルカチオン ありるかちおん
二重結合に隣接する炭素上のカチオン。共鳴安定化されている。
アリル基 ありるき
CH2=CH-CH2-。
アリール基 ありーるき
フェニル基のように芳香族環から水素を1個とった基。
アリルラジカル ありるらじかる
二重結合に隣接する炭素上のラジカル。共鳴安定化されている。
アルカン あるかん
C-CおよびC-H結合のみからなり、不飽和結合をもたない炭化水素。
アルキル基 あるきるき
炭化水素から水素を1個とった形の置換基。
アルキル鎖 あるきるさ
鎖状に繋がった構造の炭化水素基。
アルキン あるきん
三重結合をもつ炭化水素。
アルケン あるけん
二重結合をもつ炭化水素。
アルコキシ基 あるこきしき
アルコールのOHから水素を引き抜いた形の基。RO-。
アルコール あるこーる
脂肪族炭素鎖に結合したヒドロキシ基(-OH)をもつ化合物。
(R)体 あーるたい
不斉炭素の置換基配置が、順位側で最低順位の置換基の裏側からみたときに、残りの3種の置換基が順位の高いものから右回りに配置する鏡像異性体。
アルデヒド あるでひど
カルボニル基(ケト基)に水素が1個とアルキル基が1個ついた化合物。
アルデヒド基 あるでひどき
-CHO。ホルミル基。
アルド あるど
アルドースの意の接頭辞。
アルドース あるどーす
末端にアルデヒド基をもつ糖。
アルドール反応 あるどーるはんのう
ケトンやアルデヒドが2分子縮合してβ-ヒドロキシケトン(アルデヒド)を生成する反応。aldolはCH3CH(OH)CH2CHOの分子で、アセトアルデヒド(CH3CHO)2分子から生成する。
アルドール縮合 あるどーるしゅくごう
アルドール反応で生成したβ-ヒドロキシケトン(アルデヒド)が引き続き脱水反応で、α,β-不飽和ケトン(アルデヒド)になる場合をさす。
α位 あるふぁい
ある官能基のすぐ隣の位置。近い順にα、β、γ。
αジケトン あるふぁじけとん
α(一番目)+di(2)+ketone(CO)。分子内に2個のケトンを隣接してもつ化合物(ケトンから一番目の位置にもうひとつのケトンがある意)。
α水素 あるふぁすいそ
カルボニル化合物でカルボニル基に結合した炭素上の水素。
[α]D あるふぁでぃー
ナトリウムのD線(589.3nm)で測定した比旋光度。
α,β-不飽和カルボニル あるふぁべーたふほうわかるぼにる
ケトンやアルデヒドなどカルボニル化合物で、カルボニル基と共役したπ結合をもつもの。
アレニウスの酸塩基 あれにうすのさんえんき
スウェーデンの化学者アレニウス(1859-1927)が提唱した酸塩基理論で、水素イオンの供与体を酸、水酸化物イオンの供与体を塩基とする。
アンチ あんち
二つの置換基が反対向きに配向していること(⇔シン)。
アンチ形配座 あんちがたはいざ
ねじれ形配座のうち大きな置換基同士が180度の二面角にある配座。
アンモニア あんもにあ
NH3。窒素上にローンペアをもち、塩基性を示す。
IUPAC命名法 いうぱっくめいめいほう
国際純正および応用化学連合が制定した化合物の系統的命名法
イオン結合 いおんけつごう
陽イオンと陰イオンの静電引力による結合。
イオン反応 いおんはんのう
イオンが関与する反応。2電子ずつの移動による。
イコサ いこさ
20(個)をあらわす接頭語。
イコサン いこさん
炭素20個のアルカン。CH3(CH2)18CH3。エイコサン(eicosane)は旧称。
E-Z異性 いーずぃーいせい
シス-トランス異性に同じ。
いす形配座 いすがたはいざ
シクロヘキサン環がじぐざぐに折れ曲った安定配座。
異性化 いせいか
異性体に変化すること。
異性体 いせいたい
分子式が同じで、原子の結合のしかた、立体配置などが異なる分子。異なる性質を示す。
イソ いそ
「異性体の」という意味の接頭語。
位相異性体 いそういせいたい
分子内の原子の結合順序は同じでありながら、ある部分の空間的相対配置が異なる異性体。直鎖と結び目など。
位相結合 いそうけつごう
原子同士の直接の化学結合によらない結合。鎖のように二つの環がからみあって不可分になっているような状態を結合とみなした用語。
イソシアナート いそしあなーと
イソシアン酸エステル。R-N=C=Oの構造をもち、カーバメート、尿素誘導体の原料となる。
イソブタン いそぶたん
ブタンの異性体。2-メチルプロパン。CH3CH(CH3)2。
イソブチル基 いそぶちるき
(CH3)2CHCH2-。
イソプレン いそぷれん
2-メチル-1,3-ブタジエン、CH2=C(CH3)-CH=CH2。テルペン類の基本ユニット。
イソプロピル基 いそぷろぴるき
(CH3)2CH-。
E-体 いーたい
トランス体に同じ。
1,3,5-trichlorobenzene-d3いちさんごとりくろろべんぜんでぃーさん
1,3,5-trichlorobenzeneの重水素置換体。d3は重水素が3個含まれることを示す。NMR測定溶媒は普通重水素化物を使用する。
1,3-ジアキシャル相互作用 いちさんじあきしゃるそうごさよう
いす形配座のシクロヘキサン環で、ある炭素と1つおいた隣の炭素に結合したアキシャル置換基同士の立体的および電子的反発。
位置選択性 いちせんたくせい
反応が分子内の複数個所に起きる可能性がある場合、特定の位置に優先的に起きる性質。
1段階反応 いちだんかいはんのう
1つの遷移状態を経る反応。
1,2-シフト いちにしふと
分子内のある結合が隣の位置に移動すること。
1分子反応 いちぶんしはんのう
反応速度に影響をあたえる分子が1種類のみの反応。
一級 いっきゅう
中心炭素に1個のアルキル基がついた状態。RCH2Xで、Xの種類によって一級ラジカル、一級カルボカチオン、一級アルコール、一級ハロゲン化物などがある。
E2反応 いーつーはんのう
2分子反応で進行する脱離反応。
イミダゾール いみだぞーる
窒素を2個1つおきに含む5員環へテロ芳香族化合物。ヒスチジンの骨格。
E1反応 いーわんはんのう
1分子反応で進行する脱離反応。
陰イオン いんいおん
負電荷をもつイオン。 |