6人が、手を差し伸べてつなぎあう。表情は硬い。その思いはさまざまに、北朝鮮の核問題を巡る6者協議が約1年ぶりに北京で始まった。南北朝鮮と日米中ロの6者が並んだ写真から、ここにもう1本、「アジア」という手が差し伸べられるさまを想像した。
冷戦時代の緊張が残る朝鮮周辺の極東地域は、その動向がアジア全体の安全を大きく左右する可能性を常にはらんでいる。6者協議が、それを意識して進められるとしても、「アジア全体」という視点が加わることは無益ではないだろう。今回の6者協議が実のあるものになることを願いながら、その場に「アジア」というひと色が足りないような気がした。
谷川雁に、「大地の商人」という詩集がある。「おれは大地の商人になろう/きのこを売ろう あくまでにがい茶を/色のひとつ足らぬ虹を」
七色にひとつ足りない虹は、本来の虹ではない。しかし色がひとつ足りないことが、何かを強く希求し続けるような不思議なエネルギーや力を感じさせる。
日本が加盟して昨日でちょうど50年になった国連も、色のひとつ足りない虹かも知れない。世界の平和を維持し、生み出すことを期待されながら、現実には大国の思惑によって動きが左右されることも多かった。
しかし国際社会に、虹になりうる仕組みは他に見あたらない。今の国連に楽観も悲観もせず、いつかはもう一つの色が出るように磨いてゆく。6者協議も国連による世界平和の実現も、気の遠くなるような道程が必要かもしれないが、掲げる旗は高い方がいい。 |