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(1) 現代家族の諸問題/ Z. G2 i2 g0 w7 [7 N
① 日本では1960年代~1970年代の高度成長期を通して、大家族の多い農村地域の若者が大量に職を求めて都市に出て、商工業分野の仕事に従事するようになった。こうして夫婦と子供、母子のみ、父子のみの家族、つまり核家族化が進行した。1990年代に入ると、事態は更に進行し、下のグラフのように、核家族の比率に余り変動はないが、一人暮らしの単独世帯が急速に拡大した。それは老人の一人暮らしや、結婚しない独身男女の一人暮らしが増えたことを意味している。
9 B, l; K9 _7 U; z; Q5 u② 人間は社会的動物だと言われるが、家族は血縁関係の人々によって作られる最も基礎的な社会集団である。この家族には四大機能がある。
6 I- }. y9 t- l- V9 zA. 家族は家計という経済生活の単位としての機能9 B) G5 ^& Q* v
B. 言葉や社会生活に必要な基本的行動の仕方を身につけるなどの人間形成の機能: R' D% F* q+ \
C. 老いた人の面倒を見たり、病気のときに看病をしたりなど、扶養の機能
; L4 a6 J9 n& D+ }; DD. くつろぎや安らぎを得る扶養の機能; h2 } x, Z2 T1 \) U2 M
③ 家族崩壊現象とは家族の四大機能が失われることを言う。核家族化は三世代家族の減少となり、老いた両親の扶養の機能を失わせた。続いて、日本では「働き蜂」「会社人間」とも称される夫と家事・子育てを担う妻という分離が進み、「父親不在の家族」とも言われる事態だと生じている。また、両親は共稼ぎで、子供は塾や習い事で互いに顔を合わせる機会も少なくなり、小学生の子供が一人だけで食事する個食(孤食)が増えている。そのため、家族としての子育てや人間形成の機能が失われ、家族団らんの機会も少なくなることから、休養の機能も低下することになる。3 Y) h) r! d/ T
* g1 b( t0 |$ r d1 d(2) 少子・高齢社会$ `- M. `1 b3 Q. v
① 平均寿命は、日本が男子77.64年、女性84.62年(2000年)でトップ、以下、オーストラリア、フランス、スウェーデンと続く。アジア諸国の男子の平均寿命は、中国68年、韓国67年、フィリピン62年(1997年)などと日本よりも低い値である。こうした日本のような高齢社会にあっては、老後の生活不安をどう解消するかと言う社会保障や医療・介護問題と、「人生80年サイクルの時代」における人生設計が大きな課題となる。(「高齢社会問題」は医療と福祉の項で)
5 \1 J+ _. [7 S8 s& I② 少子化現象を日本政府が初めて取り上げたのは、1992年度の「国民生活白書」である。出生率が2.08人あれば人口は横ばいで維持されるが、2000年の出生率は1.35人であり、現在はそれを大きく下回っている。日本の人口は、2000年時点で約1億2692万人だが、2007年以降は減少に転じると予測され、2050年には1億人、2100年にはおよそ6700万人にまで減少すると見込まれている。この少子化は、晩婚化・未婚化の進行や、子育てにかかる教育費の負担が重いことなどが主要因であるが、結婚観・家庭観・男女観など価値観の変化も影響している。例えば、総理府の1997年調査によると、「結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもよい」という意見に賛成の人は70%を超えている。この背景には、「家事・育児は女の仕事」といった性分業意識が日本社会に根強く、家事や育児、老いた親の介護などの負担が女性に重くのしかかる現実がある。
2 a, i% K4 i# Y8 {# V E③ 少子化対策として、政府は1994年にエンゼル・プランを作った。これは「子育て支援のための総合計画」で、三歳未満の子供を受け入れる保育所や学童保育所の増設などを定めた。1999年には少子化対策推進基本方針を立て、男女の固定的な役割分担をなくし、育児や家事の共同分担を推進する、保育サービスの提供、地域や住宅環境の改善、子育てをしながら仕事が続けられる環境作りなどを推進することがうたわれた。
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(3) 女性の人権問題と世界女性会議の歩み
. {" I' t' H. W5 ^4 N3 |① ウーマン・リブの運動(60年代後半~70年代)は、性差別を真正面から取り上げ、男性の意識変革を迫り、企業・行政の女性差別の糾弾・告発などの直接行動を展開した。この理論的支柱となったのが、「フェミニズム」の思想だった。この運動は、「女性差別撤廃条約」(1979)を締結させる原動力となった。この条約では、女性差別を、「性に基づく区別、排除または制限」であり、「政治的、経済的、社会的、文化的、その他のいかなる分野においても、女性が男女の平等を基礎とする人権および基本的自由を認識し、享有し、または行使することを害するもの」と定義し、役割分担論の克服や、父系血統優先主義に対して父母両系血統平等主義、男女の雇用平等などを掲げた。 J/ V! i' d4 m" G: J I0 J
② 1985年ナイロビ世界会議(第3回世界女性会議)が開かれ、「西暦2000年に向けての女性の地位向上のための将来戦略」(ナイロビ将来戦略)を採択した。1985年北京世界会議(第4回世界女性会議)では、女性セクシュアル・ライツ「性の権利」が最大の議論の焦点となった。また、「生むと生まないは女の権利」とする考えは、家族の価値を重視するバチカンや、性に対して保守的なイスラム諸国との対立が生じた。しかし38項目から成る北京宣言と、貧困、教育、健康、女性への暴力、紛争下の女性などの12の分野について、目標と行動とを提示した行動綱領を採択した。そこには、ジェンダー「社会的文化的差別格差」やリプロダクティプ・ヘルス「性と生殖に関する健康」、性の権利などが取り入れられている。/ D, K; d0 A" I
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(4) 日本における男女平等への取組
8 b$ P3 J+ w2 E1 J9 [① 1985年、男女雇用機会均等法が成立(97年改正)下。それは、採用、昇進、教育訓練、退職など、あらゆる雇用管理に関して、男女の差別を禁止する法律であるが、下のグラフのように、性分業意識が克服されない限り、女性にとって仕事と家事・育児との両立は難しく、結婚退職者が依然として多い現実がある。アメリカのような能力社会でも、上級管理職を目指す女性には、「見えない天井」が存在していると言われるが、性分業意識、性差別は根強いものである。
# {% d$ Z/ h4 o② セクハラ(セクシュアル・ハラスメント)とは、性的いやがらせのことで、性的な性質の言動を行う、それに対する反応によって一定の不利益を与えられた、それを繰り返すことによって就業・学業活動環境を著しく悪化させることをいう。通常ではオフィスでの性的いやがらせを指す。女性上司から部下の男性に対するいやがらせは「逆セクハラ」とも言う。男女雇用機会均等法では、職場におけるセクハラ防止の雇用管理上の配慮を使用者の責務(21条)としている。
5 J$ N7 B# T$ {2 r6 I$ d③ 1995年、育児・介護休業法が成立し、99年4月から施行された。介護の対象者は配偶者・父母・子供・配偶者の父母など扶養義務のある者で、連続3ヶ月を限度とし、一人につき一回の介護休業が認められ、介護休業の取得を理由として解雇は禁止された。賃金保障はないが、雇用保険より原則として休業開始時点賃金の25%が休業給付として支払われることになった。2001年から育児休業給付が40%に引き上げられ、2002年4月には改正され、子供の病気のための「看護休暇制度」などが設けられたが、無給で事業所の努力義務規定であるため、制度はあっても利用が進んでいないのが実情である。
$ c7 d; y3 w+ D9 M④ 1999年、男女共同参画社会法が成立した。正式名称「男女共同参画社会形成の促進に関する基本法」というが、人権尊重、社会制度や慣行が男女に中立的であるような配慮、国や自治体の政策立案・決定への共同参画、家庭生活における男女共同分担と他の活動との両立をうたい、性差別、人権侵害に対処するための苦情処理、人権救済制度の設置を定めた。しかし、この法律が有効に機能するかどうかは、結局、家庭・企業が「男社会」になっている現実をどう変えるかという取組の具体化にかかっており、男女、特に男の意識変革が避けて通れない。
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! x! j) D( b, D3 z5 n" Q(5) 人生観・価値観の変化: c- d* }4 S8 q$ T" w* D( O
① 資本主義が社会主義化という冷戦期の価値観の対立が消滅し、市場経済がグローバル化し世界を覆いつつある。この21世紀の現代社会は、テロリズムと民族紛争の頻発、環境破壊など、従来の価値観が崩壊する「不透明な時代」とも言われる。ここでは国家主義か国連中心主義か、国家主権か少数民族の自決権か、自由主義か福祉社会かなど、伝統回帰と未来への模索が混在し、衝突しているが、これは個人の人生観や価値観にも大きな影響を与えている。
. ~/ T( O& Z6 k0 V x7 y# y② 日本人の人生観・価値観の変化をもたらしている最大の要因は、企業における終身雇用制の崩壊と能力給の導入、グローバリゼーションと競争原理・自己責任などアメリカ型価値観の流入、国家の社会保障制度や年金制度の存続への不安などがある。一言で言えば、日本人の国家や企業への信頼や帰属意識の崩壊があり、それが人生観・価値観の変化をもたらしつつある。現代とは、自分らしさ、自分の生活スタイル、自分の価値観など、個人としてのアイデンティティーの確立が、とても重要になる時代と言えるだろう。 |
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