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時間に対比されるのは空間である。時間がたつというのは、いまが過ぎてゆくことだともいえる。いまがもとのいまでなく、別のいまになってゆくことである。いまは何もしないでじっとしていても移ってゆくように見える。しかしいまに対比されるここ、われわれの現にいる場所、にはこのようなことはない。いまわたしは机に向かって坐っているが、動こうとしなければいつまでも坐ったままでいられる。空間がわたしの手を引っ張って、わたしを違う場所に移すわけではない。しかしわたしはじっとしているのに、時間の方はどんどんたってゆく。これは実に不思議なことである。
【問い】「これは実に不思議なことである」とあるが、筆者にとって何が不思議なのか。
1.「ここ」は、私が動かない限り同じ場所を指すのに、時間はどんどん移ってゆくこと。
2.「ここ」は、私が動くことによって場所が変わるのに、「今」はいつもまでも同じであること。
3.「ここ」と「今」はよく似ているので、二つを区別することは難しいということ。
4.「ここ」と「今」は私とは関係なくどちらもどんどん換わっていくということ。 |
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