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楼主: uin61

[其他翻译] 日本語小説「怪人二十面相」

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 楼主| 发表于 2008-8-21 09:14:48 | 显示全部楼层

回复 45楼 一辈子de孤单 的帖子

这样才有意思.要是全部发出来的话,大家就会一下子全部看完,那样都没劲.
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发表于 2008-8-21 11:47:31 | 显示全部楼层
这就叫做吊人胃口!
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 楼主| 发表于 2008-8-25 17:49:50 | 显示全部楼层

回复 44楼 uin61 的帖子

「でも、仏像を渡すまいとすれば、あの子が、どんな目に会うか分からないじゃございませんか。いくら大切な美術品でも、人間の命には代えられないと存じます。どうか警察などへおっしゃらないで、賊の申し出に応じてやってくださいませ。」
お母様の瞼の裏には、どことも知れぬ真っ暗な地下室に、一人ぼっちで泣きじゃくっている壮二君の姿が、まざまざと浮かんでいました。今晩の十時さえ待ち遠しいのです。たった今でも、仏像と引き換えに、早く壮二君を取り戻してほしいのです。
「ウン、壮二を取り戻すのは無論の事だが、しかし、ダイヤを取られた上に、あの掛替えのない美術品まで、おめおめ賊に渡すのかと思うと、残念でたまらないのだ。近藤君、何か方法はないものだろうか。」
「そうでございますね。警察に知らせたら、忽ち事が荒立ってしまいましょうから、賊の手紙の事は今晩十時までは、外へ漏れないようにして置かねばなりません。しかし、私立探偵ならば……。」
老人が、ふと一案を持ち出しました。
「うん、私立探偵というものがあるね。しかし、個人の探偵などにこの大事件がこなせるか知らん。」
「聞くところによりますと、何でも東京に一人、偉い探偵がいると申す事でございますが。」
老人が首を傾げているのを見て、早苗さんが、突然口を挟みました。
「お父様、それは明智小五郎探偵よ。あの人ならば、警察でさじを投げた事件を、いくつも解決したって言うほどの名探偵ですわ。」
「そうそう、その明智小五郎という人物でした。実に偉い男だそうで、二十面相とは格好の取り組みでございましょうて。」
「うん、その名はわしも聞いた事がある。では、その探偵をそっと呼んで、一つ相談してみることにしようか。専門家には、我々に想像の及ばない名案があるかもしれん。」
そして、結局、明智小五郎にこの事件を依頼する事に話が決まったのでした。
早速、近藤老人が、電話帳を調べて、明智探偵の宅に電話を掛けました。すると、電話口から、子供もらしい声で、こんな返事が聞こえてきました。
「先生は今、ある重大な事件のために、外国へ出張中ですから、何時お帰りとも分かりません。しかし、先生の代理を務めている小林という助手がおりますから、その人でよければ、すぐお伺いいたします。」
「ああ、そうですか。だが、非常な難事件ですからねえ。助手の方ではどうも……。」

[但如果不交出佛像的话,也不知道那孩子会遇到什么事情.我认为无论多么珍贵的美术品都不能换回人的性命.请不要向警察报案,按照贼所提出的要求去做.]
母亲的眼帘里清晰地浮现出,壮二身在不知何处的黑暗地下室里,一个人孤独地哭泣的身影.母亲急切地盼望着今晚十点钟的到来,恨不得立即拿佛像来做交换,想早点赎回壮二.
[嗯,当然要赎回壮二.但一想到钻石被偷,然后还要将无比珍贵的美术品乖乖地送给贼,我就懊悔不已.近藤,有没有什么解决方法吗?]
[是啊.如果通报警察的话,事态马上就会变得很严重.有关贼来信之事在今晚十点钟之前决不能向外透露.但是,如果是私家侦探的话......]
老人忽然提出了一个方案.
[嗯,有私家侦探啊.但是私人侦探能处理好这个大案子吗?]
[据我所打听到的消息来看,听说东京有一个非常了不起的侦探.]
早苗看着老人歪着头思考时,突然插话.
[父亲,这个人是明智小五郎侦探呀.据说这个人解决了许多连警察都感到束手无策的案件,是一个很有名的侦探啊.]
[对对,就是这个叫明智小五郎的人.听说他是一个实在是很了不起的男人,是与二是面相相合适的较量对手.]
[嗯,我也曾听说过这个名字.那么,我们要不悄悄地将这个侦探叫来,稍微向他请教一下.也许专家那里有一些我们所想象不到的妙招.]
于是最后决定委托明智小五郎办理此案件.
近藤老人立即查看电话簿,然后打电话到明智侦探家里.于是,电话那头传来了一个小孩子的声音,并听到了这样的答复.
[师傅现在到国外出差办理某件重大案件,不知道什么时候会回来.但有一个叫小林的助手担任师傅的代理职务,如果觉得这个人可以的话,马上拜访贵府.]
[啊,是吗?可是这个案件是一个非常棘手的案子啊,助手的话恐怕......]


[ 本帖最后由 uin61 于 2008-8-26 11:18 编辑 ]
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 楼主| 发表于 2008-8-26 11:46:45 | 显示全部楼层

回复 48楼 uin61 的帖子

近藤支配人が躊躇していますと、先方からは、おっかぶせるように、元気の良い声が響いてきました。
「助手といっても、先生に劣らぬ腕利きなんです。十分ご信頼擦っていいと思います。ともかく、一度お伺いしてみる事にいたしましょう。」
「そうですか。では、すぐに一つご足労下さるようにお伝えください。ただ、お断りしておきますが、事件をご依頼したことが、相手方に知られては大変なのです。人の生命に関することなのです。十分ご注意の上、誰にも悟られぬよう、こっそりとお尋ねください。」
「それは、おっしゃるまでもなく、よく心得ております。」
そういう問答があって、いよいよ小林という名探偵がやってくる事になりました。
電話が切れて、十分も立ったかと思われたころ、一人の可愛らしい少年が、羽柴家の玄関に立って、案内を請いました。秘書が取り次ぎに出ますと、その少年は、
「僕は壮二君のお友達です。」と自己紹介をしました。
「壮二さんはいらっしゃいませんが。」と答えると、少年は、さもあらんと言う顔つきで、
「大方、そんなことだろうと思いました。では、お父さんにちょっと合わせてください。僕のお父さんから託があるんです。僕、小林って言うもんです。」
と、済まして会見を申し込みました。
秘書からその話を聞くと、壮太郎氏は、小林という名に心当たりがあるものですから、ともかく、応接室に通させました。
壮太郎氏が入っていきますと、りんごのようにつやつやした頬の、目の大きい、十二-三歳の少年が立っていました。
「羽柴さんですか、初めまして。僕、明智探偵事務所の小林っていうもんです。お電話をくださいましたので、お伺いしました。」
少年は目をくりくりさせて、はっきりした口調で言いました。
「ああ、小林さんのお使いですか。ちとこみいった事件なのでね。ご本人に来てもらいたいのだが……。」
壮太郎氏が言いかけるのを、少年は手をあげて止めるようにしながら答えました。
「いえ、僕がその小林芳雄です。他に助手はいないのです。」
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发表于 2008-8-26 19:46:47 | 显示全部楼层
uin61君~~你终于又开始继续了~~
名侦探也出场了,继续加油呀
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 楼主| 发表于 2008-9-1 09:04:58 | 显示全部楼层

回复 49楼 uin61 的帖子

「ホホウ、君がご本人ですか。」
壮太郎氏はびっくりしました。と同時に、なんだか、妙に愉快な気持ちになってきました。こんなちっぽけな子供が、名探偵だなんて、本当かしら。だが、顔つきや言葉遣いは、なかなか頼もしそうだわい。一つ、この子供に相談を掛けてみるかな。
「さっき、電話口で腕利きの名探偵といったのは、君自身の事だったのですか。」
「ええ、そうです。僕は先生から、留守中の事件をすっかり任されているのです。」
少年は自信たっぷりです。
「今、君は、壮二の友達だって言ったそうですね。どうして壮二の名を知っていました。」
「それくらいの事が分からないでは、探偵の仕事はできません。実業雑誌に貴方のご家族の事が出ていたのを、切り抜き帳で調べてきたのです。電話で、人の一命に係わるというお話があったので、早苗さんか、壮二君か、どちらが行方不明にでもなったのではないかと想像してきました。どうやら、その想像があたったようですね。それから、この事件には、例の二十面相の賊が、関係しているのではありませんか。」
小林少年は、実に小気味よく口を利きます。
なるほど、この子供は、本当に名探偵かもしれないぞと、壮太郎氏はすっかり感心してしまいました。
そこで、近藤老人を応接室に呼んで、二人で事件の顛末を、この少年に詳しく語り聞かせる事に下のです。
少年は、急所急所で、短い質問を挟みながら、熱心に聞いていましたが、話が済むと、その観音像を見たいと申し出ました。そして、壮太郎氏の案内で、美術室を見て、元の応接室に帰ったのですが、しばらくの間、物も言わないで、目を瞑って、何か考え事に耽っている様子でした。
やがて、少年は、パッチリ目を開くと、ひとひざ乗り出すようにして、意気込んで言いました。
「僕は一つうまい手段を考え付いたのです。相手が魔法使いなら、こっちも魔法使いになるのです。非常に危険な手段です。でも、危険を冒さないで、手柄をたてることはできませんからね。僕は前に、もっと危ない事さえやった経験があります。」
「ホウ、それは頼もしい。だがいったいどういう手段ですね。」
「それはね。」
小林少年は、いきなり壮太郎氏に近づいて、耳元に何か囁きました。

[呵何,你就是他本人?]
壮太郎先生大吃一惊.与此同时,奇怪地是自己的心情变得有点愉快起来.这么小的孩子真的是著名的侦探吗?但是从他的神情和言语上来看,他似乎很可靠.要不稍微跟这个孩子商量商量.
[刚才,在电话里所提到有本领的著名侦探就是你自己吗?]
[是,是的.师傅不在时的案件全部交给我来处理.]
少年自信十足.
[刚才,听说你说你是壮二的朋友,你是怎么知道壮二的名字的?]
[如果连这点事情都不知道的话,就没法做侦探的工作了.我是通过剪报集查阅了刊登在实业杂志上的您的家属信息.因为在电话里有提到事关一个人的性命,于是我便猜想,可能是早苗,或者壮二中的其中一人不知去向.看样子我好像猜对了.还有,这个事件是不是和那个二十面相盗贼有关连呢?]
少年非常痛快地讲道.
原来如此.壮太郎先生已经非常地钦佩他,觉得这个孩子可能是真正的著名侦探.
于是,壮太郎先生将近藤老人叫到接待室,决定有两人将事件的来龙去脉详细地向少年讲述.
少年在关键部分,插嘴询问了些简短的问题,热诚地听他们讲述.讲述完来龙去脉后,少年提出要看那个观音佛像的请求.然后在壮太郎先生的带领下,参观了美术室后回到了原来的接待室.他许久没有讲话,只是闭着眼睛,看样子好象在埋头思考着什么.
不久,少年便睁开眼睛,凑上前依着半个身子兴致勃勃地说道.
[我想到了一个好主意.如果对方使用魔法的话,我们也使用魔法.这是一个非常危险的方法.但是,如果不冒风险的话,就无法立取功劳.我以前也曾经历过比这个还要危险的事情.]
[哦,这事情看来有望啦.但是,究竟是什么样的方法呀?]
[这个吗.]
小林少年突然凑到壮太郎身边,在他的耳边低声细语地说了些什么.


[ 本帖最后由 uin61 于 2008-9-2 08:29 编辑 ]
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 楼主| 发表于 2008-9-2 21:52:53 | 显示全部楼层

回复 51楼 uin61 的帖子

「え、君がですか。」
壮太郎氏は、あまりの突飛な申し出に、目を丸くしないで入られませんでした。
「そうです。ちょっと考えると、難しそうですが、僕たちには、この方法は試験済みなんです。先年、フランスの怪盗アルセーヌ・ルパンのやつを、先生がこの手で、ひどい目にあわせてやった事があるんです。」
「壮二の身に危険が及ぶような事はありませんか。」
「それは大丈夫です。相手が小さな泥棒ですと、かえって危険ですが、二十面相ともあろうものが、約束を違えたりはしないでしょう。壮二君は仏像と引き換えにお返しするというのですから、危険が起こる前にちゃんとここへ戻っていらっしゃるに違いありません。もしそうでなかったら、その時には、又その時の方法があります。大丈夫ですよ。僕は子供だけれど、決してむちゃな事は考えません。」
「明智さんの不在中に、君にそういう危険な事をさせて、万一のことがあっては困るが。」
「ハハハ・・・・・・、貴方は僕たちの生活をご存じないのですよ。探偵なんて警察官と同じ事で、犯罪捜査のために倒れたら本望なんです。しかし、こんな事は何でもありませんよ。危険というほどの仕事じゃありません。貴方は見てみぬふりをしてくださればいいんです。僕は、たとえお許しがなくても、もう後へは引きませんよ。かってに計画を実行するばかりです。」
羽柴氏も近藤老人も、この少年の元気を、持て余し気味でした。
そして、長い間の協議の結果、とうとう小林少年の考えを実行する事に話が決まりました。

       仏像の奇跡

さて、お話はとんで、その夜の出来事に移ります。
午後十時、約束を違えず、二十面相の部下の三人の荒くれ男が、開け放ったままの、羽柴家の門をくぐりました。
盗人たちは、玄関に立っている秘書などを尻目に、
「お約束の品物を頂きに参りましたよ。」と、すてぜりふを残しながら、間取りを教えられてきたと見えて、迷いもせず、ぐんぐん奥の方へ踏み込んでいきました。
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发表于 2008-9-2 22:41:10 | 显示全部楼层
不是坚持的很不错吗?
坚持就是胜利!
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 楼主| 发表于 2008-9-4 09:12:31 | 显示全部楼层

回复 53楼 新米 的帖子

谢谢!

但因为个人身体原因,不能每天都发表和翻译.
如有身体状况和时间允许的话,我就会发表的.
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 楼主| 发表于 2008-9-4 09:45:26 | 显示全部楼层

回复 52楼 uin61 的帖子

美術室の入り口では、壮太郎氏と近藤老人とが待ち受けていて、賊の一人に声を掛けました。
「約束は間違いないんだろうね。子供はつれてきたんだろうね。」
すると、賊は無愛想に答えました。
「ご心配にゃ及びませんよ。子供さんは、もうちゃんと、門の側までつれてきてありまさあ。だがね、探したって無駄ですぜ。あっしたちが荷物を運び出すまでは、いくら探してもわからねえように工夫がしてあるんです。でなきゃあ、こちとらが危ないからね。」
言い捨てて、三人はドカドカ美術室へ入っていきました。
その部屋は土蔵のような造りになっていて、薄暗い電燈の下に、まるで博物館のようなガラス棚が、グルッと周りを取り巻いているのです。
よしありげな刀剣、甲冑、置物、手箱の類、屏風、掛け軸などが、ところ狭しと並んでいる一方の隅に、高さに一メートル半ほどの、長方形のガラス箱が立っていて、その中に、問題の観世音像が安置してあるのです。
れんげの台座の上に、本当の人間の本分ほどの大きさの、薄黒い観音様が座っておいでになります。もとは金色眩いお姿だったのでしょうけれど、今はただ一面に薄黒く、来ていらっしゃるひだの多い衣も、ところどころすり敗れています。でも、さすがは名匠の作、その円満柔和なお顔立ちは今にも笑い出すかと思われるばかり、いかなる悪人も、このお姿を拝しては、合掌しないではいられぬほどに見えます。
三人の泥棒は、さすがに気が引けるのか、仏像の柔和なお姿を、よくも見ないで、すぐさま仕事にかかりました。
「ぐずぐずしちゃいられねえ。大急ぎだぜ。」
一人が持ってきた薄汚い布のようなものを広げますと、もう一人の男が、そのはしを持って、仏像のガラス箱の外を、ぐるぐると巻いていきます。たちまち、それと分からぬ布包みが出来上がってしまいました。
「ほら、いいか。横にしたら壊れるぜ。よいしょ、よいしょ。」
傍若無人の掛け声までして、三人のやつはその荷物を、表へ運び出します。
壮太郎氏と近藤老人は、それがトラックの上に積み込まれるまで、三人のそばに付ききって、見張っていました。仏像だけ持ち去られて、壮二君が戻ってこないでは、何にもならないからです。
やがて、トラックのエンジンが、騒々しくなり始め、車は今にも出発しそうになりました。
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发表于 2008-9-4 23:00:28 | 显示全部楼层
原帖由 uin61 于 2008-9-4 09:12 发表
谢谢!

但因为个人身体原因,不能每天都发表和翻译.
如有身体状况和时间允许的话,我就会发表的.


哦,是吗?辛苦了.
我觉得每天发表是很辛苦,希望你身体好的时候再发,身体最重要嘛!
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 楼主| 发表于 2008-9-5 09:45:15 | 显示全部楼层

回复 55楼 uin61 的帖子

「おい、壮二さんはどこにいるのだ。壮二さんを戻さないうちは、この車を出発させないぞ。もし、無理に出発すれば、すぐ警察に知らせるぞ。」
「心配するなってえことよ。ほら、後ろを向いてごらん。坊ちゃんは、もうちゃんと玄関においでなさらあ。」
振り向くと、なるほど、玄関の電燈の前に、大きいのと小さいのと、二つの黒い人影が見えます。壮太郎氏と老人が、それに気を取られているうちに、
「あばよ・・・・・・。」
トラックは、門前を離れて、見る見る小さくなっていきました。
二人は、急いで玄関の人影のそばへ引き返しました。
「おや、こいつは、さっきから門のところにいた親子の乞食じゃないか。さては、いっぱい食わされたかな。」
いかにもそれは見える二人の乞食でした。両人とも、ぼろぼろの薄汚れた着物を着て、にしめた様な手ぬぐいで頬かむりをしています。
「お前たちは何だ。こんなところへ入ってきては困るじゃないか。」
近藤老人が叱り付けますと、親の乞食が妙な声で笑い出しました。
「エヘヘヘヘヘ、お約束でございますよ。」
わけの分からぬ事を言ったかと思うと、彼はやにわに走り出しました。まるで風のように、暗闇の中を、門の外へ飛び去ってしまいました。
「お父様、僕ですよ。」
今度は子供の乞食が、変な事を言い出すではありませんか。そして、いきなり、頬かむりを取り、ぼろぼろの着物を脱ぎ捨てたのを見ると、その下から現れたのは、見覚えのある学生服、白い顔。子供乞食こそ、ほかならぬ壮二君でした。
「どうしたのだ、こんな汚いなりをして。」
羽柴氏が、懐かしい壮二君の手を握りながら訪ねました。」
「何かわけがあるのでしょう。二十面相のやつが、こんな着物を着せたんです。でも、今まで猿轡を嵌められていて、ものが言えなかったのです。」
ああ、では今の親乞食こそ、二十面相の人だったのです。彼は乞食に変装をして、それとなく、仏像が運び出されたのを見極めたうえ、約束どおり壮二君を返して、逃げ去ったのに違いありません。それにしても、乞食とは、なんと言う思い切った変装でしょう。乞食ならば、人の門前にうろついていても、さして怪しまれないという、二十面相らしい思い付きです。
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 楼主| 发表于 2008-9-9 10:42:57 | 显示全部楼层

回复 57楼 uin61 的帖子

壮二君は無事に帰りました。聞けば、先方では、地下室に閉じ込められてはいたけれど、別に虐待されるような事もなく、食事も十分宛がわれていたということです。
これで羽柴家の大きな心配は取り除かれました。お父様お母様の喜びがどんなであったかは、読者諸君のご想像にお任せします。
さて一方、乞食に化けた二十面相は、風のように羽柴家の門を飛び出し、小暗い横丁に隠れて、素早く乞食の着物を脱ぎ捨てますと、その下には茶色の十徳姿のおじいさんの変装が用意してありました。頭は白髪、顔も皺だらけの、どう見ても六十を越したご隠居様です。
彼は姿を整えると、隠し持っていた竹の杖をつき、背中を丸めて、よちよちと、歩き出しました。たとえ羽柴氏が約束を無視して、追っ手を差し向けたとしても、これでは見破られる気遣いはありません。実に心憎いばかりの用意周到なやり口です。
老人は大通りに出ると、一台のタクシーを呼び止めて、乗り込みましたが、二十分もでたらめの方向に走らせておいて、別の車に乗り換え、今度は、本当の隠れ家へ急がせました。
車の止まったところは、戸山ヶ原の入り口でした。老人はそこで車を降りて、真っ暗な原っぱをよぼよぼと歩いていきます。さては、賊の巣窟は戸山ヶ原にあったのです。
原っぱの一方のはずれ、こんもりとした杉林の中に、ぽっつりと、一軒の古い洋館が建っています。荒れ果てて住みてもないような建物です。老人は、その洋館の戸口を、トントントンと三つ叩いて、少し間をおいて、トントンと二つ叩きました。
すると、これが仲間の合図と見えて、中からドアが開かれ、最前仏像を盗み出した手下の一人が、ニュッと顔を出しました。
老人は黙ったまま先に立って、ぐんぐん奥の方へ入っていきます。廊下の突き当たりに、昔は、さぞ立派であった楼と思われる、広い部屋があって、その部屋の真ん中に、布を巻きつけたままの仏像のガラス箱が電燈もない、裸蝋燭の赤茶けた光に、照らし出されています。
「よしよし。お前たちうまくやってくれた。これは褒美だ。どっかへ行って遊んでくるがいい。」
三人の者に数枚の千円札を与えて、その部屋を立ち去らせると、老人は、ガラス箱の布をゆっくり取り去って、そこにあった裸蝋燭を片手に、仏像の正面に立ち、開き戸になっているガラスの扉を開きました。
「観音様、二十面相の腕前は、どんなもんですね。昨日は二百万円のダイヤモンドは、今日は国宝級の美術品です。この徴市だと、僕の計画している大美術館も、まもなく完成しようというものですよ。ハハハ・・・・・・、観音様。貴方は実によくできていますぜ。まるで生きているようだ。」
ところが、読者諸君、その時でした。二十面相の独り言が、終わるか終わらぬかに、彼の言葉通りに、実に恐ろしい奇跡が起こったのです。
木造の観音様の右手が、グーッと前に伸びてきたではありませんか。しかも、その指には、収まりの蓮の茎ではなくて一丁のピストルが、ぴったりと賊の胸に狙いを定めて、握られていたではありませんか。
仏像が一人で動くはずはありません。
では、この観音様には、人造人間のような機械仕掛けが施されていたのでしょうか。しかし鎌倉時代の彫像に、そんな仕掛けがあるわけはないのです。すると、いったいこの奇跡はどうして起こったのでしょう。
だが、ピストルを突きつけられた二十面相は、そんなことを考えている暇もありませんでした。彼は「アッ。」と叫んで、たじたじと後じさりをしながら、手向かいしないといわぬばかりに、思わず両手を肩のところまであげてしまいました。
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 楼主| 发表于 2008-9-17 11:09:51 | 显示全部楼层

回复 58楼 uin61 的帖子

    落とし穴
さすがの怪盗も、これには肝をつぶしました。相手が人間ならばいくらピストルを向けられても驚くような賊ではありませんが、古い古い鎌倉時代の観音様が、いきなり動き出したのですから、びっくりしないではいられません。
びっくりしたというよりも、ゾーッと心の底から恐ろしさが込み上げてきたのです。怖い夢を見ているような、あるいはお化けにでも出くわしたような、なんともえたいの知れぬ恐怖です。
大胆不敵の二十面相が、かわいそうに、真っ青になって、たじたじと後じさりをして、ごめんなさいというように、蝋燭を床に置いて、両手を高く挙げてしまいました。
すると、またしても、実に恐ろしい事が起こったのです。観音様が、れんげの台座から降りて、床の上に、ヌッと立ち上がったではありませんか。そして、じっとピストルの狙いを定めながら、一歩、二歩、三歩、賊の方へ近づいてくるのです。
「き、貴様、一体、な、何者だっ。」
二十面相は、追い詰められた獣のような、うめき声を立てました。
「わしか、わしは羽柴家のダイヤモンドを取り返しに来たのだ。たった今、あれを渡せば、一命を助けてやる。」
驚いた事には、仏像がものを言ったのです。重々しい声で命令したのです。
「ハハア、貴様、羽柴家の回し者だな。仏像に変装して、俺の隠れ家を突き止めに来たんだな。」
相手が人間らしい事が分かると、賊は少し元気付いてきました。でも、えたいの知れぬ恐怖が、まったくなくなったわけではありません。というのは、人間が変装したのにしては、仏像があまり小さすぎたからです。立ち上がったところを見ると、十二-三の子供の背丈しかありません。その一寸法師みたいなやつが、落ち着き払って、老人のような重々しい声でものを言っているのですから、実になんとも形容のできない気味悪さです。
「で、ダイヤモンドを渡さぬといったら?」
賊は恐る恐る、相手の気を引いてみるように、訪ねました。
「お前の命がなくなるばかりさ。このピストルはね、いつもお前が使うような、玩具じゃないんだぜ。」
観音様は、このご隠居然とした白髪の老人が、その実二十面相の変装姿である事を、ちゃんと知りぬいている様子でした。たぶん、最前の手下の者との会話を漏れ聞いて、それと、察したのでしょう。
「おもちゃでないという証拠を、見せてあげようか。」
そういったかと思うと、観音様の右手がヒョイと動きました。
と同時に、ハッと飛び上がるような恐ろしい物音。部屋の一方の窓ガラスがガラガラとくだけ落ちました。ピストルからは、実弾が飛び出したのです。
一寸法師の観音様は、めちゃめちゃに飛び散るガラスの破片を、ちらと見やったまま、素早くピストルの狙いを元に戻し、インド人みたいな真っ黒な顔で、薄気味悪くニヤニヤと笑いました。
見ると賊の胸に突きつけられたピストルの筒口からは、まだ薄青い煙が立ち上っています。
二十面相は、この黒い顔をした小さな怪人物の肝っ玉が、恐ろしくなってしまいました。
こんなめちゃくちゃな乱暴者は、何をしだすか知れた者ではない。本当にピストルで撃ち殺す気かも知れぬ。ダイヤモンドは帰してやろう。」
賊はあきらめたように言い捨てて、部屋の隅の大きな机の前へ行き、机の足をくりぬいた隠し引き出しから、六個の宝石を取り出すと、手のひらに載せて、カチャカチャ言わせながら戻ってきました。
ダイヤモンドは、賊の手の中で踊るたびごとに、床の蝋燭の光を受けて、ギラギラと虹のように輝いています。
「さあ、これだ。よく調べて受け取りたまえ。」
一寸法師の観音様は、左手を伸ばして、それを受け取ると、老人のようなしわがれ声で、笑いました。
「ハハハ・・・・・・、感心、さすがの二十面相も、やっぱり命は惜しいと見えるね。」
「ウム、残念ながら、兜を脱いだよ。」
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 楼主| 发表于 2008-9-19 10:35:34 | 显示全部楼层

回复 59楼 uin61 的帖子

賊は、悔しそうに唇を噛みながら、「ところで、いったい君は何者だね。この二十面相をこんな目に合わせる奴があろうとは、俺も意外だったよ。後学のために名前を教えてくれないか。」
「ハハハ・・・・・・、お褒めに預かって、光栄の至りだね。名前かい。それは君が牢屋へ入ってからのお楽しみに残しておこう。お巡りさんが教えてくれることだろうよ。」
観音様は、勝ち誇ったように言いながら、やっぱり、ピストルを構えたまま、部屋の出口の方へ、ジリジリと後じさりを始めました。
賊の巣窟は突き止めたし、ダイヤモンドは取り戻したし、後は無事にこのあばら屋を出て、付近の警察へ駆け込みさえすればよいのです。
この観音様に変装した人物が何者であるかは、読者諸君、とっくにご承知でしょう。小林少年は怪盗二十面相を向こうに回して、見事な勝利を収めたのです。その嬉しさは、どれほどでしたろう。どんな大人も及ばぬ大手柄です。
ところが、彼が今、二-三歩で部屋を出ようとしていたとき、突然、異様な笑い声が響き渡りました。見ると、老人姿の二十面相が、可笑しくてたまらぬというように、大口開いて笑っているのです。
ああ、読者諸君、まだ安心はできません。名にしおう怪盗のことです。負けたと見せて、その実、どんな最後の切り札を残していないとも限りません。
「おやっ、貴様、何が可笑しいんだ。」
観音様に化けた少年は、ギョッとしたように立ち止まって、油断なく身構えました。
「いや、失敬、失敬、君が大人の言葉なんか使って、あんまり困っちゃくれているもんだから、つい吹き出してしまったんだよ。」
賊はやっと笑いやんで、答えるのでした。
「というのはね。俺はとうとう、君の正体を見破ってしまったからさ。この二十面相の裏をかいて、これほどの芸当のできる奴は、ソウタンとはないからね。実を言うと、俺は真っ先に明智小五郎を思い出した。
だが、そんなちっぽけな明智小五郎なんてありゃしないね。君は子供だ。明智流のやり方を会得した子供といえば、他にはない。明智の少年助手の小林芳雄とかいったっけな。ハハハ・・・・・・、どうだ、あたったろう。」
観音像に変装した小林少年は、賊の明察に、内心ギョッとしないではいられませんでした。しかし、よく考えてみれば、目的を果たしてしまった今、相手に名前を悟られたところで、少しも驚く事はないのです。
「名前なんかどうだっていいが、お察しのとおり僕は子供に違いないよ。だが、二十面相ともあろうものが、僕みたいな子供に遣っ付けられたとあっては、少し名折れだねえ。ハハハ・・・・・。」
小林少年は負けないで応酬しました。
「坊や、かわいいねえ・・・・・・。貴様、それで、この二十面相に勝ったつもりでいるのか。」
「負け惜しみは、よしたまえ。せっかく盗み出した仏像は生きて動き出すし、ダイヤモンドは取り返されるし、それでもまだ負けないって言うのかい。」
「そうだよ。俺は決して負けないよ。」
「で、どうしようっていうんだ!」
「こうしようというのさ!」
その声と同時に、小林少年は足の下の床板が、突然消えてしまったように感じました。
ハッと体が宙に浮いたかと思うと、その次の瞬間には、目の前に火花が散って、体のどこかが、恐ろしい力で叩きつけられたような、激しい痛みを感じたのです。
ああ、なんと言う不覚でしょう。ちょうどその時、彼が立っていた部分の床板が、落とし穴のし掛けになっていて、賊の指がソっと壁の隠しボタンを押すと同時に、とめ金が外れ、底に真っ暗な四角い地獄の口が開いたのでした。
痛みに耐えかねて、身動きもできず、暗闇の底にうつ伏している小林少年の耳に、遥か上の方から、二十面相の小気味よげな嘲笑が響いてきました。
「ハハハ・・・・・・、おい坊や、さぞ痛かっただろう。気の毒だねえ。まあ、そこでゆっくり考えてみるがいい。君の敵がどれほどの力を持っているかということをね。ハハハ・・・・・・、この二十面相を遣っ付けるのには、君はちっと年が若すぎたよ。ハハハ・・・・・・。」
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