咖啡日语论坛

 找回密码
 注~册
搜索
楼主: uin61

[其他翻译] 日本語小説「怪人二十面相」

[复制链接]
 楼主| 发表于 2008-9-27 10:17:24 | 显示全部楼层

回复 60楼 uin61 的帖子

                    七つ道具

小林少年はほとんど二十分ほどの間、地底の暗闇の中で、墜落したままの姿勢で、じっとしていました。ひどく腰を打ったものですから、痛さに身動きする気にもなれなかったのです。
その間に、天井では、二十面相が散々嘲りの言葉を投げかけておいて、落とし穴のふたをピッシャリ閉めてしまいました。もう助かる見込みはありません。永久の虜です。もし賊がこのまま食事を与えてくれないとしたら、誰一人知るものもないあばら屋の地下室でうえ死にしてしまわねばなりません。
年はも行かぬ少年の身で、この恐ろしい境遇を、どう耐え忍ぶ事ができましょう。大抵の少年ならば、寂しさと恐ろしさに、絶望のあまりシクシクと泣き出した事でありましょう。
しかし、小林少年は泣きもしなければ、絶望もしませんでした。彼はけな気にも、まだ、二十面相に負けたとは思っていなかったのです。
やっと腰の痛みが薄らぐと、少年がまず最初にした事は、変装の敗れ衣の下に隠して、肩から下げていた小さなズックのカバンに、ソッと触ってみる事でした。
「ピッポちゃん、君は、無事だったかい。」
妙な事を言いながら、上から撫でるようにしますと、カバンの中で何か小さなものが、ゴソゴソと動きました。
「ああ、ピッポちゃんは、どこも打たなかったんだね。お前さえいてくれれば、僕、ちっとも寂しくないよ。」
ピッポちゃんが、別状泣く生きている事を確かめると、小林少年は、闇の中に座って、その小カバンを肩から外し、中から万年筆型の懐中電灯を取り出して、その光で、床に散らばっていた六つのダイヤモンドと、ピストルを拾い集め、それをカバンに収めるついでに、その中のいろいろな品物を紛失していないかどうかを、念入りに点検するのでした。
そこには、少年探偵の七つ道具が、ちゃんと揃っていました。昔、武蔵坊弁慶という豪傑は、あらゆる戦の道具を、すっかり背中に背負って歩いたのだそうですが、それを、「弁慶の七つ道具」といって、今に語り伝えられています。小林少年の「探偵七つ道具」は、そんな大きな武器ではなく、一まとめにして両手に握れるほどの小さな物ばかりでしたが、その役に立つ事は、決して弁慶の七つ道具にもおとりはしなかったのです。
まず万年筆型懐中電燈。夜間の捜査事業には灯火が何よりも大切です。また、この懐中電燈は、時に信号の役目を果たす事もできます。
それから、小型の万能ナイフ。これには鋸、はさみ、霧など、さまざまの刃物類が折りたたみになって付いております。
それから、丈夫な絹紐で作った縄梯子、これは畳めば、手のひらにはいるほど小さくなってしまうのです。そのほか、やっぱり万年筆型の望遠鏡、時計、磁石、小型の手帳と鉛筆、最前賊を脅かした小型ピストルなどが主な者でした。
いや、そのほかに、もう一つピッポちゃんのことを忘れてはなりません。懐中電燈に照らし出されたのを見ますと、それは一羽の鳩でした。かわいい鳩が身を縮めて、カバンの別の区画に、大人しくじっとしていました。
「ピッポちゃん。窮屈だけれど、もう少し我慢するんだよ。怖いおじさんに見つかると大変だからね。」
小林少年はそんなことを言って、頭を撫でてやりますと、鳩のピッポちゃんは、その言葉が分かりでもしたように、クークーとないて返事をしました。
ピッポちゃんは、少年探偵のアスコットでした。彼はこのマスコットと一緒にいさえすれば、どんな危険に当たっても大丈夫だという、信仰のよう物を持っていたのです。
そればかりではありません。この鳩はマスコットとしてのほかに、まだ重大な役目を持っていました。探偵の仕事には、通信機関が何よりも大切です。そのためには、警察にはラジオを備えた自動車がありますけれど、残念ながら私立探偵にはそういうものがないのです。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2008-9-27 11:47:58 | 显示全部楼层
好久没看见你更新了,呵呵
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-1 10:49:25 | 显示全部楼层

回复 61# uin61 的帖子

もし洋服の下へ隠せるような小型ラジオ発信器があれば一番いいのですが、そんなものは手に入らないものですから、小林少年は伝書バトという、面白い手段を考え付いたのでした。
いかにも子供らしい思い付きでした。でも、子供の無邪気な思い付きが、時には、大人をびっくりさせるような、効果を現すことがあるものです。
「僕のカバンの中に、僕のラジオも持っているし、それから僕の飛行機も持っているんだ。」
小林少年は、さも得意そうに、そんな独り言を言っていることがありました。なるほど、伝書バトはラジオでもあり、飛行機でもあるわけです。
さて、七つ道具の点検を終わりますと、彼は満足そうにカバンを衣の中に隠し、次には懐中電燈で、地下室の模様を調べ始めました。
地下室は十畳敷きほどの広さで、四ほうコンクリートの壁に包まれた、以前は物置にでも使われていたらしい部屋でした。どこかに階段があるはずだと思って、探してみますと、大きな木の梯子が、部屋の一方の天井に吊り上げてあることが分かりました。出入り口をふさいだだけでは足りないで、階段まで取り上げてしまうとは、実に用心深いやり方といわねばなりません。この調子では、地下室から逃げ出す事など思いも及ばないのです。
部屋の隅に一脚の壊れかかった長いすが置かれ、その上に一枚の古毛布が丸めてあるほかには、道具らしい物は何一品ありません。まるで牢獄のような感じです。
小林少年は、その長いいすを見て、思い当たるところがありました。
「羽柴壮二君は、きっとこの地下室に監禁されていたんだ。そして、この長いすの上で眠ったにちがいない。」
そう思うと、何か懐かしい感じがして、彼は長いすに近づき、クッションを押してみたり、毛布を広げてみたりするのでした。
「じゃ、ぼくもこのベットで一眠りするかな。」
大胆不敵の少年探偵は、そんな独り言を言って、長いすの上に、ゴロリと横になりました。
万事は夜が明けてからのことです。それまでに十分鋭気を養っておかねばなりません。なるほど、理屈はそのとおりですが、この恐ろしい境遇に会って、のんきに一眠りするなんて、普通の少年には、とてもまねのできないことでした。
「ピッポちゃん、さあ、眠ろうよ。そして、面白い夢でも見ようよ。」
小林少年は、ピッポちゃんの入っているカバンを、大事そうに抱いて、闇の中に目を塞ぎました。そして間も無く、長いすの寝台の上から、すやすやと、さも安らかな少年の寝息が聞こえてくるのでした。
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-9 17:17:45 | 显示全部楼层

回复 63# uin61 的帖子

        伝書バト
小林少年はふと目を覚ますと、部屋の様子が、いつもの探偵事務所の寝室と違っているので、びっくりしましたが、忽ち昨夜の出来事を思い出しました。
「ああ、地下室に監禁されていたんだっけ。でも、地下室にしちゃあ、変に明るいなあ。」
殺風景なコンクリートの壁や床が、ほんのりと、薄明るく見えています。地下室に日が差すはずはないのだがと、なおも見回していますと、昨夜は少しも気づきませんでしたが、一方の天井に近く、明かりとりの小さな窓が開いている事が分かりました。
その窓は三十センチ四ほうほどの、ごく小さいもので、そのうえ太い鉄ごうしが嵌めてあります。地下室の床からは、三メートル近くもある高いところですけれど、外から見れば、地面とすれすれの場所にあるのでしょう。
「はてな、あの窓から、うまく逃げ出せないかしら。」
小林君は急いで長いすから起き上がり、窓の下に行って、明るい空を見上げました。窓にはガラスが嵌めてるのですが、それが割れてしまって、大声に叫べば、外を通る人に聞こえそうにも思われるのです。
そこで、今まで寝ていた長いすを、窓の下へ押していって、それを踏み台に、伸び上がってみましたが、それでもまだ窓へ届きません。子供の力で重い長いすを立てにすることはできないし、他に踏み台にする道具とても見当たりません。
では、小林君は、せっかく窓を発見しながら、そこから外を覗く事も、できなかったのでしょうか。いやいや、読者諸君、ご心配には及びません。こういうときの用意に、縄梯子という物があるのです。少年探偵の七つ道具は、早速使い道ができたわけです。
彼はカバンから絹紐の縄梯子を取り出し、それを伸ばして、カウ・ボーイの投げ縄みたいに弾みを付け、一方の端についている鍵を、窓の鉄ごうし目掛けて投げ上げました。
三度、四度失敗した後で、ガチッと、手応えがありました。鍵はうまく一本の鉄棒にかかったのです。
縄梯子といっても、これはごく簡単なもので、五メートルほどもある、長い丈夫な一本の絹紐に、二十センチごとに大きな結び玉が拵えてあって、その結び玉に足の指をかけて、よじ登る仕掛けなのです。
小林君は腕力では大人に及びませんけれど、そういう器械体操めいた事になると、誰にもひけは取りませんでした。彼は、難なく縄梯子を昇って、窓の鉄ごうしに捕まることができました。
ところが、そうして調べてみますと、失望した事には、鉄ごうしは深くコンクリートに塗り込めてあって、万能ナイフぐらいでは、とても取り外せない事が分かりました。
では、窓から大声に救いを求めてみたらどうでしょう。いや、それもほとんど見込みがないのです。窓の外は荒れ果てた庭になっていて草や木が茂り、そのずっと向こうに生け垣があって、生け垣の外は道路もない広っぱです。その広っぱへ、子供でも遊びに来るのを待って、救いを求めれば、求められるのですが、そこまで声が届くかどうかも、疑わしいほどです。
それに、そんな大きな叫び声を立てたのでは、広っぱの人に聞こえるよりも先に、二十面相に聞かれてしまいます。いけない、いけない、そんな危険な事ができるものですか。
小林少年は、すっかり失望してしまいました。でも失望の中にも、一つだけ大きな収穫がありました。といいますのは、今の今まで、この建物がいったいどこにあるのか、少しも検討が付かなかったのですが、窓を覗いたおかげで、その位置がはっきりと分かった事です。
読者諸君は、ただ窓を覗いただけで、位置が分かるなんて変だとおっしゃるかもしれません。でも、それが分かったのです。小林君は大変幸運だったのです。
窓の外、広っぱの遥か向こうに、東京にたった一ヶ所しかない、際立って特徴のある建物が見えたのです。東京の読者諸君は、戸山ヶ原にある、大人国のかまぼこをいくつも並べたような、コンクリートの大きな建物をご存知でしょう。実にお誂え向きの目印ではありませんか。
少年探偵は、その建物と賊の家との関係を、よく頭に入れて、縄梯子を降りました。そして、急いで例のカバンを開くと、手帳と鉛筆と磁石とを取り出し、方角を確かめながら、地図を書いて見ました。すると、この建物が戸山ヶ原の北側、西よりの一隅にあるということが、はっきりと分かったのでした。ここでまた、七つ道具の中の磁石が役に立ちました。
ついでに時計を見ますと、朝の六時を、少し過ぎたばかりです。上の部屋がひっそりしている様子では、二十面相はまだ熟睡しているのかもしれません。
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-14 10:53:18 | 显示全部楼层

回复 64# uin61 的帖子

「ああ、残念だなあ。せっかく二十面相の隠れ家を突き止めたのに、その場所がちゃんと分かっているのに、賊を捕縛する事ができないなんて。」
小林君は小さい拳を握り締めて、悔しがりました。
「僕のちらだが、童話の仙女みたいに小さくなって、羽が生えて、あの窓から飛び出せたらなあ。そうすれば、早速警視庁へ知らせて、お巡りさんを案内して、二十面相を捕まえてしまうんだがなあ。」
彼は、そんな夢のような事を考えて、ため息をついていましたが、ところが、その妙な空想がきっかけになって、ふと、素晴らしい名案が浮かんできたのです。
「なあんだ、僕は、馬鹿だなあ。そんなこと分けなくできるじゃないか。僕にはピッポちゃんという飛行機があるじゃないか。」
それを考えると、嬉しさに、顔が赤くなって、胸がドキドキ踊りだすのです。
小林君は興奮に震える手で、手帳に、賊の巣窟の位置と、自分が地下室に換金されている事を記し、その紙をちぎって、細かく畳みました。
それから、カバンの中の伝書バトのピッポちゃんを出して、その足に結び付けてある通信筒の中へ、今の手帳の紙を詰め込み、しっかりと蓋を閉めました。
「さあ、ピッポちゃん、とうとう君が手柄を立てる時が来たよ。しっかりするんだぜ。道草なんか食うんじゃないよ。いいかい。そら、あの窓から飛び出して、早く奥さんのところへ行くんだ。」
ピッポちゃんは、小林少年の手の甲に止まって、かわいい目をキョロキョロさせて、じっと聞いていましたが、ご主人の命令が分かったものと見えて、やがて勇ましく羽ばたきして、地下室の中を二-三度行ったり来たりすると、ツーッと窓の外へ飛び出してしまいました。
「ああ、良かった。十分もすれば、ピッポちゃんは、明智先生のおばさんのところへ飛んでいくだろう。おばさんは僕の手紙を読んで、さぞびっくりなさるだろうなあ。でも、すぐに警視庁へ電話を掛けてくださるに違いない。それから警官がここへ駆けつけるまで、三十分かな?四十分かな?なんにしても、今から一時間のうちには、賊が捕まるんだ。そして僕は、この穴倉から出る事ができるんだ。」
小林少年は、ピッポちゃんの消えていった空を眺めながら、夢中になって、そんなことを考えていました。あまり夢中になっていたものですから、いつの間にか、天井の落とし穴の蓋が開いたことを、少しも気づきませんでした。
「小林君、そんなところで、何をしているんだね。」
聞き覚えのある二十面相の声が、まるで雷のように少年の耳を打ちました。
ギョッとしてそこを見上げますと、天井にピッカリあいた四角な穴から、昨夜のままの、白髪頭の賊の顔が、逆さまになって、覗いていたではありませんか。
アッ、それじゃ、ピッポちゃんの飛んでいくのを見られたんじゃないかしら。
小林君は、思わず顔色を変えて賊の顔を見つめました。

[ 本帖最后由 uin61 于 2008-10-14 10:54 编辑 ]
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-16 11:29:53 | 显示全部楼层

回复 65# uin61 的帖子

       奇妙な取引
「少年探偵さん、どうだったね、昨夜の寝心地は。ハハハ……、おや、窓になんだか黒い紐がぶら下がっているじゃないか。ははあ、用意の縄梯子というやつだね。感心、感心、君は、実に考え深い子供だねえ。だが、その窓の鉄棒は、君の力じゃ外せまい。そんなところに立って、何時まで窓を睨んでいたって逃げ出せっこはないんだよ。気の毒だね。」
賊は、憎憎しく嘲るのでした。
「やあ、おはよう。僕は逃げ出そうなんて思ってやしないよ。居心地がいいんだもの。この部屋は気に入ったよ。僕はゆっくり滞在するつもりだよ。」
小林少年も負けてはいませんでした。今、窓から伝書バトを飛ばしたのを、賊に感づかれたのではないかと、胸をドキドキさせていたのですが、二十面相の口ぶりでは、そんな様子も見えませんので、すっかり安心してしまいました。
ピッポちゃんさえ、無事に探偵事務所へ着いてくれたら、もうしめたものです。二十面相が、どんなに毒口を叩いたって、なんともありません。最後の勝利はこっちのものだと分かっているからです。
「居心地がいいんだって?ハハハ……、ますます感心だねえ。さすがは明智の片腕といわれるほどあって、いい度胸だ。だが、小林君、少し心配な事がありゃしないかい。え、君は、もうおなかが空いている時分だろう。飢え死にしても言いというのかい。」
何を言っているんだ。今にピッポちゃんの報告で、警察からたくさんのお巡りさんが、駆けつけてくるのも知らないで。小林君は何も言わないで、心の中であざ笑っていました。
「ハハハ……、少ししょげたようだね。いい事を教えてやろうか。君は代価を払うだよ。そうすれば、おいしい朝ごはんを食べさせてあげるよ。いやいや、お金じゃない。食事の代価というのはね、君の持っているピストルだよ。そのピストルを、おとなしくこっちへ引き渡せば、コックに言いつけて、早速朝ごはんを運ばせるんだがねえ。」
賊は大きなことは言うものの、やっぱりピストルを気味悪がっているのでした。それを食事の代価として取り上げるとは、うまい事を思いついたものです。小林少年は、やがて救い出される事を信じていましたから、それまで食事を我慢するのは、なんでもないのですが、あまり平気な顔をしていて、相手に疑いを起こさせてはまずいと考えました。それに、どうせピストルなどに、もう用事はないのです。
「残念だけれど、君の申し出に応じよう。本当は、お腹がぺこぺこなんだ。」
わざと、悔しそうに答えました。
賊は、それをお芝居とは心づかず、計略が図にあたったとばかり、得意になって、
「ウフフフ……、さすがの少年探偵も、ひもじさにはかなわないと見えるね。よしよし、今すぐに食事を下ろしてやるからね。」と言いながら、落とし穴を占めて姿を消しましたが、やがて、何かコックに命じているらしい声が、天井から、かすかに聞こえてきました。
案外食事の用意が手間取って、再び二十面相が、落とし穴を開いて顔を出したのは、それから二十分も経ったころでした。
「さあ、暖かいご飯を持ってきてあげたよ。が、まず代価の方を、先に頂戴する事にしよう。さあ、この籠にピストルを入れるんだ。」
綱の付いた小さな籠が、スルスルと降りてきました。小林少年が、言われるままに、ピストルをその中へ入れますと、籠は、手早く天井へ手繰りあげられ、それから、もう一度降りてきたときには、その中に湯気の立っているおにぎりが三つと、ハムと、生卵と、お茶の瓶とが、並べてありました。虜の身分にしては、なかなかのご馳走です。
「さあ、ゆっくり食べてくれたまえ。君の方で代価さえ払ってくれたら、いくらでもご馳走してあげるよ。お昼のご飯には、今度はダイヤモンドだぜ。せっかく手に入れたのを、気の毒だけれど、一粒ずつ頂戴する事にするよ。いくら残念だと言って、ひもじさには代えられないからね。つまり、そのダイヤモンドを、すっかり、帰してもらうと言うわけなんだよ。一粒ずつ、一粒ずつ、ハハハ……、ホテルの主人も、なかなか楽しみな者だねえ。」
二十面相は、この奇妙な取引が、愉快で堪らない様子でした。しかし、そんな気の長い事を言っていて、本当にダイヤモンドが取り返せるのでしょうか。
その前に、彼自身が取りになってしまうようなことはないでしょうか。

[ 本帖最后由 uin61 于 2008-10-21 16:05 编辑 ]
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-21 17:33:12 | 显示全部楼层

回复 66# uin61 的帖子

       小林少年の勝利
二十面相は、おとし戸のところにしゃがんだまま、今、取り上げたばかりのピストルを、手のひらの上でピョイピョイと弾ませながら、得意の絶頂でした。そして、尚も小林少年をからかって楽しもうと、何か言いかけたときでした。
バタバタと二階から駆け下りる音がして、コックの恐怖に引きつった顔が現れました。
「大変です……。自動車が三台、お回りがうじゃうじゃ載っているんです……。二階の窓から見ていると、門の外で止まりました……。早く逃げなくっちゃ。」
ああ、果たしてピッポちゃんは使命を果たしたのでした。そして、小林君の考えていたよりも早く、もう警官隊が到着したのでした。地下室で、この騒ぎを聞きつけた少年探偵は、嬉しさに飛び立つばかりです。
この不意打ちには、さすがの二十面相も仰天しないではいられません。
「なに?」
と、呻いて、スックと立ち上がると、おとし戸を閉めることも忘れて、いきなり表の入り口へ駆け出しました。
でも、もうその時は遅かったのです。入り口の戸を、外から激しく叩く音が聞こえて気ました。戸の側にもうけてある覗き穴に当ててみますと、外は制服警官の人がきでした。
「畜生っ。」
二十面相は、怒りに身を震わせながら、今度は裏口に向かって走りました。しかし、中途までも行かぬうちに、その裏口のドアにも、激しく叩く音が聞こえてきたではありませんか。賊の巣窟は、今や警官隊によって、まったく包囲されてしまったのです。
「頭、もうだめです。逃げ道はありません。」
コックが絶望の叫びを上げました。
「仕方がない、二階だ。」
二十面相は、二階の屋根裏部屋へ隠れようと言うのです。
「とてもだめです。すぐ見つかってしまいます。」
コックは泣き出しそうな声で喚きました。賊はそれに構わず、いきなり男の手を取って、引きずるようにして、屋根裏部屋への階段を駆け上がりました。
二人の姿が階段に消えると程なく、表口のドアが激しい音をたてて、倒れたかと思うと、数名の警官が屋内に雪崩れ込んできました。それとほとんど同時に、裏口の戸も開いて、そこからも数名の制服警官。
指揮官は、警視庁の鬼と歌われた中村捜査係長その人です。係長は、表と裏の要所要所に見張りの警官を立たせておいて、残る全員を指図して、部屋と言う部屋を片っ端から捜索させました。
「あっ、ここだ。ここが地下室だ。」
一人の警官が例のおとし戸の上で怒鳴りました。忽ち駆け寄る人々、そこにしゃがんで、薄暗い地下室を覗いていた一人が、小林少年の姿を認めて、
「いる、いる。君が小林君か。」
と呼びかけますと、待ち構えていた少年は、
「そうです。早く梯子を下ろしてください。」
と叫ぶのでした。
一方、階下の部屋部屋は、隈なく捜索されましたが、賊の姿はどこにも見えません。
「小林君、二十面相はどこへ行ったか、君は知らないか。」
やっと地下室から這い上がった、異様な衣姿の少年を捉えて、中村係長が慌しく訪ねました。
「つい今しがたまで、このおとし戸のところにいたんです。外へ逃げたはずはありません。二階じゃありませんか。」
小林少年の言葉が終わるか終わらぬかに、その二階からただならぬ叫び声が響いてきました。
「早く来てくれ、賊だ。賊を捕まえたぞ!」
それっと言うので、人々はなだれを打って、廊下の奥の階段へ殺到しました。ドカドカという激しい靴音、階段を上がると、そこは屋根裏部屋で、小さな窓がたった一つ、まるで夕方のように薄暗いのです。
「ここだ、ここだ。早く加勢してくれ。」
その薄暗い中で、一人の警官が、白髪白ぜんの老人を組み敷いて、怒鳴っています。老人はなかなか手ごわいらしく、ともすれば跳ね返しそうで、組み敷いているのがやっとの様子です。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2008-10-23 12:53:28 | 显示全部楼层

すごい

楼主,你真强!佩服你啊!
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-10-30 09:52:14 | 显示全部楼层

回复 67# uin61 的帖子

先にたった二-三人が、忽ち老人に組み付いていきました。それを追って、四人、五人、六人、ことごとくの警官が折り重なって、賊の上に襲い掛かりました。
もうこうなっては、いかな凶賊も抵抗のしようがありません。見る見るうちに高手小手に戒められてしまいました。
白髪の老人が、ぐったりとして、部屋の隅に蹲ったとき、中村係長が小林少年を連れてあがってきました。首実検のためです。
「二十面相は、こいつに違いないだろうね。」
係長が訪ねますと、少年は即座にうなずいて、
「そうです。こいつです。二十面相がこんな老人に変装しているのです。」と答えました。
「君たち、そいつを自動車へ乗せてくれたまえ。抜かりのないように。」
係長が命じますと、警官たちは四方から老人を引っ立てて、階段を下りていきました。
「小林君、大手が羅だったねえ。外国から明智さんが帰ったら、さぞびっくりする事だろう。相手が二十面相という大物だからねえ。明日になったら、君の名は日本中に響き渡るんだぜ。」
中村係長は少年探偵の手を取って、感謝に耐えぬもののように、握り締めるのでした。
かくして、戦いは、小林少年の勝利に終わりました。仏像は、最初から渡さなくて済んだのですし。ダイヤモンドは六個とも、ちゃんとカバンの中に納まっています。勝利も勝利、まったく申し分のない勝利でした。賊は、あれほどの苦心にもかかわらず、一物をも得ることができなかったばかりか、せっかく監禁した小林少年は救い出され、彼自身は、とうとう、囚われの身となってしまったのですから。
「ぼく、なんだかうそみたいな気がします。二十面相に勝ったなんて。」
小林君は、興奮に青ざめた顔で、何か信じがたい事のように言うのでした。
しかし、ここに一つ、賊が逮捕された嬉しさのあまり、少年探偵がすっかり忘れていた事がらがあります。それは二十面相の雇っていたコックの行方です。彼は、いったいどこへ雲隠れしてしまったのでしょう。あれほどの家捜しに、まったく姿を見せなかったと言うのは、実に、不思議ではありませんか。
逃げる暇があったとは思われません。もしコックに逃げる余裕があれば、二十面相も逃げているはずです。では、彼はまだ屋内のどこかに身を潜めているのでしょうか。それはまったく不可能な事です。大勢の警官隊の厳重な捜索に、そんな手抜かりがあったとは考えられないからです。
読者諸君、一つ本を置いて、考えてみてください。このコックの異様な行方不明には、そもそもどんな意味が隠されているのかを。
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2008-10-31 14:08:23 | 显示全部楼层
楼主简直是神!!!太不可思议了。崇拜!!!
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2008-11-10 15:10:08 | 显示全部楼层

回复 11# uin61 的帖子

翻译的真好呀.学到了很多
こいつは名案だ   
我觉得应该翻译成 这是个好主意.
对不起呀.
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2008-11-12 12:19:59 | 显示全部楼层
楼主真的好厉害.
我才看到第四页就不定心了.
因为我很急着要知道结局.呵,,可能是故事太引人入胜了.
向楼主学习,重拾信心.好好学日语
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-11-14 10:53:17 | 显示全部楼层

回复 69# uin61 的帖子

                 おそろしき挑戦状
戸山ヶ原の廃屋の捕り物があってから二時間ほどのち、警視庁の陰気な調べ室で、怪盗二十面相の取調べが行われました。何の飾りもない、薄くらい部屋に机が一脚、そこに中村捜査係長と老人に変装したままの怪盗と、二人きりの差し向かいです。
賊は後ろ手に戒められたまま、傍若無人に立ちはだかっています。最善から、おしのように黙りこくって、一言も、ものを言わないのです。
「一つ、君の素顔を見せてもらおうか。」
係長は、賊の側へ寄ると、いきなり白髪のかつらに手をかけて、すっぽりと引き抜きました。すると、その下から黒々とした頭が現れました。次には、顔いっぱいの、白髪の付けひげを、むしりとりました。そして、いよいよ賊の素顔が剥き出しになったのです。
「おやおや、君は、案外ぶおとこだねえ。」
係長がそういって、妙な顔をしたのももっともでした。賊は、狭い額、クシャクシャと不ぞろいな短い眉、その下にギョロッと光っているどんぐり眼、拉げた鼻、しまりのない厚ぼったい唇、まったく利口そうなところの感じられない、野蛮人のような、異様な相好でした。
先にも言うとおり、この賊はいくつとなく違った顔を持っていて、時に応じて老人にも、青年にも、女にさえも化けると言う怪物ですから、世間一般にはもちろん、警察の係官たちにも、その本当の容貌は少しも分かっていなかったのです。
それにしても、これはまあ、なんて醜い顔をしているのだろう。もしかしたら、この野蛮人みたいな顔が、やっぱり変装なのかもしれない。
中村係長は、なんともたとえられない不気味なものを感じました。係長は、じっと賊の顔を睨みつけて、思わず、声を大きくしないではいられませんでした。
「おい、これがお前の本当の顔なのか。」
実に変てこな質問です。しかし、そういうばかばかしい質問をしないではいられぬ気持ちでした。すると怪盗は、どこまでも押し黙ったまま、しまりのない唇を、いっそうしまりなくして、ニヤニヤと笑い出したのです。
それを見ると、中村係長は、なぜかゾッとしました。目の前に、何か想像も及ばない奇怪な事が起こり始めているような気がしたのです。
係長はその恐怖を隠すように、いっそう相手に近づくと、いきなり両手を挙げて、賊の顔をいじり始めました。眉毛を引っ張ってみたり、鼻を押さえてみたり、頬をつねってみたり、あめざいくでも玩具にしているようです。
ところが、そうしていくら調べてみても、賊は変装している様子はありません。かつてあの美青年の羽柴壮一君に成りすました賊が、その実、こんな化け物みたいな醜い顔をしていたとは、実に意外というほかはありません。
「エヘヘヘ……、擽ってえや、よしてくんな、擽ってえや。」
賊がやっと声を立てました。しかし、なんというだらしのない言葉でしょう。彼は口の利き方まで偽って、あくまで警察を馬鹿にしようというのでしょうか。それとも、もしかしたら……。
係長はギョッとして、もう一度賊を睨みつけました。頭の中に、ある、途方もない考えがひらめいたのです。ああ、そんなことがありうるでしょうか。あまりにばかばかしい空想です。まったく不可能な事です。でも、係長は、それを確かめてみないではいられませんでした。
「君は誰だ。君は、一体全体何者なんだ。」
またしても、変てこな質問です。
すると、賊はその声に応じて、待ち構えていたように答えました。
「あたしは、木下虎吉って言うもんです。職業はコックです。」
「だまれ!そんな馬鹿みたいな口を利いて、ごまかそうとしたって、だめだぞ。本当のことを言え。二十面相といえば世間に聞こえた大盗賊じゃないか。卑怯なまねをするなっ。」
怒鳴りつけられて、ひるむかと思いのほか、いったいどうしたと言うのでしょう。賊は、いきなりゲラゲラと笑い出したではありませんか。
「ヘエ-、二十面相ですって、このあたしがですかい。ハハハ……、とんだことになるものですね。二十面相がこんなきたねえ男だと思っているんですかい。警部さんも目がないねえ。いい加減にわかりそうなもんじゃありませんか。」
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-11-14 10:57:36 | 显示全部楼层

回复 71# peipei333 的帖子

谢谢!
你的意思是正确的.

当时翻译的时候没有注意到.谢谢提醒!
回复 支持 反对

使用道具 举报

 楼主| 发表于 2008-11-21 10:40:02 | 显示全部楼层

回复 73# uin61 的帖子

中村係長は、それを聞くと、ハッと顔色を変えないでいられませんでした。
「だまれッ、でたらめもいい加減にしろ。そんな馬鹿な事があるものか。貴様が二十面相だということは、小林少年がちゃんと証明しているじゃないか。」
「ワハハハ……、それが間違っているんだから、お笑いぐさでさあ。あたしはね、別になんにも悪い事をした覚えはねえ、ただのコックですよ。二十面相だかなんだか知らないが、十日ばかり前、あの家へ雇われたコックの虎吉ってもんですよ。なんなら、コックの親方のほうを調べてくださりゃ、すぐ分かる事です。」
「その、なんでもないコックが、どうしてこんな老人の変装をしているんだ。」
「それがね、いきなり押さえつけられて、着物を着替えさせられ、かつらを被せられてしまったんでさあ。あたしも、実は、よくわけが分からないんだが、お巡りさんが、踏み込んできなすった時に、主人が、あたしの手を取って、屋根裏部屋へ駆け上がったのですよ。
あの部屋には隠し戸棚があってね、そこにいろんな変装の衣装が入れてあるんですよ。主人はその中から、お巡りさんの洋服や、帽子などを取り出して、手早く身に着けると、今まで着ていたおじいさんの着物を、あたしに着せて、いきなり、『賊を捕まえた。』と怒鳴りながら、身動きもできないように押さえつけてしまったんです。今から考えてみると、つまり警部さんの部下のお巡りさんが、二十面相を見つけ出して、いきなり飛び掛ったと言う、お芝居をやって見せたわけですね。屋根裏部屋は薄暗いですからね。あの騒ぎの最中、顔なんか分かりっこありませんや。あたしは、どうする事もできなかったんですよ。なにしろ、主人ときたら、偉い力ですからねえ。」
中村係長は、青ざめて強張った顔で、無言のまま、激しく卓上のベルを押しました。そして、警部が顔を出すと、今朝戸山ヶ原の廃屋を包囲した警官のうち、表口、裏口の見張り番を勤めた四人の警官に、すぐ来るようにと伝えさせたのです。
やがて、入って来た四人の警官を、係長は、怖い顔で睨みつけました。
「こいつを逮捕していた時、あの家から出て行ったものはなかったかね。そいつは警官の服装をしていたかもしれないのだ。誰か見かけなかったかね。」
その問いに応じて、一人の警官が答えました。
「警官ならば一人出て行きましたよ。賊が捕まったから早く二階へ行けと、怒鳴っておいて、僕らが慌てて階段の方へ駆け出すのと反対に、その男は外へ走っていきました。」
「なぜ、それを今まで黙っているんだ。第一、君はその男の顔を見なかったのかね。いくら警官の制服を着ていたからって、顔を見れば、偽者かどうかすぐ分かるはずじゃないか。」
係長の額には、静脈が恐ろしく膨れ上がっています。
「それが、顔を見る暇がなかったんです。風のように走ってきて、風のように飛び出していったものですから。しかし、僕はちょっと不審に思ったので、君はどこへ行くんだ、と声をかけました。するとその男は、電話だよ、係長の言いつけで電話を掛けに行くんだよ、と叫びながら、走っていってしまいました。
電話ならば、これまで例がないこともないので、僕はそれ以上疑いませんでした。それに、賊が、捕まってしまったのですから、駆け出していった警官の事なんか忘れてしまって、ついご報告しなかったのですよ。」
聞いてみれば、無理のない話しでした。無理がないだけに、賊の計画が、実に機敏に、しかも用意周到に行われた事を、驚かないではいられませんでした。
もう、疑うところはありません。ここに立っている野蛮人みたいな、醜い顔の男は、怪盗でもなんでもなかったのです。つまらない一人のコックに過ぎなかったのです。そのつまらないコックを捕まえるために十数名の警官が、あの大騒ぎを演じたのかと思うと、係長も四人の警官も、あまりの事に、ただ、呆然と顔を見合わせるほかはありませんでした。
回复 支持 反对

使用道具 举报

您需要登录后才可以回帖 登录 | 注~册

本版积分规则

小黑屋|手机版|咖啡日语

GMT+8, 2024-4-20 12:33

Powered by Discuz! X3.4

© 2001-2017 Comsenz Inc.

快速回复 返回顶部 返回列表