携帯なんか、嫌いだ、と私は思う。いったいぜんたい、誰がこんな不便なものを発明したのだろう。どんな場所、どんな状況にあっても、かなりな高率で受けることのできる電話なんて、恋愛―うまくいっている恋愛も、うまくいっていない恋愛も -にとっては、害悪以外のなにものでもない。
ヒトミちゃん、なに悲観的なお婆さんみたいなこと言ってるの、とマサヨさんに言われそうなことを、私はひがないちにち、考えている。タケオはもう五日も電話に出てくれない。ここ一日二日は、わたしはむしろ、タケオが電話に出てしまったらどうしようかという恐怖心をいだいている。
(川上弘美「ワンピース」『新潮』第101卷第6号新潮社による)
【問い】「私」はなぜ携帯を「不便なもの」だと思っているのか。
1. どんな場所どんな状況にあっても受けることができるから
2. うまくいっている恋愛がうまくいかなくなるから
3. いつも恋人から電話があるかどうか気にしてしまうから
4. 恋人が電話に出ないと悪いことを考えてしまうから |