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[本科专业课] 日本文學選讀 文章分享

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发表于 2010-2-10 08:52:15 | 显示全部楼层 |阅读模式
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

我以前的學習方法一般都是將歸納在電腦上輸入,然後COPY到手機裏上班等閒時隨時看看。
這次報了個本科的文學選讀,本想全部將課文輸入,但寫了段時間,要全部打完沒花費太久了。我想如果大家每個人輸入一篇匯總一下,大家就很快都可以湊成一部完整的電子學習資料了。
我完成了兩篇,貼出來供大家分享吧。
三.走れメロス
太宰治(だざいおさむ)
三.走れメロス
太宰治(だざいおさむ)
メロスは激怒(げきど)した。必ず、かの邪知暴虐(ぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスには、村の牧人(ぼくじん)である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。今日末明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里離れたこのシラクスの町にやって来た。メロスには父も、母もない。女房(にょうぼう妻(子),老婆)もない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。この妹は、村のある律儀(りちぎ)な一牧人を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近(まぢか: 临近,接近)なのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣装やら祝宴のごちそうやらを買いに、はるばる(遥々)町にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路(おおじ)をぶらぶら歩いた。メロスには竹馬の友があった。セリネンティウスである。今はこのシラクスの町で、石工(いしく)をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく会わなかったのだから、訪ねていくのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、町の様子をあやしく思った。ひっそりしている。もうすでに日も落ちて、町の暗いのはあたりまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、町全体が、やけに寂しい。のんきなメロスも、だんだん不安になってきた。道で会った若い楽をつかまえて、何かあったのか、二年前いこの町に来たときは、夜でみなが歌を歌って、町はにぎやかであったはずだが、と質問した。若い楽は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺(ろうや)に会い、今度はもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺の体を揺らすぶって
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心をもってはおりませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿様を。それから、ご自身のお世継ぎを。それから、妹様を。それから、妹様のお子様を。それから、皇后様を。それから、賢臣(けんしん)のアレキス様を。」
「驚いた。国王は乱心か。」
「いいえ。乱心ではございませぬ。人を、信ずることができぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しくはでな暮らしをしている者には、人質一人ずつ差し出すことを命じております。ご命令を拒めば、十字架にかけられて、殺されます。今日は、六人ころされました。」
聞いて、メロスは激怒した。「あきれた王だ。生かしておけぬ。」
メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ(ゆっくりと歩くさま。また、動作が鈍くてきびきびしていないさま.)王城に入っていった。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛(ほばく)された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出てきたので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問い詰めた。その王の顔は蒼白(そうはく)で、眉間のしわ(皺)は、刻み込まれたように深かった。
「町を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた(わるびれる:发怵)。
[おまえがか?]王は、憫笑(びんしょう)した。「しかたのないやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

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 楼主| 发表于 2010-2-10 08:52:46 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

「言うな!」とメロスは、いきりたって(いきりたつ[熱り立つ]:激しく怒って興奮する。)反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑っておられる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私欲の塊さ。信じては、ならぬ。」暴君は落ち着いてつぶやき、ほっとため息をついた。
「わたしだって、平和を望んでいるのだか。」
「何のための平和だ。」
「黙れ、下賎(げせん)の者。」王は、さっと顔を上げて報いた。[口では、どんな清らかなことでも言える。わしには、人のはらわた(腸)の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、はりつけになってから、泣いてわひたって聞かぬぞ。]
「ああ、王はりこう(利口)だ。うぬぼれているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟でいるのに。命ごいなど決してしない。ただ…」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落とし、瞬時ためらい、「ただ、わたしに情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えてください。たった一人の妹に、亭主をもたせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰ってきます。
「ばかな。」と暴君は、しわがれた(しわがれる:声が潤いをなくし、かすれる)声で低く笑った。「どんでもないうそを言うわい。逃した小鳥が帰ってくるというのか。」
「そうです。帰ってくるのです。」メロスは必死で言い張った。「わたしは約束を守ります。私を、三日間だけ許してください。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この町にセリネンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いていこう。私が逃してしまって、三日目の日暮れまで、ここに帰ってこなかったら、あの友人をしめ殺してください。頼む。そうしてください。」
それを聞いて王は、残虐な気持ちで、そっとほくそえんだ(ほくそえむ[ほくそ笑む]:うまくいったたことに満足して、一人ひそかに笑う)。生意気なことを言うわい。どうせ帰ってこないに決まっている。このうそつきにだまされたふりして、放してやるのもおもしろい。そうして身代わりの男を、三日めに殺しているのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代わりの男を磔刑(たっけい:はりつけの刑)に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいうやつばら(やつばら:複数の人を卑しめて言う語)にうんとみせつけてやりたいもの。
「願いを、聞いた。その身代わりを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰ってこい。遅れたら、その身代わりを、きっと殺すぞ。ちょっと遅れてくるがいい。おまえの罪は、永遠に許してやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。命が大事だったら、遅れて来い。お前のこころは、分かっているぞ。」
メロスは悔しく、じだんだ(じだんだ:足で地を何回も踏みつけること.)踏んだ。物も言いたくなくなった。
竹馬(ちくば)の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。暴君ディオニスの面前で、よき友とよき友は、二年ぶりで相会うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言でうなずき、メロスをひしと抱き締めた。友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、なわ打たれた(縄打つ:罪人をしばる)。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
メロスはその夜、一睡もせず十里の道を急ぎに急いで、村へ到着したのは、明くる日の午前、日はすでに高く昇って、村人たちは野に出て仕事を始めていた。メロスの十六の妹も、今日は兄の代わりに羊群(ようぐん)の番をしていた。よろめいて歩いてくる兄の、疲労困憊(こんぱい)の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 08:53:14 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

「なんでもない。」メロスは無理に笑おうと努めた。「町に用事を残してきた。またすぐ町に行かなければならぬ。明日、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
妹はほおを赤らめた。
「うれしいか。きれいな衣装も買ってきた。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、明日だと。」
メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、まもなく床に倒れ伏し、呼吸(いき)もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。
目が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。婿の牧人は驚き、それはいけない、こちらにはまだなんの支度もできていない、ぶどうの季節まで待ってくれ、と答えた。メロスは、待つことはできぬ、どうか明日にしてくれたまえ、と更におして頼んだ。婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夜明けまで議論を続けて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦(しんぷ)の、神々への宣誓(せんせい)が済んだころ、黒雲(くろくも/こくうん)が空をおおい、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて、車軸を流すような大雨となった。祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持ちを引き立て、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのもこらえ、陽気に歌を歌い、手をうった。メロスも、満面に喜色をたたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れはなやかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。メロスは、一生このままここにいたい、と思った。このよい人たちと生涯暮らしていきたいと願ったが、今は、自分の体で、自分のものではない。ままならぬ(思い通りにならない)ことである。メロスは、わが身にむち打ち(鞭打つ:励まし,ふりたたせる)、ついに出発を決意した。明日の日没までには、まだ十分の時がある。ちょっとひと眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。そのころには、雨も小降りになっていよう。すこしでも長くこの家にぐずぐずとまっていたかった。
メロスはほどの男にも、やはり未練の情というものはある。今宵(こよい)呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、
「おめでとう。わたしは疲れてしまったから、ちょっとごめんこうむって眠りたい。目が覚めたら、すぐに町に出かける。大切な用事があるのだ。わたしがいなくても、もうおまえには優しい亭主があるのだから、決して寂しいことはない。おまえの兄の、一番きらいなものは、人を疑うことと、それから、うそをつくことだ。おまえも、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密でも作ってはならぬ。お前に言いたいのは、それだけだ。おまえの兄は、たぶん偉い男なのだから、おまえもその誇りを持っていろ。」
花嫁は、夢見心地でうなずいた。メロスは、それから花婿の肩をたたいて、
「支度のないのはお互いさまさ。わたしの家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。ほかには、何もない。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」
花婿はもみ手(揉み手:左右の手のひらをすり合わせること)して、てれていた。メロスは笑って村人たちにも会釈して、宴席から立ち去り、羊小屋に潜り込んで、死んだように深く眠った。
目が覚めたのは明くる日の薄明のころである。メロスは跳ね起き、南無三、寝過ごしたか、いや、まだまだだいじょうぶ、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。今日はぜひとも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑ったはりつけの台に登ってやる。メロスは、ゆうゆうと身支度(みじたく:何かをするために身なりを整えること.)を始めた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。身支度はできた。さて、メロスは、ぶるんと両手を大きく振って、雨中、矢のごとく走り出た。
わたしは、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。王の奸佞(かんねいjian1ning4)邪知を打ち破るために走るのだ。走らなければならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。若いメロスは、つらかった。幾度(いくたび)か、立ち止まりそうになった。えい、えいと大声あげて自身をしかりながら走った。村を出て、野を横切り、森を潜り抜け、隣村に着いたころには、雨もやみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなってきた。メロスは額の汗をこぶしで払い。ここまで来れば大丈夫、もはや故郷への未練はない。妹たちは、きっとよい夫婦になるだろう。私には、いま、何の気がかりもないはずだ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要もない。ゆっくり歩こう、と持ちまえののんきさを取り返し、好きな小歌をいい声で歌いだした。ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達したころ、降ってわいた(降って沸く:突然起こる)災難、メロスの足は、はた、と止まった(はたと:動作が急に行われる形容)。見よ、前方の川を、昨日の豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流とうとう(滔滔)と下流に集まり、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどう(大量の水が流れ落ちる音.)と響きをあげる激流が、こっぱみじんに橋げた(橋ぐいの上に渡して板を支える材)を跳ね飛ばしていた。晴れは茫然と、立ちすくんだ。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 08:53:41 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

あちこちとながめ回し、また、声を限りに呼びたててみたが、繋舟(けいしゅう)は残らず波にさらわれて影なく、渡し守の姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上がり、海のようになっている。メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながら、ゼウスに手をあげて哀願した。
「ああ、しずめたまえ、荒れくるう流れを!時は刻々に過ぎていきます。太陽もすでに真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことができなかったら、あのよい友達が、わたしのために死ぬのです。」
濁流は、メロスの叫びをせせら笑うごとく、ますます激しくおどりくるう。波は波をのみ、巻き、あおり立て、そうして時は、刻一刻と消えていく。今はメロスも覚悟した。泳ぎきるよりほかにない。ああ、神々も照覧あれ!濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、今こそ発揮してみせる。メロスは、ざぶんと流れに飛びこみ、百匹の大蛇のようにのたうち荒れくるう波を相手に、必死の闘争を開始した。満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきとかき分けかき分け、めくらめっぽう獅子奮迅(ふんじん)の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐憫(れんびん)を垂れてくれた。押し流されつつも、みごと、対岸の樹木の幹に、すがりつくことができたのである。ありがたい、メロスは、馬のように大きな震胴いを一つして、すぐにまた先を急いだ。一刻といえども、
むだにはできない。日はすでに西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を登り、登りきって、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊がおどり出た。
「待て。」
「何をするのだ。わたしは日の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい(相手の行動をさえぎるときのかけ声)放さぬ。持ち物全部をおいていけ。」
「わたしには命のほかには何もない。その、たった一つの命でも、これから王にくれてやるのだ。」
「その命が欲しいのだ。」
「さては、王の命令で、ここでわたしを待ち伏せしていたのだな。」
飛鳥のごとく身近の一人に襲いかかり、そのこん棒を奪い取って、
「気の毒だが正義のためにだ!」と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむすきに、さっさと走って峠を下った。一気に峠を駆け降りたが、さすがに疲労し、おりから午後の灼熱(しゃくねつ)の太陽が、まともに、かっと照ってきて、メロスは幾度となくめまいを感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ二、三歩歩いて、ついに、がくりとひさを折った。立ち上がることができぬのだ。天を仰いで、悔し泣きに泣き出した。ああ、あ、濁流を泳ぎきり、山賊を三人も打ち倒し、韋駄天(いだてん)、ここまで突破(とっぱ)してきたメロスよ。真の勇者、メロスよ。今、ここで、疲れきって動けなくなるとは情けない。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならあぬ。おまえは、奇代(きだい:よにもまれなこと;不思議であること。)の不信の人間、正しく追うの思うつぼだぞ、と自分をしかってみるのだが、全身なえて、もはや芋虫(いもむし:蝶の幼虫)ほどにも前進かなわぬ。路傍の草原にごろりと寝転がった。身体疲労すれば、精神もともにやられる。もう、どうでもいいという、勇者に不似合いなふてくされた根性が、心の隅に巣くった。わたしは、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんもなかった。神も照覧、わたしは精いっぱいに努めてきたのだ。動けなくなるまで走ってきたのだ。わたしは不信の徒ではない。ああ、できることならわたしの胸を断ち割って、真紅の心臓をお目にかけたい。愛と信実の血液だけ動いているこの心臓を見せてやりたい。けれどもわたしは、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。わたしは、よくよく不幸な男だ。わたしは、きっと笑われる。私の一家も笑われう、どうでもいい。これが、わたしの定まった運命なのかもしれない。セリネンティウスよ、許してくれ。君は、いつでも私を信じた。わたしもきみを、あざむかなかった(欺く)。私たちは、本当に友と友であったのだ。一度だって、暗い疑惑の雲を、お互いに胸に宿したことはなかった。今だって、きみは私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリネンティウス、よくもわたしを信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一番誇るべき宝なのだからな。セリネンティウス、私は走ったのだ。きみを欺くつもりは、みじんもなかった。信じてくれ!私は急ぎに急いでここまで来たので。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりとぬけて一気に峠を掛け降りてきたのだ。私だから、できたのだよ。ああ、このうえ、わたしに私に望みたもうな。ほうっておいてくれ。どうでもいいのだ。私は負けたのだ。だらしがない。笑ってくれ。王はわたしに、ちょっと遅れてこい、と耳打ちした。遅れたら、身代わりを殺して、わたしを助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うまでになっている。私は、遅れていくだろう。王は、独り合点(ひとりがてん:自分だけで、よくわかったつもりになること。)して私を笑い、そうしてこともなく私を放免するだろう。そうなったら、わたしは、死ぬよりつらい、わたしは、永遠に裏切り者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。セリネンティウスよ、私も死ぬぞ。きみと一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるに違いない。いや、それも私の、独り上がりか?ああ、もういっそ、悪徳者として生き延びてやろうか。村にはわたしの家がある。羊もいる。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すようなことはしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法(じょうほう)ではなかったか。ああ、なんもかも、ばかばかしい。わたしは、醜い裏切り者だ。どうとも、かってにするがよい。やんぬるかな。――四肢(しし)を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 08:54:04 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

ふと耳に、潺潺(せんせん)、水の流れる音が聞こえた。そっと頭をもたげ(もたげる:持ち上げる。おこす。)、息を呑んで耳を澄ました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ(倒れかける。揺れ動く。)起き上がって、見ると、岩のさけめ(裂け目)から滾滾(こんこん)と、何か小さくささやきながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸いこまれるようにメロスは身をかがめた(屈める)。水を両手ですくって、一口(ひとくち)飲んだ。ほうと長いため息がでて、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労回復とともに、わずかながら希望が生まれた。義務遂行(すいこう:完成,推行)の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽(しゃよう)は赤い光を、木々の葉に投じ(とうじる:sameとうずる)、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。わたしの命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいいことは言っておられぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。命はただその一事(いちじ)だ。走れ!メロス。
私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔のささやきは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見えるものだ。メロス、おまえの恥ではない。やはり、おまえは真の勇者だ。再び立って走れるようになったではないか。ありがたい!わたしは、正義の士として死ぬことができるぞ。ああ、日が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、ゼウスよ。わたしは生まれた時から正直な勇であった。正直な勇のままにして死なせてください。
道行く人を押しのけ(押しのける:推开;战胜)、跳ね伸ばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駆け抜け、酒宴の人たちを仰天(ぎょうてん:非常吃惊)させ、犬を蹴飛ばし、小川を跳び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も速く走った。一団の旅人とさっとすれ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。「。「今頃、あの男も、はりつけにかかっているよ。」ああ、その男、その男のために私は、今こんなに走っているのだ。その男を死なせてはならない。急げ、メロス。遅れてはならぬ。愛と誠の力を、今こそ知らせてやるがよい。風体なんかは、どうでもいい。メロスは、今は、ほとんど全裸体であった。呼吸もできず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向こうに小さく、シラクスの町の塔楼(とうろう)が見える。塔楼は、夕日を受けてきらきら光っている。
「ああ、メロス様。」うめくような声が、風とともに聞こえた。」
「だれだ。」メロスは走りながら尋ねた。
「フィロストラトスでございます。あなたのお友達セリネンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの跡について走りながら叫んだ。「もう、だめでございます。無駄でございます。走るのは、やめてください。もう、あのかたをお助けになることはできません。」
「いや、まだ日は沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。お恨み申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」
「いや、まだ日は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕日ばかりを見つめていた、走るよりほかはない。
「やめてください。走るのは、やめてください。今はご自分のお命が大事です。あのかたは、あなたを信じておりました。刑場(けいじょう)に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあのかたをからかっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念をもち続けている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。まにあう、まにあわぬは問題ではないのだ、人の命も問題でないのだ。わたしは、なんだか、もっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。ついてこい!フィロストラトス。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」
言うにや及ぶ。まだ日は沈まぬ。最後の死力を尽くして、メロスは走った。メロスの頭は、空っぽだ。何一つ考えていない。ただ、訳の分からぬ大きな力に引きずられて走った。日は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も消えようとしたとき、メロスは疾風(しっぷう)のごとく刑場に突入した。まにあった。
「待て、その人を殺さしてはならぬ。メロスが帰ってきた。約束のとおり、今、帰ってきた。」と、大声で刑場の群衆に向かって叫んだつもりであったが、のどがつぶれてしわがれた声がかすかに出たばかり、群衆は、一人として彼の到着に気がつかない。すでにはりつけの柱が高々(たかだか)と立てられ、なわを打たれたセリネンティウスは、徐徐につり上げられてゆく。メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように、群衆をかき分け、かき分け。
「わたしだ、刑吏(けいり)!殺されるのは、わたしだ。メロスだ。彼を人質にしたわたしは、ここにいる!」と、かすれた声で精いっぱいに叫びながら、ついにはりつけ台に登り、つり上げられていく友の両足に、かじりついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ(漂亮,非常好)、許せ、と口々にわめいた。セリネンティウスのなわは、ほどかれたのである。
「セリネンティウス。」メロスは目に涙を浮かべて言った。「わたしを殴れ。力いっぱいにほおを殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君がもしわたしを殴ってくれなかったら、わたしはきみと抱擁する(ほうよう)資格さえないのだ。殴れ。」
セリネンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場いっぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってからやさしくほほえみ(微笑み)、
「メロス、わたしを殴れ。同じくらい音高く私のほおを殴れ。わたしはこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生まれて初めて、きみを疑った。きみがわたしを殴ってくれなければ、わたしはきみと抱擁できない。
メロスは腕にうなり(鸣声,吼声)をつけてセリネンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと(紧紧的)抱き合い、それから、うれし泣きにおいおい声でを放って泣いた。
群衆の中からも、すすり泣きの声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人のさまを、まじまじと(目不转睛,凝视)見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔を赤らめて、こう言った。
「おまえらの望みはかなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、お前の仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、完成が起こった。
「ばんざい、王様ばんざい。」
一人の少女が、緋(ひ)のマントをメロスにささげた。メロスは、まごついた。よき友は、気をきかせて(相手の意にそうように細かいところまで気を配る)教えてやった。
「メロス、きみは、真っ裸じゃないか。早くそのマントを着るがいい。このかわいい娘さんは、メロスの裸体(らたい)を、皆に見られるのが、たまらなく悔しいのだ。」
勇者は、赤く赤面した。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 10:22:44 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

另一篇
1小時只能發5次貼,這一篇我可是等了時間段才能貼上來。對於些單詞我根據自己需要有備註。
四.        沈黙
遠藤周作(えんどうしゅうさく)
******************
省略部分のあらすじ。
ポルトガルから日本に派遣されていたフェレイラ.クリストヴァン司祭(しさい)が、長崎で穴吊りの拷問(ごうもん)を受けて棄教したという知らせは、ローム教会をはじめ、ヨーロッパのキリスト教徒たちを驚かせた。
当時日本では、禁教政策が逐年(ちくねん)厳しさを加え、一六一四年には、すべてのキリスト教聖職者に対して海外追放令が出されるにいたったが、フェレイラは、日本の信徒たちを捨て去るに忍びず、追放令の網の目をくぐって、日本に残留した。彼は、信仰厚く意志強固な潜伏司祭の一人だったのである。
フェレイラ棄教の報告を信ずることのできない三人の若い司祭が、一六三八年、日本への潜入を企てて、ポルトガルを出発した。彼らは、かつてフェレイラの指導を受けた学生だったが、自身の目で旧師の実否(じっぴ)を確かめるとともに、先輩の残した信仰の火種(ひだね)を絶やさないための捨て石になるうという情熱に燃えて母国(ぼこく)をあとにしたのであった。
この三人のうち、ひとりはマカオ(澳门)で病に倒れ、、セバスチヤン.ロドリゴとフランシス.ガルペは、苦難の旅の末、日本にたどり着いた。ふたりは、長崎近郊のトモギ村を処店にして、隠れ信徒たちと接触しつつ五島にまで布教の輪を広げるが、それもつかの間、転び切支丹(キリシタン)キチジローの密告によって、必死の逃亡もかいなく奉公所の手に捕らえられ、ガルペは、三人の日本人信徒とともに海中に投じられて(とうじる)殉教する。
奉公所は、宣教師の棄教こそ切支丹撲滅の最上策と考え、あの手この手を使って心理的にロドリゴを痛めつけ、転ばせようと謀る。狱中のロドリゴの苦悩は極限に達するが、それでもなお神は沈黙を守って、救いの手をさしのべようとしない。そういうロドリゴに面前に、すでに転んで名も沢野忠庵(ちゅうあん)と改めたフェレイラが、いまやロドリゴ説得の任務を帯びて登場してきた。
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 楼主| 发表于 2010-2-10 10:23:01 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

司祭は音を振ってため息をついた。最後の裁きの刻(とき)はやがてやってくる。人は聖書の中に書かれた神秘をすべて理解することはできぬ。だが司祭は知りたかった。知り尽くしたかった。「今夜、おまえは確かに転ぶだろう。」と通辞(つうじ)は自信ありげに言った。まるで、ペトロに向かってあの人が言われたように。「今夜、鶏鳴く前に、汝三度(なんぢみたび)我を否ません(否む:いなむ)。」黎明(しののめ/れいめい)はまだ遠く鶏は鳴く時刻ではない。
おや、いびきがまた聞こえ始めた。まるでそれは風車(かさぐるま)が風で回っているようだ。尿(いばり)でぬれた床に尻をおろし、司祭はばかのように嗤った。人間とはなんと不思議なものだろう。あの高く低く唸って(うな)いる愚鈍な鼾、無知な者は死の恐怖を感じない。ああして豚のようにである。それは酒焼けがして、太ってよく食べて、健康そうなもので、そのくせ犠牲者にだけはひどく残忍な顔だろう。自分はそんな男たちをポルトガルの田舎でもよく見て知っている。この番人も、自分がこれからやる行為がどんなつらさを他人に与えるか、毛の先ほども考えぬだろう。あの人を――人間の夢のなかで最も美しいものと善いものの結晶であるあの人を殺戮した(さつりく)のもこの種の人間たちだった。
だが、自分の人生にとって最も大事なこの夜、こんな俗悪な不協和音が混じっているのが不意に腹立たしくなってきた。司祭はまるで自分の人生が愚弄されている(ぐろう)ような気がさえして、嗤うのをやめると、壁を拳(こぶし)でたたき始めた。番人たちはゲッセマニの国であの人の苦悩にまったく無関心に眠りこけていた弟子たちのように起きなかった。司祭はさらに烈しく壁を打ち始めた。
閂(かんぬき)をはずす音がする。だれかが遠くから急ぎ足でこちらに近づいて来る。
「どうしたな。どうしたな。パードル。」
通辞だった。あの獲物を弄ぶ(もてあそぶ)猫のような声で、
「怖ろしゅうなったな。ささ、もう強情(ごうじょう)を張らずともよいぞ。ただ転ぶとひと言申せばすべてが楽になる。張り詰めていた心がほれ、ゆるんで……楽に……楽に…楽になっていく。」
「私はただ、あの鼾を。」と司祭は闇のなかで答えた。
突然、通辞は驚いたように黙ったが、
「あれを鼾だと、あれをな。聞かれたか沢野殿(どの)、ペードレはあれを鼾と申しておる。」司祭はフェレイが通辞の後ろに立っているとは知らなかった。
「沢野殿、教えてやるがいい。」
ずっと昔、司祭が毎日耳にしたあのフェレイの声が小さく、哀しくやっと聞こえた。
「あれは、鼾ではない。穴吊りにかけられた信徒たちの呻いている声だ。」
年取った獣のようにフェレイラはうずくまったまま身動きもしない。通辞は通辞で閂(かんぬき)のきつく差し込んである戸に耳を当てて中の様子を長い間、うかがっている。だが、いつまで待っても何も聞こえぬのがわかると、不安そうにしわがれ声で、
「まさか死んだのではあるまいな。」舌打ち(不随心或厌烦时咂嘴)をして、「いやいや。切支丹にはデウスからもろうた命をおのが手で断つことは許されぬはずじゃった。沢野殿、あとはそちらのお役めだ。」
フェレイラは黙ったまま、うずくまって動かなかった。フェレイラのからだが亡霊のように浮かんでいる。そのからだはあまるで紙のように
薄く子どものように小さく見えた。掌(たなごころ)で握りしめることさえできそうだった。
「なあ」とかれは戸口に口を当てて、「なあ。聞いているか。」
返事がなかったので、フェレイラはもう一度、同じことばをくりかえした

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 楼主| 发表于 2010-2-10 10:23:31 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

「その壁のどこかに……わしの彫った文学が、あるはずだが。LAUDATE EUM(讃えよ、主を。)それが消えていなければ、右の壁の……そう、まん中あたりに、触れてみないか。」
だが内側からはかすかな応えもしなかった。司祭の閉じ込められた囲いの中には突き破ることのできぬ真っ黒な闇がたまっているようだった。
「ここに、わしは、おまえと同じように。」とフェレイラは一語一語くぎりながら言った。」ここに、わしはおまえと同じように閉じもめられ、その夜はほかのどんな夜よりも寒く暗く。」
司祭は司祭で壁板に頭を強く押し付けたまま、老人の告白ををぼんやりと聞いた。老人が言わなくても、その夜がどんなにまっくらだったかは、もう、知りすぎるほど知っている。それよりも彼はフェレイラの誘惑を――自分と同じようにこの闇のなかに閉じ込められたことを強調して共感をひこうとするフェレイラの誘惑に負けてはならなかった。
「わしもあの声を聞いた。穴吊りにされた人間たちのうめき声をな。」
そのことばが終わると再び鼾のような声が高く低く耳に伝わってきた。いや、もうそれは鼾のような声ではなく、穴にさかさに(逆さに)吊られた者たちの力尽きた息絶えの呻き超えだということが、司祭にも今ははっきりとわかった。
自分がこの闇のなかでしゃがんでいる間、だれかが鼻と口とから血を流しながら呻いていた。自分はそれにきがつきもせず、折もせず、笑っていたのである。そう思うと司祭の頭はもう何がなんだか分からなくなった。自分はあの声を滑稽だと思って声を出して笑いさえした。自分だけがこの夜あの人と同じように苦しんでいるのだと傲慢(ごうまん)にも信じていた。だが自分よりももっとあの人のために苦痛を受けている者がすぐそばにいたのである。(どうしてこんなばかなことが。)頭のなかで、自分のではない別の声がつぶやき続けている。(それでもおまえは司祭か。他人の苦しみを引き受ける司祭か。)主よ。なぜ、この瞬間まであなたは私をからかわれるのでかと彼は叫びたかった。
「LAUDATE TUM(讃えよ、主を。)わしはその文字を壁に彫ったはずだ。とフェレイラはくりかえしていた。「その文字が見あたらぬか。捜してくれ。」
「知っている。あなたにはそのことばを言う権利はない。」
「権利はない。確かに権利はない。私はあの声を一晩、耳にしながら、もう主を讃えることができなくなった。私が転んだのは、穴に吊られたからでない。三日間……このわしは、汚物(おぶつ)を詰め込んだ穴の中でさかさになり、しかしひと言も神を裏切ることばを言わなかったぞ。」フェイレラはまるでほえるような叫びをあげた。「わしが転んだのはな、いいか。聞きなさい。そのあとでここに入れられ耳にしたあの声に、神が何ひとつ、なさらなかったからだ。わしは必死で神に祈ったが、
「黙りなさい。」
「では、おまえは祈るがいい。あの信徒たちは今、おまえなどが知らぬ耐え難い苦痛を味わっているのだ。昨日から。さっきも、今、この時も。なぜ彼らがあそこまで苦しまねばならぬのか。それなのにおまえは何もしてやれぬ。神も何もせぬではないか。」
司祭は狂ったように首を振り、両耳に指を入れた。しかしフェレイラの声、信徒の呻き声はその耳から容赦なく伝わってきた。よしてくれ。よしてくれ。主よ、あなたは今こそ沈黙を破るべきだ
もう黙っていてはいけぬ。あなたが正であり、善さものであり、愛の存在であることを証明し、あなたが厳としていることを、この地上と人間たちに明示するためにも何かを言わねばいけない。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 10:23:55 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

マストをかすめる鳥の翼のように大きな影が心を通り過ぎた。鳥の翼は今いくつかの思い出を。信徒たちのさまざまな死を運んできた。あの時も神は黙っていた。霧雨(きりさめ)の降るでも沈黙していた。陽のまっすぐに照る庭で片目の男が殺された時も物言わなかった。しかしその時、自分はまだがまんすることができた。がまんするというよりこの怖ろしい疑問をできるだけ遠くに押しやって直視しまいとした。けれども今はもう別だ。この呻き声は今、なぜ、あなたがいつも黙っているかと訴えている。
「この中庭では今。」フェレイラは悲しそうにつぶやいた。「かわいそうな百姓が三人ぶら下げられている。いずれもおまえがここに来てから吊られたのだか。」
老人は嘘を言っているのではなかった。耳をすますと一つのように聞こえたあの呻き声が突然、別々なものになった。一つの声があるいは高くなり、低くなるのではなく、低い声と高い声は入り乱れてはいるが別の方向から流れてきた。
「わしがここで送った夜は五人が穴吊りにされておった。五つの声が風の中でもつれ合って耳に届いてくる。役人はこう言った。あまえが転べばあの者たちはすぐ穴から引き揚げ、縄も解き、薬もつけようとな。わしは答えた。あの人たちはなぜ転ばぬのかと。役人は笑って教えてくれた。彼らは幾度も転ぶと申した。だがお前が転ばぬかぎり、あの百姓(ひゃくしょう)たちを助けるわけにはいかぬと。」
「あなたは。」司祭は泣くような声で言った。「祈るべきだったのに。」
「祈ったとも。わしは祈り続けた。だが、祈りもあの男たちの苦痛を和らげはしまい。あの男たちの耳の後ろには小さくな穴があけられている。その穴と鼻と口から血が少しずつ流れ出してくる。その苦しみをわしは自分のからだで味わったから知っておる。祈りはその苦しみを和らげはしない。」司祭は憶(おぼ)えていた。西勝寺(さいしょうじ)ではじめて会ったフェレイラのこめかみにひきつつた火傷の痕のような傷口があったことをはっきり憶えていた。その傷口の褐(かつ)色の色まで今、まぶたの裏によみがえってきた。その影像を追い払うように、彼は壁に頭を打ち続けた。
「あの人たちは、地上の苦しみの代わりに永遠の悦び(よろこび)を得るでしょう。」
「ごまかしてはならぬ。」フェレイラはしずかに答えた。「お前は自分の弱さをそんな美しいことばでごまかしてはいけない。」
「私の弱さ。」司祭は首を振ったが自信がなかった。「そうじゃない。私はあの人たちの救いを信じていたからだ。」
「おまえは彼らより自分が大事なのだろう。少なくとも自分の救いがたいせつなのだろう。おまえが転ぶと言えばあの人たちは穴から引き揚げられる。苦しみから救われる。それなのにおまえは転ぼうとはせぬ。おまえは彼らのために教会を裏切ることが怖ろしいからだ。このわしのように教会の汚点となるのが怖ろしいからだ。あの真っ暗な冷たい夜、わしだって今のお前と同じだった。だが、それが愛の行為か。司祭は基督(キリスト)にならって生きよと言う。もし基督がここにいられたら。」
フェレイラは一瞬、沈黙を守った、すぐはっきりと力強く言った。
「たしかに基督は、彼らのために、転んだだろう。」
夜が少しずつ明け始めてきた。今まで闇の塊だったこの囲いにもほの白い光がかすかにさし始めた。
「基督は、人々のために、確かに転んだろう。」
「そんなことはない。」司祭は手で顔をおおって指の間から引き絞るような声を出した。「そんな.」とはない」。
「基督は転んだろう。愛のために。自分のすべてを犠牲にしても。」
「これ以上、わたしを苦しめないでくれ。去ってくれ。遠くに行ってくれ。」
司祭は大声で泣いていた。閂(かんぬき)が鈍い音を立ててはずれ、戸が開く。そして開いた戸から白い朝の光が流れ込んだ。
「さあ。」フェレイラは優しく司祭の肩に手をかけていった。「今までだれもしなかったいちばんつらい愛の行為をするのだ。」
よろめきながら司祭は足をひきずった。重い鉛の足枷(あしかせ)をつけられたように一歩一歩、歩いて行く彼をフェレイラが後ろから押す。朝方の薄明かりのなかにかれの進む廊下はどこまでもまっすぐにのびていた。そしてその突き当たりにふたりの投入と通辞とが黒い三つの人形のような立っていた。
「沢野殿、終わったかな。そうか。踏絵(ふみえ)のしたくをしてよいか。なに、御奉行(おぶぎょう)にはあとで申し上げればよい。」
通辞は抱きすくめるように両腕にかかえていた箱を床に置いて蓋を取り、中から大きな木の板を取り出した。

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 楼主| 发表于 2010-2-10 10:25:18 | 显示全部楼层
本帖最后由 xumh0916 于 2015-8-28 04:32 编辑

「おまえは今まで誰もしなかった最も大きな愛の行為をやるのだから……」ふたたびフェレイラはさきほどと同じことばを司祭の耳もとに甘くささいた。「教会の聖職者たちはおまえを裁くだろう。わしを裁いたようにおまえは彼らから追われるだろう。だが教会よりも、布教よりも、もっと大きなものがある。おまえが今やろうとするのは……。」
踏絵は今、彼の足元に会った小波(さざなみ)のように木目が走っている薄汚れた灰色の木の板にそまつな銅のメダイがはめ込んであった。それは細い腕を広げ、茨の冠をかぶった基督の醜い顔だった。黄色く混濁した目で、司祭はこの国に来てから初めて接するあの人の顔を黙って見おろした。
「さあ。」とフェレイラが言った。「勇気を出して。」
まよ。長い長い間、私は数えきれぬほど、あなたの顔を考えました。特にこの日本に来てから幾十回、私はそうしたことでしょう。トモギの山に隠れている時、海を小舟で渡った時、山中を放浪した時、あの牢舎(ろうしゃ)での夜。あなたの祈られている顔を祈るたびに考え、あなたが祝福している顔を孤独なとき思い出し、あなたが十字架を背負われた顔を捕らわれた日によみがえらせ、そしてそのお顔はわが魂に深く刻み込まれ、この世で最も美しいもの、最も高貴(こうき)なものとなって私の心に生きていました。それを、今、私はこの足で踏もうとする。
黎明のほのかな光。光はむき出しになった司祭の鶏のような首と鎖骨の浮いた肩にさした。司祭は両手で踏絵を持ち上げ、顔に近づけた。人々の多くの足に踏まれたその顔に自分の顔を押し当てたかった。踏絵のなかのあの人は多くの人間に踏まれたために摩滅(まめつ)し、凹んだまま司祭を悲しげなまなざしで見つめている。その目からはまさにひとしずく涙がこぼれそうだった。
「ああ。」と司祭は震えた。「痛い」
「ほんの形だけのことだ。形などどうでもいいことではないか。」通辞は興奮し、せいていた。「形だけ踏めばよいことだ。」
司祭は足を上げた。足に鈍い重い痛みを感じた。
それは形だけのことではなかった。自分は今、自分の生涯のなかで最も美しいと思ってきたもの、最も聖(きよ)らかと信じたもの、最も人間の理想と夢に満たされたものを踏む。この足の痛み。その時、踏むがいいと銅版のあの人は司祭に向かって言った。踏むがいい。おまえの足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はpまえたちに踏まれるため、この世に生まれ、おまえたちの痛さをわかつため十字架を背負ったのだ。こうして司祭が踏絵に足をかけた時、朝がきた。鶏が遠くで鳴いた。
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棄教したロドリゴは、フェレイラと同じ道を歩んで、切支丹弾圧の協力者になってゆく。町の人々は、「転びのポウロ」とあだ名して嘲笑した。罪の意識のため、鋭い爪の先で胸をかきむしられるような思いにかられる瞬間もあったが、奇妙に神はロドリゴの心中に生きていた。ロドリゴを棄教に導いた張本人の井上築後守(いのうえちくごのかみ)が、「この日本国は、切支丹の教えは向かぬ国だ。切支丹の教えは、けっして根を下ろさぬ。パードルは、けっして負けたのではない。この日本と申す泥沼(どろぬま)に敗(やぶ)れたのだ。」と言うのに対して、彼は「いいえ、私が闘ったのは、自分の心にある切支丹の教えでございました。」と答えた。かれはこう考える。自分は、教会や聖職者を裏切りはしたか、神を裏切ってはいない。聖職者たちが教えている神と私の主は別なものだ。――
やがて江戸送りとなったロドリゴは、名も岡田三衛門(おかださんえもん)と改め、日本人の妻をめとって(娶る)、小石川の切支丹屋敷に住んだが、六十四歳で病を得て、この地に没した。
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发表于 2010-2-10 10:31:20 | 显示全部楼层
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发表于 2010-2-10 12:11:01 | 显示全部楼层
收藏!辛苦楼主!
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发表于 2010-2-25 11:45:20 | 显示全部楼层
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发表于 2010-2-25 13:37:47 | 显示全部楼层
LZ,好用功啊
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发表于 2010-2-26 09:48:13 | 显示全部楼层
收藏收藏,楼主真的挺用功的!
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