M:I:3じみてますが、日本人の脳には英語を学習するマグネシウム爆弾が組み込まれています。
言い古されている話ですが、「英語を文章の順番通りに把握せず、英単語をひとつひとつ日本語の語順に置き換えて意味をとろうとする」メカニズムのことです。
このマグネシウム爆弾を解除しなければ聴き取る能力はつきません。音声は逆戻りしませんからね。
たとえば、
Microsoft have once again delayed the worldwide release of office 2007
.という文は、
マイクロソフトは、またしても、遅らした、世界発売、オフィス2007
と頭の中にインプットして理解しなければなりません。
決 してこれをMicrosoft, once again, of office 2007, the worldwide release, have delayed.と語順を変えてから「マイクロソフトはまたしてもオフィス2007の世界発売を遅らせた」と頭にインプットしてはいけません。
こういう回りくどいインプットをしていては、意味を理解したころには、音声はとっくに先まですすんでいってしまいます。
ご存知のとおり、この現象は日本語の語順になれてしまったから起こる現象です。
さてこれを解除するには、残念ながら電気ショックで一瞬というわけにはいきません。解除にはちょっと時間がかかります。もっとも電気ショックで死んでしまうよりはマシと思いますので我慢してください。
この解除するためには、速読・多読するしかないのです。前に「読」という力が「聴く力」を短期でつけるための補助能力と書いたのはこのためです。
この速読・多読もただヤミクモにやればいいというものではありません。また巷に氾濫する速読・多読本に従ってやってればいいというわけではありません。
な ぜなら十人いたら十通りの速読・多読法があるからです。それにもかかわらず、いままではみんな一律に同じマテリアルで速読・多読をしていたから、非常に時 間を費やすことになり、いやけがさしてしまったのです。しかし、2007年現在は世に氾濫する速読・多読本を吹っ飛ばすやり方があるのです。
「聴く能力」をつけるためにはどのくらいの量の速読・多読をしなければならないかはだれもが疑問に思うところです。
「CNNを聞き流せばよい」とおっしゃる大前先生は留学時代に絶対に20,000ページはくだらない文章を読んでいたに違いないです。だからそういうただCNNを流すだけで英語が聞こえるようになるといった勉強方法でも大丈夫なのです。
でも、そういった経験のない人は「CNNを聞き流していればそのうち聴きとれるようになる」という言葉を信じてはいけないのですよ。
もっとも「そのうち」という言葉は具体的な時間を表していないのでウソではないのですが。100年だって「そのうち」ですからね。それで具体的統計はないのですが、感覚からいうと5,000ページが目安かと思います。
た だ、これはなかなか速読・多読のための材料が手に入らなかった時代の話です。私が英語を集中的に学習した十数年前だと、タイムとかビジネスウィークだとか Japan timeだとかペーパーバックとか手当たり次第に読むしかありませんでした。だいたいみんな同じものを読んでいたんですね。
でも2007年の今は状況が違います。1,000ページも読めば、仕事で充分に活用できるレベルの「聴く能力」を身につけられるツールがあなたの目の前にあるのです。
何、目の前になんてない?よく見てくださいよ。そう、それそれ、あなたの網膜に今映ってるやつですよ!
はい、わかりましたね。
インターネットこそがあなたの強い味方、リーサルウェポンになるのです。そもそも仕事で英語を使わなければならない状況があるので勉強しているのなら、とりあえず仕事で使えるレベルにもっていけばいいわけですよ。
あなたが金融関係に勤めているのであれば金融関係の英文を、あなたが精密機械メーカーの設計者であればその関連の文献を集中的に読んでいけばいいのです。
だれもあなたに向かって突然「米国の妊娠中絶問題に関する共和党の見解についてどう思うか」なんて聞いてきませんからね。大丈夫。世界はまだ広い。
リソースが少なければ、選択と集中でカバーする。ビジネスも英語学習も同じです。
具体的なやり方は次に書きたいと思います。
早速グーグるなりヤフーなりして、自分の仕事に関係する英文記事をインターネットで検索しましょう。
はい、でてきました。
ちなみに検索結果の総件数はどのくらいでした?一万件はざっとありますよね。
いくら読んでも読み尽きることはないので安心してください。
情報は日々増えてく一方ですし。でもその検索結果をいきなりプリントアウトしてはいけませんよ。
転職会社のバナーとか「あなたの結婚度数は?」とかいろいろついてきますからね。全部印刷するのはインクの無駄です。一旦ワードなどにコピペしてください。ここでワードにコピペすると、行間を自分のスタイルにあわせて指定できるので、なにかと便利です。
みなさん、洋書に単語の意味に書き込むとき行間がせまいために、小さい字で書いて、結局後から自分で読んでもわからないという経験ありませんか?特に字を大きく書く人にとって行間指定は助かりますよね。
さて、一般には行間に単語の意味を書きたい人は(理由は後で述べますが、単語の意味を書くのはあまり薦めません)行間を広めにとって、そうでない人は行間をせまくとって紙量を節約してください。
ほら、こうやればあなただけのあなたにあった速読・多読の材料ができてしまうのです。
これなら必要経費はなんと紙とインク代だけ、ずいぶん安上がりなものですね。
これが私のいう「速読・多読は人それぞれに違う」とはこういうところなんです。「でもそんなのたいしたことないじゃん!」と思う方、これがもし英語ではなく、中国語や、ロシア語、アラビア語だったらどうなるか想像してみてください。
英語以外の教材はただでさえ割高で入手が困難ですからね。このやり方で勉強すれば、英語以外の言語の学習ならさらにぐっとコストが抑えられ、語学学習は「いつでも、どこでも、どんな言語でも」できるようになるんですね。
WEB2.0時代おそるべし。
みんながこれをやりだしてしまうと巷の速読用教材など売れ行きはガタ落ちでしょう。
出版関係者のみなさんすみません。
さて、いよいよ速読・多読を始めましょう。と思いましたが、もうひとつ忘れていました。どういう辞書を使うかについて説明します。
本屋にいけば山ほど英語の辞書は売っています。
電子辞書も家電屋さんにいけばたくさん売っています。
ではどういう辞書が一番いいのでしょうか。
速読のためには英英辞書を使えとか書いてある本もありますけど、この際そういうアカデミックな話は無視します。考え方自体は否定はしませんが。
だってあなたはいち早く英語を身につけたいのですものね。
電子辞書は引くのに時間がかからないので重宝しますが、学習の段階ではある理由(後述)で避けたほうがいいと思います。紙の辞書にしましょう。
私くらいの年寄りになってくると指がすべって薄いページをめくるのがしんどいですが、そこは我慢我慢。
コンサイスとかプログレッシブのようなハンディタイプの方が使い勝手はいいです。(何?語彙数が少ない?あなたは60,000語収録と80,000語収録の差がわかります??)
コンパクトな英和辞書で充分、充分。
ただし、一個だけ注意してほしいのは、その辞書の発行年あるいは改訂年です。なるべく新しいものをつかってほしいということです。
ついこの間スペイン語の勉強をしているときに、ほとんど辞書に単語がのっていないなあと思い、辞書を確認したところ昭和45年発行でした。これではインターネット時代の単語ははいっているはずないですよね。(おい大学書林、君のことだぞ。さっさと改訂せーよ。)
まあ、英語学習であればそういう古い辞書が大手振って本屋に陳列しているということはないでしょうけど、英語以外の外国語を学ぶときは注意しましょう。
さて、いざ起爆装置解除に入りましょう。
まず英語を聴き取れる人の最低限の読むスピードは150語/分です。A4一枚30行書いてある文章を約2分で読めるというレベルです。
いきなりこのスピードをだすと単に単語が網膜を通るだけですから、初めは100語/分くらいを目標にしてください。(辞書を引いている時間はさしひいてです。もちろん。)
そして、自分自身に「後戻り読み」はしないで常に単語を前から順番に頭にインプットしていく感覚を持ちながら進めるのが大事です。
日本語でいう「てにをは」が抜けた文章を頭にいれていくという感覚になればしめたものです。「ワタシ、キライ、コイズミ、スル、サンパイ、ヤスクニ、テキ、チュウゴク」って感じですね。
これだって意味はちゃんと通じるでしょ。日本語を解体していく感じを楽しんでください。
この作業は脳にストレスが掛かります。でもこのストレスが非常に頭にいいのですよ。
速読・多読を続けて、ストレスを与え続けていると、頭の中が広がった感じがして普段の仕事でもおもわぬ発想ができるようになるのです。不思議なことに。
この脳へのストレスについては別のところで書いておきたいと思います。
それと大事になってくるのは辞書の利用の仕方です。わからない単語があったらすぐに引いてはいけません
これは不思議なことですが、辞書で単語をひけばひくほど、本文に何が書いてあったのかがわからなくなるんですね。
つまり単語の意味ひとつひとつはわかるんだけれども、文章全体の意味がわからなくなるんですよ。
その一方で辞書なしで読んでいると、初めはなんとなく文章の大意が追えるのですが、だんだん知らない単語が累積していって最後はやっぱり意味がわからなくなります。
このジレンマのどこに自分にあったバランスポイントを置くかがポイントです。
だから辞書は引かなきゃいけないけど、全部の単語を引いてもいけないのです。
私の場合は以下のパターンでやっています。
それは「その単語が2度目にでたときに辞書を引く」ことです。知らない単語を片っ端から引いていると残りの生涯二度とおめにかかれない単語を一生懸命調べるという悲劇もあります。だれもそんな無駄なことしたくないですよね。辞書を引くときの手順は、こうです。
1.わからない単語に線を引く。これは辞書を引いた後、本文にもどるときに「あれ?どこに書いてあった単語かな?」ときょろきょろ探す手間をはぶくためです。
2. 辞書で調べた言葉は辞書にも線を引く。こうすると、次にもう一度引いたときに「お、これは前にも調べた単語だ。きっと頻度の高い単語だからおぼえなきゃな らないな。」と頭の隅にひっかかるからです。この機能が私の知っている限り今の電子辞書にはないので紙の辞書を薦めています。
3.調べた単語の意味を本文に書かないで次の文章を読む。調べた単語の訳を本文に書き込んでおきたいのが人情です。これをあえてしないのがミソ。そもそも、1000ページ近い文書を次から次と読んでいるあなたが読み返す時間があるかどうか、わかりません。
|