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发表于 2011-2-11 15:00:46
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本帖最后由 reiuka2 于 2011-2-11 15:01 编辑
Aは入学当初、あまり目立つ生徒ではありませんでした。一部の男の子のあいだでは陰で一目置かれた存在だったようですが、そんなことはまだ知らず、私がAを気に掛けるようになったのは一学期の中間テスト以降でした。一学期の理科は生物分野でしたが、Aはそのテストで百点をとりました。満点は学年で一人だけでしたので、このクラスだけでなく他のクラスでも、Aが満点をとったことを公表しました。このクラスでは「すごい!」と賞賛の声が上がりましたが、他の、あるクラスでは賞賛の中から気になる声が耳に届きました。「あいつはナマで実験してるもんな」と吐き捨てるようにつぶやいたのはAと同じ小学校に通っていたCくんでした。その言葉が妙に気になった私は放課後、Cくんを化学準備室に呼び出しました。Cくんは「自分が先生にばらしたことは内緒にしておいてほしい」と前置きし、Aが小学校高学年になった頃から時々、犬や猫を自宅に拾ってきては、自分の考えた不思議な道具、A自身は『処刑マシーン』と呼んでいたそうですが、それらで虐待を繰り返し、最後には無惨に殺していたと教えてくれました。最初は伏し目がちに話していたCくんなのに、最後には「あいつさあ、それをデジカメで撮って、自分のウェブサイトで公開してるんだぜえ」とまるで自分の武勇伝を語るかのように、嬉々とした表情を浮かべていたのを見て、ぞっとしたことを思い出します。CくんはAのウェブサイトのアドレスも教えてくれました。すぐに職員室のパソコンからアクセスしたのですが、『天才博士研究室』という名のそのページには「現在、ニューマシーン開発中。乞うご期待!」と縁起の悪そうなフォントで書かれているだけでした。入学前に小学校から送られた調査書には、Aの動向についてまったくそんなことは書かれていませんでした。念のためAの小学校六年時の担任に確認の電話をかけたところ「そんな話、聞いたこともない。Aくんはまじめで成績も良くてとてもいい生徒でした」と軽く返されてしまいました。それ以降、私はAに注意を払うようになったのですが、学校でのAはいたってまじめ、生活態度も学習態度も何の問題もなく、むしろ模範生のようでもあります。いつしか私はAに気を留めることも少なくなっていました。季節柄、ナイーブになる人たちが増え、そちらで手一杯だったということもあるのですが……。
六月の半ばでした。放課後、化学室で三年生の実験準備をしていると、Aが一人でやってきました。Aは興味深そうに実験器具を見ながら「先生の専門は何?」と訊ねてきました。「化学よ」と答えると、「電機についてはどう?」と訊ね返されました。物理も一通りやっていましたが、Aの父親の職業を思い出し「それはAくんのお父さんの方が詳しいんじゃないの?」と答えました。するといきなり、Aは私の目の前に財布を差し出しました。ファスナーのついた合皮の黒い小銭入れで、見る限りなんの変哲もない、百均で売っているようなものでした。何だろうと思っていると、Aはニヤニヤしながら「いいもの入ってるから開けてみて」と言いました。きっといたずらだ。私は警戒しながらその財布を手に取りました。見た目より少し重かったので、中に何か入っているのだろうと思いました。蛙や蜘蛛ごとじゃ驚かないぞ、などと気合いを入れてファスナーのつまみに手をかけた瞬間でした。指先に強い衝撃が走ったのです。静電気かと思いました。しかし六月、その日は雨でした。呆然と、指先と財布を交互に見つめる私に、Aは「すごいでしょ、完成するのに三ヶ月以上もかかっちゃったよ」と得意げな顔で言い、「それにしても、思ったより効果なかったな」と軽く舌打ちしました。耳を疑いました。「私を実験台にしたの?」と訊ねると、悪びれた様子もなく「だってさ、化学や物理の実験してる人って、ちょっとくらい薬品飲んだり、感電しても大丈夫っていうじゃん」と相変わらずニヤニヤした顔で答えました。Cくんの話を思いました。ウェブサイトに「ニューマシーン開発中」と書いてあったことを思い出しました。「そんな危険なもの作ってどうするの?何に使うつもりなの?動物殺したりするの?」指先に残るしびれを感じながら、私は強い口調でAを咎めました。Aは外国人があきれるようなポーズをとると「何かりかりしてんの?これのすごさをわからないなんでがっかりだな。もういいよ、別のところに出してみるから」と言い、私の手から財布を取り、出て行きました。
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