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楼主 |
发表于 2011-4-21 13:09:44
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そんな僕を母さんは、親戚や近所の人たちに「優しい」と自慢する。「優しい」って何だろう。ボランティア活動でもしているのならともかく、僕は「優しい」と言われるようなことをした覚えがない。褒めるところがないから、仕方なく「優しい」という言葉でごまかしているのだ。それならむしろ、褒めてくれない方がいい。僕はビリになるのは嫌だけど、一番になれないことを僻んだりもしていないのだから。
物心ついた頃から、ひたすら褒められながら育った僕は、自分は頭がいいし、スポーツもできると思っていた。でも、田舎とはいえ、それなりに人数の多い小学校に通っていると、それは母さんのただの願望であって、実際の僕はがんばったところで中の上くらいにしかなれないことに気付いてた。
それでも母さんは、僕が小学生のあいだは、僕がもらったたった一枚の賞状を額に入れて居間に飾り、家に訪れる人たち全員に自慢し続けた。三年生のときに書道コンクールで三等賞をもらったときの賞状だ。確か、平仮名で「せんきょ」と書いたと思う。その担当の先生に『素直な字ですね』と褒められたのを憶えてる。
さすがに中学生になると、その自慢はしなくなったけれど、代わりにやたらと「優しい」と連発するようになったのだ。でも、それ以上に嫌だったのは、母さんが学校にちょくちょく手紙を書くことだった。気付いたのは、一学期の中間テストの後だ。
担当の森口はホームルームで、総合点の上位三名を発表した。見るからに勉強ができそうな三人だった。僕は拍手をしながら、すごいなとは思ったけれど、くやしいとは思わなかった。そういうレベルじゃなかったからだ。近所に住む美月ちゃんが二位だったから、夕食のときに母さんにそれを教えてあげると、興味なさそうに「あら、そうなの」と言っただけだった。なのに、だ。
数日後、僕は偶然、居間のゴミ箱に、手紙の書き損じが捨てられているのを見つけた。 「個々の人格が重視されるようになってきたなか、時代の流れに逆らい、成績上位者を子供たちのまえで発表する教師がいることに、不安を感じてなりません」
森口に対するクレームの手紙だと、すぐにわかった。さっそく僕はそれを持って、台所にいた母さんに文句を言った。
「母さん、学校にこんな手紙書かないでよ。勉強できないことを、僕が僻んでるみたいじないか」
すると、母さんは優しくこう言った。
「まあ、直くん、何てことを言うの。僻むだなんて。母さんは、順位をつけることが悪いと言ってるんじゃないのよ。テストの順位だけを発表したことに抗議をしているの。テストの点がいいだけが特別なの?人間として優れてるの?そうじゃないでしょ?でも、先生は優しい子に順位をつけてくれる?掃除をがんばった子に順位をつけてくれる?それをみんなの前でちゃんと発表してくれる?母さんが言いたいのはそういうことなの」
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