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楼主 |
发表于 2011-5-10 13:59:58
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人間の失敗作?失敗作、失敗作……。待って、渡辺くん。置いていかないで!
逃げ出したいのに、足がすくんで動かない。頭の中では渡辺くんの声がぐるぐると響き渡っている。目の前が真っ暗になっていった。
ああ、日暮れの時間なのか。
チャイムの音でハッとした。暗闇の中に数時間も立ち尽くしていたような気がするけれど、実際には、渡辺くんが帰ってから五分くらいしか経っていない。僕の頭の中では、渡辺くんの去り際の言葉が、まだぐるぐると駆け回っている。
きっと、最初から殺すつもりだったんだ。僕は利用されたんだ。でも、いったい何に?
――みんなに言いふらしていいよ。
そのために?もし、僕がK札に全部本当のことを話せば、渡辺くんは逮捕されるはずだ。そんなことをしてほしいのかな。殺人者になりたいのかな。いや、渡辺くんならそれもあり得そうだ。でも、僕は無罪になるの、かな。それよりも、K札に渡辺くんが嘘をついたらどうしよう。 何も知らない、それどころか、僕に誘われてやったなんて言われたら、おしまいだ。
俯くと、ポシェットのわたうさちゃんと目が合った。森口の子がこれをねだっているのを見たのは、僕じゃないか。僕は仰向けに倒れている子供の首からポシェットをはずし、思い切り遠くに投げ捨てた。
これで大丈夫?僕が疑われることはない?このまま逃げて黙っていれば、K札につかまらない?いや、ダメだ。感電死なんかしていたら、K札は犯人を捜すに決まってる。そうなると渡辺くんがつかまるのは時間の問題だ。そこで、やっぱり渡辺くんが裏切ったら……。
そうだ、プールに落ちたことにすればいい。勝手にプールに落ちた。そうだ!そうだ!勝手に落ちたのだ。
迷ってる場合じゃない。僕は顔を背けながら、子供を両手で抱え上げた。思っていたより思い。なんとかプールサイドぎりぎりのところまで辿り着いたけれど、気を抜くと、僕まで落ちてしまいそうだ。枯葉が浮かぶ汚れた水面に足を取られないよう、ゆっくりと両手を伸ばす。
ダメだ、なるべく音をたてないようにしなければ。
膝を曲げ、バランスをとりながらしゃがんだ。と同時に、子供のからだがほんのわずかにピクリと動く。そして、ゆっくりと目が開いた。僕は思わず、ヒッと声を上げ、子供をブールに落としていまいそうになってしまった。
生きてる!生きてる!生きてる!
ホッとして、泣き笑いしてしまいそうになる。
――人間の失敗作だよ。
すっかり気がゆるんでしまった僕の頭の中に、去り際の渡辺くんの言葉が、再びよみがえった。僕を完全に見下ろしたあの態度。やっぱり殺人者になろうとしていたんだ。僕を利用して。でも、子供は生きている。渡辺くんの計画は失敗だ。
失敗!失敗!失敗したくせに!それに気付けてないなんて、バカじゃないの?
徐々に意識を取り戻した森口の子と目が合ったのと、僕が手を離したのとは、どちらが早かったのだろう。僕は振り返らずにプールから出ていった。もう、足は震えなかった。
僕は、渡辺が失敗したことに、成功したんだ。
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