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楼主 |
发表于 2011-6-2 09:33:55
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髪を刈り落とすと、次は爪を切った。そして、からだ中の垢を落とすために、シャワーを浴びた。タオルに石鹸を何度も付け直し、繰り返しこすり続ける。そのたびに、消しゴムのカスのような垢がボロボロとはがれ落ちていった。生の証は排水溝へと流れ込んでいく。
どうして、死なないんだ?
生の証をすべてからだから引き離したにもかかわらず、まだ息をしていることに、僕は戸惑いを覚えた。ふと、数ヶ月前に見たビデオを思い出す。
ああ、そうか、ゾンビになったんだ。殺されても殺されても死なないゾンビ。おまけに、僕の血は生物兵器だ。それなら、町中の人たちをゾンビにしていけば、おもしろいかな。
コンビニの棚に陳列された商品を、一つずつ触っていく。僕の手が触れたところには、赤い血がべったりとついている。
生物武器、完成だ。
僕はスタンプでも押していくように、おにぎりや弁当やペットボトルの蓋を触っていった。
みんな、みんな、僕と同じ恐怖を味わえばいい。
肩を叩かれた。アルバイトっぽい茶髪の店員だ。ものすごくイヤそうな目で僕の右手を見ている。僕も自分の手を見た。ポケットに忍ばせておいた剃刀の刃で切った手のひらからは、真っ赤な血が溢れ出している。
血、血、血、赤く流れる血……。
今までなんでもなかったのに、傷口を眺めているうちに、じんじんと脈打つような痛みを感じ始める。僕は、とっさに売る物の包帯の包みを開け、手に巻いた。
迎えにきてくれたのは母さんだった。母さんはコンビニの店員と店長に、何度も何度も頭を下げて謝った。そして、僕の血がついた商品をすべて買い取った。
帰り道、太陽はまだ低い位置にあるにもかかわらず、日差しは刺すように強かった。まぶしさに目を細め、顔に浮かんだ汗をぬぐいながらあるいているうちに、死の恐怖も生の証も、どうでもいいことのように思えてきた。包帯をぐるぐる巻きにした手がうずくし、おなかもすいていた。
とても、とても、疲れた……。
隣を歩いている母さんをそっと見る。母さんは化粧をしていなかった。服も昨日と同じ。参観日のとき、母さんは自分が歳をとっていることを気にしていたけれど、僕はそんなことまったく気にならなかった。母さんは誰よりも綺麗にしていたからだ。それなのに、化粧をせずに外に出た母さんを見たのは初めだ。両手に二つずつコンビニのビニール袋を持っているから、鼻の頭に浮いた汗をぬぐうこともできない。僕はこぼれ落ちそうになる涙を必死でこらえた。
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