奈々子は、ぐっと胸をそらし、平然とした様子で、自分から階段の方へと、歩き出したのだった……。
二階のドアの一つを開いて、大男が促《うなが》すままに、奈々子は中へ入った。
バタン、とドアが閉り、カチャッ、と鍵《かぎ》のかかる音。
――奈々子は、部屋の中を見回した。
まあ、予想していたほどひどい所でもなかった。
たぶんこの家自体が、古い農家で、ここは主寝室だろう。割合に広くて、古い木のベッドも、日本のダブルベッドぐらいある。
木の表面は、いかにも古びているが、一応清潔な感じではあった。
奈々子は、ベッドに腰かけると、まだ少し頭がクラクラして、ゆっくりと横になった。
「――参ったな」
と、呟《つぶや》いて、天井を見上げる。
いくら美貴を守るためとはいえ、代りにさらわれるとは思わなかった。――特別手当をもらわなきゃ。
あの神原の話では、やはり、三枝は生きている。そして、ペーターの言っていた通り、何かよからぬ密輸に係り合っていたらしい。
ただ、奈々子の気になったのは、美貴も仲間だったかのような、神原の言葉だ。
もちろん、奈々子を美貴と間違えるような男だ。勘違い、ってことも、充分にあり得るが……。
それにしても……。あのドイツ人たちも、密輸に関係しているんだろう。
ヨーロッパのように国と国が地続きの場所では、密輸といっても、そう難しくあるまい。
日本からヨーロッパへ来て、奈々子は奈々子なりに、「外国」というものの考え方が、全然違うんだ、ということに気付いていたのである。
さて――問題は、人違いと分った時である。
殺されるのは嫌いだ。まあ、好きな人間はいないだろうが。
「何か、武器がいるわ」
と、奈々子は呟いた。
あの二人の大男でも、不意を襲えばやっつけられるようなもの。――何かないかしら?
奈々子は、起き上って、部屋の中をあちこち捜し始めた……。
「――どう?」
と、ルミ子は訊《き》いた。
ハンスが首を振る。
「そう……」
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译文:
奈奈子挺起胸,很坦然的样子,自己向楼梯的方向走去。
大块头的男人打开2楼的一扇门,催促着奈奈子进入其中。
乓当,门关上了。咔的一声,锁得声音响起。
——奈奈子在屋子里巡视了下。
算了,和预想的环境比起来不算过分。
大概这家本身就是老的农户家,这里是寝室吧。比较宽敞,陈旧的床也是日本的双人床。
木头的表面真是很陈旧了,但是感觉到很干净。
奈奈子坐在床上,脑袋还有些晕晕的,干脆横躺在床上了。
“惨了.”
奈奈子嘟囔着望向天花板。
虽说怎样都为了保护美贵,但被当替代品抓来还是不想的。——没给特殊津贴的话。
从那个神原的话里得知果然三枝还活着。而且通过皮特说的,还和走私丑闻有关联。
只是,奈奈子比较担心的是神原的意思美贵好像也是他们的同伙。
当然,这是把美贵和奈奈子搞混了的男人。认错人这事,也有充分的可能。
即使这样。。。那个德国人他们也是和走私有关的吧。
欧洲那样的国与国之间交界处,走私也不会很难吧。
从日本来欧洲,奈奈子意识到和自己所认为的外国原来完全不同。
那——问题是他们知道认错人的时候。
奈奈子可不愿意被杀掉。还没有爱人呢。
“有什么武器没啊。”
奈奈子嘟囔着。
在那俩个大汉不注意的时候能袭击干掉他们的东西。——什么都没有吗?
奈奈子站起身来,在屋子里东一头西一头的找起来。
“——如何?”
留美子问到。
汉斯摇了摇头。
“这样啊。。。、。” |