「さ、見て回って、出ましょうか」
ルミ子が、パッと明るく言って立ち上がった。いかにも十代の若々しさである。
「野田さんが苛々しながら待ってるわね」
「もっとのんびり見て、待たせちゃおうか」
と、言って、ルミ子は笑った。
奈々子がアパートに帰ったのは、夜の十時過ぎだった。
もちろん野田やルミ子と、大いに楽しく食事をして(当然おごらせて)来たのである。
アルコールも少々入って、欠伸しながら、タクシーを降り、奈々子は、アパートの方へと歩いて行った。
お風呂へ入らないで寝ちゃおかな。でも、入らないと、却ってすっきりしないかも...。
全くの―全くの不意を打ちだった。
いきなり後ろから手がのびて来て、パッと奈々子の口をふさぐ。
声を上げる前に、両手でその手を外そうとしてー目の前にナイフが光った。
後ろから組みついた誰かが、左手で奈々子の口をふさぎ、右手に握ったナイフを奈々子の胸に突き立てようとしたのだ。
ナイフが奈々子の胸をめがけてーあわや、と思った時、カチッ、と金属の当る音がした。
奈々子の手に下げていたハンドバッグが、ちょうど胸のところへ来ていて、ナイフがそのバッグを刺したのだ。
もちろん、革のバッグぐらい、簡単に貫き通してしまうだろうが、中のコンパクトー一応そんな物を持っているーに刃の先が当ったのだった。
舌打ちする音。-一呼吸あった。
奈々子も、立ち直っていた。殺されてたまるか!
肘で、思い切り、後ろをついてやった。これがみごとに決った。
口をふさいだ手が外れる。奈々子は、振り向きざま、バックを力一杯振り回した。手応えがあった。
相手がよろける。-そして、諦めるのも早かった。
相手がどっと駆け出して行った。
奈々子は、追いかけてやろうかとも思ったが...。しかし、やはりそこまでは、できなかった。
何かが足下にバラバラと落ちる。
ハンドバッグの中身だ。よく見ると、ハンドバッグが、スパッと裂けてしまっている。
もしかしたら、バッグでなく、私の胸が切り裂かれていたかもしれない...。そう思うと、急に奈々子はガタガタ震えだしてしまった
..。
译文
“好了,看完了出去吗?”
留美子突然站起爽朗的说到。一派朝气蓬勃。
“野田先生一定等着急了。”
“要更悠闲的去见他,让他等着吧。”
留美子笑着说。
奈奈子回公寓时,已经夜里十点多了。
当然是和野田、留美子一起享用了晚餐(当然是有人请客)去了。
稍稍喝了点酒,一边打着哈欠,一边下了出租车,奈奈子往公寓的方向走去。
准备不洗澡就睡觉。但是,不洗澡的话,又觉得不痛快...
完全,完全的出乎意料。
突然从后面伸出只手,一下捂住了奈奈子的嘴。
在发出声音之前,奈奈子俩只手极力摆脱那只手,——眼前刀光一闪。
从后面抱住奈奈子的人左手捂着奈奈子的嘴,右手握着刀朝奈奈子的胸口刺去。
刀锋眼看就挨到奈奈子的胸口时,咔的一声金属撞击声响起。
奈奈子手里提的提包正好放在胸口,刀子刺进了提包里。
当然,皮革是很容易被贯穿的,但是包里装的化妆盒等东西挡住了刀锋。
咂嘴的声音。——稍微调整了下呼吸。
奈奈子恢复了神智,怎么能容忍被杀!?
奈奈子用肘狠狠地朝后面拐去,这招彻底决定了胜负。
捂在奈奈子嘴上的手松开了。奈奈子一回头,用力把提包轮了过去。有了打中的感觉。
对手一个趔趄。——而且,早就放弃了。
对手一下子跑了出去。
奈奈子想追过去,但是,果然是办不到了。
有什么东西掉落在脚边。
原来是提包内的东西。低头看时,提包上裂开一刀被切开的大口子。
如果包里没有东西的话,我的胸口就会被刺开了。想到这,奈奈子浑身打了个寒颤。。 |