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楼主 |
发表于 2011-6-21 12:17:56
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しかし、その直後、すごいチャンスが訪れた。「全国中高生科学工作展」だ。教室の後ろに掲示された案内には、全国大会の審査員名とその肩書きが書かれていた。六名の審査員の中には、SF作家や有名なタレント知事もいたが、自分の目に留まったのは、別の人物だった。瀬口喜和、名前なんてどうでもいい、肩書きだ。K大学理工学部電子工学科教授。それは、母親がいるであろう大学だった。
発明品が入賞し、この教授の目に留まれば、それが母親の耳にまで届かないだろうか。彼女は名前を聞いて驚かないだろうか。彼女の与えた知識で息子が賞をもらったことを喜ばないだろうか。そして、一言お祝いの言葉をかけてやろうと思わないだろうか。
必死だった。もともと集中力はある方だが、一つのことに、あんなにも夢中になって取り組んだのは、生まれて初めてだった。まず、財布をグレードアップさせるため、解除機能をつけた。中高生を対象にしたコンクールは作品の質よりも、実はレポートの方が重視されるのではないかと、見せ方も考えた。「びっくり財布」など、ただのいたずらグッズではないか。これではダメだ。そうだ、防犯グッズということにしよう。図面と解説は正確に、しかし、動機や反省は中学生らしく。ワープロより手書きの方がいいだろう。できあがったものは、中学生一年生にしては完璧だったと思う。
しかし、わずかな障害が発生した。応募には、指導員の署名が必要だったのだが、担任が捺印することに難色を示したのだ。ウェブサイトのことをまだひきずっているのか、とあきれたが、「僕は正義のためにこれを作った。でも、先生はこれを危険なものだと言う。どっちが正しいか専門家に判断してもらおうよ」と挑発したら、なんとか捺印してくれた。
結果は計画通りだった。「びっくり財布」は、夏休みに名古屋の科学博物館で開催された全国大会に出展され、三位に当たる特別賞をもらうことができたのだ。一位になれず少し残念な気もしたが、結果的に、三位をこれほど嬉しいと思ったことはない。入賞者には、それぞれ審査員が席順に一人ずつコメントしていったのだが、自分のコメントをしてくれたのは、例の瀬口という教授だったのだから。そして、なんと彼は、母親を大学に連れ戻しに来た人物でもあったのだ。
「渡辺修哉くん、すごいね君は。僕にはこんなもの作れないよ。レポートも読ませてもらったけれど、中学校で習わないようなことをたくさん応用しているね。学校の先生に教えてもらったの?」
「いえ。……母に、です」
「ほう、お母さんに。君はとても恵まれた環境にいるんだね。これからも、がんばって、もっともっとおもしろいものを発明してください」
母親のことを確実に知っている、自分をフルネームで呼んでくれたこの教授に、すべての望みを託した。どうか、同じ職場にいるであろう母親に、今日のことを話してくれ。話さなくていい、入賞者の載った冊子を彼女の目に付くところへ置いてくれるだけでもいい。
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