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村上春樹:ダンス ダンス ダンス

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发表于 2005-1-10 18:38:13 | 显示全部楼层 |阅读模式
  ダンス・ダンス・ダンス1

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よくいるかホテルの夢を見る。
夢の中で僕はそこに含まれている。つまり、ある種の継続的状況として僕はそこに含まれている。夢は明らかにそういう継続性を提示している。夢の中ではいるかホテルの形は歪められている。とても細長いのだ。あまりに細長いので、それはホテルというよりは屋根のついた長い橋みたいにみえる。その橋は太古から宇宙の終局まで細長く延びている。そして僕はそこに含まれている。そこでは誰かが涙を流している。僕の為に涙を流しているのだ。
ホテルそのものが僕を含んでいる。僕はその鼓動や温もりをはっきりと感じることができる。僕は、夢の中では、そのホテルの一部である。
そういう夢だ。
目が覚める。ここはどこだ?と僕は考える。考えるだけではなく実際に口に出して自分自身にそう問いかける。 「ここはどこだ?」と。でもそれは無意味な質問だ。問いかけるまでもなく、答えは始めからわかっている。ここは僕の人生なのだ。僕の生活。僕という現実存在の付属物。特に認めた覚えもないのにいつの間にか僕の属性として存在するようになったいくつかの事柄、事物、状況。隣に女が眠っていることもある。でも大抵は一人。部屋の真向かいを走る高速道路のうなりと、枕もとのグラス(底に五ミリほどウィスキーが残っている)と、敵意をもったーーいや、それは単なる無関心さなんだろうかーー塵だらけの朝の光。時には雨が降っている。雨が降っていると、僕はそのままベッドの中でぼんやりとしている。グラスにウィスキーが残っていれば、それを飲む。そして軒から落ちる雨垂れを眺めながら、いるかホテルのことを考える。手脚をゆっくりと伸ばしてみる。そして自分がただの自分であり、何処にも含まれてなんかいないことを確かめる。僕は何処にも含まれてはいない。でも夢の中の感触を僕はまだ覚えている。そこでは僕が手を伸ばそうとすれば、それに呼応して僕を含んだ全体像が動く。水を利用した細かい仕掛けのからくりのように、ひとつひとつゆっくりと注意深く、段階ごとにほんの微かな音を立てながら、それは順番に反応していく。僕が耳を澄ませれば、それが進行していく方向を聞き取ることができる。僕は耳を澄ます。そして誰かの静かな啜り泣きの声を聞き取る。とても静かな声。闇の奥の何処かから聞こえてくる啜り泣き。誰かが僕のために泣いているのだ。
いるかホテルは現実に存在するホテルだ。札幌の街のあまりぱっとしない一角にある。僕は何年か前にそこに一週間ばかり泊まったことがある。いや、きちんと思いだそう。はっきりとさせておこう。あれは何年前だ?四年前。いや、正確に言うと四年半前だ。僕はその時はまだ二十代だった。僕はある女の子と二人でそのホテルに泊まった。彼女がそのホテルを選んだ。そのホテルに泊まろうと彼女が言ったのだ。そのホテルに泊まらなくては、と彼女は言ったのだ。もし彼女が要求しなかったら、僕はいるかホテルになんてまず泊まらなかっただろうと思う。
それは小さなみすぼらしいホテルで、僕らのほかには泊まり客の姿は殆ど見あたらなかった。僕がその一週間の滞在中にロビーで見掛けた客は二人か三人かそれくらいだったし、それだって泊まり客なのかどうかわかったものではない。でもフロントのボードに掛かった鍵がところどころ欠けていたから、僕らの他にも泊まり客はいたはずだと思う。それほど多くないにしても、少しくらいは。幾らなんでも仮にも大都市の一角にホテルの看板を掲げ、職業別電話帳にだってちゃんと番号が出ているのだ、まったく客が来ないということは常識的に考えてありえない。しかしもし僕らの他に客がいたとしても、彼らはおそろしく物静かでシャイな人々だったはずだ。僕らは彼らの姿を殆ど見掛けなかったし、その物音も聞かなかったし、気配も感じなかった。ボードの上の鍵の配置だけが毎日少しずつ変わった。彼らは息をひそめたぶん薄い影のように壁を這って廊下を行き来していたのだろう。ときどきかたかたかたかたというエレベーターの走行音が遠慮がちに響いたが、その音が止むと、沈黙は前よりかえって重くなったように感じられた。
とにかく不思議なホテルだった。
それは僕に生物進化の行き止まりのようなものを連想させた。遺伝子的後退。間違えた方向に進んだまま後戻りできなくなった奇形生物。進化のベクトルが消滅して、歴史の薄明の中にあてもなく立ちすくんでいる孤児的生物。時の溺れ谷。それは誰のせいでもない。誰が悪いというわけでもないし、誰にそれが救えるというものでもない。まずだいいちに彼らはそこにホテルを作るべきではなかったのだ。あやまちはまずそこから始まっていた。第一歩から、全てが間違っていた。最初のボタンがかけ違えられ、それにあわせて全てが 致命的に混乱していた。混乱を正そうとする試みはあらたな細かいーー洗練されているとは言えない、ただ細かいだけだーー混乱を生み出した。そしてその結果、何もかもが少しずつ歪んで見えた。そこにある何かをじっと見ようとすると、ごく自然に首が何度か傾いてしまうのだ。そのような歪み。傾けるといってもほんの僅かの角度だから特に実害はないし、べつに不自然さを感じるほどでもないし、ずっとそこにいればそれに馴れてしまうのかもしれないが、やはりいささか気になる歪み(それにそんなものに馴れてしまったら、今度はまともな世界を見る時に首を傾けることにもなりかねない)。
いるかホテルはそういうホテルだった。そしてそれがまともじゃないということはーーそのホテルが混乱に混乱を重ねた末に飽和点に達して、やがて遠からぬ将来に時の大渦にすっぽりと飲み込まれていくであろうことはーー誰が見たって一目瞭然だった。哀しげなホテルだった。十二月の雨に濡れた三本脚の撙郡い税Г筏菠坤盲俊¥猡沥恧蟀Г筏菠圣邾匹毪胜螭剖篱gには他にもいっぱいあるだろうが、いるかポテルはそういうのともまた少し違う。いるかホテルはもっと概念的に哀しげなのだ。だから余計に哀しい。
言うまでもないことだとは思うけれど、そんなホテルをえらんでわざわざ泊まろうなどという人間は、何も知らずに間違えてやってくる客を除けば、そんなにはいない。
いるかホテルというのは正式な名称ではない。正式にはそれは「ドルフィン・ホテル」というのだが、その名前と実体から受ける印象がかなり掛け離れているので(ドルフィン・ホテルという名前は僕にエーゲ海あたりの砂糖菓子のように真っ白なリゾート・ホテルを連想させる)、僕が個人的にそう呼んでいるだけだ。入り口にはいるかを描いたなかなか立派なレリーフがかかっている。看板もかかっている。でももし看板がかかっていなければ、それは全然ホテルには見えないだろうと思う。看板があってさえ、なかなかそうは見えないくらいなのだ。何に見えるかというと、それはまるでうらぶれた博物館のように見える。特殊な展示物を見るために、特殊な好奇心を抱いた人々がひっそりやってくるような、そんな特殊な博物館。
でももし人がいるかホテルを眼前にしてそのような印象を抱いたとしても、それは決して的外れな想像力の飛翔ではない。実を言えば、いるかボテルの一部は博物館を兼ねているのである。
誰がそんなホテルに泊まるだろう?その一部がわけのわからない博物館になっているようなホテルに?暗い廊下の奥に羊の剥製やら、埃だらけの毛皮やら、黴臭い資料やら、茶色く変色した古い写真やらが積みかさねてあるようなホテルに。果たされざる想いが乾いた泥のように隅々にしっかりとこびりついているようなホテルに?
全ての家具は色褪せ、全てのテーブルは軋み、全ての鍵は上手く閉まらなかった。廊下は磨り減り、電球は暗かった。洗面台の栓は歪んでいて、水がうまくたまらなかった。太ったメイド(彼女の脚は象を連想させた)は廊下を歩きながらコホコホと不吉な咳をした。いつもカウンターにいる支配人は哀しげな目をした中年の男で、指が二本なかった。この男は見るからに、何をやってもまずうまくは行かないというタイプだった。そういうタイプのまさに標本みたいな男だった。まるで淡い青インクの溶液に一日漬けておいてから引っ張り上げたみたいに、彼の存在の隅から隅までに失敗と敗退と挫折の影が染みついていた。ガラスの箱に入れて、学校の理科室に置いておきたくなるような男だった。「何をやっても上手くいかない男」という札をつけて。彼を見ているだけで大抵の人は多少の差こそあれ惨めな気持ちになったし、腹を立てる者も少なからずいた。ある種の人はそういうタイプの惨めな人間を見ているだけで意味もなく無性に腹が立ってくるのだ。誰がそんなホテルに泊まるだろう?
でも僕らは泊まった。我々はここに泊まるべきなのよ、と彼女は言った。そしてそのあとで彼女はいなくなってしまった。僕ひとりを残して消えてしまったのだ。彼女が行ってしまったことを僕に教えてくれたのは羊男だった。彼女は行ってしまったんだよ、と羊男は僕に教えてくれた。羊男は知っていたのだ。彼女が行かなくてはならなかったのだということを。僕にも今ではわかる。彼女の目的は僕をそこに導くことにあったからだ。それは呙韦瑜Δ胜猡韦坤盲俊¥ⅳ郡猊猊毳昆婴¥诉_するように。僕は雨垂れを見ながら、そのことを考える。呙Wがいるかホテルの夢を見るようになった時に、まず思い浮かべたのは彼女のことだった。彼女が僕をまた求めているのだ、と僕はふと思った。そうでなければ、どうしてこんなに何度も同じ夢を見るのだ?
  彼女、僕は彼女の名前さえ知らないのだ。彼女と一緒に何カ月か暮らしたというのに。僕は彼女について実質的には何ひとつ知らないのだ。僕が知っているのは彼女がある高級コールガール・クラブに入っているということだけだった。クラブは会員制で、身元の確かなきちんとした客しか相手にしなかった。ハイ・クラスの娼婦だ。彼女はそれ以外にもいくつかの仕事を持っていた。普段の昼間は小さな出版社でアルバイトの校正係をやっていたし、パートタイムに耳専門のモデルもやっていた。要するに彼女はとても忙しい生活を送っていたわけだ。彼女にはもちろん名前がないわけではなかった。実際の話彼女は幾つも名前を持っていた。でもそれと同時に彼女には名前がなかった。彼女の持ち物ーー殆どないも同然だったがーーのどれにも名前は入っていなかった。定期券も、免許証も、クレジット・カードも持っていなかった。小さな手帳をひとつ持っていたが、そこには訳のわからない暗号がボールペンでぐしゃぐしゃと書きこんであるだけだった。彼女の存在にはとりかかりというものがなかった。娼婦は名前を持っているかもしれない。でも彼女たちは名前を持たぬ世界で生きているのだ。
  とにかく僕は彼女について殆ど何も知らない。どこで生まれたのかも、歳が幾つなのかも。誕生日だって知らない。学歴もしらない。家族がいるかどうかさえ知らない。何も知らない。彼女は雨ふりのようにどこかから来て、どこかに消えてしまったのだ。ただ記憶だけを残して。
  でも今僕は僕のまわりで彼女の記憶が再びある種の現実性を帯び始めていることを感じる。僕はこう感じるのだ。彼女はいるかホテルという状況を通して僕を呼んでいる、と。そう、彼女は今また再び僕を求めているのだ。そして僕はいるかホテルにもう一度含まれることによってのみ、彼女ともう一度巡り合えるのだ。そしておそらく彼女がそこで僕の為に涙を流しているのだ。
僕は雨垂れを見ながら自分が何かに含まれるということについて考えてみる。そして誰かが僕の為に泣いていることについて考えてみる。それはひどくひどく遠い世界のことのように感じられる。まるで月か何かそういう所の出来事のように感じられる。結局のところ、それは夢なのだ。手をどれだけ長くのばしても、どれだけ早く走っても、僕はそこにたどりつけないような気がする。
どうして誰かが僕の為に涙を流したりするんだ?
  いや、それでも、彼女は僕を求めているのだ。あのいるかホテルのどこかで。そして僕もやはり心のどこかでそれを望んでいるのだ。あの場所に含まれることを。あの奇妙で致命的な場所に含まれることを。
  でもいるかホテルに戻るのは簡単なことではない。電話で部屋を予約し、飛行機に仱盲圃悉诵肖堡肖饯欷墙Kわりというものではないのだ。それはホテルであると同時にひとつの状況なのだ。それはホテルという形態をとった状況なのだ。いるかホテルに戻ることは、過去の影ともう一度相対することを意味しているのだ。それを考えると、僕はたまらなく陰惨な想いに襲われた。そう、僕はこの四年のあいだ、その冷ややかでうす暗い影を捨て去ることに全力を傾けていたのだ。そしているかホテルに戻るということは、僕がこの四年間静かにこつこつとためこんできた全てをあらいざらい放棄し捨て去ることなのだ。
もちろん僕はそれほど大したものを手に入れたわけではない。その殆どはどう考えてみても暫定的で便宜的ながらくただった。でも僕は僕なりにベストを尽し、そのようなガラクタをうまく組みあわせて現実と自分をコネクトし、僕なりのささやかな価値観に基づいた新しい生活を築きあげてきたのだ。もう一度もとのがらんどうに戻れということなのか?窓を開けてなにもかもを放り出せというのか?
  でも結局のところ、全てはそこから始まるのだ。僕にはそれがわかっていた。そこからしか始まらないのだ。
  僕はベッドに寝転び、天井を眺めながら、深い溜め息をついた。あきらめろ、と僕は思った。何を考えても無駄だ。それはお前の力を越えたものなんだ。お前が何を考えたところでそこからしか始まらないんだよ。決まってるんだ、ちゃんと。
  僕のことについて語ろう。
  自己紹介。
  昔、学校でよくやった。クラスが新しくなったとき、順番に教室の前に出て、みんなの前で自分についていろいろと喋る。僕はあれが本当に苦手だった。いや、苦手というだけではない。僕はそのような行為の中に何の意味を見出すこともできなかったのだ。僕が僕自身についていったい何を知っているだろう?僕が僕の意識を通して捉えている僕は本当の僕なのだろうか?ちょうどテープレコーダーに吹き込んだ声が自分の声に聞こえないように、僕が捉えている僕自身の像は、歪んで認識され都合良くつくりかえられた像なのではないだろうか?……僕はいつもそんな風に考えていた。自己紹介をする度に、人前で自分について語らなくてはならない度に、僕はまるで成績表を勝手に書き直しているような気分になった。いつも不安でしかたなかった。だからそういう時、僕はなるべく解釈や意味づけの必要のない客観的事実だけを語るように心掛けたが(僕は犬を飼っています。水泳が好きです。嫌いな食べ物はチーズです。等々)、それでもなんだか架空の人間についての架空の事実を語っているような気がしたものだった。そしてそんな気持ちで他のみんなの話を聞いていると、彼らもまた彼ら自身とはべつの誰かの話をしているように僕には感じられた。我々はみんな架空の世界で架空の空気を吸って生きていた。
  でもとにかく、何か喋ろう。自分について何か喋ることから全てが始まる。それがまず第一歩なのだ。正しいか正しくないかは、あとでまた判断すればいい。僕自身が判断してもいいし、別の誰かが判断してもいい。いずれにせよ、今は語るべき時なのだ。そして僕も語ることを覚えなくてはならない。僕は今ではチーズが好きだ。いつからかはわからないが、いつの間にか自然に好きになった。飼っていた犬は僕が中学校に上がった年に雨に打たれて肺炎で死んだ。それ以来犬は一匹も飼っていない。泳ぐのは今でも好きだ。
  終わり。
  でも物事はそんなに簡単には終わらない。人が何かを人生に求めるとき(求めない人間がいるだろうか?)人生はもっと多くのデータを彼に要求する。明確な図形を描くための、より多くの点が要求される。そうしないことには、何の回答も出てこない。
  でーたフソクノタメ、カイトウフカノウ。トリケシきいヲオシテクダサイ。
  取消キイを押す。画面が白くなる。教室中の人間が僕に物を投げ始める。もっと喋れ。もっと自分のことを喋れ、と。教師は眉をしかめている。僕は言葉を失って、教壇の上に立ちすくんでいる。
  喋ろう。そうしないことには、何も始まらない。それもできるだけ長く。正しいか正しくないかはあとでまた考えればいい。
時々、女が僕の部屋に泊まりにきた。そして朝食を一緒に食べ、会社に出勤していった。彼女にもやはり名前はない。でも彼女に名前がないのは、ただ単に彼女がこの物語の主要人物ではないからだ。彼女はすぐにその存在を消してしまう。だから混乱を避けるために僕は彼女に名前を与えない。しかしだからといって、僕が彼女の存在を軽んじていると考えてほしくない。僕は彼女のことがとても好きだったし、いなくなってしまった今でもその気持ちは変わっていない。
  僕と彼女はいわば友達だった。少なくとも彼女は、僕にとって唯一友人と呼びうる可能性を持っていた人間である。彼女には僕の他にきちんとした恋人がいる。彼女は電話局に勤めていて、コンピュータで電話料金を計算している。職場について詳しいことは僕も訊かなかったし、彼女もとくには話さなかったが、だいたいそういう感じの仕事だったと思う。個人の電話番号ごとに料金を集計して請求書を作るとか、その手のことだ。だから毎月郵便受けの中に電話料金の請求書が入っているのを見る度に、僕はまるで個人的な手紙を受け取ったような気がしたものだった。
  彼女はそういうこととは関係なく、僕と寝ていた。月に二回か、あるいは三回か、それくらい。彼女は僕のことを月世界人か何かだと考えていた。「ねえ、あなたまだ月に戻らないの?」と彼女はくすくす笑いながら言う。ベッドの中で、裸で、体をくっつけあいながら。彼女は乳房を僕の脇腹に押し付けている。僕らは夜明け前の時間によくそんなふうに話をしたものだった。高速道路の音がずっと切れ目なく続いている。ラジオからは単調なヒューマン・リーグの唄が聞こえている。ヒューマン・リーグ。馬鹿気た名前だ。なんだってこんな無意味な名前をつけるのだろう?昔の人間はバンドにもっとまともな節度のある名前をつけたものだ。インペリアルズ、シュプリームズ、フラミンゴズ、ファルコンズ、インプレッションズ、ドアーズ、フォア・シーズンズ、ビーチ・ボーイズ。
  僕がそう言うと彼女は笑う。そして僕のことを変わっていると言う。僕の何処が変わっているのか僕にはわからない。僕は自分自身を非常にまともな考え方をする非常にまともな人間だと思っている。ヒューマン・リーグ。
  「あなたといるのって好きよ」と彼女は言う。「ときどきね、すごくあなたに会いたくなるの。会社で働いているときとかね」
  「うん」と僕は言う。
  「ときどき」と彼女は言葉を強調して言う。そして三十秒くらい間を置く。ヒューマン
・リーグの唄が終わり、知らないバンドの曲になる。「それが問題点なのよ、あなたの」と彼女は続ける。「私はあなたとふたりでこうしているのって大好きなんだけど、毎日朝から晩までずっと一緒にいたいとは思えないのよ。どういうわけか」
  「うん」と僕は言う。
  「あなたといると気づまりだとかそういうんじゃないのよ。ただ一緒にいるとね、時々空気がすうっと薄くなってくるような気がするのよ。まるで月にいるみたいに」
  「これは小さな一歩だけれどーー」
  「ねえ、これ冗談じゃないのよ」と彼女は体を起こしてぼくの顔をじっとのぞきこんだ。    
「私、あなたの為に言ってるのよ。誰かあなたの為に何か言ってくれる人、他にいる?どう?そういうこと言ってくれる人、他にいる?」
  「いない」と僕は正直に言う。一人もいない。
  彼女はまた横になって、乳房をやさしく僕の脇腹につける。僕は手のひらで彼女の背中をそっと撫でる。
  「とにかく時々、月にいるみたいに空気が薄くなるのよ、あなたと一緒にいると」
  「月の空気は薄くない」と僕は指摘する。「月面には空気は全く存在しないんだ。だからーー」
  「薄いのよ」と彼女は小さな声で言う。彼女が僕の発言を無視したのか、あるいは全然耳に入らなかったのかは、僕にはわからない。でも彼女の声の小ささが僕を緊張させる。どうしてかはわからないけれど、そこには僕を緊張させる何かがふくまれている。「ときどきすうっと薄くなるのよ。そして私とはぜんぜん違う空気をあなたが吸っているんだと思うの。そう認識するの」
  「データが不足しているんだ」と僕は言う。
  「私があなたについて何も知らないということかしら、それ?」
  「僕自身も自分についてよくわかってないんだ」と僕は言う。「本当にそうなんだよ。別に哲学的な意味で言ってるんじゃない。もっと実際的な意味で言ってるんだ。全体的にデータが不足している」
「でもあなたもう三十三でしょう?」と彼女は言う。彼女は二十六だ。
  「三十四」と僕は訂正する。「三十四歳と二カ月」
  彼女は首を振る。そしてベッドを出て、窓のところに行き、カーテンを開ける。窓の外には高速道路が見える。道路の上には骨のように白い午前六時の月が浮かんでいる。彼女は僕のパジャマを着ている。「月に戻りなさい、君」と彼女はその月を指し示して言う。  
  「寒いだろう?」と僕は言う。「寒いって、月のこと?」
  「違うよ。今の君のことだよ」と僕は言う。
  今は二月なのだ。彼女は窓際に立って白い息を吐いている。僕がそう言うと、彼女はやっと寒さに気づいたようだった。
  彼女は急いでベッドに戻る。僕は彼女を抱き締める。そのパジャマはすごくひやりとしている。彼女は鼻先を僕の首に押し什ける。その鼻先もとても冷たい。「あなたのこと好きよ」と彼女は言う。
  僕は何か言おうと思うのだけれど、上手く言葉が出てこない。僕は彼女に好意を抱いている。こうしてふたりでベッドの中にいると、とても楽しく時を過ごすことができる。僕は彼女の体を温めたり、髪をそっと撫でていたりするのが好きなのだ。彼女の小さな寝息を聞いたり、朝になって彼女を会社に送りだしたり、彼女が計算したーーと僕が信じているーー電話料金の請求書を受け取ったり、僕の大きなパジャマを彼女が着ているのを見たりするのが好きなのだ。でもそういうことって、いざとなると一言で上手く表現できない。愛しているというのではもちろんないし、好きというのでもない。
  何と言えばいいのだろう?
  でもとにかく僕には何も言えない。言葉というものがまったく浮かんでこない。そして僕が何も言わないことで彼女が傷ついていることが感じられる。彼女はそれを僕に感じさせまいとしているのだが、でも僕には感じられる。柔らかな皮膚の上から彼女の背中の骨の形を辿りながら、僕はそれを感じるのだ。とてもはっきりと。僕らはしばらく何も言わずに抱き合って、題もわからない唄を聴いている。彼女は僕の下腹にそっと手のひらをあてる。「月世界の女の人と結婚して立派な月世界人の子供を作りなさい」と彼女は優しく言う。「それがいちばんよ」
  開け放しになった窓からは月が見えた。僕は彼女を抱いたまま、その肩越しにじっと月を見ていた。時折何かひどく重い物を積んだ長距離トラックが崩壊し始めた氷山のような不吉な音を立てて高速道路を走り抜けていった。いったい何を撙螭扦い毪韦坤恧Αⅳ葍Wは思った。
  「朝御飯、何がある?」と彼女は僕に尋ねる。「特に変わったものはないね。いつもとだいたい同じだよ。ハムと卵とトーストと昨日の昼に作ったポテト・サラダ、そしてコーヒー。君のためにミルクを温めてカフェ・オ・レを作る」と僕は言う。
  「素敵」と彼女は言って微笑む。「ハムェッグを作って、コーヒーをいれて、トーストを焼いてくれる?」
「もちろん。喜んで」と僕は言う。
  「私のいちばん好きなことって何だと思う?」
  「正直言って見当がつかない」
 「私がいちばん好きな事、何かというとね」と彼女は僕の目を見ながら言う。「冬の寒い朝に嫌だな、起きたくないなと思いつつ、コーヒーの香りと、ハムエッグの焼けるじゅうじゅういう匂いと、トースターの切れるパチンという音に我慢しきれずに、思い切ってさっとベッドを抜け出すことなの」
  「よろしい。やってみよう」と僕は笑って言う。
  僕は変わった人間なんかじゃない。
  本当にそう思う。
  僕は平均的な人間だとは言えないかもしれないが、でも変わった人間ではない。僕は僕なりにしごくまともな人間なのだ。とてもストレートだ。矢のごとくストレートだ。僕は僕としてごく必然的に、ごく自然に存在している。それはもう自明の事実なので、他人が僕という存在をどう捉えたとしても僕はそれほど気にはしない。他人が僕をどのように見なそうと、それは僕には関係のない問題だった。それは僕の問題というよりはむしろ彼らの問題なのだ。
  ある種の人間は僕を実際以上に愚鈍だと考えるし、ある種の人間は僕を実際以上に計算高いと考える。でもそれはどうでもいいことだ。それに「実際以上に」という表現は、僕の捉えた僕自身の像に比べてということに過ぎないのだ。彼らにとっての僕はあるいは現実的に愚鈍であり、あるいは計算高い。それは別にどちらでもいい。たいした問題ではない。世の中には誤解というものはない。考え方の違いがあるだけだ。それが僕の考え方だ。    
  しかしそれとは別に、その一方で、僕の中のそのまともさに引かれる人間がいる。とても数少なくはあるけれど、でも確かに存在する。彼ら/彼女たち、と僕とは、まるで宇宙の暗い空間に浮かぶ二つの遊星のようにごく自然に引き合い、そして離れていく。彼らは僕のところにやってきて、僕と関わり、そしてある日去っていく。彼らは僕の友人になり、恋人になり、妻にもなる。ある場合には対立する存在にもなる。でもいずれにせよ、みんな僕のもとを去っていく。彼らはあきらめ、あるいは絶望し、あるいは沈黙し(蛇口をひねってももう何も出てこない)、そして去っていく。僕の部屋には二つドアがついている。一つが入り口で、一つが出口だ。互換性はない。入り口からは出られないし、出口からは入れない。それは決まっているのだ。人々は入り口から入ってきて、出口から出ていく。いろんな入り方があり、いろんな出方がある。しかしいずれにせよ、みんな出ていく。あるものは新しい可能性を試すために出ていったし、あるものは時間を節約するために出ていった。あるものは死んだ。残った人間は一人もいない。部屋の中には誰もいない。僕がいるだけだ。そして僕は彼らの不在をいつも認識している。去っていった人々を。彼らの口にした言葉や、彼らの息づかいや、彼らの口ずさんだ唄が、部屋のあちこちの隅に塵のように漂っているのが見える。
  彼らが見た僕の像はおそらくかなり正確なものだったのではないかという気がする。だからこそ彼らはみんな僕のところにまっすぐやってきて、そしてやがて去っていったのだ。彼らは僕の中にまともさを認め、僕がそのまともさを維持していこうとする僕なりの諏gさーーという以外の表現を思いつけないのだーーを認めた。彼らは僕に対して何かを言おうとしたり、心を開こうとしたりした。彼らの殆どは心優しい人々だった。でも僕には彼らに何かを与えることはできなかった。もし与えることができたとしても、それだけでは足りなかった。僕はいつも彼らに出来る限りのものを与えようと努力した。できるだけのことは全部やった。僕も彼らに何かを求めようとした。でも結局は上手くいかなかった。  そして彼らは去っていった。
それはもちろん辛いことだった。
  でももっと辛いのは、彼らが入ってきた時よりずっと哀し気に部屋を出ていくことだった。彼らが体の中の何かを一段階磨り減らせて出ていくことだった。僕にはそれがわかった。変な話だけれど、僕よりは彼らの方がより多く磨り減っているように見えた。どうしてだろう?何故いつも僕が残されるのだ?何故だろう?そして何故いつも僕の手の中に磨り減った誰かの影が残されているのだ?何故だろう。わからないな。
  データが不足しているのだ。
  だからいつも解答がでてこないのだ。
  何かが欠けているのだ。
  ある日仕事の打ち合わせから戻ってみると、郵便受けに絵はがきが入っていた。宇宙飛行士が宇宙服を着て月面を歩いている写真の絵はがきだった。差しだし人の名前は書いてなかったけれど、それが誰からのはがきなのかは一目で理解できた。
  「もう私たちは会わないほうがいいだろうと思います」と彼女は書いていた。「私はたぶん近いうちに地球人と結婚することになると思うから」
  ドアの閉まる音が聞こえる。
  でーたフソクノタメ、カイトウフカノウ。トリケシきいヲオシテクダサイ。
  画面が白くなる。
  いつまでこんなことが続くのだろう?と僕は思った。僕はもう三十四だ。いつまでこれが続くのだ?
  僕は哀しくはなかった。だってそれは明らかに僕の責任なのだ。彼女が僕のもとを離れていくのは当然のことだし、それは始めからわかっていたのだ。彼女にもわかっていたし、僕にもわかっていた。でも我々はささやかな奇跡を求めてもいたのだ。ちょっとしたきっかけで根本的な転換がやってくるかもしれないというようなことを。しかしもちろんそんなものはやってはこなかった。そして彼女は出ていった。彼女がいなくなったことで僕は寂しい気持ちになったが、それは以前にも経験したことのある寂しさだった。そして自分がその寂しさを上手くやりすごせるということもわかっていた。
  僕は馴れつつあるのだ。
  そう思うと僕は嫌な気持ちになった。内臓からひ氦嗓盲驻辘冉gり出されて喉もとまで上がってくるような気がした。僕は洗面所の鏡の前に立って、これが俺自身だと思った。これがお前だ。お前が自分自身を磨り減らせてきたのだ。お前が思っているよりはずっと多くお前は磨り減ってきたんだ、と。僕の顔はいつもよりずっと汚く、ずっと老けて見えた。僕は石鹸で丁寧に顔を洗い、ローションを肌に磨り込み、それからまた手をゆっくり洗い、新しいタオルで手と顔をよく拭いた。そしてキッチンに行って缶ビールを飲みながら冷蔵庫の整理をした。萎びたトマトを捨て、ビールをきちんと並べ、容器をうつしかえ、買い物のリストを作った。
  明け方に僕は一人でぼんやりと月を眺めながら、これがいつまで続くんだろうと思った。僕はやがてまたどこかで別の女にめぐりあうだろう。我々は遊星のように自然に引き合うのだ。そして我々はまたむなしく奇跡を期待し、時を食み、心を磨り減らせ、別れていくのだ。
  それがいつまでつづくのだ?
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 楼主| 发表于 2005-1-10 21:01:03 | 显示全部楼层
大家要不要我把中文的也发上去?
还是就日语原文的就可以了?(我猜很多人都有翻译版的吧)
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发表于 2005-1-10 21:12:04 | 显示全部楼层
如果是林少华的话就发吧
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 楼主| 发表于 2005-1-10 21:43:06 | 显示全部楼层
ps:不清楚是不是林少华的版本。大家就将就一下吧,如果都不愿意的话,下次就只发日文版好了。

舞 舞 舞

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1


   1983年3月
   我总是梦见海豚宾馆。
   而且总是栖身其中。就是说,我是作为某种持续状态栖身其中的。梦境显然提示了
这种持续性。海豚宾馆在梦中呈畸形,细细长长。由于过细过长,看起来更像是个带有
顶棚的长桥。桥的这一端始于太古,另一端绵绵伸向宇宙的终极。我便是在这里栖身。
有人在此流泪,为我流泪。
   旅馆本身包容着我。我可以明显地感觉出它的心跳和体温。梦中的我,已融为旅馆
的一部分。
   便是这样的梦。
   终于醒来。这里是哪里?我想。不仅想,而且出声自问。“这里是哪里?”这话问
得当然毫无意义。无须问,答案早已一清二楚:这里是我的人生,是我的生活,是我这
一现实存在的附属物。若干事项、事物和状况——其实我并未予以认可,然而它们却在
不知不觉之中作为我的属性而与我相安共处。旁边有时躺着一个女子,但基本上是我一
个人。房间的正对面是一条高速公路,隆隆不息;枕边放一只杯(杯底剩有5厘米高的
威士忌):此外便是怀有敌意——或许单纯是一种冷漠——的充满尘埃的晨光。时而有
雨。每逢下雨,我索性卧床不起,愣愣发呆。若杯里有威士忌,便径自饮下。接下去只
管眼望檐前飘零的雨滴,围绕这海豚宾馆冥思苦索。我缓缓舒展四肢,确认自己仍是自
己而未同任何场所融为一体。自己并未栖身于任何场所。但我依然记得梦中的感触。只
消一伸手,那将我包容其间的整幅图像便随之晃动不已。如同以水流为动力的精巧的自
动木偶,逐一地、缓缓地、小心翼翼地、有条不紊地依序而动,并且有节奏地发出细微
的响声。若侧耳倾听,不难分辨出其动作进展的方向。于是我凝神谛听。我听出有人在
暗暗啜泣,声音非常低沉,仿佛来自冥冥的深处。那是为我哭泣。
   海豚宾馆并非虚构之物,它位于札幌市区一处不甚堂皇的地段。几年前我曾在那里
住过一个星期。哦,还是让我好好想想,说得准确一点。是几年前来着?4年前。不,
精确说来是4年半以前。那时我还不到30岁,和一个女孩儿一起在那里投宿。宾馆是女
孩儿选定的,她说就住在这儿好了,务必住这家旅馆。假如她不这样要求,总不至于住
什么海豚宾馆,我想。
   这家宾馆很小,且相当寒伧。除我俩之外几乎没有什么客人。住了一个星期,结果
只在门厅里见到两三个人,还不知是不是住客。不过,服务台床位一览板上挂的钥匙倒
是不时出现空位,想必还是有人投宿——尽管不多,几个人总会有的。不管怎样,毕竟
在大都市占一席之地,且挂了招牌,分类电话号码簿上也有号码赫然列出,从常识上看
也不可能全然无人问津。可是,即使有其他住客,恐怕也是极其沉默寡言而生性腼腆的
人。我俩几乎没有目睹过他们的身影,也没有听到过他们的动静,甚至感觉不出他们的
存在。只是床位一览板上钥匙的位置每天略有变化,大概他们像一道无声无息的影子顺
着墙壁在走廊里往来穿行。电梯倒是有时候拘谨地发出“咔嗒咔嗒”的升降声响,而那
声响一停,沉寂反倒更加令人窒息。
   总之这是间不可思议的宾馆。
   它使我联想起类似生物进化过程中的停滞状态:遗传因子的退化,误入歧途而又后
退不得的畸形生物,进化媒介消失之后而在历史的烛光中茫然四顾的独生物种,时间的
深谷。这不能归咎于某一个人,任何人都无责任,任何人都束手无策。问题首先是他们
不该在这里建造旅馆,这是所有错误的根源。起步出错,步步皆错。第一个电钮按错,
必然造成一系列致命的混乱。而试图纠正这种混乱的努力,又派生出新的细小——不能
称之为精细,而仅仅细小——的混乱。其结果,一切都似乎有点倾斜变形。如同仔细观
察事物时自然而然地几次歪起脑袋情况下的倾斜度一样。这种倾斜,不过是略略改变一
下角度,既无关大局,又不显得矫揉造作。若长此以往,恐怕也就习以为常,但毕竟叫
人有点耿耿于怀(果真对此习以为常,往后观察正常世界怕也难免歪头偏脑)。
   海豚宾馆便是这样的宾馆。它的不正常——已经混乱到无以复加的地步,不久的将
来必定被时间的巨大漩涡一口吞没——在任何人看来都毋庸置疑。可怜的宾馆!可怜得
活像被12月的冷雨淋湿的一条三只腿的黑狗。当然,可怜的宾馆世上所在皆是,问题是
海豚宾馆与那种可怜还有所不同。它是概念上的可怜,因而格外可怜。
   不用说,特意选择这里投宿的,除去阴差阳错之人,理当余者寥寥。
   海豚宾馆并非正式名称。其正式名称是“多尔芬①旅馆”。但由于它给人的印象实
在名不符实(多尔芬这一名称使我联想起爱琴海岸那如同砂糖糕一般雪白的避暑宾馆),
我便私下以此呼之。宾馆的入口处有一幅非常漂亮的海豚浮雕,还有一块招牌。若无招
牌,我想绝对看不出是宾馆。甚至有招牌都全然不像。那么像什么呢,简直像一座门庭
冷落的旧博物馆——馆本身特殊,展品特殊,怀有特殊好奇心的人悄然而至。    
  ①海豚一词的英语音译(dolphin)。



   不过,即使人们目睹海豚宾馆后产生如此印象,也决不是什么想入非非。事实上这
宾馆的一部分也兼做博物馆之用。
   一座部分兼做莫名其妙的博物馆的宾馆,一座幽暗的走廊尽头堆着羊皮和其他落满
灰尘的毛皮、散发霉气味的图书资料,以及变成褐色的旧照片的宾馆,一座绵绵无尽的
思绪如同干泥巴一般牢牢沾满各个角落的宾馆——有谁会住这样的宾馆呢?
   所有的家具都漆色斑驳,所有的桌几都吱吱作响,所有的带锁把手都拉不拢。走廊
磨得坑坑洼洼,电灯光线黯然,洗脸台的龙头歪歪扭扭,水滴滴滴答答,体形臃肿的女
佣(她的腿使人联想到大象)在走廊里一边踱步一边发出不祥的咳嗽声。总是蜷缩在账
台里的经理是个中年男子,眼神凄惶,指头仅存两个。只消看上一眼,便知此君属于时
运不济、命运多饵的一类——俨然这一类型的标本。如同在淡蓝色的溶液里浸泡了一整
天之后刚刚捞出来似的,他的全身上下没有一处不印有受挫、败阵和狼狈的阴翳,使人
恨不得把他装进玻璃箱放到学校的物理实验室去,并且贴上“时运不济者”的标签。大
多数人看见他之后都会程度不同地产生怜悯之情,也有些人会发火动气。这类人只要一
看见那副可怜相便会无端地大动肝火。有谁会住这样的宾馆呢?
   然而我们住了。我们应该住这里,她说,此后便杳然无踪,只剩下我顾影自怜。告
诉我她已走掉的是羊男。她早就走了,羊男告诉说。羊男知道,知道她必走无疑。现在
我也已经明白。因为她的目的就在于把我引到这里。这类似一种命运,犹如伏尔塔瓦河
流入大海。我一边看雨一边沉思,命运!
   我自从梦见海豚宾馆之后,首先在脑海中浮现出来的便是她。我不由想到,是她在
寻求我。否则我为什么三番五次做同样的梦呢?
   对她,我甚至连名字都不知道,尽管同她共同生活了好几个月。实际上我对她一无
所知。我仅仅知道她是一间高级应召女郎俱乐部的就业人员。俱乐部采用会员制,接待
对象只限于身份可靠的客人,即高级妓女。此外她还兼做好几样工作。白天平时在一家
小出版社当校对员,还临时当过耳朵模特。总之,她忙得不可开交。她当然不至于没有
名字,实际上也不止一个。但同时又没有名字。她的持有物——尽管形同虚无——任何
持有物上都不标注姓名。既无月票和驾驶证,又没有信用卡。袖珍手册倒有一本,上面
只是用圆珠笔歪歪扭扭地记着一些莫名其妙的暗号。她身上没有任何线索可查。妓女大
概也该有姓名才是,而她却生息在无名无姓的世界中。
   一句话,我对她几乎一无所知。不知她原籍何处,不知她芳龄几何,不知她出生的
年月,更不知她文凭履历和有无亲人。统统不知。她像阵雨一样倏忽而至,遽然无踪,
留下的惟有记忆而已。
   但我现在感到,关于她的记忆开始再次在我周围带来有某种现实性。我觉得她是在
通过海豚宾馆这一状况呼唤我。是的,她在重新寻求我。而我只有通过再度置身于海豚
宾馆,方能同她重逢。是她在那里为我流泪。
   我眼望雨帘,试想自己置身何处,试想何人为我哭泣。那恍惚是极其、极其遥远世
界里的事情,简直像是发生在月球或其他什么地方。归根结底,是一场梦。手伸得再长,
腿跑得再快,我都无法抵达那里。
   为什么有人为我流泪呢?
   无论如何,是她在寻求我,在那海豚宾馆的某处,而且我也从内心里如此期望,期
望置身于那一场所,那个奇妙而致命的场所。
   不过返回海豚宾馆并非轻易之举,并非打电话订个房间,乘飞机去札幌那样简单。
那既是宾馆,同时也是一种状况,是以宾馆形式出现的状况。重返宾馆,意味着同过去
的阴影再次相对。想到这点,我的情绪骤然一落千丈。是的,这四年时间里,我一直在
为甩掉那冷冰冰、暗幽幽的阴影而竭尽全力。返回海豚宾馆,势必使得我这四年来一点
一滴暗暗积攒起来的一切化为乌有。诚然我并未取得什么大不了的成功,几乎所有的努
力都不过是权宜之计,不过是敷衍一时的废料。但我毕竟尽了我最大的力气,从而将这
些废料巧妙组合起来,将自己同现实结为一体,按照自己那点有限的价值观构筑了新的
生活。难道要我再次回到那空荡荡的房子里不成?要我推开窗扇把一切都放出去不成?
   然而归根结底,一切都要从那里开始,这我已经明白。只能从那里开始。
   我躺在床上,仰望天花板,深深一声叹息。死心塌地吧,我想。算了吧,想也无济
于事。那已超出你的能力范围。你无论怎么想方设法都只能从那里开始。已经定了,早
已定了!
   谈一下我自己吧。
   自我介绍。
   以前,在学校里经常搞自我介绍。每次编班,都要依序走到教室前边,当着大家的
面自我表白一番。我实在不擅长这一手。不仅仅是不擅长,而且我根本看不出这行为本
身有何意义可言。我对我本身到底知道什么呢?我通过自己的意识所把握的我,难道是
真实的我吗?正如灌进录音带里声音听起来不像是自己发出来的一样,我所把握的自身
形象恐怕也是自己随心所欲捏造出来的扭曲物……我总是这样想。每次自我介绍,每次
在众人前面不得不谈论自己时,便觉得简直是在擅自改写成绩单,心跳个不停。因此这
种时候我尽可能注意只谈无须解释和评点的客观性事实(诸如我养狗,喜欢游泳,讨厌
的食物是干乳酪等等)。尽管如此,我还是觉得似乎是就虚构的人罗列虚构的事实。以
这种心情听别人介绍,觉得他们也同样是在谈论与其自身不同的其他什么人。我们全都
生存在虚构的世界里,呼吸虚构的空气。
   但不管怎样,总要说点什么,一切都是从自我说点什么开始的。这是第一步。至于
正确与否,可留待事后判断。自我判断也可以,别人来判断也无所谓。总之,现在是该
说的时刻,而且我也必须会说才行。
   近来我喜欢吃干奶酪,什么时候开始的我不清楚,不知不觉之间就喜欢上了。原来
养的狗在我上初中那年被雨淋湿,得肺炎死了。从那以后一只狗也没养。游泳现在仍然
喜欢。
   完毕。
   然而事情并不能如此简单地完毕。当人们向人生寻求什么的时候(莫非有人不寻
求?),人生便要求他提供更多的数据,要求他提供更多的点来描绘更明确的圆形。否
则便出不来答案。
   数据不足,不能回答。请按取消键。
   按取消键,画面变白。整个教室里的人向我投东西:再说几句,关于自己再说几句!
教师蹙起眉头。我瞠目结舌,在讲台上木然伫立。
   再说!不说一切都无从开始。而且要尽量多说,对与不对事后再想也不迟。
   女孩儿不断地来我房间过夜,一起吃罢早饭,便去公司上班。她依然没有名字。所
以没有名字,不外乎因为她不是这个故事的主角。她很快就会消失。这样,为了避免混
乱,我没有给她冠以名字。但我希望你不要因此以为我蔑视她的存在。我非常喜欢她,
即使在她了无踪影的现在也同样喜欢。
   可以说,我和她是朋友。至少对我来说,她是惟一具有可以称为朋友的可能性的人。
她在我之外有一个相当不错的恋人。她在电话局工作,用电子计算机计算电话费。单位
里的事我没有细问,她也没怎么谈起。但我猜想无非是按每个人的电话号码逐一统计电
话费,开具通知单等等。因此,每月在信箱里发现电话费通知单时,我就觉得是收到了
一封私人来信。
   而她却不管这些,只是同我睡觉。每个月两回或三回,如此而已。在她心目中,我
怕是月球人或什么人。“嗯,你不再返回月球了?”她一边哧哧笑着,一边赤条条地凑
上身子,把乳房紧贴在我的腹侧。黎明前的时间里我们常常如此交谈。高速公路上的噪
音时断时续。收音机中传出“人类联盟”的歌声。“人类联盟”,何等荒唐的名字!何
苦取如此索然无味的名字呢?过去的人为乐队取名尽可能取得得体地道,诸如英佩利阿
尔兹、施普利姆兹、弗拉明戈兹、法尔康兹、英普莱肖兹、杜阿兹、法·西津兹、“沙
滩男孩”。
   听我如此说,她笑了,说我这人不正常。我不晓得我哪里不正常,而以为自己思维
最正常,人最正常。“人类联盟”。
   “喜欢和你在一起,”她说,“有时候,恨不得马上见到你,比如在公司干活的时
候。”
   “唔。”
   “是有时候,”她一字一板地强调,而后停顿了30秒钟。“人类联盟”的音乐播完,
代之以一支陌生乐队演奏的乐曲。“问题就在这里,你的问题。”她继续说道,“我是
非常喜欢这样你我两人在一起,但并不乐意从早到晚都守在一起。怎么回事呢?”
   “唔。”
   “不是说和你在一起感到心烦,只是恍惚觉得空气变得稀薄起来,简直像在月球上
似的。”
   “这不过是小小的一步……”
   “我说,别当笑话好不好,”她坐起身子,死死盯视我的脸,“我这样说是为你好,
除了我,可有说话是为你着想的人?嗯?可有说那种话的人,除我以外?”
   “没有。”我老实回答。一个也没有。
   她便重新躺下,乳房温柔地摩擦我的肋部。我用手轻轻抚摸她的脊背。
   “反正我有时觉得空气变得像在月球上一样稀薄,和你在一起。”
   “不是月球上空气稀薄,”我指出,“月球表面压根儿就没有空气。所以……”
   “是稀薄,”她小声细气地说。不知她对我的话是没听进去,还是根本没听。但其
声音之小却是让我心情紧张。至于为什么倒不清楚,总之其中含有一种令我紧张的东西。
“是有时候变得稀薄。而且我觉得你呼吸的空气和我的截然两样,我是这样认为的。”
   “数据不足。”我说。
   “我大概对你还什么都不了解,是吧?”
   “我本身对自己也不大了解,”我说,“不骗你。我这样说,不仅从哲学意义上,
而且从实际意义上。整个数据不足。”
   “可你不是都33岁了?”她问道。她26岁。
   “34岁,”我纠正道,“34岁零两个月。”
   她摇了摇头,然后爬下床,走到窗前,拉开帘布。窗外可以看见高速公路。公路上
方漂浮着一弯白骨般的晓月。她披起我的睡袍。
   “回到月亮上去,你!”她指着月亮说。
   “冷吧?”我问。
   “冷,月亮上?”
   “不,你现在。”我说。时值2月。她站在窗前口吐白气。经我提醒,她才好像意
识到寒意。
   于是她赶紧回身上床。我一把将她搂在怀里,睡衣凉冰冰的。她把鼻尖顶在我脖颈
上,鼻尖凉得很。“喜欢你。”她说。
   我本想说点什么,终未顺利出口。我对她怀有好感,两人如此同床而卧,时间过得
十分惬意。我喜欢温暖她的身体,喜欢静静爱抚她的秀发,喜欢听她睡着时轻微的喘息,
喜欢早上送她上班,喜欢收取她计算的——我相信的——电话费通知单,喜欢看她穿我
那件肥大的睡袍。但这些很难一下子表达得恰如其分。当然算不得爱,可也不单单是喜
欢。
   怎么说好呢?
   最后我什么也未出口,根本想不起词来。同时我感到她在为我的沉默而暗自伤心。
她竭力不想使我感觉出来,但我还是感觉到了。在隔着柔软的肌肤逐节触摸她脊骨的时
候,我觉察到了这一点,清清楚楚地。我们默默地拥抱良久,默默地听着那不知名称的
乐曲。
   “去和月球上的女人结婚,生个神气活现的月球人儿子。”她温柔地说。
   “那是再好不过。”
   月亮从豁然敞开的窗口探过脸来。我抱着她,从她的肩头一动不动地望着月亮。高
速公路上,不时有载着极重货物的长途卡车发出类似冰山开始崩溃般的不祥吼声疾驰而
过。到底运载的是什么呢?我想。
   “早饭有什么?”她问我。
   “没什么新玩艺儿,老一套:火腿、鸡蛋、烤面包、昨天中午做的土豆色拉,还有
咖啡。再给你热杯牛奶,来个牛奶咖啡。”我说。
   “好!”她微微浅笑,“做个火腿蛋,烤面包要加咖啡,可以吗?”
   “遵命。”
   “你猜我最喜欢什么?”
   “老实说,真猜不出来。”
   “我最喜欢的么,怎么说好呢,”她看着我的眼睛,“就是,冬天寒冷的早晨实在
懒得起床的时候,飘来咖啡味儿,阵阵扑鼻的火腿煎蛋味儿,传来切面包的嚓嚓声,闻
着听着就忍不住了,霍的一声爬下床来——就是这个。”
   “好,试试看。”我笑道。
   我这人决没有什么不正常。
   我的确如此认为。
   或许不能说是和一般人完全一样,但并不是怪人。我这人地道之至,且正直之极,
直得如同一支箭。我作为我自己,极其必然而自然地存在于世。这是明明白白的事实,
至于别人怎么看我,我并不大介意。因为别人怎么看与我无关。那与其说是我的问题,
莫如说是他们的问题。
   较之我的实际,有人认为我更愚蠢迟钝,有人认为我更精明狡黠。怎么都无所谓。
我所以采用“较之我的实际”这一说法,不过是同我所把握的自身形象相比而已。我在
他们看来,现实中或许愚蠢迟钝,或许精明狡黠,怎么都不碍事,不必大惊小怪。世上
不存在误解,无非看法相左。这是我的观点。
   然而另一方面,我心目中又有被那种地道性所吸引的人,尽管寥寥无几,但确实存
在。他们或她们,同我之间,恰如冥冥宇宙之中飘浮的两颗行星,本能地相互吸引,随
即各自分开。他(她)们来我这里,同我交往,然后在某一天离去。他(她)们既可成
为我的朋友,又可成为我的情人,甚至妻子。在某种场合双方也会僵持不下。但不管怎
样,都已离我而去。他(她)们或消极或绝望或沉默(任凭怎么拧龙头都不再出水),
而后一走了之。我的房间有两个门。一个出口,一个入口,不能换用。从入口出不来,
自出口进不去,这点毫无疑问。人们从入口进来,打出口离去。进来方式很多,离去办
法不一,但最终无不离去。有的人出去是为尝试新的可能性,有的人则是为了节省时间,
还有的人命赴黄泉。没有一人留下来,房间里空空荡荡,惟有我自己。我总是意识到他
们的不在,他们的离开。他们的谈话,他们的喘息,他们哼出的谣曲,如尘埃一般飘浮
在房间的每个角落,触目可见。
   我觉得自己在他们眼睛中的形象很可能是正确无误的。惟其如此,他们才统统直接
来到我这里,不久又纷纷告离。他们认识到了我身上的地道性,认识到了我为保持这种
地道性所表现出来的真诚——我想不出其他说法。他们想对我说什么,向我交心。他们
几乎全是心地善良的人,而我却不能给予他们什么。即使能给予,也无法使其满足。我
总是不断努力,给了他们我所能给的一切,做了我所能做的一切。我也很想从他们那里
得到什么,但终于未能如愿以偿。不久,他们远走高飞了。
   这当然是痛苦的事。
   但更令人痛苦的,是他们以远比进来时悲戚的心情跨出门去,是他们体内的某种东
西磨损掉了一截。这点我心里清楚。说来奇怪,看上去他们的磨损程度似乎比我还要严
重。为什么呢?为什么总是我留守空城?为什么总是我手中剩有别人磨损后的阴影?这
是为什么?莫名其妙。
   是数据不足。
   所以总是出不来正确答案。
   是缺少什么。
   一天,谈完工作回来,发现信筒里有一张明信片。信上的图案是幅摄影:宇航员身
着宇航服在月球表面上行走。尽管没有发信人的名字,但出自谁手却是一目了然。
   “我想我们还是不再见面为好。”她写道,“因为我想近期内我可能同地球人结
婚。”
   传来窗扇关闭的声响。
   证据不足,不能解答,请按取消键。
   画面变白。
   这种事将持续到何时为止呢?我已经34岁,难道长此以往不成?
   我倒并不伤心,但责任明显在我。她弃我而去是理所当然的,这点一开始就已明白,
我明白,她也明白。但双方又都在追求一种小小的奇迹,希望出现偶然的契机促使事情
发生根本性转变。而这当然不可能实现。于是她走了。失去她以后我深感寂寞,但这是
以前也品尝过的寂寞,而且我知道自己会巧妙地排遣这种寂寞。
   我正在习以为常。
   每想到这里,我就满怀不快,仿佛一股黑色液体被从五脏六腑里挤压出来,一直顶
到喉头。我站在卫生间的镜前,心想原来这就是我自己,这就是你。你一直在磨损自己,
磨损得比你预想的远为严重。我的脸比以前脏污得多,憔悴得多。我用香皂把脸洗了又
洗,将洗发水狠狠地揉进皮肤,又慢慢地洗手,用新毛巾把脸和手仔细擦干。之后去厨
房拿了罐啤酒,边喝边清理冰箱。淘汰萎缩的西红柿,把啤酒排列整齐,更换容器,开
列购物清单。
   天快亮时,我独自呆呆望着月亮,心想这要到什么时候为止呢?不久我还将在什么
地方同其他女子萍水相逢吧?并且仍将像行星那样自然而然地相互吸引,仍将渺茫地期
待奇迹,仍将消耗时间,磨损心灵,分道扬镳。
   这将何时了结呢?
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发表于 2005-1-10 23:15:51 | 显示全部楼层
お疲れ様でした
長くので、ゆっくり読みます
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发表于 2005-5-15 17:18:12 | 显示全部楼层
この小説が大好きです。ずっと探しているんだけど、今日まで、やっと。。。。
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发表于 2005-5-16 11:27:19 | 显示全部楼层
译文的确是林少华的,刚对照了一样。
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