|
1 鯨(くじら)のペニス、三つの職業を持つ女(7)
「それとは少し違うのね?」
“就是说稍有差别了?”她说。
「うん。それとは少し違うんだ」と僕は言った。「僕の受ける感情はものすごく漠然としていて、しかもソリッドなんだ」僕は両手を一メートルばかり離してから、それを五センチに縮めた。
“对。确实有差别。”我说。“我所接受的感情已经极其漠然,而且也很现实了。”我的两手从一米的距离缩短到五厘米。
「うまく説明できないな」
“真是没法讲清楚。”
「漠然とした動機に基いた、凝縮(ぎょうしゅく)された現象」
“建立在漠然动机的基础上,已经被凝缩的现象。”
「そのとおりだよ」と僕は言った。「君は僕の七倍くらい頭がいい」
“正如你所说的那样。”我说。“你要比我的脑子好使七倍。”
「通信教育を受けたのよ」
“我学的函授教育。”
「通信教育?」
“函授教育?”
「ええ、心理学の通信教育」
“是,心理学专业的函授教育。”
我々は最後に残ったパテを二人でわけた。僕は自分が何を言おうとしていたのかをまた忘れてしまった。
我们把最后剩下的鱼酱分给二人。我到底想要说什么,又给忘掉了。
「あなたは私の耳とそのあなたの感情の相関関係がまだよくつかめないのね?」
“你还没有找到我的耳朵和你的感情之间的相互关系。”
「そうなんだ」と僕は言った。「つまり、君の耳がダイレクトに僕にアピールするのか、それとも別の何かが君の耳を媒介(ばいかい)として僕にアピールするのか、それがどうもうまくつかめないんだ」
“也确实那样。”我说。“总之,是你的耳朵直接对我呼吁呢?还是别的什么东西把你的耳朵当工具来呼吁我呢?这还没有真正能找到。”
彼女はテーブルの上に両手を載せたまま、微かに肩を働かした。「あなたの感じる感情は良い種類のもの、それとも嫌な種類のもの?」
她的两只手仍放在桌子上,把肩轻轻动了一下。“你所感觉到的感情是良好感情呢?还是让人不喜欢的那一种?”
「どちらでもない。どちらでもある。わからないよ」
“哪一种也不是,但哪一种也都包含有。这个我不明白。”
彼女は両手でワイン?グラスをはさんで、しばらく僕の顔を見ていた。「あなた、もう少し感情表現の方法を学ぶんだ方がいいみたいよ」
她用两只手捧着酒杯,看了一会儿我的脸。“你还是学习一点表现感情的方法为好。”
「描写(びょうしゃ)力もないしね」と僕は言った。
“描写表现力是没有的。”我说。
彼女は微笑(ほほえ)んだ。「でもまあいいわ。あなたの言っていることはだいたいわかったから」
她微笑着。“不过已经可以了。你所说的事大概已经明白了。”
「それで僕はどうすればいいのかな?」
“那么,我怎么办才好呢?”
彼女はずっと黙っていた。何か別のことを考えているみたいに見えた。テーブルには空になった五枚の皿が並んでいた。五枚の皿は滅亡した惑星群みたいに見えた。
她一直沉默着。像是在思考别的什么事情。已经吃光了的五个盘子仍摆放在桌子上。那五个盘子就像要消失的慧星群那样。
「ねえ」と長い沈黙のあとで彼女が口を開いた。「私たちはお友だちになった方が言いと思うの。もちろんあなたがそれでよければ話だけれど」
“哎,”沉默了长久的她终于开口了。“我想我们成为好朋友为好。当然这要看你的态度了。”
「もちろんいいさ」と僕は言った。
“这个当然可以了。”我说。
「それも、とてもとても親しい友だちになるのよ」と彼女が言った。
“强调一下,要成为非常非常要好的朋友。”她说。
僕は肯いた。
我点头答应。
そんな風にして、我々はとてもとても親しい友だちになった。はじめて会ってから三十分しかかからなかった。
就这样,我们就成了非常要好的朋友。从这初次见面开始到现在也只用了三十分钟。
|
|