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本帖最后由 yamoli 于 2014-12-13 10:22 编辑
3 続 耳の開放について(3)
夏も終わりに近づいたその九月の昼下がり、僕は仕事を休んでベッドの中で彼女の髪をいじりながら、ずっと鯨(くじら)のペニスのことを考えていた。海は濃い鉛色で、荒い風がガラス窓を叩いていた。天井は高く、展示室の中には僕の他に人影はなかった。鯨のペニスは鯨から永遠に切り離され、鯨のペニスとしての意味を完全に失っていた。
在靠近夏末九月的一个午后,我并没有去上班,躺在床上一边梳理着她的头发,一边一直在想着鲸的阴茎。海色浓重得像铅色那样,粗狂的风吹打着玻璃窗。天棚很高,在展览室内除我之外没有别的人影。鲸的阴茎永远地被从鲸的身体上切除下来,这已经完全失去了作为鲸阴茎的意义。
それから僕は妻のスリップについてもう一度考えてみた。しかし僕にはもう彼女がスリップを持っていたかどうかさえ思い出せなかった。スリップが台所の椅子にかけられたぼんやりとした実体のない風景だけが、僕の頭の隅にこびりついていた。それがいったい何を意味していたかということも思い出せなかった。まるでずっと長いあいだ誰か別の人間の人生を生きてきたような気がした。
之后我又重新想起前妻的套裙。但是我却只是在想她有套裙没有?她的套裙搭放在厨房的椅子上,这样模糊的风景附着在我的脑海中。那到底是什么意思呢?我实在想不出。极乎在很长时间内生存在别人的人生中。
「ねえ、君はスリップを着ないのかい?」と僕はこれという意味もなくガール?フレンドに訊ねてみた。
“那个,你穿没穿长衬裙呢?”我也并没有这种意思,随意向女朋友问。
彼女は僕の肩から顔を上げて、ぼんやりとした目で僕を見た。
她从我的肩上抬起头来,用不明白的目光看着我。
「持ってないわ」
“我可没有穿呀。”
「うん」と僕は言った。
“是吗?”我说。
「でも、もしあなたがその方がもっとうまくいくっていうんなら……」
“可是,如果你觉得那样更合适的话……”
「いや、違うんだ」と僕はあわてて言った。「そういうつもりで言ったわけじゃないんだよ」
“不是,没有那个意思。”我急忙说。“我并没有说那种意思。”
「でも、本当に遠慮しなくてもいいのよ。私は仕事上そういうのには結構なれてるし、ちっとも恥ずかしくなんかないのよ」
“也不用想那么多。出于工作我还能适应。一点也不害羞。”
「何もいらないんだ」と僕は言った。「君と君の耳だけで本当に十分なんだ。それ以上は何もいらない」
“什么也不需要。”我说。“只要有你和你的耳朵就足够了。这之外什么也不需要。”
彼女はつまらなそうに首を振って僕の肩に顔を伏せた。しかし十五秒ばかりあとでもう一度顔を上げた。
她有点不能接受的样子摇摇头,又把脸贴到我的肩膀上。也只是过了十五秒,她又一抬起头。
「ねえ、あと十分ばかりで大事な電話がかかってくるわよ」
“那个,再过十分钟会有一个重要的电话。”
「電話?」僕はベッドのわきの黒い電話機に目をやった。
“电话?”我把目光投到床旁边的黑色电话机上。
「そう、電話のベルが鳴るの」
“是的。电话铃会响的。”
「わかるの?」
“你怎么知道?”
「わかるの」
“我知道的。”
彼女は僕の裸の胸に頭を載せたままはっか煙草を吸った。しばらくあとで僕のへそのわきに灰が落ちたが、彼女は口をすぼめてそれをベッドの外に吹きとばした。僕は彼女の耳を指ではさんだ。素敵な感触だった。頭がぼんやりとして、その中で形のない様々なイメージが浮かんでは消えた。
她躺在我的裸胸上开始抽起薄荷烟来。一会儿烟灰落到了肚脐眼的旁边。她收起小嘴,把那烟灰吃到床的外面。我用手指夹着她的耳朵,有一种很美妙的感觉。脑子也并不那么清醒,各种无行的图画刚一浮现马上又消失掉。
「羊のことよ」と彼女は言った。「たくさんの羊と一頭の羊」
“是有关羊的事情。”她说。“是一个羊群和一头羊的事。”
「羊?」
“羊?”
「うん」と言って彼女は半分ほど吸った煙草を僕に渡した。僕はそれを一口吸ってから灰皿につっこんで消した。「そして冒険が始まるの」
“是的。”她一边说着一边把抽了一半的烟递给我。我只吸了一口就把它摁灭在烟灰缸里。“而且冒险也将开始。”
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