|
4 彼女はソルティードッグを飲みながら波の音について語る(7)
「ここで読まなくちゃいけない?」
「家に持って帰って読んでください。読みたくなかったら捨てて下さい」
彼女は肯いてバッグに手紙をしまった。ぱちんという気持の金具の音がした。僕は二本目の煙草に火を点け、二杯めのウィスキーを注文した。二杯めのウィスキーというのが僕はいちばん好きだ。一杯めのウィスキーでほっとした気分になり、二杯めのウィスキーで頭がまともになる。三杯めから先は味なんてない。ただ胃の中に流し込んでいるというだけのことだ。
「これだけのために東京からわざわざ来たの?」と彼女が訊ねた。
「殆んどそうですね」
「親切なのね」
「そんな風に考えたことはないな。習慣的なものですよ。もし立場が逆だったとしても彼も同じことをすると思うしね」
「してもらったことはある?」
僕は首を振った。「でも我々は長いあいだいつも非現実的な迷惑をかけあってきたんですよ。それを現実的に処理するかどうかというのはまた別の問題です」
「そんな風に考える人っていないんじゃないかしら」
「そうかもしれませんね」
彼女はにっこり笑って立ちあがり、伝票を手に取った。「ここのお勘定は払わせて。四十分も遅れちゃったんだし」
「その方が良いんならそうして下さい」と僕は言った。「それからひとつ質問していいですか?」
「どうぞ、いいわよ」
「あなたは電話で僕の外見の見当がつくって言いましたね」
「ええ、私は雰囲気というつもりで言ったんだけど」
「それで、すぐにわかりました?」
「すぐにわかったわ」と彼女は言った。
雨はまったく同じ強さで降り続いていた。ホテルの窓からは隣りのビルのネオン?サインが見えた。その緑の人工的な光の中を無数の雨の線が地表に向けて走っていた。窓際に立って下を見下ろすと、雨の線は地表の一点に向けて降り注いでいるように見えた。
僕はベッドに寝転んで煙草を二本吸ってから、フロントに電話をかけて翌朝の列車を予約してもらった。この街で僕がするべきことはもう何も残っていなかった。
雨だけが真夜中まで降りつづいていた。
“必须在这里把信读了吗?”
“请带回家里去吧。如果不想读的话请扔掉。”
她点头,把信放到手提包内。“啪”地一声,是听起来很舒服的金属碰撞声。我点着了第二棵烟,要了第二杯威士忌。所谓的第二杯威士忌我非常喜欢。喝一杯威士忌心情还挺好的,到第二杯脑子还清醒,从第三杯开始就没有味了。那也只是往胃中灌的感觉了。
“也就只是为了这点事专门从东京来到这里?”她问。
“的确是这样的。”
“也太热心了。”
“可没有那样想。也只是习惯而已。反过来考虑他也会这样做的。”
“让他这样做过吗?”
我摇摇头。“可是我们在很长时间里一直处于非现实的迷惑中。到底是不是用现实的方式来处理那些事情?那又是另外的问题。
“应该没有人用那种方式深入思考吗?”
“大概是这样的。”
她莞尔一笑站了起来,把记帐单拿在手里。“这里让我结帐吧。已经晚了四十分钟了。”
“若可以的话,那就麻烦你了。”我说。“我还想再提个问题可以吗?”
“可以呀,请。”
“你通过电话能知道我的外表形象?说一说。”
“哎,我只是讲根据谈话的气氛而已。”
“那就马上明白了吗?”
“马上就能明白。”她说。
雨还是在那种势态地下继续下着。透过宾馆的窗户看到邻近楼的霓虹灯。在那绿色人工灯光中有无数的雨线向地表飞泻下去。站在窗边往下看,看到雨线向地表的那一点下灌下去。
我躺在床上吸了两棵烟之后,向服务台打电话,予定了明天早上的火车。在这条街上我还可做的事情已经没有了。
只是雨连续下到了深夜。 |
|