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发表于 2015-9-3 16:36:41
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高校時代、俺は文芸部に所属していた。
高中时代,我曾是文学部的成员。
と言っても、何も小説などが好きだったわけではない。新入生歓迎会の折りに、ヤケに可愛い先輩に勧誘されたのだ。
虽说是文学部的不假,可我并不是因为喜欢小说之类的文学作品才加入的。真相则是:在新生欢迎会上,被一个漂亮学姐搭了讪。
『君、文芸部に入ってよ』
“同学,要不要加入文学部呀”
俺は思わずうなずいてしまった。そうするより他になかった。なぜならば、一年歳上のその先輩は、文芸部などというオタク臭い部活に加入していたにもかかわらず、ちょっとしたアイドル並みに可愛かったからだ。
我当即点下了头。不为别的,就冲着那位当代偶像般的学姐,我还有什么权利说不呢?只要她檀口一开,即使是上刀山,下火海我亦心甘。
そんな適当な動機で部活に入ったものだから、日々の活動はトランプの七並べに終始した。暇を見つけては、狭い部室で先輩と七並べをした。まったく、何をやっていたのだろう。もっと他にやることがあっただろうに。
以此为契机,本人加入了土气社团文学部。每日的活动均是以扑克开始扑克结束。闲得没事了,就跟学姐在狭小的部室里玩纸牌接龙。现在想起真是后悔呀。为什么当时不去做些有意义的事呢?
まぁ、今となっては、そんなことはどうでもいい。過去は過去である。
唉,弃我去者,昨日之日不可留;乱我心者,今日之日多烦忧。
ともかく、そんなある日の放課後の事なのだった。俺と先輩は、中庭に面した一階の廊下を歩いていたのだ。
好了,言归正传。那是在某一个放学后的傍晚。我和学姐正漫步与学校中庭相接的一楼走廊上。
先輩が、ふと中庭の隅を指さした。
忽然,学姐用手指向了中庭的一个角落。
『……あれ』
“......咦”
『あぁ、イジメですね』
“噢,欺负人的呢”
中等部の制服を着た少年が、数人の生徒に囲まれて、お腹をぼこぼこ叩かれていた。
只见一个穿着初中部制服的男孩,正被其他几个学生围着,单方面的被推搡着。
イジメを受けているその少年は、弱々しい微笑みを浮かべていた。
被欺负的男孩则赔着笑,那表情软弱至极。
イジメている方も、にこにこ笑っていた。
打人的一方,嬉皮笑脸的。
よくある風景だった。
的确是随处可见的景象。
『ひどいよね』
“好过分呀”
先輩が言った。彼女はずいぶんと感情移入能力が高い人なので、本当に気の毒そうな顔をしていた。
学姐皱眉道。她是那种感情方面很敏感的人,看见这种场景,自是一副忿忿不平的表情。
そのときだった。すごく良いアイデアがひらめいた。
那一刻。我灵机一动,立时有了良策。
『助けてきましょうか?』
“我去帮他吧?”
先輩に、俺の格好いいところを見せつけてやる。
正好在学姐面前,露一手嘛。
『できるの?』
“可以吗?”
俺はうなずいた。
我权衡了一下。
中等部のガキぐらい、どうってことはないだろう──
反正对手是几个初中小孩,三两下就能摆平吧——
もちろんそれは、大きな判断ミスだった。
当然,我的判断大错特错了。
『イジメ、かっこわるい!』と叫んで、イジメ現場に踏み込んで行ったのはいいものの、逆にすっかりやり返《か》されて、さらにイジメグループはそのまま逃走、先輩は呆《あき》れかえった目で俺を見つめ、イジメられっ子はその後一年間、相も変わらずイジメられ続け──と、俺の行動は何ひとつ長い結果を生み出さなかった。
“哪里有欺负,哪里就有我出头!”我飒爽地高叫着冲进了打架现场,结果反被几个初中生顺带着修理了一顿,欺负人集团揍完便跑,组织相当严密,一连串动作犹如行云流水一般。学姐呆呆地望着倒地不起的二人,半天说不出话来。事发后的一年里面,那个被欺负的男生仍旧是成天挨打——看来,我的行动并没有使事态改变分毫。
それでもイジメられっ子の山崎君は、何を勘違いしたのか、俺を尊敬してしまったらしい。高等部に進学すると同時に、文芸部に入部してきやがった。
然而被欺负者山崎君,似乎是搞错了什么,反而尊敬起我来。其表现在于:他升入本校高中部的同时,就加入了文学部。
だが、そのときの俺はすでに三年生。先輩も卒業してしまい、すっかりヤル気が無くなっていた俺は、山崎を部長に仕立て上げて、自分は受験勉強に集中した。
但是,当时的我已是高三。学姐亦业已毕业,完全失去干劲的我便把部长的位子推给山崎,自己则潜心备考。
そうしてそのまま、俺もあっさり卒業。
不久后,我也顺理成章地高中毕业。
卒業式で二、三の会話を交わして以来、山崎とは完全な音信不通だったのだが──
自打毕业典礼上说过两三句话以来,我便再没了山崎的音信。然而——
*
六畳一間の真ん中で、山崎は大げさにはしゃいでいた。痩《や》せていて、ロシア人並みに色が白いところは、あの頃とまったく変わっていない。多少は男らしい顔つきになっているかと思えば、やはりそんなこともない。見るからに戦闘力が低そうな、ひ弱な青年である。
十平米的陋室中,山崎乐得手舞足蹈。他瘦削的样貌,欧美白人般的肤色,还是跟当年一样,没啥变化。本以为他会多少变得像个汉子了,果然这方面是因人而异的。但硬要说有什么变化的话,就是从一个弱不禁风的少年变成了一个弱不禁风的青年了。
「マジですか?本物ですか?」
“佐藤哥?真的是佐藤哥吗?”
先ほどまでは目を真っ赤に腫《は》らして泣いていたくせに、今ではもう、すっかり笑顔だ。アニメソングもすでに鳴りやんでいる。
刚才还是一把鼻涕一把泪的山崎,转眼间又破涕为笑了。其间,音响里高亢的音乐仿佛要撕裂我的头皮。
玄関に立ちすくんだまま、俺は訊いた。
就这么站在门口,我问道。
「どうしてお前がここに──?」
“你怎会在这里——?”
「佐藤さんこそ」
“我倒想问你呢”
「俺は……」
“我.....”
このアパートが大学の近くだったから偶然入居しただけだ、と言おうとして、思わず口ごもってしまった。俺の正体(中退無職のひきこもり)を山崎には知られたくない。
正想接着说,只是因为离大学近才随便挑了这间公寓。但我没能说出来。因为我不想让山崎知道,我的真实身份(辍学且无业的家里蹲)。
すると山崎は俺の葛藤《かっとう》に気がつかないまま、自らの境遇を説明してくれた。
见我不说,于是山崎便迫不及待地讲述起自己的境遇。
「僕はこの春、専門学校に入学したんです。で、家賃が安くて、通学にも便利なアパートを探したら、たまたまここが気に入って──」
“我是在今年春天,进了一所专科学校。然后就想找个便宜而且离学校近的地方租房,找着找着结果就找到这儿来了——”
なるほど。やはりまったくの偶然らしい。
原来如此。真是“阴差阳错”呢。
「とにかくあがってくださいよ。汚い部屋ですけど」
“总之请进屋吧。别嫌脏就行。”
あまりと言えばあまりな偶然に、かなりのとまどいを感じていた俺を、山崎は明るく促した。
似乎是命运使然,又好像是什么在隐隐之中作怪似的。总之,我被山崎盛情邀请了。
俺は素直に靴を脱ぎ、室内へと足を踏み入れた。
我老实地脱下鞋,进了屋。
当然の事ながら、間取りは俺の部屋と変わらない。
不用说,里面的基本布局自是和我的房间大致相同。
「…………」
“............”
だが──なんだ、これは?
然而——为什么,会是这样?
俺は思わず立ちすくんだ。
我不由地怔住了。
山崎の部屋には、妙な気配が漂っていた。それは今まで感じたことのない、ごくごく微妙な雰囲気だった。
山崎的房间里,弥漫着异样的气息。那种异样,仿佛来自另一个世界:
壁に貼られた奇妙なポスター、巨大な二台のタワー型パソコン、壁際に天井近くまで積みあげられたマンガの山──その他さまざまな家具や装飾が、ある種の困った空気を醸し出しているのだった。
四壁上贴着古怪的海报,两部大腹便便的台式电脑,墙角处由漫画堆成的书山即将触到天花板——其他的各色家具和装饰品,皆营造出一种古怪离奇的氛围。
「どうぞ、そこに座ってください」
“哎,请坐到这边吧”
山崎の声で、ふと我に返る。
山崎的声音,把我拽回了现实。
その言葉に従い、おぼつかない足取りで部屋の奥へと移動する。
我听从了,小心翼翼地向屋内挪动脚步。
と──いきなり足元で、何かがばきっと音をたてて割れた。俺はびくんと飛び上がった。
唔——脚底下突然嘎嘣一声,像是什么踩裂了什么东西。我惊得一跃而起。
「あ、CD──Rのケースです。気にしないでいいですよ」
“啊,就一CD盒子。请别介意”
足元を見ると、マンガやら小説やら、ビデオソフトやらDVDやら、ペットボトルやティッシュの空き箱などのゴミクズやらが、床一面に散乱していた。
我下意识地看了一脚下,眼到之处到处都是漫画或小说之类的书本,影碟和游戏软件之类的包装盒,还有空饮料瓶以及抽光了的纸巾盒。这些事物乱七八糟地铺遍了整屋的地板。
「汚い部屋ですけどね」
“别嫌脏就好”
本当だ。これほどに汚い部屋、初めて見た。
山崎不愧为实在人。这儿确实脏乱得犹如一座垃圾场。
「それにしても、嬉《うれ》しいなぁ。まさか佐藤さんが隣にいたとは」
“真是太让人高兴了呀。没想到佐藤哥就住在隔壁呢”
ベッドの端に腰をかけた山崎は、一歩歩くごとに何かを踏んでしまう俺に構わず、だいぶ遠い目をしてそんなことを言う。
坐在床脚的山崎嘴里说着,若无其事地观望着我维艰的步履。
ようやく俺もパソコンデスクに到着した。回転椅子に、腰を下ろす。
终于,我跋涉到了电脑桌旁。沉重地倒进转轮椅子。
酔いは、醒《さ》めていた。完全に、醒めていた。
酒意已被一扫而空。神智也恢复得差不多了。 |
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